JR西日本は2024年5月15日、プレスリリースにて2025年4月1日に電車特定区間拡大に伴い運賃改定を行うと公表した。今回はこれについて見ていく。
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1. 大阪から遠距離で値下げへ!
今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定では、大阪近郊で運賃改定を図ることとなった。
JR宝塚線は電車特定区間外であったが、2025年4月1日運賃改定により新電車特定区間に編入することなる。これにより定期券と15km超の普通運賃で値下げとなる。
ただ、運賃が値下げとなるとその代替として減便に踏み切る可能性がある。そこでそもそも現状のJR宝塚線の輸送密度から現状必要な輸送力について見ていく。隣駅間輸送密度は2015年の大都市交通センサス調査から見ていく。
隣駅間輸送密度を見るにあたり、列車本数が変わる区間の最大値で見ていく。JR宝塚線は尼崎~塚口間、塚口~宝塚間、宝塚~新三田間で列車運転本数が変わるためそれぞれの区間の最大隣駅間輸送密度である尼崎~塚口間、塚口~猪名寺間、宝塚~生瀬間で見ていく。
2015年の尼崎~塚口間の隣駅間輸送密度は166,467人/日・往復で、昼間は毎時4,000人/日・往復運べることを考えると毎時42両が必要となる。昼間は7両編成毎時6本で運びきれるし、平日夕ラッシュ時の輸送力は1.5倍の毎時63両で、7両編成毎時9本で運びきれる。
2015年の塚口~猪名寺間の隣駅間輸送密度は154,111人/日・往復で、昼間は毎時4,000人/日・往復運べることを考えると毎時39両で足りる。7両編成であれば毎時6本で運びきれるので区間快速毎時4本・普通毎時4本も必要ないのだ。平日夕ラッシュ時は毎時58両で運びきれるため7両編成毎時9本あれば足りる。
宝塚~生瀬間の隣駅間輸送密度は92,404人/日・往復で、、昼間は毎時4,000人/日・往復運べることを考えると毎時24両が必要となる。6両編成毎時4本が必要であることを考えると現状の区間快速毎時4本から減便することはないだろう。
なお2015年度から2019年度の変化では塚口駅31.6%増加、猪名寺駅10.3%増加、伊丹駅2.0%増加、北伊丹駅6.7%増加、川西池田駅1.0%減少、中山寺駅2.8%増加、宝塚駅8.6%減少、三田駅4.7%減少、新三田駅5.5%減少となっている。
そう考えると、昼間は塚口までは7両編成毎時7本程度必要だが、塚口~宝塚間は7両編成ないし6両編成毎時6本で十分運びきれてしまう。一方、宝塚~新三田間は2020年3月14日ダイヤ改正で昼間毎時4本の区間快速のみに減便したためこれ以上の昼間の減便は必要ないだろう。
また平日夕ラッシュ時は7両または8両運転で毎時11本運転しているが、毎時63両で足りるので毎時10本ないし毎時9本に減便しても構わない。
2. 宝塚での阪急電車への乗り換え防止のために平日朝に宝塚始発新設か!
ではどのようなダイヤ改正を行うのだろうか、時間帯別に見ていこう。
2015年大都市交通センサスによれば、宝塚以北(西宮名塩・三田方面)からの利用者の3分の1は宝塚で下車してしまう。その多くが阪急電車への乗り継ぎであることから、なんと宝塚~生瀬間の隣駅間輸送密度は中山寺~宝塚間よりも多くなっている。
まあ西宮・神戸方面への利用であれば阪急電車への乗り換えの方が便利なので至極当然なのだが、大阪方面への利用も乗り換えている人も多い。というのも、大阪~宝塚間の阪急電車は290円と安いことと阪急電車は宝塚も大阪梅田も当駅始発で座れる可能性が高いので、宝塚で安くて全便始発列車の阪急電車に乗り換えてしまうのだ。
そこで平日朝のJR宝塚線列車の一部を運転区間短縮し宝塚始発として運転すれば、宝塚から着席して利用したい人が乗ってくれるようになるだろう。またJR西日本も運用削減を図ることができるので、一石二鳥と言えよう。
3. 昼間の減便はあるのか
では2025年3月JR西日本宝塚線ダイヤ改正で昼間の減便はあるのだろうか。
先述したように、昼間のJR宝塚線塚口~宝塚間は7両編成毎時6本で運びきれてしまう。このため現状のような昼間区間快速毎時4本・普通毎時4本の合計毎時8本は必要はない。
