JR西日本とJR東日本は2023年8月30日、プレスリリースにて北陸新幹線金沢~敦賀間延伸開業日を2024年3月16日とし、あわせて運行計画の概要を公表した( 北陸新幹線 金沢~敦賀間開業に伴う運行計画の概要について )。今回はこのうち特急「サンダーバード」と北陸新幹線「つるぎ」を中心に見ていく。
1. 北陸新幹線「つるぎ」、26往復運転へ!
今回の2024年3月16日北陸新幹線ダイヤ改正では、金沢~敦賀間延伸に合わせ輸送体系を大きく変更する。
北陸新幹線および在来線特急の運転概要は以下の通り。
今回のプレスリリースで北陸新幹線「つるぎ」は特急列車と連絡する列車が25往復と大きく記載しているが、敦賀~富山間の1往復は北陸新幹線「つるぎ」としては全区間運転になるので、少なくとも25往復に1往復足して26往復と記載しても良かったはずだ。にもかかわらずなぜこのプレスリリースでは北陸新幹線「つるぎ」の運転本数をかたくなに25往復としているのだろうか。
大阪~敦賀間運転の特急「サンダーバード」25往復とプレスリリース記載の北陸新幹線「つるぎ」25往復は表記上運転本数が一致している。つまり北陸新幹線「つるぎ」は特急「サンダーバード」と連絡して大阪と北陸を結ぶ1つの役割を果たすと言いたいのだろう。そう考えると北陸新幹線「つるぎ」は特急「サンダーバード」のリレー列車という扱いなのだろう。
2. なぜ特急「サンダーバード」と北陸新幹線「かがやき」「はくたか」を連絡させないのか
ではなぜ大阪方面特急「サンダーバード」と連絡する北陸新幹線は「つるぎ」にしぼり、東京発着の「かがやき」「はくたか」と連絡させなかったのか。
そもそも特急「サンダーバード」は北陸新幹線金沢延伸前の2015年3月13日までは大阪~富山間で終日毎時1本、大阪~金沢間で朝夕に毎時1本の運転があり、金沢~富山間が北陸新幹線に移った2015年3月14日北陸新幹線敦賀延伸から2024年3月15日までの9年間、金沢で特急「サンダーバード」と北陸新幹線のうち金沢~富山間の短距離しか運行しない「つるぎ」18往復のほか東京発着の「はくたか」とも連絡させて大阪~富山間の連絡列車を増やした。
今回の北陸新幹線敦賀延伸でも、敦賀に発着する北陸新幹線は「つるぎ」26往復のほか東京発着の最速達列車「かがやき」が9往復、「はくたか」が5往復あるのだから、金沢開業時と同様特急「サンダーバード」は北陸新幹線「はくたか」のほか「かがやき」とも連絡しても良いではないか。
ただ新幹線は運転本数が多く輸送量がはるかに多いこと、折り返し駅で遅延を残したくないことから、在来線列車が遅延していても最終列車でない限り新幹線は原則定時に出発することとしている。このため在来線列車の遅延により所定の新幹線に乗り継げなかった場合、乗継購入している場合は手数料無料で後続の新幹線に変更することができる。
一方で、湖西線特急「サンダーバード」は以前ほどではないものの湖西線内強風により減速運転をおこなうことがあるほか、北陸本線回り米原経由迂回運転を行うことがしばしばある。もっとも特急「サンダーバード」を運転しているJR西日本では強風対策を行っており減速運転日数・米原迂回日数は徐々に減っては来ているが、それでも特急「サンダーバード」では減速・米原迂回時に15分~30分程度の遅れが発生している。
とはいえ東京行き「かがやき」「はくたか」は定時で発車しないと東京駅折り返し枠の関係で上越新幹線・東北新幹線にも遅れが波及してしまう。一方北陸新幹線は高々毎時3本しか運転がないので、富山県・石川県・福井県の北陸地方では線路容量に余裕がある。
そこで、JR西日本では特急「サンダーバード」と連絡する列車を最大でも自社管内の富山までしか行かない北陸新幹線「つるぎ」のみとすることで、特急「サンダーバード」遅延時にも敦賀で接続する北陸新幹線「つるぎ」を遅らせて接続を取ろうとしているのではないだろうか。
この遅延しやすい特急「サンダーバード」が遅れてもきちんと接続できるように、東京発着列車とは完全に別に接続列車として北陸新幹線「つるぎ」を設定するに至ったのだろう。
(2023.10.04 追記)なお新幹線特急券の発券の際、北陸新幹線富山~敦賀間および特急「サンダーバード」敦賀~大阪間は1列車扱いの通しの特急券で発券することとなった。まあ北陸新幹線「つるぎ」以外にも同区間であれば「かがやき」「はくたか」も適用になるし名古屋発着特急「しらさぎ」も同様の措置をとるが、これらはあくまで北陸新幹線「つるぎ」と特急「サンダーバード」を1つの列車扱いとすることへの対応に矛盾するものを取り込んでいるのと名古屋と北陸を結ぶ中京新幹線を完全にはあきらめていないといいたいのであって、本質的には北陸新幹線「つるぎ」と特急「サンダーバード」が一体の列車扱いということを言いたいのだろう。
