JR西日本は2016年9月30日、プレスリリースにて三江線を廃止すると公表した( 三江線 江津~三次駅間の鉄道事業廃止届出について )。また2017年10月18日、プレスリリースにてICOCAエリアを2018年春に見直すと公表した( ICOCAのご利用エリアが大きく広がります! )。今回はこれらと2018年3月のJR西日本広島支社ダイヤ改正予測について見ていく。
1. 227系の追加投入
今回2018年3月のJR西日本広島支社ダイヤ改正までに227系が増備される。そのため、今回のダイヤ改正でも227系による運転列車が増加し運行エリアも拡大する可能性がある。2015年3月14日ダイヤ改正より導入されたが、僅か1年ほど後の2016年3月26日ダイヤ改正で広島シティネットワークのうち芸備線を除くほぼ全ての区間で、平日昼間の運用がすべて227系になった。ただ土休日は快速「シティライナー」の設定により一部115系による運用が昼間に残ってしまっている。今回の227系増備で土休日の昼間でも広島シティネットワークの芸備線を除くほぼ全区間にて全列車が新型車両227系による運行になるのではないだろうか。
また227系の運行エリアが拡大する可能性もある。2016年3月26日ダイヤ改正では東は福山まで、西は徳山まで運行区間が伸びた。東側が福山までなのは福山までが山陽本線の広島県内の区間であるためであると考えられるが、ちょうど山陽新幹線「のぞみ」の1停車駅分と考えると何故かまとまる。しかしながら平日昼間は全列車が227系で統一されている糸崎や岩国で系統分割が行われており、福山や徳山に行く227系はほんの僅かだ。つまりこれ以上227系の運用を増やすには、東は岡山まで、西は下関まで伸ばすか、福山や徳山で系統分割するほかない。ICOCAの利用エリアが2018年7月に拡大することを記念してパフォーマンスとして227系を岡山まで伸ばすのではないだろうか。将来的に広島シティネットワークエリア内の電車はATSを更新する関係で全て新型車両227系にしたいものと思われるから、2019年3月ダイヤ改正までには統一されるものと思われる。
2. 呉線快速の見直しはあるのか
また近年多いのが、呉線快速の見直しだ。近年快速通勤ライナーを、快速安芸路ライナーに格下げして停車駅を増やすことで、利便性を上げている。
2016年3月26日JR西日本広島支社ダイヤ改正では土休日夕方、2017年3月4日JR西日本広島支社ダイヤ改正では平日夕ラッシュ時に行われ、しれっと普通電車を削減することで全体の輸送力を削減している。今後も227系の導入本数を抑えることも含めて考えると、土休日の朝に平日の朝と同じ本数の快速通勤ライナーが必要とは思えない。広島方では坂発着の普通電車を平日のみ運転にしているが、呉基準で土休日運休列車は朝はない。呉市は2015年の国勢調査で過去5年間で1万人以上人口が減ったことから人口減少数ランキング9位に輝いているともなれば、今回2018年3月のダイヤ改正で土休日朝の快速通勤ライナーが快速安芸路ライナーに格下げされ、普通電車も削減されるのではなかろうか。
3. ICOCA利用範囲見直しへ
今回2018年3月のダイヤ改正とほぼ同時期に、ICカードICOCAの利用形態が変わる。まず2018年春には原則200km以上での利用ができなくなる。原則というのは、大阪近郊区間内や特急停車駅相互間やその両方の駅間では使用できるが、広島県内発着や経由する利用ではこの例外は一切ない。重箱の隅を突けばいくらでも使えなくなる区間はあるのだが、そこそこ有名どころでは岡山〜岩国間(202.7km)が使えなくなる。
わざわざ既にあるデータを消さなくてもいいのではないかと思う方もいるかもしれないが、今回の200km制限は大阪地区の昼間特割きっぷの廃止と合わせて今後消費製増税時にJR東日本同様1円単位のIC運賃を導入するためのシステム改修も兼ねているのではないかと思われる。2014年4月1日の消費税率改定時には関東地方では乗車券の利用のうち9割がICカードによるものだったので1円単位のIC運賃の導入に踏み切ったが、近畿地方では当時私鉄の多くがポストペイサービスのPiTaPaしか購入できなかったこと、スルッとKANSAIが未だに発行されていたこと、JR西日本はキタ方面で昼間特割きっぷの利用が大きかったことからICカード利用率が6割にしかならず、1円単位のIC運賃の導入を見送った経緯がある。とはいえJR西日本では境港線では車内にICカードリーダーを設置してICOCAを利用できるようにする予定であること、関西私鉄・地下鉄も阪急・阪神ホールディングス系列(阪急電鉄・阪神電鉄など)を除き概ねICOCAを発売するようになったことで、今後ますますICOCAエリアが広がり西日本エリア全体でIC運賃設定に向けて進んでいくものと思われる。
