JR北海道は2022年8月17日、プレスリリースにて2023年に新型車両737系を投入すると公表した( 737系通勤形交流電車が登場します )。今回はこれらと近年の車両動向から2023年3月実施予定のJR北海道ダイヤ改正について予測していく。
1. 電車のワンマン運転開始へ!
今回の2023年3月実施予定のJR北海道ダイヤ改正では、2両編成の電車を新製投入する。
JR北海道では普通電車は3両編成または3の倍数である6両固定編成(快速エアポート用)で投入するのが基本であるが、今回の電車は2両固定編成で投入することとした。これは車掌のいらないワンマン運転を行いやすいよう減車を図ることとしたためである。
なおJR北海道の前身日本国有鉄道が北海道普通電車用として投入した711系は3両固定編成のほか2両固定編成もあったため北海道に2両固定編成の電車を運転した実績はあるが、1980年に3両編成に増車したためJR北海道継承時にはすべての普通電車が3両固定編成となっていた。
今回のプレスリリースによれば737系2両編成電車を13本投入するとしている。737と聞くとボーイングの航空機とも思いかねないが、731、733、735と続くJR北海道普通電車の付番方式に沿ったものとなっている。
この737系電車は室蘭本線苫小牧~室蘭間で運用を開始する。これで既にワンマン運転を行っているキハ143形気動車2両固定編成を置き換える見込みだ。
なお721系以降JR北海道が投入してきた普通電車は3ドアだが、今回の737系は通勤電車と称しながら2ドアしかない。もっとも車両中央部にフリースペースと称する座席のない空間があるためドア取り付け準備工事はしている可能性がるが、札幌駅への乗り入れ運用は当分の間設定する見込みはないようだ。
2. 737系は本当に室蘭本線でしか運用しないのか
今回の新型車両737系に室蘭本線投入でキハ143形の運用を置き換えて廃車とする見込みだが、737系電車は2両編成13本投入するのにキハ143形は2両編成5本しか配置がない。もしキハ143形の置き換えるののみなら新型車両737系の投入は5本のみで済ませられるはずだ。
にもかかわらず2両ワンマン電車を13本も投入し室蘭本線にも投入するとなれば、H100形運用も置き換えるということになるが、室蘭本線苫小牧~室蘭間でのH100形運用は1両単行運転が基本で、2両に増結して運転するのは朝夕の1往復しかない(そもそも2両固定のキハ143形運用も朝夕しかないが)。わざわざ最新型気動車1両編成で済むところを737系2両編成に増車して運転するのは効率が悪いだけだし、非電化区間の東室蘭~長万部間の普通列車にはH100形気動車が必須であることを考えるとメリットが感じられない。そう考えると737系投入により室蘭本線のH100形を追い出すというのが考えにくいのだ。
また今回の737系電車はJR北海道初のワンマン電車となるが、置き換え対象のキハ143形気動車および室蘭本線を走行するH100形気動車はともにワンマン運転に対応している。もっともキハ143形は老朽化が激しいため置き換えに値するが、ワンマン列車をワンマン列車で置き換えるのは至極当然で、動力費の大幅な削減にはあまりつなげられない。
また先じて公表していたJR北海道移動円滑報告書ではでは2両ワンマン電車は7本14両を投入すると記載していたことを考えると、当初の予定より増えているのである。もっともこのご時世で利用が減っているため車両制作数を減らすという鉄道会社は多いが、増やすというのは異例と言わざるを得ない。
では室蘭本線以外で737系電車はどこを走れるのだろうか。もっとも電車のため電化していない区間ではないと走れないため、必然的に函館本線小樽~札幌~旭川間、千歳線、学研都市線、あとは函館近郊の道南いさりび鉄道や函館本線函館~新函館北斗間に限られる。先述したように737系電車は2ドアのため札幌駅に積極的に乗り入れるとは考えにくいし、JR北海道の新車が道南いさりび鉄道を走ったり2016年に電化し新車733系1000番台で揃えたばかりの函館本線函館~新函館北斗間に2020年代に新型電車を入れるとは考えにくい。そう考えると、残る737系電車が入り得る線区は函館本線岩見沢~旭川間一択になる。
そもそも函館本線岩見沢~旭川間の普通電車は主に711系電車3両編成で運転しているが、老朽置き換えのため2014年8月30日JR北海道ダイヤ改正より721系電車3両編成に順次置き換わっている。が、この721系電車も2022年以降順次置き換えを計画している。そう考えると721系電車の運行している函館本線岩見沢~旭川間に新型車両737系を投入し721系の一部を廃車させてもおかしくはない。
もし車掌必須の721系3両編成からワンマン運転対応の737系2両編成に置き換えれば車掌の人件費を減らせることから、経営合理化につなげることができる。
では函館本線岩見沢~旭川間に新型車両737系電車2両固定編成を投入しても問題はないのだろうか。現状函館本線岩見沢~旭川間の普通電車は朝夕も含め全て3両編成で運転しているが、昼間は1両編成の気動車が運用する程空いている。そう考えると2両への減車は問題なさそうだ。
また函館本線岩見沢~旭川間の電車運用は6運用でまかなえるため、2本の予備を考慮しても2両電車8本で置き換えは可能だ。これに室蘭本線のキハ143形を直接置き換える2両編成5本を加えると、なんと今回投入する2両編成13本と合致するのである。
なおJR北海道では721系電車の老朽置き換え開始を当初2018年からとしていたが、その後安全計画2023年にて2022年度以降に後ろ倒ししている。ただ、この際の車両置き換えは24両としており、721系3両編成8本分とすると737系2両編成8本で置き換えることができる量なのである。話が出来過ぎているにもほどがある。
そう考えると今回投入する737系2両編成13本の内訳は、室蘭本線用5本と函館本線用8本の合計13本としている可能性が高いのではないだろうか。
