昼夕輸送力比とは

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昼夕輸送力比とは、昼間の輸送力を平日夕ラッシュ時輸送力で割ったものを百分率で表した、当サイト「鉄道時刻表ニュース」で独自に使用している指標である。

1. ダイヤはどうできている?

まずは運行ダイヤが大きくどうできているのかをしなくてはならない。大都市圏の場合、大雑把にいうと朝ラッシュ、日中、夕ラッシュだと思われるが、それだけでは足りない。

朝ラッシュには平日と土休日があるし、夕ラッシュにも平日と土休日が分かれている。もちろん全ての大都市圏の路線で土休日朝ラッシュと土休日夕ラッシュがあるわけではないが、日中ダイヤとも平日ラッシュとも異なるものを組んでいる。土休日朝ラッシュ時ダイヤは東急田園都市線や小田急小田原線、西武新宿線、東武伊勢崎線、東京メトロ東西線などで行われており、土休日夕ラッシュ時ダイヤについては西武新宿線や東武伊勢崎線、近鉄大阪線、南海高野線などで行われている。土休日夕ラッシュ時ダイヤは日中の減便が行われた線区で行われることが多く、日中に減便した線区と昼間でも座席を確保するのが難しい路線では土休日朝ラッシュ時ダイヤが導入されているように見える。




そしてそれぞれのダイヤがどのようにできているのか。平日朝ラッシュ時は大都市圏の場合、車両や設備をフル活用しダイヤを組む。特にターミナル駅に8時00分~40分ごろに到着する列車を増やすように設定されている。そのため、パターンダイヤを組んでいることは少ない。また極力混雑を均等化するために平日朝にしか運行しない種別を設定することもあり、阪神本線や西武池袋線などでは千鳥停車も行われている。

次に昼間。昼間はわかりやすさを重視しパターンダイヤを組んでいることが多く、毎時何本運行されているか種別ごとに分けてもわかりやすい。Wikipediaにも掲載されているのはそのためである(とはいえWikipediaは後述するように知ったかぶりなだけなので関心はしないのだが)。

そして平日夕ラッシュ。平日夕ラッシュもパターンダイヤを組んでおり、小田急小田原線やJR大和路線、JR阪和線などではダイヤ改正プレスリリースで公言をしているほどだ。また平日夕ラッシュ時は時間が長く、短くても18時台と19時台の2時間見ることができるうえ、場合によっては21時台まで同じダイヤを組んでいることもある。また、平日夕ラッシュ時特有の種別を設けることは平日朝ラッシュと比べて少なく、あったとしても途中から各駅停車になるパターンが多いので日中との比較がしやすい。パターンダイヤを組んでいるのだからこちらも昼間と同様に扱うべきである。そこが知ったかのWikipediaとダイヤ改正研究者との大きな違いである。

ちなみに土休日夕ラッシュ時は先述したように日中の減便をした線区が主なので、かつての日中のダイヤを踏襲していることが多い。土休日朝ラッシュ時は日中減便した線区では土休日夕ラッシュ時と同様、昼間座席の確保が難しい線区では間隔を少し狭めたり(京王井の頭線では8分ヘッド→7.5分ヘッドなど)需要の高い列車を増発している例(東京メトロ東西線は昼間と比べて各駅停車のみ増便)などが挙げられる。




2. 日中のダイヤと平日夕ラッシュ時のダイヤに関連はあるのか

とはいえそれぞれパターンダイヤを組んでいるとはいえ、地域輸送主体の日中のダイヤと中心都市から各方面へ散る輸送が主体の平日夕ラッシュ時のダイヤが、どこで相関するのか。実は日中のダイヤは平日夕ラッシュ時のダイヤを改造しているものが多いのだ。具体的にその類型(重複する線区もあり)を挙げると、

