沖縄県企画部交通政策課は2021年10月4日、プレスリリースにて沖縄鉄軌道のプロモーションビデオを作成したと公表した( 沖縄鉄軌道導入に向けたプロモーションビデオ(PV)の掲載について )。今回はこれから、沖縄鉄軌道の開業時のダイヤについて予測していく。
1. 無謀な路線設計で開業は夢のまた夢なのか
沖縄県では本島内に沖縄鉄軌道を建設する計画がある。
那覇市~浦添市~宜野湾市~沖縄市~うるま市~名護市間を結ぶ約60~67kmの路線としており、那覇市~名護市間を58分~60分程度で結ぶとしている。
ただ費用便益比はどの手法をとっても0.8に届かず、建設の目安とされる1.0には及んでいない。このことから現時点でも計画に留まり、土地収用も未だに行っていない。
そこでそもそも沖縄鉄軌道を那覇市~名護市間で開業させるのは妥当なのかどうか、見ていく。
2. 地下区間が多く工事費がかさんでいる
まずそもそもの建設計画から。
先述したように沖縄鉄軌道は那覇市~名護市間で計画しているが、那覇市~うるま市間は原則地下トンネル、うるま市~名護市間は山岳トンネルまたは高架となっている。
もっとも鉄軌道を新規開業するにあたり原則踏切を新設してはいけないため、地上に鉄道を開業することが難しいのは事実である。しかしなぜ高架ではなく建設費の高い地価の区間が多いのだろう。これでは沖縄県営地下鉄ではないか。
もっとも中量輸送システムであるミニ地下鉄や新交通システムAGTであればトンネル断面積が小さくなるので低コストで建設できる。ただそれ以前に高架区間を増やした方が建設費の圧縮につながるとは思うが。
3. 沖縄鉄軌道の那覇空港乗り入れは必要なのだろうか
また沖縄鉄軌道は、計画によれば那覇空港を始発終着とする計画がある。
しかし、既に那覇空港には沖縄都市モノレールゆいレールが乗り入れているし、空港需要はゆいレールの増発・増結だけで十分運びきれるし、地域輸送と比べたら利用は少ない。
そう考えると県庁前付近で乗り換えてゆいレールで那覇空港に行くのが両社とも運賃が取れるし無駄な建設を行わずに済む。そう考えると沖縄鉄軌道の那覇空港延伸は必要ないのではないだろうか。
4. 沖縄鉄軌道の名護乗り入れは必要なのだろうか
また沖縄鉄軌道は、先述したように名護市内まで営業する計画がある。
これは名護市が本島北部の主要都市であること、美ら海水族館があることなどが挙げられるが、名護市の人口は7万人程度しかおらず、都市圏で考えても10万人いない。
しかもうるま市~名護市間は約20km以上過疎地域を延々と通過し続けるほか、高速道路まであることを考えると環境がJR西日本芸備線における三次に似ており、輸送密度も1,500人/日・往復程度しか見込めない。普通列車で昼間毎時1両で4,000人/日・往復、一般路線バス毎時1台で2,000人/日・往復程度運べることから、路線バスでも昼間毎時1本、列車の場合2時間五1本でも十分運びきれてしまう。そんな名護に新設の鉄軌道が必要とは到底思えない。
また、うるま市~名護市間は約26km離れていることから、当初の計画の沖縄鉄軌道60~67kmのうち約3分の1を占めている。もし沖縄鉄軌道を那覇市~うるま市間のみの整備にすれば費用便益比が1.0を超える可能性が大きく高まり、むしろ開業に一歩近づける可能性が高いのだ。
さらに1945年まで営業していた沖縄県営鉄道も嘉手納までしか路線がなかったことを考えると、名護への鉄軌道は明らかに過剰である。そう考えると沖縄鉄軌道は那覇市~うるま市間のみで整備すべきではないだろうか?
5. 沖縄鉄軌道の車両はどうなるのか
では沖縄鉄軌道の車両はどうなるのだろうか。
現状では京阪京津線800形似の車両か100km/h超対応の新交通システムAGT車両などの中量輸送システムとしている。プロモーションビデオでは国鉄201系似の4ドア車4両編成となっているが、普通鉄道で開業する可能性は極めて低い。
ただ、車両性能に100km/h以上を求めているのも那覇市~名護市間を1時間以内で結ばせようという強引な策によるものであり、需要の見込めない名護市への鉄軌道乗り入れをあきらめればもっと安価な車両を投入できるはずなのだが。
なお需要予測は1日32,000人~43,000人を見込んでいる。もし全員が同一区間に乗ったとしても昼間毎時1両で4,000人/日・往復運べることから、毎時11両あれば足りてしまう。そう考えると普通鉄道の場合4両編成毎時3本あれば足りてしまうし、リニア地下鉄などの中量輸送システムであっても4両編成毎時6本あれば十分運べる。
また平日朝ラッシュ時は中量輸送システムで4両編成毎時12本、平日夕ラッシュ時も中量輸送システムで4両編成毎時8本あれば足りるだろう。
6. 結び
今回の沖縄鉄軌道開業に伴うダイヤ改正では、需要はあまり見込めず現計画のままでは開業にたどり着けない可能性が高い。
今後沖縄県でどのように鉄道を走らせるのか、見守ってゆきたい。
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