JR北海道とJR東日本は昨日3日、共同で新幹線の最短所要時間をプレスした( http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/151203-2.pdf )。これによると東京~新函館北斗間は最速4時間2分、新青森~新函館北斗間は最速1時間1分になる見込みである。JR北海道では2016年3月26日、北海道新幹線の新青森~新函館北斗間が開業し、1往復を除き全てが東北新幹線と直通し、定期便では10往復が東京まで「はやぶさ」として乗り入れる。そのため、東北新幹線でもダイヤ改正が行われるため、今回はその予測を行う。
1. 過去の東北新幹線のダイヤ改正変遷
過去の東北新幹線のダイヤ改正の変遷について見ていく。1982年に東北新幹線が開業するが、現在の「はやぶさ」のルーツとなった大宮~盛岡間で速達運転を行う列車の登場は1985年の上野開業時の速達タイプの「やまびこ」である。1988年には大宮通過列車も登場し、1991年には東京乗り入れを果たし、上野も通過するようになる。この時は200系16両編成であったが、1日2往復しか運行されなかった。その後1997年の秋田新幹線の開業で「やまびこ」は「こまち」と併結することになるが、この時も速達タイプの「やまびこ」は1日3往復しか運行されておらず、E2系8両編成での運行によりスピードアップがなされたが、当時の「こまち」は仙台以北で各駅に止まる200系「やまびこ」とも併結をし、その際には仙台で増解結していた。ただこれでは盛岡まで先を急ぐ人も5両編成の「こまち」を利用してしまうため、翌1998年には「こまち」の6両編成化と、東京発着は連結相手が全て速達タイプの「やまびこ」となった。翌1999年には「こまち」併結列車は全てE2系となった。ただ、秋田新幹線の開業した1997年からはパターンダイヤが崩壊してしまい、発着時刻が時間帯によってまちまちになってしまった。
転機が訪れたのは2002年2月の東北新幹線八戸延伸開業である。これにより速達タイプの「やまびこ」は「はやて」へと変わり、全席指定となった。この時にパターンダイヤが復活し、データイムは東京毎時56分発に揃えられ、定期便も1日14往復から15往復に増発した。2010年に新青森延伸開業を果たし、2011年には最高時速320kmで運転する「はやぶさ」が運行開始し、今日では東京から新青森まで毎日17往復が運行されている。
2. 需要はどれくらい増えるのか
北海道新幹線が開業するということは、それだけ需要が増えるということである。現在の海峡線(青函トンネル区間)の輸送密度は、詳細な数値は出ていないが2014年度の値で初めて4000人/日を割ったというから、ここでは仮に4000人/日として考える。この値を見て特定地方交通線並みになったと記述する論者がいるようだが、国鉄時代の指標で平均乗車キロが30km以上の路線では輸送密度が1000人/日未満にならなければ特定地方交通線に指定されなかった(この特例で釧網本線や日高本線の廃止が免れている)。海峡線はほとんどの利用客が全線利用であり、その延長は74.8kmであるから、特定地方交通線並みと言うのは大きな誤りであるということはここで述べておく。
さて本題に戻るが、国土交通省の資料( http://www.mlit.go.jp/common/000224508.pdf )によると東北新幹線の新青森延伸時は在来線特急と比べて22%増しとなっている。この22%は震災の影響を省いているようだが、長野新幹線(当時)や九州新幹線と比べるとやや少ない。これは、長野駅や鹿児島中央駅、熊本駅は全て既存の市街地にあるターミナル駅に設置されたが、新青森は青森市街地から遠く、青森駅基準で見ると時間短縮効果が薄いからだと思われる。ちなみに開業4年後にはさらに12%増加している。今回開業する新函館北斗は、函館駅から16kmも離れており、とても市街地にあるとは言い難い。よって東北新幹線の新青森延伸と同様と考えると、開業初年度の需要増加は4000×22%=880人/日にとどまり、これを13往復=26本で割ると1定期列車あたり平均34人にしかならない。これは、E5系、H5系の偶数番号の普通車の定員100人と比べると、いかに追加需要が少ないかがよくわかる。実は2010年の東北新幹線新青森延伸時も終点まで行く定期「はやて」の本数は2002年の15往復から変わっておらず、今回もこのわずかな需要のために東北新幹線内で本数を増やせるのかと言われると、疑問が残る。
3. では増発の可能性はないのか
ここまで見ていくと、定期列車の増発はほぼないものと思われる。しかし、臨時列車についてはまだまだ伸び代があるものと思われる。当サイトでの臨時列車の扱いについては北陸新幹線の時に触れた通り、「毎日運転」「曜日運転」「多頻度運転」「僅少列車」に分ける。
まず2010年12月の新青森延伸時のダイヤ改正について見ていく。この時、東京~青森県間の定期「はやて」は1日15往復に据え置かれたが、この時に東京~盛岡間の定期「はやて」が増発された。この時増発された「はやて」は東京発下り6、16、17、18、19時台である。このうち6時台については新青森行きの始発列車繰上げによる救済のためであり、18時台の列車は2~3日に1度走る「多頻度運転」であったし、19時台の列車は仙台行き定期「はやて」が延長したものである。つまり、青森や道南により多くの人にご利用していただくために、岩手宮城への利用者に分散を図ったのがこの盛岡行き「はやて」なのだろう。新青森延伸時は確かにこれが増えたが、今回は17時台の多頻度運転「はやて」だけがその候補で、それ以外が定期列車化するのはなかなか考えにくいものがある。東北新幹線内はごく小規模にとどまるのではないだろうか?
4. 結び
今回の北海道新幹線の部分開業で利用者が増えることは間違いない。新青森までせっかく最短2時間59分で行けるにもかかわらず青函トンネルの速度規制で新函館北斗に着くまでに相殺されるのは非常にもったいないと思う。新函館北斗自体が函館から遠いにもかかわらず運賃が非常に高いのも痛手である。開業後に青函トンネルを貨物列車とうまく棲み分けをして、柔軟なダイヤを組んでほしいと思う。またJR東日本では在来線特急で「座席未指定券」を2013年から順次導入している。東北新幹線もE5系に統一された暁には全列車指定席化&座席未指定券発見が始まるのだろうか。今後の進展に期待したい。
コメント