高速新線開業で所要時間短縮と国内全土で大改正! ドイツ鉄道ダイヤ改正(2017年12月10日)

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ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)は2017年12月6日、プレスリリースにて12月10日にダイヤ改正を行ったと公表した( Der größte Fahrplanwechsel in der Geschichte der Deutschen Bahn )。今回はこれについて見ていく。

1. 高速新線の開業で大幅時間短縮

今回の2018年ヨーロッパ冬ダイヤ改正に伴う2017年12月10日ドイツ鉄道ダイヤ改正では、高速新線の開業とバイエルン州内での見直しにより営業列車の35%でダイヤ改正が行われる、いわば大改正の様相となっている。

まず最も見どころは、高速新線開業により、人口352万人のドイツの首都ベルリンからドイツ第3の都市で人口146万人にも上るミュンヘンまで4時間を切るということだ。今回開業するドイツ東部を南北に走る高速鉄道整備に係るVDE8のうち最後に残ったニュルンベルク・エアフルト高速線は全長190kmに渡り、うち北側107kmのテューリンゲン州エアフルト~バイエルン州エーベンスフェルト間は300km/h対応の高速新線を開業し、残る南側83kmであるバイエルン州内のエーベンスフェルト~ニュルンベルグ間は既存の在来線を高速化し最高230km/h対応となっている。テューリンゲン州は1990年10月3日のドイツ再統一までドイツ民主共和国(DDR)の領内であったことから、旧東西ドイツにまたがる2本目の高速新線となる。この高速新線開業によりベルリン中央駅~ミュンヘン中央駅までの営業キロが687kmから647kmに40km短縮し、ベルリン中央駅からミュンヘン中央駅までドイツ高速鉄道ICEで最速6時間10分かかっていたものが、今回の高速新線開業に伴い最速3時間58分に大幅に時間短縮される。




これによりベルリン~ミュンヘン間のドイツ高速列車ICEの本数は14往復28本から下り(ミュンヘン中央行き)21本、上り(ベルリン中央行き)19本に増強され、ICEが毎時1本確保されることとなった。なお、ミュンヘン中央駅発着のベルリン中央経由フランクフルト中央発着列車は、フランクフルト中央発ミュンヘン中央行きが7本から10本に、ミュンヘン中央発フランクフルト中央行きが6本から11本に増発された。
今回の高速新線開業に伴う所要時間短縮と増発により初終電にも影響が出ている。まずは初電から。ベルリン中央発ミュンヘン中央行きは4時27分発10時39分着から4時30分発9時21分着に変更となり、ベルリン中央発の初電が3分繰り下がっている。またミュンヘン中央発ベルリン中央行きは5時15分発11時33分着から5時56分発9時51分着に変更となりミュンヘン中央発時刻が41分繰り下がっている。また終電はベルリン中央発ミュンヘン中央行きは19時27分発翌1時43分着から19時28分発翌0時22分着に変更となり、ベルリン中央発の初電が1分繰り下がっている。またミュンヘン中央発ベルリン中央行きは19時22分発翌1時29分着から19時55分発翌0時29分着に変更となりミュンヘン中央発時刻が33分繰り下がっている。

これを見る限り、ベルリン中央駅とミュンヘン中央駅の発車時間帯は大して変わらず、着時刻が繰り上げられたことで駅の営業時間を短くするようだ。なお、ベルリンからミュンヘンへの滞在時間は1時間51分拡大し、ミュンヘンからベルリンへの滞在時間は1時間43分拡大することとなった。




2. 航空機との競合はいかに

今回の高速新線開業によりドイツの首都ベルリンからドイツ第3の都市ミュンヘンまでドイツ高速鉄道ICEで最速3時間58分で結ばれるようになり、列車も毎時1本程度確保されることとなったが、ベルリンからミュンヘンまで647kmというのは日本の東海道・山陽新幹線では東京~姫路間、東北新幹線では東京~八戸間に相当し、高速鉄道以外にも航空機が移動の選択肢として入る距離だ。しかも新幹線はこれらの距離を2時間45分~3時間05分程度で結んでいるが、在来線改良区間もあるドイツ高速鉄道ICEはほぼ同じ距離を4時間程度かけて走る。そのため同じ距離のわりに鉄道が不利となるのだ。

そこでベルリン~ミュンヘン間の航空機について見てみよう。この区間はドイツ国内で完結するため、航空会社は大手のルフトハンザ航空とLCCのEasyJetの2社のみとなる。まずは大手のルフトハンザ航空から。ベルリン空港~ミュンヘン空港間を1時間10分で結び、平日運航便が17往復、土休日が11往復となっている。運航時間帯についても両空港6時30分~21時台発まで用意されており、ドイツ高速鉄道ICEより1時間30分以上遅くまで滞在できることとなる。空港が市街地から離れているとはいえ、1時間30分のリードタイムがあると航空機の方がやや優位だと思われる。運賃は日本にJALやANAのように先特割引や旅割制度のようなものがほとんどであり実質崩壊しているので比較は難しいが、概ねドイツ高速鉄道ICEより高値となっているようだ。

