大和路関空快速と特急くろしお・はるか、なんば・梅田乗り入れか JRなにわ筋線ダイヤ改正予測(2031年予定)

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JR西日本は5月23日、なにわ筋線を大阪府や大阪市、南海電鉄、阪急電鉄とともに整備する方針であるとすると公表した( https://www.westjr.co.jp/press/article/2017/05/page_10496.html )。前回の南海のダイヤ改正予測時にルートと南海のダイヤ改正予測を立てたので、今回は運賃関連およびJRなにわ筋線とその周辺のJR線のダイヤ改正予測について見ていく。

なにわ筋線のルートと南海の梅田延伸を伴うダイヤ改正予測についてはこちら!

1. 加算運賃は設定できても運賃計算キロか

今回の2031年なにわ筋線開業では、JR線として新大阪~天王寺間の最短経路が大阪・天満経由から北梅田・今宮経由に変更となりそうだ。

新線開業の場合建設費回収のため加算運賃を設定するのが恒例となっているが、関西空港線など末端部では容易に設定できるが、なにわ筋線の場合両側に接続線がありかつ他に迂回路があるため、加算運賃の設定が難しいのだ。

もし設定しようとするなれば中間改札が必要となるが、南側はJR難波や新今宮、天王寺など直通列車が多く大阪環状線とも対面乗り換えとなるので設置は不可能で、北側も新大阪に設けようとするとおおさか東線の北梅田乗り入れはどうなるとか、特急「くろしお」「はるか」を京都~天王寺間を通しで利用した際にICOCAと特急券を組み合わせて利用した際に運賃を最安値で計算してしまい正しい経路の運賃が取れないという問題が生じる。そこでさらに京都駅30番線(特急「はるか」用ホーム)にも中間改札を設ける話にもなってしまうが、今度は特急「はるか」が琵琶湖線米原始発として運行されたら、高槻に停車する特急「はるか」だったらということになるとキリがなくなる。前例として1997年3月22日に開業したJR東西線は片町(大阪城北詰)~京橋間を大阪環状線内から外すことには成功したが両端が他線と接続されており塚本(JR神戸線)・大阪・天満(大阪環状線)経由の迂回路があることから、加算運賃を設定できなかった。利用実態としては大阪環状線外の電車特定区間への利用が主であったので開業前と比べても運賃は変わらなかった(ちなみに尼崎~京橋間はJR東西線よりもJR神戸線・大阪環状線経由の方が短いため、安くなることはなかった)。

そこで今回もなにわ筋線が最短ルートになるかどうか試しに実キロを試算するとJR難波基準で西本町が1.7km、中之島が3.0km、北梅田が4.5kmとなる。北梅田と大阪駅は非常に近接しており、同一駅扱いするとなれば大阪~天王寺間は大阪環状線廻りの10.7kmからなにわ筋線・大和路線経由の9.0km程度に短縮されることになる。もしこれがそのまま営業キロに適用されれば2017年現在の運賃で大阪~天王寺間はJR線で190円から180円に値下がりすることになる。

大阪駅から阪和線・大和路線への利用も多いこと、特に東海道新幹線・山陽新幹線から特急「くろしお」利用では軒並み1.7km程度縮み、運賃のみならず特急料金も値下がりする区間があり(新大阪~簑島間が通常期指定席で1920円から1490円に値下がり)、既に阪和連絡線経由での大阪環状線直通によりキタ乗り入れを果たしているJR西日本からすれば梅田への特急列車以上に減収減益が予想されるのだ。それを防ぐには、東武小泉線のように迂回路と営業キロが同じになるようにJRなにわ筋線に運賃計算キロを設け、本来4.5km程度の北梅田~JR難波間に6.2kmの運賃計算キロを導入することにより、少なくとも現状維持を狙える。ただ、欠点としては運賃計算キロの設定が地方交通線を上回っていること。地方交通線の加算賃率の設定自体当時の日本国有鉄道で大きな問題となったため利用者への理解が必要になるが、これ以外にJRなにわ筋線に加算運賃を設ける術はないことだろう。



