京王電鉄は1月24日、プレスリリースにて2018年2月22日にダイヤ改正を行うと公表した( 京王線・井の頭線のダイヤ改正を実施します )。今回は第1弾として、今回のダイヤ改正で新たに導入される座席指定列車「京王ライナー」について見ていく。
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1. ダイヤ改正までの背景
小田急電鉄は代々木上原~登戸間の複々線化工事完了に伴う大規模なダイヤ改正となる2018年3月17日ダイヤ改正プレスリリースを4か月半前となる2017年11月1日に公表した。小田急電鉄としては新年度からの新しいダイヤを先にお知らせしたいということであったが、かえって多摩線と競合する京王電鉄にダイヤ改正時期や内容、プレスの方法について検討する時間を与えてしまった。それを察知した小田急電鉄は1月23日に多摩線の新ダイヤについて改めてプレスリリースを出したが、それをかき消すかのように翌24日に京王電鉄はダイヤ改正プレスリリースを公表したのであった。
2. 新設座席指定列車「京王ライナー」、調布を通過
今回の20182月22日京王電鉄ダイヤ改正では、京王電鉄では初となる座席指定制列車「京王ライナー」を導入する。停車駅は新宿を出ると京王線方面は府中から先の特急停車駅、相模原線方面は京王永山から先の特急停車駅となる。座席指定料金400円が必要なのは新宿から乗車する場合のみで、府中及び京王永山以西の駅では特急同様運賃のみで利用できる。停車駅設定は京王電鉄によると、「京王ライナー」の停車駅は新宿から20km離れた特急停車駅から設定したとしており、明大前が通過となるのはもちろんのこと、新宿から15.5kmの位置にある調布や18kmの位置にある京王稲田堤は通過としたという。なお、京王電鉄の各駅時刻表によれば、府中及び京王永山から先は特急として運転される。
過去に予測記事で扱った通り京王線方面「京王ライナー」は調布を通過しても府中から先の需要で多くの利用が見込めるが、相模原線方面「京王ライナー」は調布や京王稲田堤を通過してしまうと京王永山以西のみの利用に頼らざるを得ない。過去に2016年3月26日小田急電鉄ダイヤ改正で約2時間間隔でしか設定されていなかった多摩線特急ロマンスカー「ホームウェイ」が廃止になったり、京王電鉄でもかつての相模原線特急を廃止としている。それだけに乗車整理券制列車の成功例ともいえるJR東日本の東海道線「湘南ライナー」や東武鉄道の東上線「TJライナー」のように平日において座席が埋まるかは不透明だ。それを鑑みて京王八王子行き・橋本行きともに毎時1本ずつの設定としているのであろう。
なお、「京王ライナー」の座席指定券料金は400円となっており、京浜急行電鉄の「ウイング号」や2018年3月10日ダイヤ改正より運転を開始する西武鉄道の「拝島ライナー」の300円、東武鉄道の「TJライナー」の310円よりも高い設定となっている。JR東日本の「湘南ライナー」や「中央ライナー」、のライナー券510円や小田急電鉄特急ロマンスカーの新宿~町田・相模大野間の410円よりは安いが、JR東日本のホームライナーは特急型車両による運転である一方、昼間は料金不要列車として運転されている私鉄の座席指定制列車の中ではやや値が張っている印象がある。デュアルシート車である西武鉄道「S-TRAIN」は平日は料金510円であるが、これは西武鉄道と東京メトロの両方を跨ぐ区間でしか発券を認めていないためであり、西武鉄道内での料金は300円に設定されていることからも、デュアルシート車の料金の相場は300円なのだろう。
3. 「京王ライナー」運行時間帯はいかに
また座席指定列車「京王ライナー」の運行時間帯もやや消極的だ。東武東上線「TJライナー」は平日は池袋18時~0時発、土休日は17時~21時発まで30分毎に設定されており、平日に関してはほぼ全列車で満席御礼状態だ。JR東日本東海道線の「湘南ライナー」も平日のみ運転ながらも東京18時30分~22時30分発までの最終をの除き30分毎、「京王ライナー」と競合することとなる中央快速線「中央ライナー」「青梅ライナー」も新宿18時~23時発で30~60分毎、京浜急行電鉄の「ウイング号」も平日のみ運転ながらも品川18時45分~23時発までの最終を除き20~30分毎に運転されている。関西の南海電鉄と泉北高速鉄道で運転されている特急「泉北ライナー」もホームライナーに近い運転形態だが、平日はなんば16時55分~23時02分発で運転されている。