ただ大阪~宝塚間は阪急電車と競合しており、毎時6本の急行を運転する阪急宝塚線に対し毎時6本の全駅停車込みでは競合できそうにない。まあ大阪~川西池田間は330円から320円に値下げとなるが、大阪~宝塚間では330円から340円に値上げするとなると今回の運賃改定が必ずしもJR宝塚線が有利なだけではないことがわかる。
また宝塚以北では2025年4月1日JR西日本運賃改定にて大阪~三田・新三田間は770円から750円に、大阪~西宮名塩間は510円から490円に値下げする。
一方宝塚~三田・新三田間は330円から320円に、宝塚~西宮名塩間は190円から180円にそれぞれ10円値下げするため、阪急大阪梅田~宝塚乗換~西宮名塩間は480円から470円に、阪急大阪梅田~新三田間は620円から610円に値下げとなる。
そうなると西宮名塩~大阪間は普通運賃で20円しか変わらなくなるので、直通で行こうという人は多少増えるかもしれない。
とはいえ運賃面で宝塚乗換阪急電車利用の方が安いことには変わりないので、速い直通快速電車と宝塚始発の普通電車各毎時4本ずつのままにして競合力を維持する可能性はあるだろう。
ちなみに三田から神戸三宮へは神戸電鉄・神戸高速線利用よりJR宝塚線・阪急電車利用の方が170円も安い。神戸方面利用はそこまで変わらなさそうだ。
4. 夕方の塚口発着強化なるか!
では2025年3月JR西日本宝塚線ダイヤ改正で平日夕ラッシュ時にどのような調整を行うだろうか。
先述したように、JR塚口駅の利用者数は2015年から2019年の4年間でなんと30%以上も増加している。大阪~塚口間は阪急神戸線と競合しているが、JR西日本では2011年3月12日ダイヤ改正より尼崎始発終着のJR東西線列車の多くを塚口発着に延長した。これにより朝も昼も塚口始発の電車を設定したことで着席して利用できることから利用が大きく伸びている。
JR塚口駅は朝は7分間隔、昼間は毎時8本(約7分30秒間隔)の乗車チャンスがある。一方で夕方は毎時4本しか乗車チャンスがないのである。しかも朝の7分間隔の普通電車のうち3本に1本程度は塚口始発JR東西線列車で、塚口始発電車を用意することで阪急神戸線塚口駅からJR東西線方面大阪都心方面への利用を奪い、結果としてJR塚口駅利用者が始発電車設定前の2010年度から2019年度の9年間で35.9%も増加している。
先述したように快速通過駅の猪名寺や北伊丹でも利用者は増加傾向にある。もっとも北伊丹はもともと利用者数が少ないが、猪名寺も利用者が増えていること、宝塚以遠は総じて利用者数が減っていることを考えると、快速停車駅を増やしたり普通電車に格下げして利用増加を図った方が良いのではないか。
とはいえ阪急宝塚線との競合を考えたときに快速停車駅を易々と増やすわけにはいかないし、なにより福知山線なので増やせない。しかも朝や昼間は塚口に停車する列車は十分足りているので終日の快速すべてを塚口に増停車する必要性は低い。そう考えると、快速の一部を普通に格下げした方が早そうだ。
平日夕ラッシュ時のJR東西線からの列車は、快速篠山口行き毎時1本、快速新三田行き毎時1本、快速宝塚行き毎時2本となっている。このうち快速宝塚行き毎時2本を不通に格下げした方が良いのではないか。
また土休日夕方も毎時11本の運転を行っているが、毎時8本あれば十分運びきれてしまう。快速毎時4本と普通毎時4本にしてすべて大阪駅乗り入れ、JR東西線直通列車は昼間同様塚口折り返しとすべきではないか。
結び
今回の2025年4月1日JR西日本運賃改定では、増収できる鉄道駅バリアフリー料金制度拡大を図るために電車特定区間を拡大、15km以内で運賃を大手私鉄に近づけ競合を適正化するほか旧幹線エリアでは遠距離を中心に5%程度運賃を値下げ、姫路や滋賀県、関西空港発着利用で恩恵を受けることとなった。
今回の運賃改定を踏まえJR西日本でどのようなダイヤ改正を実施していくのか、見守ってゆきたい。
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関連資料 – 京阪神都市圏における運賃体系の見直しについて – JR西日本
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