KORAILは2017年12月15日、プレスリリースにて2017年12月22日に京江線を開業させると公表した( 原州~江陵鉄道、12月22日開業 )。今回はこれについて見ていく。
1. 平昌オリンピックに向け新線開業
今回の2017年12月22日に開業する京江線(原州~江陵間)は、2018年2月の平昌冬季オリンピックに向けて開業した路線で、高速鉄道車両KTXのみが運行となり、250km/hでの運転が可能である。
これまでの高速新線は京釜高速線が305km/h、湖南高速線が300km/h対応となっているが、双方とも長距離かつ主要都市を結んでおり、ソウルから京釜高速線の終点釜山まで417.4km、湖南高速線の乗り入れる木浦まで370.6kmと、東京から新幹線で岐阜羽島や名古屋までとほぼ等距離で比較的長距離であるため、ある一定の高速性が求められる。一方今回開業したKTX京江線はソウルから207.2kmと比較的短距離で、新幹線で東京から静岡や長野とほぼ等距離である。つまり長距離需要が見込みずらく、設備面で費用がかさむ最高速度引き上げを行っても所要時間の大幅な短縮が見込めないことからコストパフォーマンスが悪いのだ。
日本でも比較的営業キロが短い新幹線である上越新幹線や北陸新幹線の最高速度が抑えられているのと同様、韓国でも中距離の高速線に対しては最高速度を低く抑えた路線を建設することになったのである。この手法は高速鉄道網の営業キロベースで世界の3分の2を占める中国でも取り入れられている。
ではダイヤはどうなっているのか。韓国鉄道公社KORAILではKTX京江線の開業に先駆けて1週間前の2017年12月15日にダイヤ改正を行い、ソウル駅での京江線の発着余地を確保した。オリンピック期間中及びその前後には臨時ダイヤが組まれるが、まずは平常時ダイヤから見ていく。
2. 運行本数と所要時間はいかに
ソウル駅から江陵へ向かうKTXは、全線が高速鉄道というわけではない。先述したようにKTX京江線は原州〜江陵間、厳密には西原州〜江陵間であり、ソウル駅〜西原州間は在来線をひた走る。在来線といっても韓国は標準軌であるから高速線への直通が容易であり、かつ在来線の中央線のうち清涼里〜龍門間は電鉄化に伴い複線電化のみならず線形変更も行われており、電鉄化当初はKTXの乗り入れが想定されていなかったとはいえ線路環境は良い。
ソウル発江陵行きKTXは、まず京釜線を南に向かい龍山を通過する。そのあと京元線に入り清涼里に停車し、中央線に入る。その後西原州で分岐しKTX京江線に入り、高速運転をここで開始する。ここまで実に江陵までの4割以上に当たる86.4kmを在来線を走行している。その後5kmほど単線になった中央線の横を走り、万鐘が案内状の分岐駅となる。ここから平昌やオリンピック会場に近い珍富を経て江陵に到着する。なぜ単複線なのかというと、単線の中央線は2019年12月予定の新線付け替えにより廃止予定で、線形の良い複線となり輸送力増強を図ることとなっている。その新規に建設される中央線複線が万鐘ではなく西原州で分岐するため、その準備として西原州で中央線と京江線を分岐させることとなった。なお、京江線は西に延伸する予定があり、既にそのうちの一部区間である板橋〜麗州間では首都圏電鉄京江線として4両編成が毎時2〜3本運転されている。
江陵方面KTXは平常時は主にソウル駅~江陵毎日運転のKTXが毎時1本運転される。所要時間は1時間54分~1時間59分で、ソウル毎時01分発、江陵毎時30分発のパターンダイヤで運転され、毎日運転列車のみで見ると18往復の運転となり、最新型車両KTX-山川(ダリアン)の10両編成(機関車2両+客車8両)の5運用で運転される見通しだ。およそ3割の区間で線路を共用する中央線の急行格ムングファ号15往復(清涼里基準・首都圏電鉄を除く)より多い。平昌冬季オリンピック閉幕まで中央線特急格ITX-セマウル2往復(清涼里~栄州間)が運休するということもあるが、いずれにせよ京江線の方が運行本数が多くなっている。KTX京江線は朝と夜の下り(江陵行き)はソウル始発ではなく、ソウル市内の東側のターミナルである清涼里始発で運転される。清涼里を経由する京春線のITX-青春が龍山発着であるにも関わらず、京江線はソウル駅発着となることとなった。