3. 本当に特急「サンダーバード」は北陸新幹線「かがやき」「はくたか」と連絡しないのか
では湖西線特急「サンダーバード」は本当に北陸新幹線東京発着「かがやき」「はくたか」と連絡しないのか。
今回のプレスリリースの湖西線特急「サンダーバード」および北陸新幹線「つるぎ」の運転本数25往復というのは定期列車のみの本数である。
ただ特急「サンダーバード」には2023年時点で少なくとも5往復分の臨時列車運転枠があり、今回の北陸新幹線敦賀延伸で所要時間が短縮することから利用客は増えるので(過去の2004年3月13日九州新幹線部分開業や2022年9月23日西九州新幹線部分開業で実証済み)、臨時列車の運転日増加や運転枠増加が考えられる。そうなった際に北陸新幹線側ではどのような接続列車を用意するだろうか。
そもそも今回敦賀延伸する北陸新幹線であるが、福井県の人口は2023年時点で75万人しかおらず都道府県人口ワースト5に入る。はっきり言って新幹線が通る都道府県の中で最も人口が少ない。
もっとも北陸新幹線「つるぎ」は敦賀で大阪方面特急「サンダーバード」と名古屋方面特急「しらさぎ」と連絡するので、大阪・名古屋から石川県や富山県へ向かう旅客が利用することから比較的利用者が多い。が、敦賀で在来線特急と連絡しない東京発着の「かがやき」「はくたか」の福井・敦賀利用者は東京を含む関東地方や長野県から福井県目当てで利用する客しかほぼ使わないので、金沢~敦賀間では空いているはずなのである。
しかも昼間に5往復運転する東京発着の北陸新幹線「はくたか」は富山~金沢~敦賀間を各駅に停車するため定時運行時には各駅停車タイプの「つるぎ」の代替となる。しかも2023年時点では大阪方面特急「サンダーバード」の臨時列車は昼間に多い。市場原理的に極力利益を出したいのであれば空いている列車に旅客を入れて列車増発は極力防ぎたいだろう。
そう考えると、臨時特急「サンダーバード」が敦賀で連絡する列車は、北陸新幹線「つるぎ」ではなく定期「はくたか」になる可能性が高そうだ。
ただ、先述したように特急「サンダーバード」遅延時には北陸新幹線「つるぎ」は遅れを待ってから発車してくれるが、「はくたか」東京行きは待たずに定時で発車してしまう。もっとも臨時列車なので定期特急「サンダーバード」よりは利用者が少なく影響は多少小さくなるだろうが、遅延時の接続混乱のもとにはなるかもしれない。
4. 特急「しらさぎ」は北陸新幹線「つるぎ」とのみ接続へ
また今回のプレスリリースによれば、名古屋方面特急「しらさぎ」と敦賀で連絡する北陸新幹線はすべて「つるぎ」とするとしている。
ただ、北陸新幹線「つるぎ」は敦賀在来線特急連絡列車が25往復ある中、特急「しらさぎ」は名古屋~敦賀間運転が8往復、米原~敦賀間の短距離列車が7往復(しかもそのうちのほとんどが途中駅ノンストップの1駅間列車)の合計15往復の運転のため、特急「サンダーバード」と接続する北陸新幹線「つるぎ」のうち10往復は名古屋方面特急「しらさぎ」とは接続しないということになる。
このことから、北陸新幹線「つるぎ」は大阪方面湖西線特急「サンダーバード」のリレー列車で、名古屋方面特急「しらさぎ」との連絡はあくまでサブ役割なのだろう。
なお東海道新幹線から福井・金沢への連絡特急機能が大きく薄れる名古屋方面特急「しらさぎ」は、米原~敦賀間のシャトル列車が定期列車として7往復残るとはいえ2023年時点で行っている最大2往復の米原折り返しの臨時列車運転は取りやめることになるだろう。このため北陸本線特急「しらさぎ」はすべて北陸新幹線「つるぎ」と連絡を取ることになりそうだ。
5. 結び
今回の2024年3月16日北陸新幹線ダイヤ改正では、北陸新幹線金沢~敦賀間延伸開業に伴い在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」との連絡駅が金沢から敦賀に変更、両定期列車と接続する北陸新幹線は「つるぎ」に限り遅延時も連絡させるようだ。
今後北陸新幹線新大阪延伸に向けどのように動いていくのか、見守ってゆきたい。
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