南海電鉄は2023年9月15日、プレスリリースにて10月21日に南海線を中心にダイヤ改正を行うと公表した( 10月21日(土)に南海線のダイヤを修正します )。今回はこれについて見ていく。
2023年10月21日南海電鉄ダイヤ改正のうち本線・空港線はこちら!
1. 多奈川線、4割減便へ
今回の2023年10月21日南海電鉄ダイヤ改正では、多奈川線でダイヤ改正を実施する。
多奈川線はみさき公園~多奈川間の2.6km、3駅間しかない岬町内完結路線である。2022年現在、平日朝夕は約20分間隔の毎時3本、平日昼間と土休日終日は約30分間隔の毎時2本の運転となっている。
今回のダイヤ改正では、平日朝夕を毎時2本、平日・土休日昼間を毎時1本の運転とする。これにより平日は46往復から26往復に43.5%減便するほか、土休日は37往復から23往復に37.8%減便する。かくして多奈川線や約4割も減便するのである。
そもそも多奈川線は各駅乗降人員が1,000人未満となっている。それもそもはず、岬町は人口1万4千人しかおらず、多奈川線自体も2018年度の輸送密度がどんなに高く見積もっても1,874人/日・往復しかおらず、昼間はバスが毎時1本で十分運びきれる。そりゃあバスですら昼間毎時1本で運びきれるんだから電車が毎時2本も必要なわけがない。多奈川線は減便して当然だろう。
2. 多奈川線を100円バスに転換視野か
今回のまた今回の2023年10月21日南海電鉄ダイヤ改正で大幅に減便することとなった多奈川線であるが、なぜ減便することとなったのか。
もっとも平日朝夕に20分間隔運転を行っていたとはいえそもそも全線所要時間が6分しかないので、終日1運用でまかない切れてしまう。このため今回の多奈川線大幅減便に伴う車両運用数の変化はない。
このためどうせ減便しても維持費用が大きく変わらないという理由で運転本数を維持してきた南海電鉄がなぜこの期に及んで多奈川線を大幅に減便することとしたのか。
岬町内には100円で乗車できる岬町コミュニティバスがあり、南海本線淡輪駅~みさき公園駅~多奈川方面に昼間のみではあるものの約1時間間隔で運行しているのである。そのルートは多奈川線と丸かぶりだし、スーパーの目の前など日常生活の重要度が高いところに停まるという点では多奈川線より使い勝手が良い。2023年10月1日より180円に値上げする南海多奈川線はあくまで町外に出るためのものであって、町内移動には使われないのである。おかげさまで利用が減った多奈川線は深日町駅はすでに無人駅だし、深日港駅と多奈川駅も2023年10月10日に無人化する。このダイヤ改正を行う頃には多奈川線の有人駅は南海本線と乗り換えらえられるみさき公園駅しかない。岬町の自業自得である。
さらに多奈川線は車齢50年以上の2200系を使用している。もし存続するとなれば近い将来置き換え用の車両を用意する必要があり、それにも費用が掛かる。
そこで、南海電鉄では多奈川線の廃線と岬町コミュニティバスへの転換を視野に今回の減便に至ったのだろう。
強いて言えば南海本線上、みさき公園駅から約1100m和歌山寄り、南海橋バス停付近に深日駅または岬町駅でも設けて、深日町から徒歩10分でアクセスできる代替駅を設けるかもしれない。が、南海本線上に代替新駅を作っても停車するのは普通車だけだろうし(それでも減便しても毎時2本以上の乗車チャンスはあるので多奈川線よりは多い)、維持管理が増えることを考えると南海電鉄としてはバス発着所も駅前にあり特急「サザン」停車駅のみさき公園駅一本化したいところだろう。
また南海電鉄では同じく車齢50年以上の2200系を使用している高師浜線も廃止する可能性がある。というのも高師浜線は2駅間、1.5kmと短距離で中間駅の伽羅橋駅は起点の羽衣駅の駅勢圏だし高師浜駅も南海本線高石駅から600mしか離れておらず駅勢圏である。はっきり言って廃止しても何ら問題がない。この路線廃止で2200系運用を減らすことで車両更新のために新製投入する車両を減らし、合理化する狙いがあるのだろう。
南海電鉄では1980年に平野線を廃止、阪堺線・上町線を阪堺電車に分社化したことにより路面電車事業を廃止、2006年4月1日に貴志川線を和歌山電鐵に経営分離している。今後も不採算路線の合理化を続けるだろうし、その一環として多奈川線を廃止してもおかしくない。
かつて多奈川線沿線の深日港から淡路島の津名へのフェリーを毎時1本24時間営業で運航していたほか、淡路島の中心地洲本への高速船も運航し南海電鉄では連絡列車として1993年まで難波~深日港間の直通急行淡路号を運転していたほどである。1998年4月5日に明石海峡大橋が開通してから本州と淡路島の行き来は明石海峡大橋の高速道路が主流となり淡路島・四国航路が衰退した今、深日港の旅客船は2001年をもって運航を取りやめている。
岬町では深日港航路を復活させようとクラウドファンディングで資金を集めようとしたが達成率7%と撃沈。社会実験と称し税金で船を呼んでみたが全然旅客が乗ってくれないので定着しない。深日港の旅客船は完全に岬町の自己満足のための道具と化してしまっている。
そんな淡路島・四国航路をもう設けられない深日港の旅客機能は必要ないし、航路連絡鉄道の多奈川線も必要ない。そもそも開業目的が深日港航路の開拓だった多奈川線はもう役割を終えているといって過言ではないだろう。
5. 結び
今回の2023年10月21日南海電鉄ダイヤ改正では、多奈川線で大きく減便することとなった。今後多奈川線の廃止・岬町コミュニティバスへの転換を視野に見据えているのだろう。
全国各地で過疎鉄道路線の廃止やそれに向けての協議が行われている中、南海電鉄でどのような鉄道路線合理化を図るのか見守ってゆきたい。
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