JR東日本は2018年9月4日、プレスリリースにて2021年3月より横須賀線・総武線快速にE235系を導入開始すると公表した( 横須賀・総武快速線用車両の新造について )。またJR東日本は2020年5月12日、プレスリリースにて2021年3月より房総各線に新型車両E131系の運転を開始すると公表した( 房総・鹿島エリアへの新型車両の投入について )。今回はこれらについて見ていく。
1. 総武線快速に新車投入へ!
今回の2021年3月実施予定のJR東日本千葉支社ダイヤ改正では、総武線快速・横須賀線に新型車両E235系を投入する。
ただ投入本数が11両編成の基本編成や4両編成の付属編成ともに現在運転しているE217系と同数となっている。JR東日本では省メンテナンス化による予備車削減や運用削減により従来より1本投入本数を減らすことが通例となっているが、総武快速線用E235系は置き換え対象のE217系と全く同じ本数を入れることとしたようだ。
また営業最高速度も120km/hであることを考えると、ダイヤ面では大きな変化はないものと思われる。
利用面での大きな違いはセミクロスシートの廃止だが、横須賀線で混雑率197%、総武線快速で混雑率181%になっていることを考えると、混雑緩和のためのロングシート化は妥当であろう。というか、横須賀線や総武線快速で連続乗車時間1時間以上になる旅客は東海道線や高崎線に比べたら少ないから、昼間も含めてセミクロスシートを設置する必要性自体が薄い。国鉄時代には東海道線は湘南電車として幹線運賃を徴収していたが、横須賀線や総武線快速は国電として扱われていたんだ、ロングシートだけになったって何らおかしくない。
ちなみに置き換えとなるE217系は廃車か海外譲渡のようだ。
2. 2両ワンマン新型車両E131系投入へ!
また今回の2021年3月実施予定のJR東日本千葉支社ダイヤ改正では、管内に2両編成ワンマン車両を導入する。
今回のダイヤ改正で導入する新型車両はE131系となる。そもそもJR東日本の東京都市圏に導入する普通電車は百の位が2として導入するはずなのだが、今回はなぜか新潟支社に導入したE129系に続くE131系とした。まあ、E237系と名乗るほど立派な東京都市圏の輸送を支える列車とは言えないんだろうけどさ、千葉の端の方を田舎として切り捨てた感はある。千葉市内で営業運転しないだけマシとしておこう。
前面から見るとGV-E400形のようにも見えなくもないが、運転台部分はE233系やE235系並みに広くとってある。ワンマン対応としているが、JR東日本のワンマン運転で一般的な運転台横の運賃箱の設置はなく、都市型ワンマン運転を行う見込みだ。全区間がSuica対応なので運賃収受する必要がないと判断したのだろう(というか、鹿島線にSuicaを導入したのは2020年3月14日なので、直前まで仕様に迷ったようだ。鹿島線用だけJR西日本和歌山線227系同様車内収受にしても良かったのに…)。
また209系の黄と青のラインカラーから黄と緑に変更した。菜の花感が増している。
なお動労千葉によれば当初は2020年3月ダイヤ改正で行うはずだったのだが、都合により1年遅らせることとしたようだ。
2.1. E131系の次の投入線区はいかに
E131系は運転線区がローカル線並みなのでセミクロスシートにしたのだろうが、4ドアで貫通扉まである。現在千葉支社管内に貫通扉を設置した普通電車はないので、本来なら必要ないはずだし、設置にも費用が掛かる。
そもそも房総各線普通列車に使用している209系は併結して最大10両編成で運用することは可能であるが、増解結を行うのは幕張車両センター及び千葉駅に限られておりそれ以外の場所では増解結を行っていない(E217系は成田、E233系は誉田で増解結を行っているのだが)。
そう考えると、2両固定編成は幕張または千葉から君津、上総一ノ宮、佐原まで回送する可能性が高い。また連結場所が限られることから、昼間に2両編成を中心に運転してラッシュ時に2両固定編成を2本つなげて4両として運転する可能性も低そうだ。
そう考えると、E131系同士の連結も可能性が低く、貫通扉の意味がない。そう考えると普通なら設置しない方が得策だ。
ではなぜ4ドアで貫通扉を設けたのか。おそらく他の車両の置き換えも考えているのではないだろうか。
千葉支社以外で投入するのであれば、オススメは青梅線青梅~奥多摩間。既に青梅で系統分割しているし、2018年度の輸送密度は4,020人/日しかなく昼間は毎時1両ちょっと、平日夕ラッシュ時は毎時2両、平日朝ラッシュ時でも毎時3両あれば運べてしまうので、朝夕に30分間隔で運転している青梅線青梅~奥多摩間では4両ツーマンで運転させる必要もない。2両固定編成のE131系にはもってこいだ。