その他に、清涼里~江陵間でおよそ2時間に1本程度金曜・土曜・日曜運転のKTXが運転され、金曜日は5往復、土日は7往復追加で運転される。この曜日運転列車は全て清涼里発着で運転される。
KTX京江線の停車駅は、列車によって異なるが、ソウル駅、清涼里、上鳳、楊平、万鐘、横城、屯内、平昌、珍富、江陵で、中央線の線路を走行する清涼里〜万鐘間では中央線の急行格であるムングファ号の停まらない上鳳に停車する。これは上鳳駅が中央線では後からできた新駅であり既存の列車は通過として首都圏電鉄のみの停車としたこと、ソウルメトロ7号線に乗り換えられること、京春線の特急格のITX-青春は既に停車していること、2018年平昌冬季オリンピック期間では一部の臨時列車が上鳳発着となることから停車することになったものと思われる。全列車停車駅は起終点のソウル駅と江陵の他に、ソウル市東側のターミナル清涼里のみで、それ以外は一部列車停車駅であり、概ね2時間に1本以上は停車が確保されている。
なお、料金的には横城より先の利用の場合には、ソウル駅から乗るより清涼里から乗った方が安い。ソウルから清涼里間はソウルメトロ1号線でアクセス可能で、所要時間も京元線が遠回りなことが災いしKTXが19分に対しソウルメトロ1号線が20分と1分しか変わらない。清涼里発着の列車もあることから、清涼里から利用した方が利便性が高かそうだ。
3. 需要の想定はいかに
韓国では2018年2月に平昌オリンピックが開催されるが、今回のKTX京江線はオリンピックアクセス路線として開業した。過去にも冬季オリンピックで都市鉄道が開業したことは多いが、高速鉄道が開業したこともある。それは紛れもなく1997年10月1日に開業した、長野新幹線である。長野新幹線も東京〜高崎間で上越新幹線の線路を利用し、その先は線路を新設した。ただ決定的な違いとして、長野新幹線は2015年3月14日に金沢まで延伸した。それは1998年長野オリンピックより前から、北陸新幹線として建設されることとなっていたため、オリンピックに向けて一部だけ早回しで長野まで開業させたに過ぎない。
しかしKTX京江線ではどうだろうか。人口25万人ほどの江陵は日本海側であり、そこから延長することができない。強いて言えば東海市くらいしかない。また南北朝鮮が統一したとしてもソウルから元山は京元線で結ぶことは南北政府とも主張しているので、江陵から北に線路が延びてKTXが走る可能性は低い。ともなれば、江陵と原州くらいしかない。韓国では今回のKTX京江線の建設に伴い、当初はソウルからほぼ完全に新規建設するとしていたが、その後現在の中央線から分岐する計画に変更となった。最高速度を下げてコストダウンを図ったとは言え、やはりオリンピック後に需要があるかというとかなり怪しいし、将来性もない。水西高速線でのSRや長野新幹線でのJR東日本のように民間会社運営にしようとしたことも構想されていたようだが、となると、今後の運営も厳しくなるのではないのではないだろうか?
4. 結び
今回の2017年12月22日のKTX京江線開業に伴うKORAILダイヤ改正では、2018年平昌冬季オリンピックに向けて新線を開業させた。今後オリンピック・パラリンピックが閉幕した後、どのような活用がなされるのか、注目したい。
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