函館本線廃止救済で貨物新幹線を検討へ! JR貨物ダイヤ改正予測(2031年予定)

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函館本線廃止救済で貨物新幹線を検討へ! JR貨物ダイヤ改正予測(2031年予定)

国土交通省は2022年7月29日、プレスリリースにて鉄道貨物のあり方についての中間意見を取りまとめた( 今後の鉄道物流のあり方に関する検討会中間とりまとめ概要 今後の鉄道物流のあり方に関する検討会中間とりまとめ本文 )。今回はこれについて見ていく。

1. 函館本線廃止で鉄道貨物救済へ!

今回の2031年以降実施予定のJR貨物ダイヤ改正予測では、北海道内でJR貨物の輸送網に大きく影響をもたらす見込みだ。

2031年3月に北海道新幹線新函館北斗~札幌間が開業する見込みだ。これに合わせJR北海道は函館本線函館~長万部~小樽間の廃止を行う予定で、その線路設備を第三セクター会社に移管するか北海道と沿線市町村で協議が続けられている。

2022年9月現在、貨物列車の走行のない長万部~小樽間は鉄道の廃止が決定しているほか、旅客列車の走行のない大沼~七飯間の貨物列車用藤城線も存続させない方針となった。一方、函館~新函館北斗間の第三セクター会社移管は満場一致賛成であることからほぼ内定しており、おそらく道南いさりび鉄道が継承することとなるのだろう。

ただ、新函館北斗~長万部間を第三セクター会社に移管させるかが決まっていない。むしろほぼ継承せず廃止する方針で固まりつつある。

実際のところ並行在来線として扱われなかった海峡線はJR北海道のまま存続しているので、新函館北斗~長万部間や藤城線をJR北海道のまま存置し貨物列車のみ運行するという手はある。が、貨物列車走行のために旅客営業のみの場合と比べて強固な線路設備を維持しなければならないこと、JR北海道はJR貨物運行にかかる費用の差額分、つまり低廉なアボイダブルコストしかもらえないことをからJR北海道自身も存続に消極的なのである。

もし新函館北斗~長万部間が廃止ということになれば、同区間を走行する貨物列車は走行できなくなる。そこで国土交通省が鉄道貨物輸送について提起し始め、これが今回の貨物新幹線構想につながることになる。




2. 貨物新幹線はどこを走るのか

そもそも貨物新幹線はどのようなところを走るのだろうか。貨物新幹線の成り立ちから振り返ろう。

まず貨物新幹線構想が出てきたのは1958年ごろ。当時世界初の高速鉄道・新幹線の建設資金を世界銀行から借りようとしていたが、未知の列車のためどれくらい需要があるか想定するのが困難であった(実際に東海道新幹線の運転本数は開業後3年で多客期に3倍にまで増えている)。このため新幹線では旅客輸送だけでなく貨物輸送も行えるようにするというほぼハッタリを言うことによって世界銀行から融資を受けることに成功している。この際にいかに貨物新幹線が現実味があるものかを主張するために雑誌に掲載したり模型をつくったりしたが、現実には開業から50年経った今でも東海道新幹線に貨物列車が奏功したことは一度もない。

ただこれは在来線にて貨物運行を行うことが前提の話で、在来線がなくなって貨物列車が運行できなくなっては前提条件が崩れてしまう。また2015年以降ヨーロッパや中国などで高速列車の線路に貨物列車を運行することが見られるようになった今、国際的には高速列車と貨物列車が同じ線路を走ることは不自然ではない(そもそも高速鉄道と在来線の線路の幅が標準軌で統一しているほか、トンネル断面積は日本の約2倍あるし、貨物列車は200km/h制限での運行だし、同区間を走る高速列車もせいぜい250km/hまでしかだせないのだが)。

そこで先述したように函館本線新函館北斗~長万部間廃線の可能性があり北海道内の貨物輸送ができなくなる恐れがあることから国土交通省で貨物新幹線を検討し始めたのである。




では既存新幹線の線路を利用した高速貨物列車、貨物新幹線はどこを走るのだろうか。

まず旅客列車だけでも最大毎時17本運転かつ起動加速度2.6km/h/sの高加速度運転を行う東海道新幹線や最大毎時16本運転の東北新幹線東京~大宮間には線路容量に余裕がなく、貨物新幹線の走行は不可能である。

むしろ東海道新幹線はリニア中央新幹線とは別に東海道新幹線自体を複々線化して、「のぞみ」用複線と「ひかり」「こだま」および貨物列車用複線に分けて営業してもいいくらいだ。もしそうすれば東京~名古屋~大阪間の三大都市圏を結び荷物輸送量が多いにも関わらず線路容量が限界でこれ以上の増発ができない東海道本線貨物列車を貨物新幹線に移すことができるため増発できるようになるし、「のぞみ」は各駅に停まる列車を考慮する必要なくダイヤを組めるようになるため最高速度285km/hのままで終日に渡り東京~新大阪間2時間22分運転が可能となり、昼間でも従来より5~8分所要時間を短縮することができる。

