JR西日本は2021年12月17日、プレスリリースにて2022年3月12日にダイヤ改正を行うと公表した( 2022年春ダイヤ改正について )。今回はこのうち山陽・九州新幹線について見ていく。
同日実施の2022年3月12日東海道新幹線ダイヤ改正はこちら!
1. 「のぞみ」の初列車繰り上げへ!
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、「のぞみ」の運転時間帯を拡大し初列車繰り上げと終列車繰り下げを行う。
広島7時02分発「のぞみ94号」東京行きを福山通過化の上博多始発に延長し、博多6時00分発「のぞみ2号」東京行きとして設定することとなった。
これにより博多からの「のぞみ」一番列車は博多6時15分発から6時00分発に15分繰り上がる。ただ、博多へ到着する在来線列車一番列車は5時45分ごろに到着、次の列車も概ね6時10分以降に到着でそもそも「のぞみ2号」に乗り継げないため、福岡市営地下鉄空港線を除いて連絡列車がほとんど変わらないほか、むしろ乗り継ぎ時間が30分程度から15分程度に短縮したことで接続改善している。
これにより博多や小倉から朝一番の新幹線で新大阪に到着できるのは8時43分から8時28分に15分繰り上がるほか、東京に到着できる時刻が11時15分から10時57分に18分繰り上がることとなった。福岡空港から伊丹空港への一番便は伊丹空港8時05分着であることから航空機との競合にも有用であろう(なお福岡空港から中部国際空港への一番便は「のぞみ4号」とほぼ互角のため、「のぞみ2号」の時刻繰り上げとは関連性は薄い)。
これにより新山口から新大阪・東京への一番列車の利用も、ダイヤ改正前は新山口6時37分発「ひかり590号」レールスター岡山行きに乗車後徳山乗継「のぞみ2号」利用だったが、今回のダイヤ改正で「のぞみ2号」が徳山停車から新山口停車に振り替えたことで新山口6時36分発「のぞみ2号」東京行きを利用すれば東京に直通で行けるようになる。つまり新山口からすれば出発時刻が1分繰り上がっただけで新大阪到着が15分、東京到着が18分も繰り上がるのだ。このため今回の「のぞみ2号」の繰り上げは、福岡県内から東京への利用というより山口市内から東京への利用を見込んでいるのだろう。
なお「のぞみ2号」が通過となった徳山は、徳山を6時59分に出発する「のぞみ2号」に乗車すれば東京に11時15分に到着できていたものの、今回のダイヤ改正より「のぞみ2号」が徳山通過となることから18分早い徳山6時41分発「ひかり590号」レールスター岡山行きで昼染ま間で向かう必要があるほか、連絡する列車も広島7時18分発「のぞみ94号」東京行きで、東京を同じ11時15分に到着するのがせいぜいである。
なぜ新山口では利便性が大幅に向上し徳山では利便性を落としても良いと判断したのかというと、おそらく山口宇部空港から羽田空港への航空機との競合を念頭に置いており、山口宇部空港から遠い徳山は利便性を上げても利用者が増える見込みが薄いことから「のぞみ2号」の停車駅から外し、山口宇部空港にも向かいうる新山口からの利用者を積極的に乗せようとしているのだろう。せめて新岩国6時34分発「こだま836号」新大阪行きを徳山始発に延長で切きれば東京に10時57分に到着できるようになったが、人口13万人の周南市からの利用は見込めないののだろう。
ただ、山口宇部空港から羽田空港への一番便は山口宇部空港7時40発の日本航空290便及び全日本空輸692便で、ともに羽田空港に9時15分に到着する。これに接続するバスは新山口駅を6時30分に出発するが、この時刻は「のぞみ2号」東京行きの新山口発時刻と6分しか変わらないし、羽田空港を降りてから品川に行くにも10時には着けてしまい、「のぞみ2号」の品川10時49分着より50分以上も早く着けてしまうのである。そう考えると多少利便性が良くなったとはいえ、新山口から東京への早朝利用を航空機から移すのは難しいのではないだろうか。
なお今回のダイヤ改正では博多6時15分発の「のぞみ2号」は広島始発に短縮し福山増停車を行い広島7時18分発「のぞみ94号」東京行きに変更する。
また「のぞみ2号」の運転枠を確保するため、博多6時00分発「ひかり590号」レールスター岡山行きは小倉6時07分発に短縮する。これにより小倉始発の「ひかり」を設定することとなった。
また平日運転の小倉6時21分発「こだま770号」新山口行きは、新下関6時33分発に短縮する。おそらく厚狭への停車列車確保のためなのだろうが、直後の博多6時16分発「ひかり592号」レールスター新大阪行きを厚狭に停めて列車を「こだま770号」廃止にした方がはるかに合理的なのだし、今回のダイヤ改正で「のぞみ2号」東京行きを博多6時15分発から6時00分発に繰り上げたため停車時間確保のために所要時間が伸びても博多で時刻繰り上げができるようになったため「ひかり592号」の厚狭停車もできるようになるはずなのに、意地でも「こだま770号」を存続させたいらしい。そんなに「ひかり」を厚狭に停めたくないのだろうか。
このほか「のぞみ」の初列車繰り上げとして姫路6時00分発「のぞみ82号」東京行きを東京9時00分着から8時57分着五3分繰り上げるが、これは完全に新大阪→東京間の東海道新幹線内での所要時間短縮効果によるものでその恩恵をたまたま受けたに過ぎないようだ。
2. 「のぞみ」の終列車繰り下げへ!