  • 第1型:平日夕ラッシュ時のダイヤから運転間隔、またはヘッドを広げて日中のダイヤとしたもの(京王井の頭線、JR大和路線、多くの地下鉄、新交通など)
  • 第2型:平日夕ラッシュ時のダイヤから列車を間引きして日中のダイヤとしたもの(JR京都・神戸線の新快速、東急東横線各駅停車、東武伊勢崎線、近鉄南大阪線急行など。阪神本線もこの亜系と考えられる)
  • 第3型:平日夕ラッシュ時のダイヤから種別の一部を格下げし、日中のダイヤとしたもの(近鉄大阪線、近鉄奈良線など)
  • 第4型:日中のみダイヤを大きく変えたために、平日夕ラッシュ時のダイヤから離れてしまったもの(小田急小田原線、相鉄、全線通過運転をする種別のある公営地下鉄など)

…以上のように大きく分けることができる。混合する例として西武新宿線やJR学研都市線は第1型と第2型の混合、東急田園都市線は第1型(各駅停車)と第3型(急行・準急)の混合と考えられる。この辺の大雑把さはあくまで個人サイトの1理論ということで見てもらいたい。

そして、日中の輸送力から平日夕ラッシュ時の輸送力を割ったものが、当サイトで導き出した「昼夕輸送力比」である。これは双方にパターンダイヤを組んでいるため割りやすく、特別な種別が少ないため優等列車と各駅停車に分けて算出することができる。どうやら大都市圏の全般的に見て昼夕輸送力比60~75%程度が妥当と思われる。これを上回る場合には昼間空席が7席のロングシートのうち2席以上空いているか、平日夕ラッシュ時の混雑が150%を超え、他の路線と比べて混雑していることを意味している。逆に下回っている場合には、昼間席が確保できないか、平日夕ラッシュ時の混雑率が他の路線と比べて低い(110%未満)ことが考えられる。つまり昼夕輸送力比が60~75%の範囲内であれば概ね昼間は座席が確保でき平日夕ラッシュ時は適度な混雑で済むが、この範囲を外れると「ダイヤ改悪」になりかねない1つの簡単な指標として使用することができる。

とはいえ例外もいくつかある。1つは工業地帯を走る鉄道の場合(鶴見線や名鉄築港線、和田岬線など)。通勤時間帯の需要のみが極めて高いため、昼夕輸送力比が下がってしまう。2つ目は空港連絡鉄道。平日夜に空港に向かう旅客は減るため、どうしても昼夕輸送力比が上がってしまう。3つ目はそもそも絶対輸送量が小さい場合。東京から概ね50km、100万都市から概ね30km離れると、編成構成最小単位では補正できなくなるほど昼夕ラッシュ比が下がることがある。これは、大都市から近いエリアでの乗客を分散させるためにあえて遠距離まで向かう列車を平日夕ラッシュ時に大幅に増やしている場合もある。なお、この場合は平日朝ラッシュ時と運行本数がほぼ同じことが多い。

最後に地域輸送性を考慮し平日夕ラッシュ時の運行本数のまま日中のダイヤとした場合。これは私鉄で行われていることが多く、昼間ガラガラなことは必須であり、1つ前の編成構成最小単位では補正できなくなっているという場合もある。このことから、昼間の運行本数から適切な平日夕ラッシュ時の輸送量を考えることは時に不適切となることが各駅停車を中心によくあるので、逆算する際には注意してほしい。




3. 昼夕輸送力比の計算式

昼夕輸送力比=平日夕ラッシュ時の輸送力(両)/(平日)日中の輸送力(両)×100(%)
適正値:60~78% 推奨:66~75%
※詳細と注意点は上述の第2章を参照


4. 結び

この「昼夕輸送力比」はあくまでこのサイトのみで用いられる理論ではあるが、ダイヤグラムを考える上では有用なツールとなりうる。もしダイヤ改正で昼間や平日夕ラッシュ時のダイヤにも気にしてみると、また1つダイヤ改正で見どころが増えるものと思われる。今後も客観性を上げるためにも今後もこの理論を基に考察をしていくこととする。

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