ただ、今回投入する737系電車は2023年春までに2両編成13本を投入し、2023年春より室蘭本線苫小牧~室蘭間で運用するとしている。が、車両運用の変わる際の2023年春の表記は十中八九2023年3月中旬のJR旅客各社全国一斉ダイヤ改正での運用変更を刺していることが多いが、それ以外は必ずしもそうではない。というのも、3月間近はJR旅客各社ダイヤ改正における車両入替を行うために新造車両の制作費が高くなる傾向があり、実際に車両が安く製造できる時期に新車を投入して3月とは別時期にだ屋改正や運用変更を行う会社もある(東武鉄道など)。
またJR旅客各社の言う「春」とは3月~6月までを指すことから、移動円滑報告書記載の2022年度の新造電車は2両編成7本14両という情報が変更していないのであれば、2023年3月までに737系電車2両編成7本を投入し少なくとも5本を室蘭本線苫小牧~室蘭間運用として運転開始、残る2両編成6本を2023年6月までに投入し2023年内の運用変更または2024年3月ダイヤ改正までに函館本線岩見沢~旭川間に投入し721系を置き換えることを画策しているのではないだろうか。
というか、他社では3両や4両のワンマン運転も広がってきていることを考えると、既存の3両編成電車もワンマン化すべきではないかとは思うが。721系は老朽置き換えだとしても、731系や733系、735系3両編成はワンマン対応改造をして運行費削減を図るべきではないだろうか。
3. 737系は今後配置転換を図るか
とはいえ、737系電車はその後の転属はないのだろうか。
もっとも函館本線岩見沢~旭川間は電車特急「カムイ」が毎時1本以上の運転があるため、電化設備を撤去することはない。むしろ留萌本線が2026年3月までに廃止すること、根室本線富良野~新得間も将来的に廃止することが内定しているを考えると根室本線や留萌本線向け送り込み用函館本線内気動車運用を電車で置き換えてもおかしくはない。
ただ、室蘭本線苫小牧~室蘭間は、特急列車の大半を占める特急「北斗」は非電化区間にも乗り入れるため気動車運行、電車特急「すずらん」は1日6往復しか運行がなく、しかも使い勝手が悪い元増結用785系を使用し続けている。しかも2022年時点では普通列車が全て気動車運転のため、室蘭本線は1日6往復の電車特急のためだけに電化設備を残していることになる。
今後2031年に北海道新幹線が札幌まで延伸すれば函館~札幌間を運転する特急「北斗」は運転区間を短縮するのは確定的で、長万部~札幌間に短縮する見込みだ。その際に短縮した部分の運用余剰および多客時の最大10両増結が不要となるため、キハ261系だけで特急「すずらん」運用を置き換えることができる。もし置き換えられれば室蘭本線苫小牧~室蘭間の電化設備を撤去することが可能となり、かなりの費用を抑えることができる。
ただ製造から9年しか経たない737系電車がそのまま廃車になるとは考えにくい。どこに転属するのだろうか。
そもそも北海道新幹線札幌延伸により函館本線函館~長万部~小樽間を並行在来線としてJR北海道から分離し、このうち函館~新函館北斗間は第三セクター会社、おそらく道南いさりび鉄道が運営することが内定している。分離した際に旅客営業を引き続き行う際には元会社が車両を譲渡するのが通例である。
現状函館本線函館~新函館北斗間は733系1000番台電車3両編成とキハ40系気動車昼間は1両編成を運転しているが、新函館北斗以北で旅客営業を取りやめれば電車だけで賄い切れてしまう。
また通常期に昼間数人しか乗らないはこだてライナー用733系3両編成を737系2両編成に置き換えことは可能だし、運用数からして多客時に昼間や夜間に2本つなげて4両運転することも可能だ。いやむしろ減車した方が保守メンテナンスを削減できるので道南いさりび鉄道としてはありがたいだろう。
また東京からの北海道新幹線の新函館北斗到着が10時53分で朝ラッシュ時は4両増結運転を行う可能性がないことを考えると、予備車を考慮しても2両編成5本があれば函館~新函館北斗間の朝ラッシュ時輸送を運びきることは可能だ。
もし737系電車2両編成5本を道南いさりび鉄道に譲渡するとなれば、733系1000番台電車3両編成4本はJR北海道所有のままとなる。この車両を札幌に転属させれば老朽置き換えができそうだ。
ただ、道南いさりび鉄道が五稜郭~新函館北斗間の電化設備を維持するかどうか自体が不透明のため、そもそも737系を2両編成5本を転属するかどうか不透明だ。ただその場合は廃線になる函館本線長万部~小樽間用H100形1両編成10両を転属させればよいので、道南いさりび鉄道の今後の動向に合わせられるような車両を譲渡する準備はできているのだろう。
(2022.12.18 追記)なお、今回の新型車両737系の営業運転開始は2023年3月18日ダイヤ改正ではなく2か月遅れの5月20日より投入することとなった。また737系の室蘭本線投入に合わせ室蘭本線で大規模なダイヤ改正を行う見込みだ。
また北海道新幹線札幌延伸の時期が2031年より遅くなる見込みだが、工事の遅れが大きく開通時期が見通せなくなってしまった。よって室蘭本線が非電化化するとしても当初の予定より遅れるだろうし、その後の737系の転配時期も遅くなりそうだ。
4. 結び
今回の2023年3月実施予定のJR北海道ダイヤ改正では、室蘭本線に新型車両737系を投入することによりキハ143形気動車が廃車となる見込みのほか、2023年内に函館本線岩見沢~旭川間でも737系による2両ワンマン運転を開始する可能性がありそうだ。
今後も車両置き換えの進むJR北海道でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
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