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、「のぞみ」の終列車を繰り下げる。
広島への最終は東京19時51分発「のぞみ109号」広島行きだったが、今回のダイヤ改正より東京20時00分発に9分繰り下げる。これにより東京20時台発の広島行き「のぞみ」を史上初めて設定することとなった。なおこれに伴い名古屋や新大阪から広島への最終も6分繰り下がっている。約9年前の2013年3月16日ダイヤ改正で新大阪から広島への終列車が3分繰り上がった悲劇を考えれば今回の終列車繰り下げはかなりの衝撃だ。
なおこれにより広島行き最終「のぞみ109号」から三原行き最終「こだま879号」への連絡は岡山から福山に変更となる。新倉敷(玉島)へは岡山乗り換え山陽本線利用でも行けることから営業は小さいだろう。また、新倉敷→三原間で約4分時刻を繰り上げていることから、最終列車での東京→三原間到達時間を「のぞみ」の9分繰り下げと合わせ13分も短縮している。
このほか東京19時21分発以降は昼間のパターンダイヤを崩し、山陽直通列車の設定時刻を変更することとなった。パターンダイヤ時間帯では定期「のぞみ」の山陽直通は東京毎時09分発、毎時30分発、毎時51分発であるが、東京19時09分発~20時30分発までは東京毎時00分発、毎時21分発、毎時39分発に変更し概ね10分程度ずらすこととしたのである。
これにより東京19時21分発「のぞみ255号」新大阪行きを「のぞみ105号」岡山行きに延長することとし19時以降の山陽直通「のぞみ」を1本増発した一方で、東京18時00分発「のぞみ101号」岡山行きを「のぞみ249号」新大阪行きに短縮することとなった。
3. 岡山での接続大幅改善へ!