2. なにわ筋線は阪和線・大和路線双方から乗り入れか

前回南海のダイヤ改正予測について触れた際に南海なにわ筋線は南海本線の梅田延伸だと述べたが、JRではどうなるのか。JRなにわ筋線は北梅田とJRなんばを結ぶ路線となっており、北梅田は東海道貨物線(開業前におおさか東線の駅として開業している可能性有り)、JR難波は関西本線(大和路線)の駅である。東海道本線の支線とも取れなくもないが、関西本線(大和路線)の延長と取った方が旅客的にも自然なのだろう。

とはいえ南海が梅田から関西空港まで一本で結ぼうとしていることは明らかで、現状JR西日本も大阪環状線経由で阪和線方面特急「くろしお」「はるか」を阪南方面から新大阪・京都へ運行していることからも阪和線列車がJRなにわ筋線に乗り入れることは間違いない。現在大和路線しか乗り入れないJR難波になにわ筋線開業時に阪和線列車が乗り入れることは間違いなさそうだ。

そこで、今回は大阪市内の旅客流動を見ながらJRなにわ筋線にどのような列車が乗り入れるのか、阪和線と大和路線に分けて見ていく。




2.1. 阪和線は特急と関空快速/紀州路快速がメインか

ダイヤ改正予測を行うためにはまず2017年現在阪和線の昼間及び平日夕ラッシュ時を走る列車に運行されている列車から見ていく。阪和線を運行する列車は主に以下の通り(特記無ければ双方共通・天王寺発着)。

  • 特急「くろしお」毎時1本(大阪環状線直通)
  • 特急「はるか」毎時2本(大阪環状線直通)
  • 関空快速/紀州路快速毎時4本(大阪環状線直通)
  • 区間快速毎時4本(平日夕ラッシュ時は快速に格上げ・平日夕ラッシュ時はうち毎時2本が和歌山発着)
  • 普通毎時4本(平日夕ラッシュ時は毎時5本)

以上となっており、昼間は毎時15本、平日夕ラッシュ時は毎時16本の運行となっている。阪和線は天王寺発着が多いことを考えればなにわ筋線開業後も線路容量の関係で直通が抑制されることは明らかであろう。そのため阪和線の場合天王寺発着列車である普通と区間快速(平日夕ラッシュ時は快速も)はなにわ筋線開業後も天王寺発着のままとなるのであろう。特に特急「くろしお」「はるか」は新大阪~西九条間の東海道貨物線で単線となり、昼間でさえ毎時3本捌いていることや周辺のJR京都線や大阪環状線ののダイヤ過密なこともありボトルネックとなっていることや、2023年3月に北梅田駅の開業と東海道貨物線の地下化を予定しているものの配線が複雑なことから遅延がなかなか回復できない原因となっており、USJ対策で一部西九条に停車する列車もあるものの原則特急は天王寺~新大阪間ノンストップであるから複線のなにわ筋線に乗り入れない理由がない。特急の梅田停車による需要拡大を見込んでいることも考えると、自然に特急「くろしお」「はるか」と関空快速/紀州路快速がなにわ筋線直通となるのではないだろうか。

特急「くろしお」に関しては現状通り原則新大阪発着、特急「はるか」に関しては原則京都発着になるものと思われるが、関空快速/紀州路快速は南海空港急行同様なにわ筋線内は各駅に停まる可能性が高く、なおかつ要望は出ているものの南海列車は北梅田までしか乗り入れない予定に2017年現在ではなっていることから、関空快速/紀州路快速に関しては東海道新幹線・山陽新幹線が接続し、将来的にはリニア中央新幹線や北陸新幹線も乗り入れる予定の新大阪まで乗り入れるのではなかろうか。