またLCCのEasyJetは平日8往復、土休日5往復の運航と少な目で、所要時間も旧型機を使用しているためか1時間20分となっているが、最安の場合運賃はICEの半分程度しかしない。ともなれば所要時間が短縮されたとはいえ、高速鉄道ICEが航空機と互角に戦えるかどうかで精一杯で、鉄道優勢とは言い難い状況のようだ。




3. 取り残された在来線の行方は

そして今回のエアフルト~エーベンスフェルト間に新設された107kmもの高速新線の開業と引き替えに、当該区間の在来線から高速列車ICEが消滅している。日本なら経営分離して第三セクター会社をつくるところだが、日本以外の諸外国では国鉄が引き続き並行在来線の運営を担うことになる。

今回の高速新線の旧ルートはエアフルトは通らず、ハーレ~エーベンスフェルト~ニュルンベルグ間で在来線を運転していたが、このうちハーレ~ジェナ~ザールフェルト間は普通列車が毎時1~1.5本運転されており、この普通列車の運転は時刻変更があるものの本数に変わりはない。ただ所要時間は高速列車ICEの待避が無くなったため15分程度短縮している列車もある。

またジェナ~ザールフェルト~ニュルンベルグ間では快速列車が運行されており、従来同様2時間に1本程度が確保されることとなった。こちらに関しては多くの区間で在来線の改良が行われたが、快速列車の最高速度引き上げはないこと、高速列車ICEも多くの区間で同じ線路を走行することから1分程度しか所要時間が短縮されていない。

ただ、在来線にも変化が現れている。これまでニュルンベルグ発着の快速列車のうち先述した2時間に1本程度の運転のジェナ行きとゾンネベルグ行きがバンベルグまで併結運転されていたが、これが解消されている。同じく2時間に1本程度の運転のゾンネベルグ行きとヴュルツブルク行きの併結運転は維持されるにもかかわらずだ。これは、ゾンネベルグ行き快速列車毎時1本のうち約半数の2時間に1本が今回2017年12月10日に開業した高速新線を一部経由(コーブルグ~エーベンスフェルト間)するためで、ジェナ行きとゾンネベルグ行きが連結・解放していたリヒテンフェルスをゾンネベルグ行きのうち約半数が経由しなくなることとなったためだ。これによりゾンネベルグ~ニュルンベルグ間の快速列車は従来の旧線経由では14分遅くなっているものの、高速新線経由で18分所要時間が短縮されることとなった。

なお、ベルリン中央駅~ミュンヘン中央駅を結んでいた特急列車インターシティ(IC)毎日運転2往復は廃止され、旧線区間でのライプチヒ~ニュルンベルグ間では代替として2往復(ただし1往復は週5日運転に減便)が区間運転として特急列車インターシティ(IC)が設定されることとなった。




4. バイエルン州内でも経由変更へ

また今回の2017年12月10日ドイツ鉄道ダイヤ改正では、バイエルン州内でも経由地を変更することにより、所要時間短縮が図られる。

ニュルンベルグ~ミュンヘン間で約半分の区間で高速線を通るインゴルシュタット経由のドイツ高速列車ICEは下りミュンヘン方面は43本→51本、上りニュルンベルグ方面は42本→50本へと8往復増加し、やや遠回りとなり高速線を経由しない28万都市のアウクスブルク経由はドイツ高速列車ICEが8往復のまま据え置かれているが、特急列車インターシティ(IC)は廃止されたベルリン中央~ミュンヘン中央間運転の2往復がそのまま減便となっている。またドイツ高速列車ICEもミュンヘン中央~ヴュルツブルク中央へは4往復から3往復に減便されている(特急インターシティは3往復のまま維持)。

ただニュルンベルグ~ミュンヘン間での高速線経由列車の増加は、先述した今回のベルリン中央~ミュンヘン中央間のICE増発が主で、ミュンヘン中央~ハンブルグ中央発着で4本(ハンブルグ行き3本、ミュンヘン行き1本)が増発されている。ハンブルグ発着は今回の高速新線は使用しないが、増発が運用に余裕が出たことから昼間2時間に1本程度から毎時1本程度にまで増発が成されたようだ。

なお、ニュルンベルグ~ミュンヘン間の快速列車は両経由ともほとんど変化がなかった。


5. 結び

今回の2018円ヨーロッパ冬ダイヤ改正に伴う2017年12月10日ドイツ鉄道ダイヤ改正では、VDE8の高速鉄道計画完成に伴いドイツの首都ベルリン~ドイツ第3の都市ミュンヘンまでドイツ高速列車ICEで最速で4時間を切ることとなった。今後ドイツ国内の高速鉄道整備に伴いどのようななダイヤ改正が行われるのか、今回の高速新線開業により航空機からいかに需要を奪うことができ以下に増発が成されるのか、今後高速新線の開業で既存路線も増発が成されるのか見守ってゆきたい。

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