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、岡山での「ひかり」と「こだま」の接続を大幅に改善する。
これまで岡山での16両「ひかり」と8両「こだま」の連絡は非常に悪く、岡山行き「ひかり」の岡山到着3分前に博多行き「こだま」が岡山を出発したり、岡山行き「こだま」の岡山到着3分前に東京行き「ひかり」が岡山を出発したりしていた。
しかし今回のダイヤ改正では岡山始発終着の「ひかり」と8両「こだま」が岡山で3分連絡で乗り換えをできるようにしたのである。
これを可能にしたのは相生で「ひかり」を抜かす「のぞみ」の通過時刻を1分修正したことによるものと考えられる。
これにより姫路~岡山間で昼間の「ひかり」が所要時間を3分短縮するほか、岡山~福山間でも昼間の「こだま」が所要時間を3分短縮することとなった。
4. 九州新幹線直通列車で減便へ
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、山陽九州新幹線直通列車を減便する。
九州新幹線内完結列車は前回の2021年3月13日九州新幹線ダイヤ改正でJR九州の単独判断で減便を図れたが、他社直通の絡む山陽新幹線直通列車の減便は図ることができなかった。しかし今回のダイヤ改正では山陽九州直通の「さくら」のうち定期列車4往復を臨時化することとなった。これにより新大阪~鹿児島中央間を直通する定期「さくら」は1日16往復から12往復に減り、「みずほ」と合わせても定期列車は24往復から20往復に削減することとなる。
ただ今回のダイヤ改正で山陽九州直通の「さくら」を4往復臨時化することとなったが、春の臨時列車運転によれば少なくとも6月30日までは毎日運転することが決まっている。当分の間は毎日運転で残す予定のようだ。
このほか新大阪19時55分発「みずほ615号」鹿児島中央行き最終を熊本行きに短縮する。ただし従来より熊本で「つばめ341号」を抜かしていたため鹿児島中央には23時40分着から23時58分着に繰り下がるだけで到達できる。
もっとも「みずほ615号」を設定していたのは鹿児島中央からの鹿児島本線川内行き終列車・日豊本線国分行き終列車及び指宿枕崎線五位野行き終列車を全て鹿児島中央23時47分発で設定していたため鹿児島中央23時40分着「みずほ615号」から連絡できていたが、前回の2021年3月13日ダイヤ改正で一斉に17分繰り上げ鹿児島中央23時30分発に繰り上がったため「みずほ615号」から連絡できなくなってしまった。連絡できないのであれば存在価値が薄くなってしまい、どうせ鹿児島中央までしか到達できないのなら時刻を繰り下げたってかまわない。本来なら「みずほ615号」を熊本→鹿児島中央間で各駅に停車させた方が利便性はよいが、そうなると山陽新幹線内での加算料金320円を徴収できかねなくなってしまう。そこで熊本で「つばめ341号」に乗り換えさせることとしたのだろう。
このほか川内6時02分発「つばめ301号」鹿児島中央行き初列車を15分繰り下げ、川内6時17分発とする。また折返しだった鹿児島中央6時27分発「つばめ304号」博多行きを熊本7時22分発博多行きに短縮、後続の熊本7時34分発「つばめ306号」博多行きを鹿児島中央6時37分発博多行きに延長し「つばめ301号」から折り返せるようにしている。
また博多21時43分発「さくら571号」鹿児島中央行きを新八代・出水・新水俣の3駅を通過とし鹿児島中央23時20分着から23時09分着に繰り上げる。
5. 「こだま」の減便で1運用削減へ
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、「こだま」を中心に減便を図る。
山陽新幹線では今回のダイヤ改正で各区間で1~3往復を減便する。なお対象列車の詳細は各支社ごとに記載をしている。
岡山6時57分発「こだま835号」広島行きと広島19時55分発「こだま789号」博多行きを廃止する。この2本で1運用を組んでいたことから山陽新幹線の8両運用(500系または700系)を1運用削減することとなった。
8両運用は2020年3月14日ダイヤ改正で1運用削減していたが、今回のダイヤ改正でさらに1運用削減することとなった。
これにより500系新幹線は6運用から5運用に削減する見込みだ。500系8両編成は8本あるが、この運用削減で休車中の1本と合わせて2本を廃車とする見込みだ。そしてきたるべき(と言っても15年以上先になりそうだが)に新車を投入する際に新車の製作本数を減らして合理化するだろうし、700系8両編成とのほぼ同時の置き換え(引退年が1年程度しか変わらない)の可能性も高まってきているのだろう。
このほか今回のダイヤ改正では新大阪20時27分発「ひかり593号」レールスター博多行きを廃止する。救済として岡山21時59分発「こだま873号」新山口行き最終を新大阪20時29分発「こだま869号」新山口行きに延長するほか、新大阪19時29分発「こだま871号」広島行きを「こだま867号」博多行きに延長する。これにより「ひかり593号」レールスター博多行きでは通過していた相生や新岩国、厚狭では利便性が向上する一方で新山口行き最終は概ね10~14分時刻を繰り上げることとなった。
これにより「ひかりレールスター」の下り定期列車が消滅することとなった。
6. 結び
今回の2022年3月12日山陽新幹線ダイヤ改正では、「のぞみ」の運転時間拡大に伴い東京・新大阪~広島・博多間での利便性の向上を図った。
ただし「さくら」「ひかりレールスター」「こだま」などで減便を図り、1運用を削減する見込みだ。
今後山陽新幹線でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
コメント