JR西日本は2020年3月25日、プレスリリースにて2023年春に大阪駅地下ホームの供用を開始すると公表した( 「うめきた(大阪)地下駅」と「大阪駅」の改札内連絡通路の整備並びに「うめきた(大阪)地下駅」の駅名について )。今回はこれについて見ていく。
1. 大阪駅地下ホーム増設で停車列車増加へ
今回の2023年3月実施予定のJR西日本ダイヤ改正では、大きな動きが3つある。それは、
- 北陸新幹線金沢~敦賀間開業及び北陸本線金沢~敦賀間の経営分離(開業延期により2024年3月に順延)
- 奈良線京都~城陽間の完全複線化
- 東海道本線大阪駅うめきた地下ホームの設置
である。こんなに同時に変更点がある2023年3月JR西日本ダイヤ改正は大改正になることは間違いないだろう。そこで今回はこのうち東海道本線大阪駅地下ホームの設置関連のダイヤ改正について予測していく。
大阪駅地下ホームは東海道支線を移設する形で現在の大阪駅の北西100m離れたところに2面4線で造られることとなり、既存の地上ホームとは地下連絡通路で約5分程度で結ばれる。また地下ホーム開業に合わせて新改札口を設置する予定だ。
また2031年に開業予定のなにわ筋線が乗り入れる予定となっている。
なおJR東西線北新地のように別駅にしなかったのは、大阪駅地上ホームとは阪急大阪梅田程度には離れているが北新地ほどは離れていないこと、既に東海道本線にも大阪環状線にも大阪駅があり、かえって新駅として経由数を増やすと管理上面倒になることなどがある。
では大阪駅地下ホームにどのような列車が乗り入れるのか、見ていこう。
2. おおさか東線の大阪乗り入れはできるが、中止か?
まずは、現在新大阪発着で運転しているおおさか東線の大阪駅地下ホーム乗り入れはあるのだろうか。
おおさか東線が大阪駅地下ホームの乗り入れるのであれば、おおさか東線の新大阪発着列車はそのまま大阪駅地下ホーム発着として運転するのだろう。
大阪~新大阪間は概ね4分かかる。終日に渡る運用を考えると、運転本数を変えなくても普通電車用6両編成を1運用増やす必要がありそうだ。
同じダイヤ改正で奈良線京都~城陽間の複線化が完了するはずなので、列車交換による待ち合わせ解消による運用本数減少により捻出する可能性もあるが、そもそも部分複線化しているので完全単線時代と比べれば待ち合わせ時間は減っているし、1運用浮かせられるほどの効果があると言われれば薄い。というか、その分増発に充てる可能性はある。
またJR西日本では2020年~2023年度にかけてJR京都線・JR神戸線用に225系を投入し、221系を大和路線・奈良線・おおさか東線に転属し201系を置き換えるとしている。現在網干総合車両所所属の221系は138両あるが、奈良電車区所属の201系は132両である。つまり、221系の方が6両多い。単純計算で行けば、おおさか東線普通電車1運用分の増発は可能だ。
なお現在おおさか東線普通電車で使用している201系は2024年3月ダイヤ改正までに全て廃車にするとしている。大阪駅地下ホームは283系(旧「オーシャンアロー」型車両)などの非貫通扉車両も乗り入れるため、貫通扉のない201系の乗り入れも可能ではあるだろうが、果たしてすぐに221系に統一されあわよくば直通快速も置き換える可能性がる中、わざわざ201系を大阪駅地下ホームに乗り入れさせるのだろうか。
また、2015年頃にはおおさか東線の大阪駅乗り入れ計画の記載が公式サイトにあり、実際に駅ナンバリングもJR-F01を付与できるようにはしてある。しかし2019年3月16日のおおさか東線新大阪延伸後、今回のプレスリリースも含め全ての公式サイトからおおさか東線の大阪駅乗り入れに関する記述がことごとく削除されている。
予定されている計画が労組や新聞など外部情報から噂されていて後から公式プレスリリースが出る場合は実現可能性が高そうだとは思うが、かねてより公表していた公式サイト情報をわざわざ消したというのはかなり実現可能性が下がったと言っていいのではないだろうか。
実際のところおおさか東線を大阪駅まで延伸したところで、城北公園通へは大阪シティバスしか直通がないところから電車での直通アクセスが可能になるので、ある程度需要は見込めそうではあるが、梅田~淡路間の阪急利用を奪うのは運転本数の圧倒的な少なさからして難しいし、放出以南の各駅からだったら放出で学研都市線に対面乗り換えすれば速く北新地にアクセスできる。そう考えると、おおさか東線の大阪駅地下ホーム乗り入れの可能性が低いと言われても仕方ない。
あとは強引に話をつなげようとすれば、本来のJR西日本の見通しでは南海はなにわ筋線の中之島までしか乗り入れさせない予定だったが、大阪駅地下ホームにまで運転させることになったことで2面4線ある折返し機能をフルに使ってしまい、おおさか東線の列車を折り返させる余力がなくなってしまうからというのも考えられなくはない。というか、大阪駅地下ホームに南海を乗り入れさせておおさか東線に対面乗り換えできるようになり新大阪までの利便性が南海経由の方が上がってしまったら、阪和線関空快速で競合しているJR西日本が放っておくはずがないだろう。
ところで、おおさか東線普通電車は2024年3月ダイヤ改正までに4ドアオールロングシートの201系から3ドアオール転換クロスシートの221系に置き換わる見込みだが、直通快速は4ドアオールロングシートの207系ないし321系のままなのだろうか。ドア数が異なるようになってしまうし、第一普通列車がクロスシートで快速電車がロングシートなんてふつうおかしい(これに関しては阪和線の225系6両編成と合わせて3ドアロングシートにした方がいいのではないかとは思うがさておき)。そう考えると、2023年3月ダイヤ改正頃までにおおさか東線直通快速も221系に置き換わっていてほしいとは思うが、編成数が足りないことから無理なのだろう。
3. くろしお・はるかの大阪停車開始へ!