その他、東海道貨物線直通の阪和線列車として和歌山4時54分発B快速新大阪行き、新大阪22時44分発快速御坊行きもあるが、この2本の列車もなにわ筋線に乗り入れるのではないだろうか。そうなると大阪環状線各駅から新大阪アクセスが低下するようにも見えるが現状でも1往復しかないこと、大阪環状線・JR京都線共に運行本数に恵まれていることから、列車の補完はしないのであろう。




2.2. 大和路線もなにわ筋線に乗り入れか

次に大和路線についても2017年現在の運行本数から見ていく。(特記無ければ双方共通・JR難波発着)

  • 大和路快速毎時4本(大阪環状線直通・平日夕ラッシュ時は区間快速に格下げ)
  • 快速毎時2本(昼間は高田・平日夕ラッシュ時は奈良発着)
  • 直通快速毎時2本(平日夕ラッシュ時のみ・おおさか東線直通)
  • 普通毎時4本(平日夕ラッシュ時は毎時6本)

以上となっており、天王寺基準で見れば昼間は毎時10本、平日夕ラッシュ時は毎時12本の運行となっている。大阪環状線と構造上直通できるにもかかわらず現状でもJR難波発着列車の方が多いこと、また南海本線や阪和線の列車が多数直通することを考えればなにわ筋線開業後も線路容量の関係で直通が抑制されることは明らかであろう。

しかし、南海なにわ筋線と異なりJRなにわ筋線は梅田から難波のみならず天王寺も一直線に結ぶ。難波は少し外れた場所とはいえ加算運賃を現状より高値で設定しない限りは多くの利用が予想され、関空快速/紀州路快速の毎時4本では捌けない可能性が高い。そこで関空快速/紀州路快速の混雑を緩和してより多くの長距離利用者に利用してもらうために終日さらに運行本数を多くする可能性が高い。そうなると、遠距離の運行かつ難波に乗り入れる近鉄との競合を考えて大和路快速もなにわ筋線に乗り入れて難波と梅田を両取りしに行くのではないだろうか。

残りのJR難波発着の快速・普通電車については現状通りJR難波発着のまま置かれるものと思われる。JR難波駅については既に2面4線で整備されており、なにわ筋線が開業しても折り返すにはもってこいである。直通快速などおおさか東線直通列車については2019年3月のおおさか東線新大阪開業および2023年3月の北梅田延伸もあることからそちらの方で大きなダイヤ改正が見込まれるが、大和路線から新大阪へ向かうには2031年のなにわ筋線開業後の時点であってもなにわ筋線経由より久宝寺からおおさか東線経由の方が距離が短く、JR宝塚線の昼間に大阪~宝塚間を毎時2本運行する225系ないし223系4両編成快速がもし新大阪経由でおおさか東線久宝寺まで乗り入れして快速運転を行えばより所要時間が短縮される。つまり大和路快速は北梅田までは乗り入れる必要はあるが、新大阪に乗り入れる必要はないのだ。となれば、大和路快速のなにわ筋線乗り入れは北梅田までとなるのであろう。




2.3. 停車駅はどうなる

阪和線と大和路線の直通列車のダイヤ改正予測の見当がついたところで停車駅についても考えていく。関空快速/紀州路快速・大和路快速については南海空港急行同様なにわ筋線内は各駅に停車し細かな需要を集めるものと思われるが、特急「くろしお」「はるか」については2023年3月の北梅田開業で北梅田に停車するのはほぼ必須で、さらにはミナミの繁華街・JR難波に停車する可能性も高い。単線区間がなくなり距離も短くなるのに特急「くろしお」「はるか」がなにわ筋線開業により僅か2分しか短縮しないのは停車駅が増えるためではなかろうか。

2.4. おおさか東線のなにわ筋線乗り入れはあり得るのか

2019年3月に新大阪延伸を果たし、2023年3月に北梅田乗り入れを果たす予定のおおさか東線であるが、2031年のなにわ筋線開業により直通するのであろうか。前回の南海なにわ筋線のダイヤ改正予測ですでに毎時8本、今回の阪和線と大和路線直通で毎時11本、合計毎時19本も運行しているのである。この中におおさか東線の普通電車を入れる余地はないものと思われ、なにわ筋線開業前同様北梅田発着になるのであろう。




