上海地下鉄は3月27日、プレスリリースにて3月31日に新路線である浦江線を開業させると公表した( 浦江线 3月31日起通车试运营 )。今回はこれについて見ていく。
1. 上海でも無人運転交通の導入
今回の2018年3月31日上海地下鉄ダイヤ改正では、上海初となる無人運転の新交通システムAPM(AGT)を採用した浦江線を開業することとなった。中国国内では広州にて2010年11月8日に開業した珠江新城新交通システムがあるが、広州に続き上海は2番目のAPM導入都市となった。
新交通システム浦江線は沈杜公路と匯臻路を結ぶ全長6.68km、6駅を結ぶ路線である。北側の起点である沈杜公路では地下鉄8号線に乗り換えることができる。最高速度は80km/hで、4両編成の新交通システムAPMによるL型車で運転され、今回の開業に合わせ11編成が導入された。全線所要時間は沈杜公路発匯臻路行きが12分、匯臻路発沈杜公路行きが11分となっている。
ただ今回開業した浦江線は地下鉄8号線としか接続しておらず、しかも両線とも起終点同士だ。そうであるなら、浦江線を新交通システムではなく地下鉄として開業させてもよかったはずだ。実は本来は浦江線は地下鉄8号線の南延伸線として計画され、既存の地下鉄8号線と直通運転を行う予定であったが、途中で新交通システムに変更されることとなった。これは、延伸区間が全線高架線であったとしても地下鉄を延伸した場合システムの互換上乗務員を少なくとも1人必要とすることがある。これを今回のように新交通システムとして分けてしまえば、新交通システムの特性上及び既存の地下鉄と直通しないことから無人運転とすることができる。
ではなぜ無人運転にしなければならないのか。2018年3月現在、中華人民共和国では香港含め31の都市で地下鉄が運営されているが、そのうち7割以上の24都市が2010年以降に新規に開業した都市であり、営業距離ベースでは9割以上が2010年以降に開業した路線・区間となってる。そのためどこの都市でも乗務員のみならず保安検査員を含む駅係員などの需要が急増したこと、1970年代より実施されていた一人っ子政策による急速な少子高齢化による人手不足となり、少しでも必要な人手を減らすためにほとんどの地下鉄路線でワンマン運転を実施しているほか、路線が開業しても一部では開業を見合わせている駅もある。しかし新線開業に伴う人手の需要のみならずダイヤ改正で増発を実施する際にも乗務員が必要となり、想定以上に人手が足りなくなっていった。そこで中国では既存の路線とは直通できないものの無人運転を行う技術をつけた。その一環としてa href=”../article/beijing20171230.html” target=”_blank”>2017年12月30日に開業した北京地下鉄燕房線は、本来は房山線と直通するはずだったがとりやめ、地上の一般鉄道にもかかわらず無人運転できるシステムを構築した。もっとも、韓国の2016年7月30日に開業した仁川地下鉄2号線や2017年9月2日に開業したソウル軽電鉄牛耳新設線のように地下鉄でも無人運転ができる国もあるが、どちらも16m級2両編成と明らかに輸送量が小さい。6両編成が主体の中国の地下鉄で無人運転を行うのは避難誘導上危険と思われ、実際韓国でも既存の地下鉄では無人運転は実施せず、新規に開業した安全対策の十分に施された路線のみで対象となっている。そのことを考えると、今手っ取り早く中国の地下鉄で人件費の増加を抑えるには、高架としてのみ開業する路線の無人運転化であり、その策の一つとして今回開業した上海地下鉄浦江線に新交通システムAPMを導入したのではないだろうか。
2. ダイヤはどうなる
では上海地下鉄浦江線のダイヤはどうなるのか。
運転間隔は、平日朝ラッシュ時が3分20秒間隔、平日夕ラッシュ時が3分50秒間隔、平日昼間が6分30秒間隔、土休日昼間が6分間隔での運転となっている。この運転間隔は沈杜公路で接続する、6両編成B型車(京急・阪急クラスの車両サイズに相当)で運転される地下鉄8号線の運転間隔と比べ、平日昼間を除き運転間隔が広い。地下鉄8号線が延伸していたら運転間隔はあまり広げられないことから、空気輸送が多くなっていた可能性が高く、輸送量という面から見ても新交通システムAPMの採用は間違っているとは言えないものと思われる。
昼夕輸送力比(日本の基準で適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を計算すると58.9%となっている。中国では昼夕輸送力比50%の線区もあるが、平日夕ラッシュ時の運転間隔が狭く、あまり混んでいないように思う。
なお、初電は沈杜公路発匯臻路行きが沈杜公路6時00分発、匯臻路発沈杜公路行きが匯臻路5時40分発となっている。終電は沈杜公路発匯臻路行きが沈杜公路22時30分発、匯臻路発沈杜公路行きが匯臻路22時10分発となっている。なお、地下鉄8号線で実施されている金曜日・土曜日の終電延長は浦江線では実施されないこととなった。
3. 結び
今回の2018年3月31日上海地下鉄ダイヤ改正では、上海初の新交通システムとなる浦江線が開業した。上海地下鉄では今後の路線延伸が各方面で予定されており、今年2018年もさらに路線延伸や新線開業が見込まれる。
今後上海地下鉄でどのようなダイヤ改正を実施するのか楽しみにしたい。
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