東京アドベンチャーラインという名称を設けたのも分けたいからだろう。103系が乗り入れていたという理由で国鉄時代に奥多摩まで電車特定区間に入れられていたようだが、青梅線ごと電車特定区間から外されても批判されなかっただろうに。
またJR東日本では乗降確認カメラを用いたワンマン化を拡大しようとしており、2020年3月14日ダイヤ改正では東北本線黒磯~新白河間でE531系5両編成によるワンマン運転を開始している。そう考えると鶴見線(3両編成)や相模線(4両編成)へのE131系ワンマン対応車の対応も十分考えられる。
でもこれらの線区は固定編成の投入で十分。増解結に対応した貫通扉を設ける必要がない。
では増解結をし得る電車への使用を千葉支社管内で見ていくと、総武線快速用E217系は2021年3月ダイヤ改正より順次E235系に置き換えられることが決まっているので難しそうだ。
強いて言えば横須賀線逗子~久里浜間であれば、最も混んでいる逗子~東逗子間の隣駅間輸送密度が35,850人/日・往復であり、昼間毎時9両、平日鵜夕ラッシュ時毎時12両、平日朝ラッシュ時毎時18両あれば運べる。つまりE131系の4両ワンマン車を入れれば昼間毎時3本、平日夕ラッシュ時毎時4本、平日朝ラッシュ時毎時5本の運転ができるようになり、その分朝に主に11両で運転しているE217系改めE235系を置き換えることができ、その分武蔵小杉対策のための横須賀線増発や千葉から房総各線への直通運転拡大に充てることもやろうと思えばできる。ただそうなったとしても少なくとも総武線快速東京~千葉間でのE131系への置き換えなんてありえない。
そう考えると貫通扉も使用し得る置き換えは一択。房総地区用の209系の将来的な置き換えだ。
運転台がE129系のような狭さではなくE233系やE235系並みに広くしたのは、千葉や蘇我に可動式ホーム柵を設置する際に乗務用扉の位置を合わせるためだろう。また2本の連結であれば総武快速の1号車と増4号車の間に連結部分を持って来れば、通常のドアでも十分設置できてしまう。
つまり近郊形のはずのE131系が4ドアなのは、近い将来209系4両編成や6両編成を置き換える際に千葉や蘇我に近い将来設置するであろう可動式ホーム柵に対応するため。
でも、千葉駅に乗り入れなければ久留里線キハE130形同様3ドアで十分なわけで、今のところ千葉駅発着列車が2両運転する必要もない。3ドアにしても良かったと思うのは気のせいだろうか。
ちなみにこれらの置き換えは10年以上かかってもおかしくない。もちろん線区ごとで見れば数年で終わると思うのだが、キハ130系が2007年に水郡線に入ってから久留里線に入るまで5年、八戸線に入るまで10年かかっている。E131系は最新のSiC素子を入れているんだ、10年経ってもマイナーチェンジだけして投入し続けることは可能だろう。
2.2. E131系の投入で系統分割実施へ
今回の2021年3月JR東日本千葉支社ダイヤ改正では、ワンマン運転を拡大する。
千葉支社管内の自社車両によるワンマン運転は2013年3月16日のキハE130形投入に伴い久留里線で開始したのが始まりだが、8年越しにワンマン運転区間を拡大することとなった。
ワンマン運転実施予定区間は、内房線木更津~君津~館山~安房鴨川間、外房線上総一ノ宮~安房鴨川間、鹿島線佐原~鹿島神宮間の3線区となっている。
ただ、ワンマン運転を行うにはそれなりの機器を搭載する必要があるほか、専用の予備車を新たに用意しなくてはならない。これまで最短でも電車は4両固定編成までしか導入したことのないJR東日本千葉支社管内で新たに2両固定編成を投入するということは、昼間のみならず平日朝夕ラッシュ時も2両編成で賄える区間があるということにほかならない。
そもそも2両固定編成毎時1本の運転であれば昼間は隣駅間輸送密度8,000人/日・往復程度まで運べるが、需要の多い平日朝夕ラッシュ時はそうはいかない。そう考えると2両固定編成毎時1本の運転で平日夕ラッシュ時は隣駅間輸送密度が5,000人/日・程度まで、平日朝ラッシュ時は3,000人/日・往復程度まで運べるとみて算出していく。
ただある一定の区間の輸送密度(隣駅間ではない)はあるが、大都市交通センサスのような隣駅間輸送密度の記載したデータはない。そこで乗車人員からある程度推測するしかない。そこでまず、各線区ごとにどの時間帯にE131系を必要としているのか見ていく。
朝夕含め終日に渡り2両固定編成毎時1本程度で足りる区間
- 内房線館山~安房鴨川間
- 外房線勝浦~安房鴨川間
- 鹿島線佐原~鹿島神宮間
昼間と夕方は2両固定編成毎時1本で足りる区間(朝は4両編成の乗り入れが必要)
- 内房線大貫~館山間
- 外房線大原~勝浦間
昼間に限り2両固定編成毎時1本で足りる区間(朝は6両編成、夕方は4両編成の乗り入れが必要)
- 内房線君津~大貫(~上総湊)間