3. なにわ筋線開業による他JR線への影響は

前回記事ではなにわ筋線開業に伴う他の私鉄路線(京阪中之島線や阪神なんば線など)や地下鉄(御堂筋線や中央線など)について見てきたが、今回はJR線について見ていこうと思うが、JR線だけで見ていくと2019年3月のおおさか東線新大阪開業、2023年3月の北梅田駅設置と東海道貨物線地下化など大幅なダイヤ改正が予想されており、そのあとに実施される2031年のなにわ筋線開業の際には周辺の鉄道ダイヤ環境が大幅に変わってしまっている可能性があるのでご容赦いただきたい。

3.1. 大阪環状線

今回のなにわ筋線開業で一番ダイヤ改正を行わざるを得なくなるのは大阪環状線であろう。関空快速/紀州路快速のなにわ筋線乗り入れは必須で、近鉄との競合や混雑の面から見ても大和路快速のなにわ筋線乗り入れは避けられそうにない。現在環状線と名乗っているのに周回列車より他線直通列車の方が多い大阪環状線にとっては大きな痛手だ。そのまま減便してしまえば、終日に渡り毎時8本を失うことになる。




そこで、大阪環状線自体にいったい何本の列車が必要なのか、昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を用いて逆算してみる。現在平日夕ラッシュ時は西九条~大阪~京橋~鶴橋~天王寺間で毎時16本、西九条~弁天橋~天王寺間(大和路線除く)では毎時12本となっている。西九条を境に運行本数が変化しているのは、その分JRゆめ咲線に直通しているからだ。適正値に合うように昼間の本数を計算していくと15分サイクルダイヤも考慮して西九条~大阪~京橋~鶴橋~天王寺間で毎時12本、西九条~弁天橋~天王寺間では毎時8本で十分なようだ。つまり大きく見ていけば昼間は周回運転が毎時8本、JRゆめ咲線大直通が毎時4本で済むということになる。2011年3月のダイヤ改正まで行われていた昼間のUSJと大阪駅の直通が復活しそうだ。

次に現在関空快速/紀州路快速・大和路快速が補完している周回列車がなにわ筋線開業後どの列車ができるかについて見ていく。大阪環状線の普通列車は8両編成で、快速電車も大和路快速の一部が6両なことを除いて8両編成である。昼間の場合、阪和線区間快速や大和路線の和歌山線直通快速は4両編成であり、大阪~京橋~鶴橋~天王寺間の混雑区間の需要をさばけるとは思えない。昼間に関しては大阪環状線は323系の独壇場になるのであろう。

しかし平日夕ラッシュ時であればどうだろうか。現状では関空快速/紀州路快速と大和路線区間快速が毎時4本ずつ運行されており、関空快速/紀州路快速はなにわ筋線への転線が確実である。しかし大和路線はすでに毎時2本のJR難波発着の8両編成の快速奈良行きがあり、これと毎時2本の転線でなにわ筋線は賄えそうだ。そうなると大阪環状線に区間快速毎時2本が残ることになる。323系の導入を極力抑えたいJR西日本としてはできるだけ活用したいところで、平日夕ラッシュ時と平日朝は大和路線から大阪環状線への乗り入れ列車は残るのではないだろうか。


4. 結び

今回の2031年なにわ筋線開業に伴うJR西日本ダイヤ改正では、阪和線・大和路線列車のなにわ筋線乗り入れ化により大阪環状線や他線を巻き込んだ大掛かりなダイヤ改正となりそうだ。そのまえに2つ大きなダイヤ改正のヤマを迎えているが、今後の近畿エリアのJR線(アーバンネットワーク)のダイヤ改正を注視してゆきたい。

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