しかし今回2018年2月22日ダイヤ改正で設定される京王電鉄の「京王ライナー」は平日は新宿20時~0時20分発まで京王八王子行きと橋本行きがそれぞれ約1時間毎、土休日は新宿17時~21時20分までそれぞれ1時間毎の運転となっている。土休日の運行時間帯については東武東上線TJライナー同様でありニーズに応えているように思えるが、平日は設定時間が約1時間30分程開始が遅いように感じる。確かにJR東海の東海道本線「ホームライナー大垣」は名古屋20時48分発と22時18分発しかなく今回の「京王ライナー」の設定時間帯に近い気もするが、19時台までは北陸本線特急「しらさぎ」や高山本線特急「ひだ」が運転されており、ホームライナー代わりに利用されている可能性がある(同じくJR東海管内を運転する「ホームライナー浜松」は静岡18時12分~21時12分発で設定されている)。となると、今回の「京王ライナー」の導入は平日では様子見要素が強く、今後のダイヤ改正で18時台から設定すべきか検討が成されるのであろう。
なお、「京王ライナー」の所要時間は新宿発京王八王子行きが35~40分、新宿発橋本行きが32~38分となっている。号数は京王八王子行きと橋本行き関係なく新宿発時刻順に振られ、南海電鉄及び泉北高速鉄道の「泉北ライナー」のように平日と土休日で大きく運転時刻が異なる列車でも号数が重複するようになっている。小田急ロマンスカー「ホームウェイ」のように町田や相模大野に停まればその先は利用者が相対的に少ないので小田原線方面も江ノ島線方面も同一の列車愛称で運転されているが、「京王ライナー」は乗車駅である新宿を除いて京王八王子行きと橋本行きの停車駅が一致しないことから、せめてJR東日本の中央快速線を運行する「中央ライナー」や「青梅ライナー」のように行先別に列車名を変えられなかったのかと思う。
4. 「京王ライナー」の接続はいかに
2018年2月22日より運転される「京王ライナー」の各列車への接続はどうなっているのだろうか。「京王ライナー」京王八王子行きは平日の場合府中で各駅停車高尾山口行き、北野で各駅停車または快速高尾山口行きに主に接続する(ただし新宿23時発は府中で各駅停車高幡不動行き、新宿0時発は北野で各駅停車高尾行きに接続)。対して「京王ライナー」橋本行きは新宿23時30分発を除いて途中駅での接続がない。若葉台で抜かした各駅停車に接続することはあるが、特に最終の新宿0時20分発「京王ライナー」橋本行きから京王多摩センターで乗り換えられる列車は、新宿を2分後に出発する準特急京王八王子行きが調布で連絡する列車と同一の最終の区間急行橋本行きである。「京王ライナー」は京王線方面は最終を除き調布で準特急を抜かすのでそこそこ速達性が見込めるが、相模原線方面「京王ライナー」は特に特急通過駅の場合速達性のメリットはほとんどない。着席保証の意味合いが強いのであろう。
また土休日は「京王ライナー」京王八王子行きは府中で各駅停車京王八王子行き、北野で各駅停車高尾山口行きに接続し、「京王ライナー」橋本行きは平日と異なり京王多摩センターで区間急行橋本行きに接続する。「京王ライナー」京王八王子行きが調布で準特急京王八王子行きを抜かすのは平日と同様となった。
5. 結び
今回の2018年2月22日京王電鉄ダイヤ改正では、京王電鉄史上初となるクロスシート車にもなるデュアルシートを連結した5000系電車により座席指定制列車「京王ライナー」を導入した。しかし未だに試行錯誤的なところが多く、停車駅設定や平日の運行時間帯、運転本数には修正の余地がある。これまでも東武東上線「TJライナー」や西武池袋線「S-TRAIN」が増発したように、今後のダイヤ改正で増発がされたり、連続立体交差化が進み千歳烏山や明大前に待避線が設置され2面4線かが成されれば朝の通勤時間帯にも運転時間帯が拡大する可能性がある。
今後のダイヤ改正でどのような設定となるのか、楽しみにしたい。
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