また、JR西日本では2018年夏には近畿圏エリアと中国地方、北陸地方のエリアと繋げて利用できるようになり1つのエリアになるのだが、その一方で既存の利用可能エリアが縮むのはデータ処理上仕方ないように思える。特にICカードの運賃データを入れるのはエリアが広ければ広いほど大変なようで、JR南武支線小田栄駅は隣の川崎新町駅、東武鬼怒川線東武ワールドスクウェア駅は隣の小佐越駅と運賃を同一として、隣駅の入出場記録がつく設定とした。首都圏エリアでも2017年に中央本線・篠ノ井線で利用可能駅が拡大したが、こちらは2014年の消費税率変更に伴う運賃改定時にデータを入力できていた可能性もあるが、対してSuica仙台エリアは利用可能駅が少ないためJR磐越西線郡山富田駅が開業した際には別駅としてデータを追加した。ともなれば、ICOCAエリアが広がる以上は利用者の少ない長距離区間の運賃データを消さざるを得ないのではないだろうか。
4. 三江線廃止へ
また2018年3月31日をもって三江線が廃止される。
輸送密度は83人/日で、バス2〜3台で1日の輸送量が収まるレベルである。そんなところで108.1kmもの線路を維持し、度重なる災害にもJR西日本が自費で復旧させるなど過保護にもほどがありすぎる。それゆえ地域のバス会社である備北交通や石見交通が三江線を存続するがゆえに競合を強いられ減収するとともに、赤字補填を沿線自治体(市町村や県)に迫るようになり自治体の支出も増えてきた。さらに美郷町内では石見交通が撤退したことでコミュニティバスのようなものを自治体が運行しているほどだ。鉄道路線が廃止になることで、黒字の鉄道会社の場合には固定資産税の収入が減るが(JR北海道や東武鉄道などの赤字会社は固定資産税の減免措置を受けているため、存続しても自治体への実入りは少ない)、その分バスの赤字分を抑えることができ、もしバス路線がある程度収益を上げるようになれば沿線自治体に本社や営業所が置かれているため法人税などの増収で回収できる。
また、三江線の廃止代替ルートのうち、三次駅~石見都賀間は国道54号線経由となっている。これは、備北交通作木線のルートで、旧布野村や旧作木村の中心部を経由する。対して三江線は布野村を全く経由せず、作木村も町外れの川の向い側にしか駅がない。ゆえに三江線は使い勝手が悪いのだ。類似の事例として、2003年12月1日で廃止となった可部線(可部~三段峡間)のうち可部~安芸飯室間は、基幹ルートとしては既に広電バスや広島交通が昼間でも毎時3本ものバスを出していた国道191号線経由がメインとなり加計・戸河内・三段峡方面と直通している一方、今井田や毛木などを通る可部線ルートは広島交通による補完・完結ルートとして細々と運行されている。そうなれば三江線に近いルートではなくかつての村の中心地を結ぶ、現在備北交通作木線の走る国道54号線ルートを基幹ルートとして整備すべきであろう。
ともあれ、島根県と広島県を跨ぐ108.1kmもの長大区間が廃止になる三江線であるから、バスも全区間直通では済まされない。基幹ルートだけでみても概ね石見川本、粕淵(1往復を除く)、石見都賀の3か所で系統分割される。このうち江津~石見川本間は石見交通、石見川本~粕淵~石見都賀間は大和観光のバスの予定で、石見都賀~三次間は今のところ調整中のようだが備北交通作木線とほぼもろ被りなので備北交通が有力であろう。
とはいえ、粕淵や石見川本であれば大田市まで石見交通のバスで出られるし、石見川本であれば広島から高速バス石見銀山号も1日2往復出ている。町と都心部を結ぶバスを民間事業者で充実させ、三江線廃止代替バスは大和観光やおうなんバスなどの自治体コミュニティバスに任せることで棲み分けるのが良いのではないだろうか。
5. 結び
今回2018年3月のJR西日本広島支社ダイヤ改正では、227系の増備により運用面で変更がありそうなものの、ICOCAの既存エリアの一部でりようができなくなることや三江線の廃止など、事業効率を上げようとしているのが見て取れる。
新型車両の227系は2018年度までに投入が完了することから、今後どのようになるのか注目してゆきたい。
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