また2023年3月実施予定のJR西日本ダイヤ改正では、すでに大阪駅周辺の東海道支線を運転している紀勢本線特急「くろしお」及び阪和線特急「はるか」の大阪停車は確実だ。
これにより南海が梅田に進出する前に和歌山方面への大阪直通列車の速達化につなげることができる。
また現在大阪市内~田辺・白浜へは明光バスが1日10往復のバスを運行しているが、大阪市内の主要発着地が梅田となんばであることを考えると、紀勢本線特急「くろしお」の大阪停車開始により減便する可能性が高い。もっともなにわ筋線ができればさらに需要は奪われるのだろうが。
なお東海道支線を移設するため経路が50m~100mほどとくなるのと、大阪駅停車時間確保のため、新大阪から天王寺以南の所要時間が1~2分程度伸びる見込みだ。ただ、新幹線連絡するような需要はまず減るとは考えにくいし、大阪駅から考えればホームが多少離れているとは言え新大阪や天王寺に赴かなくても特急「くろしお」「はるか」に乗れるようになるという圧倒的な強みがある。
ただ1つ怖いのが、特急「くろしお」「はるか」の大阪停車化により阪和線の一部区間で減便する可能性があること。昼間の減便はないだろうが、朝夕は特急「くろしお」や「はるか」が日根野のみならず和泉府中や和泉砂川に停車する。このしこれらの駅の利用者が大阪まで直通する列車を利用したいがために紀州路快速や関空快速、朝の直通快速に乗らざるを得なかったものが、大阪に特急が停車することにより全区間特急列車で着席して行けるようになったら、ある程度旅客が流れるのは目に見えているし、JR西日本としても特急料金を徴収できるようになる特急に移動してもらった方が増収につながる。
かといって大阪環状線直通の直通快速や紀州路快速を減らすわけにはいかないので、料金不要列車の輸送力調整のために天王寺始発終着の快速や日根野以南で普通電車を減便する可能性があるのではないだろうか。
4. このほかにどのような列車が停車可能なのか
このほかに大阪駅地下ホーム発着にはどのような列車が乗り入れられるだろうか。
周辺の設備を考えると、新大阪方面は複線であるが、西九条方面は単線となっている。現状でも特急「くろしお」最大毎時2本、特急「はるか」最大毎時2本の運行がある中、これ以上の西九条方面の増発ははっきり言って不可能と言っても過言ではない。そう考えると、このほかに大阪駅地下ホーム発着の列車が増えるとすれば、大阪発着の京都方面に向かう列車しかない。
そこでまず挙がるのが、北陸本線特急「サンダーバード」。2023年3月ダイヤ改正で北陸新幹線敦賀延伸により運転区間を大阪~敦賀間に短縮するほか、列車名称も「リレーつるぎ」に変わる可能性も否定できないが、とりあえず特急「サンダーバード」としておこう。
ただ、特急「サンダーバード」は通常時は9両での運転ながらも12両運転が恒常化している。今回設置する大阪駅地下ホームは特急「はるか」が停まれるように9両編成には対応するはずなのだが、開削工法で造っているとはいえ12両対応にするとコストがかさむ。
しかも特急「サンダーバード」が北陸新幹線延伸に伴い需要が見込めるとして、車両の組み換えを行い多客期に寝台特急「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」同様最大14両で運転する可能性もある。しかも停車駅が多くの列車で大阪、新大阪、京都、敦賀の4駅に絞られること、同区間を走行していた寝台特急「日本海」が機関車・電源車含め全盛期には14両運転を行っていたことを考えると、十分に可能だ。
しかも北陸新幹線は開業時期こそ決まっていないものの新大阪延伸まで内定しており、ホームを延ばして特急「サンダーバード」対応にしたとしてもじきに使われなくなってしまうことがわかっている。しかも改良工事が終わっている大阪駅で特急「サンダーバード」の発着する11番線を潰す理由もない。
そう考えると、特急「サンダーバード」は引き続き大阪駅地上ホーム発着になるのだろう。
このほかにJR京都線特急「びわこエクスプレス」や高山本線特急「ひだ」などもあるが、ともに気動車で運転する列車があり折返しのために地下ホームに長時間停車するわけにはいかない。というか、特急「はるか」の大阪停車により「はるか」の米原延長運転を拡大すれば特急「びわこエクスプレス」を廃止にできるので、そもそも存続自体が怪しくなる。
また既に多客期などに臨時列車として運転している新大阪~ユニバーサルシティ間の料金不要直通列車の大阪駅地下ホーム停車も考えられるが、大阪から新大阪に行くにはJR京都線に乗ればいいわけだし、大阪からユニバーサルシティに行くにはゆめ咲線直通列車に乗ればいいわけでメリットはないし、かえってのりばが増え複雑化してしまう。そう考えると、特急がとまるのに臨時料金不要列車が通過するのは不自然な話ではあるが、新大阪~ユニバーサルシティ間の料金不要直通列車は大阪駅地下ホームを通過とした方が良いのだろう。
5. 結び
今回の2023年3月実施予定のJR西日本ダイヤ改正では、大阪駅地下ホーム設置に伴い大阪駅に停車する列車が増える。
今後JR西日本でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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