また山陽新幹線も最大毎時10本運転を行っていること、2037年以降に全通するリニア中央新幹線開業に受け車両基地を兵庫県明石市内に増設するほど輸送力増強を図る見込みがあることから、さらなる増発が見込まれる。このことから山陽新幹線でも貨物新幹線を走らせる余裕はなさそうだ。

さらに北陸新幹線と九州新幹線はそもそも勾配が急なため貨物新幹線の運転に適していない。

そして上越新幹線はそもそも距離が短く、既存の在来線貨物列車から乗せ換える負担を考えると従来通り上越線経由で直通して運んだ方が速い。

そう考えると、そもそも貨物新幹線は東北新幹線や北海道新幹線での運行しか想定していないのではないだろうか




では東北・北海道新幹線に貨物新幹線を走らせる場合、どこに貨物駅を造りどのように運用するのだろうか。

栃木、宮城、青森、函館、札幌に貨物新幹線用の駅を設けて栃木~札幌間で運転し、他地域へは各駅で在来線貨物列車やトラックへの載せ替えが適しているだろう。

あとはもし北陸新幹線に貨物新幹線が乗り入れられるようになったとして、大宮駅北側に上越新幹線と東北新幹線を結ぶ出る他線を整備すれば、敦賀~宮城・青森・北海道方面へ運べるようにはなる。敦賀から京都・大阪方面は比較的短距離のため北陸自動車道経由のトラック輸送で補える可能性があることを考えると、近畿地方から北海道方面輸送にも役立つようになるかもしれない。

なお、もし在来線貨物列車が減っても在来線区間のJR貨物の線路使用料は基本格安なアボイダブルコストしか支払わなくてよい。JR東日本から移管したIGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道では貨物列車の線路使用料をかなり領収しているが、旧JR東日本へ支払っていたアボイダブルコストとの差額分は整備新幹線設備を受け持つ鉄道運輸機構が差額補填しているため、JR貨物が支払う料金は実質アボイダブルコスト分のみだし、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道は貨物列車の走行自体が減っても1列車当たりの線路使用料を引き上げれば良くJR貨物の財布は痛まないので躊躇なく値上げできる。

ただ貨物新幹線ができた場合、道南いさりび鉄道への貨物列車乗り入れは全面中止となる見込みだ。このため1本たりとも貨物列車が来なくなる道南いさりび鉄道では貨物列車線路使用料を徴収できなくなりそうだ。

ただ、そもそも貨物新幹線の車両設計はできるのだろうか。

一応トンネルの車両限界を考えると、今回の今後の鉄道物流のあり方に関する検討会にて提起している31ftコンテナや背高40ftコンテナは新幹線であれば問題なく通すことができる。もっとも空気抵抗を減らして安定して輸送できるように側面防護などを行う必要はあるだろうが、国土交通省の考える海上コンテナの鉄道輸送拡大を目指す点では寸法上問題のない貨物新幹線は理にかなっていると言えるだろう。




3. 現状の手法であれば荷物輸送任せか

では現状新幹線ではどのような輸送が行われているのだろうか。

新幹線ではレール&ゴーサービスとして荷物輸送を行ってきたが、2021年の廃止直後に新しい荷物輸送が誕生しており、東北新幹線を活用した生鮮荷物輸送も行っている

そう考えると、一番実施可能性が高いのは旅客用新幹線車両を用いた荷物輸送ということになりそうだ。

とはいえ貨物新幹線なしかつ函館本線新函館北斗~長万部間の廃止となれば、北海道内の鉄道貨物輸送は函館貨物駅で乗せ換えるほかなくなるし時間がっかり効率が悪いため苫小牧から船で輸送する方がはるかに効率的となる。

また昨今のトラック運転手不足や自動運転技術確立の失敗による自動車無人運転の事実上断念により(一応東北自動車道・新東名自動車道・新名神自動車道に限り先導有人車を設けて自動追従トラックを走行できるよう実証事件を行う計画はあるが、実現しても3牽引トラック相当しかならないので貨物列車と比べて1人当たりで運べる荷量は圧倒的に少ないし、実現性としてもかなり厳しい)、そもそも日本国内での貨物輸送自体が窮地に立たされている。そう考えると何十両ものコンテナを一気に運ぶことができ輸送に関わる人を減らすことができる鉄道貨物輸送は推進しなければならない。

そう考えると、安定した鉄道貨物輸送を行うためにも貨物新幹線の実用化による北海道方面貨物輸送の維持や東海道新幹線の複々線化などによる東京~名古屋~大阪間の貨物輸送の増強は図るべきだろう。


4. 結び

今回の2031年以降実施予定のJR貨物ダイヤ改正予測では、函館本線新函館北斗~長万部間や藤城線廃止の可能性があり、JR貨物輸送網に影響が出る可能性が高い。

今後の日本国内の貨物輸送において国土交通省がどのような策を取るのか、見守ってゆきたい。

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