- 外房線上総一ノ宮~大原間
これから、もし昼間に該当区間の全ての列車をワンマン運転する場合、内房線君津~館山間で3運用、内房線館山~安房鴨川間で2運用、外房線上総一ノ宮~安房鴨川間で3運用、鹿島線1運用の合計9運用が必要となる。ここに予備車を足した場合11本の投入が必要そうであり、今回投入する2両編成12本とおおむね一致する。
問題は平日朝夕ラッシュ時、いや普通列車に関してはほぼ全日同じダイヤだから、朝夕ラッシュ時と言った方がいいのだろうか。
鹿島線は2両固定編成をひっきりなしに往復さえせいぜい考えるとすれば1日1往復のE217系4両編成による東京乗り入れをどうするかくらいしかないので、内房線と外房線について考えていこう。
内房線は君津~大貫間は平日夕方にどうあがいても4両編成の乗り入れがなければ運びきれない。もっとも大貫または上総湊で系統分割してもいいのかもしれないが、また平日朝に館山6時台発の列車が3本もあるとはいえ4両編成以上の運転が必要でありその入庫も必要であることを考えると、わざわざ系統分割するくらいなら折返しに際しそれぞれの運用数をあえて増やすよりも直通させてしまって混雑分散を図った方がいい。つまり少なくとも朝方の内房線木更津~館山間はE131系の運転は行わず、引き続き209系を運用するのではないだろうか。
一方外房線は安房鴨川発着の普通列車は終日2両固定編成としてもかまわないので、朝夕は勝浦で系統分割して対面接続させればよい。
もっとも房総各線普通列車でも土休日ダイヤを導入すれば、土休日に限り内房線上総湊~館山間や外房線大原~勝浦間は2両固定編成毎時1本でも十分輸送可能となる見込みだ。
ちなみに成田線佐原~銚子間は2018年度の輸送密度が3,143人/日のため、昼間は毎時1両、平日夕ラッシュ時でも毎時2両あれば運べてしまう。どうせ佐原発着の鹿島線に新型車両E131系を入れるのなら、成田線佐原~銚子間にも入れればいいのに(ちなみに成田~佐原間は昼間毎時2両では厳しい)。
これにより昼間の209系長距離運用が千葉~銚子間運転くらいしか残らなくなるわけだが、千葉~君津・上総一ノ宮間の運転くらいなら所要時間50分程度だから車内トイレを設置する必要性が薄いし、E233系京葉快速には車内トイレはない(そもそもグリーン車のない4ドア車両に車内トイレがあること自体異様な光景なのだが)。ちなみに久留里線や小湊鐵道も車内トイレを設置していない。209系の運用はほぼ全てが内房・外房線用と総武・成田線用で運用が分かれているんだ、短距離走しかしなくなる内房・外房線用から車内トイレを撤去しても良いように思う。209系から維持費がかかる車内トイレを撤去して混雑緩和を図らないものだろうか。
というか、もし先述したように房総地区普通電車を209系からE131系に置き換えるのであれば、連結していても貫通扉を通して2編成で行き来できることから、どちらか片方に車内トイレがあれば十分だ。総武・成田線用も半数程度のみに車内トイレを設置すれば済むと思うのは気のせいだろうか。
なお、このE131系の投入により209系が8~10本くらい余る。もっとも平日朝ラッシュ時の内房線や外房線などでの6両から8両への増強などは行う可能性はある。ただ209系は総武線快速東京まで試運転をしているが、最高速度は110km/hまでしか出せないため総武快速への転用は考えにくい。というか209系を使ってまで総武線快速を増発させたいのなら、先述したように横須賀線を逗子で系統分割して逗子~久里浜間をE131系4両編成によるワンマン運転に置き換えた方がよっぽど効率がいい。そう考えると多くの房総地区209系は廃車か海外譲渡だろう。
まあ209系以外の運用に変化が出るとしたら、余った運用などでE217系やE233系を置き換えること。特に誉田で増解結するE233系京葉線通勤快速(土休日は京葉快速)は、東京~蘇我間と千葉~成東・勝浦に系統分割してしまえば、京葉線用の車両を1本削減することができる。これで中途半端に1本だけ残った京葉線用209系を置き換えることができるほか、誉田での増解結が消滅し要員削減を行うことができる。
つい10年前までは動労千葉が強かったのでこんなことはできなかったが、一気に弱体化した感がある。人手不足なのか新卒採用抑制による兵糧攻めなのかわからないが、いずれにしても人の力を最小限にしていくようだ。
3. 結び
今回の2021年3月実施予定のJR東日本千葉支社ダイヤ改正では、総武線快速へのE235系の投入や房総各線へのE131系の投入に伴い、大規模なダイヤ改正を行う見通しだ。
今後続々車両更新が行われるJR東日本千葉支社管内でどのようなダイヤ改正を実施するのか、楽しみにしたい。
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