JR北海道は18日、2016年3月26日にダイヤ改正を行うと公表した( http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/151218-2.pdf )。2015年最後の記事となる今回は、新幹線接続特急としての性格を新たに持つことになる「スーパー北斗」「北斗」と補完列車である「すずらん」について見ていく。
1. 北海道新幹線新函館北斗開業によりアクセス増強
今回のダイヤ改正で特急「スーパー北斗」が3往復増発され、「北斗」と合わせて12往復に増強される。このうち11往復は北海道新幹線と接続する。また今回「すずらん」も1往復増発される。特急「すずらん」については「はまなす」の代替列車扱いであるが、「スーパー北斗」の増発による運用増は、車両は新製したキハ261系だと思われるが、乗務員は79本の見直しを行った普通列車から捻出したのではないだろうか?
2. ついに札幌から東京への鉄道旅行が日帰りで可能に!
今回のダイヤ改正による北海道新幹線の開業と特急「スーパー北斗」増発によるアクセス強化で東京~札幌間が9時間7分かかっていたものが下りで最速7時間44分、上りで最速7時間51分に短縮される。東京~札幌間の初終電の変化は以下の通り。
東京~札幌間初終電比較 | 東京→札幌初電 | 東京→札幌終電 | 札幌→東京初電 | 札幌→東京終電 |
現行 | 6時32分発→15時59分着 | 13時20分発→22時57分着 | 6時36分発→16時04分着 | 12時13分発→21時23分着 |
2016年3月26日以降 | 6時32分発→14時41分着 | 15時20分発→23時40分着 | 6時00分発→14時04分着 | 14時44分発→23時04分着 |
つまり今回のダイヤ改正で札幌から東京へ鉄道で行く際にこれまで日帰りできなかったものが、今回のダイヤ改正で1時間16分という短い時間ながらも東京に滞在して日帰りで札幌に戻ることができるようになるのである。逆の東京から札幌への日帰り旅行は可能かというと理論上できないこともないが札幌への滞在時間は僅か3分しかない。これでは観光なんて到底できないし、もはや札幌駅のホームから改札まで往復するだけでもかなり時間に余裕がない。また冬は遅延はしばしば起こり、北海道では多少遅延することはままある。もし行きの札幌行き「スーパー北斗9号」が5分遅延したらそれだけで日帰りが出来なくなってしまう。東京から札幌への日帰り鉄道旅行に挑戦したい方もいるかもしれないが、リスクも考えて旅行してほしいと思う。
ちなみに仙台~札幌間で見ていくと以下のようになる。
仙台~札幌間初終電比較 | 仙台→札幌初電 | 仙台→札幌終電 | 札幌→仙台初電 | 札幌→仙台終電 |
現行 | 8時06分発→15時59分着 | 14時54分発→22時57分着 | 6時36分発→14時29分着 | 14時35分発→23時01分着 |
2016年3月26日以降 | 6時40分発→13時48分着 | 16時54分発→23時40分着 | 6時00分発→12時29分着 | 15時39分発→23時01分着 |
上の表から見ると仙台~札幌間でもかなりの効果が出ており、これまで仙台から札幌への鉄道での日帰り旅行はできなかったが、ダイヤ改正により札幌に1時間49分滞在できるようになる。また札幌から仙台の鉄道での日帰りもこれまでは仙台での滞在時間は25分とトンボ帰りだったが、ダイヤ改正により4時間25分へと大幅に拡大する。4時間もあれば観光もできるし、会議も行える。今回の北海道新幹線開業は札幌視点で考えると効果はかなり高いと思える。
3. 東京~札幌間の料金は?
同ダイヤ改正プレスによると、現在「津軽海峡線の特急・急行」と「函館本線の特急・急行」を乗り継ぐ場合に適用される料金の乗り継ぎ割引は見直され、新函館北斗駅で新幹線と在来線特急を乗り継ぐ場合に適用されるようになるという。これをもとに北海道新幹線が幹線として運賃計算することと合わせて運賃・料金をダイヤ改正前後で計算すると以下のようになる。
東京~札幌間 | 運賃 | 料金(「はやぶさ」利用時普通車指定席通常期料金) | 合計 |
現行 | 14,470円 | 9,870円 | 24,340円 |
2016年3月26日以降 | 14,140円 | 12,680円 | 26,820円 |
つまり運賃については経路の変更などにより現行より330円安くなるが、これまで乗り継ぎ割引のあった「スーパー白鳥」「白鳥」については北海道新幹線になることにより乗り継ぎ割引がほぼなくなることから料金は2,810円値上がりする。この値上がり幅は東京~函館間利用時の料金値上げ幅と等しい。つまり東京~札幌間では運賃が下がる影響もあって合計額は2,480円の値上げで済むことになるものと思われる。
4. 青函急行「はまなす」の代替は列車としては特急「すずらん」だが、函館本線にも一部配慮
今回のダイヤ改正で廃止になる列車がある。それは特急「スーパー白鳥」「白鳥」と寝台特急「カシオペア」、そして青函急行「はまなす」である。「スーパー白鳥」「白鳥」については北海道新幹線が代替となるが、青函急行「はまなす」の道内区間は新幹線で代替できない。そのため、在来線列車で補完する必要があったが、札幌行き下り列車については時刻を1時間以上繰り上げる形で特急「すずらん」が代替し、上り列車についても札幌駅発時刻を合わせる形で特急「すずらん」が代替する。ただし電車特急のため客車の「はまなす」と比べて運転時間が短くなっている。
だがここで問題がある。特急「すずらん」の運行区間は札幌~東室蘭~室蘭間であり、東室蘭~函館間の代替がなされていない。つまり、その区間では代替列車は確保されなかったことになる。しかし今回、補完とまではいかないがある程度配慮がなされている。その配慮は、特急「スーパー北斗」の運転時間の拡大に表れている。
それでは特急「スーパー北斗」の初電繰り上げから見ていく。函館発札幌行きの「スーパー北斗1号」は6時22分発9時58分着だったものが6時10分発9時48分着となり、函館発で12分、札幌着で10分繰り上がる。札幌発函館行き「スーパー北斗2号」では6時36分発10時14分着が6時00分発9時27分着となり札幌発で36分、函館着で47分繰り上がる。終電も大幅に繰り下げられており、函館発札幌行きは19時14分発22時57分着から19時55分発23時40分着となり、函館発で41分、札幌着で43分繰り下げられ、札幌到着は23時台まで確保される。札幌発函館行きは19時29分発23時01分発から20時00分発23時31分着となり、札幌発で31分、函館着で30分繰り下がる。確かに青函急行「はまなす」の廃止は大きいが、特急「スーパー北斗」の運行時間帯が上下とも1時間ずつ拡大していることから、配慮はなされていると言えるだろう。もしどうしても札幌~函館間を夜行で利用したいのであれば、北海道中央バスや道南バス、北都交通などが運行する「高速はこだて号」の夜行便がある。このバスは北海道新幹線に開業により昼行便を含めて新函館北斗駅に乗り入れるようになるから( http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/economy/1-0218010-s.html )、こちらも利便性を上げる模様である。ただ現在急行「はまなす」が通常期でも7両あることを考えると、閑散期はバスでも事足りるかと思われるが繁忙期はバスだけでは追いつかない可能性がある。1月の第4金曜日である2016年1月22日に春の臨時列車についてJR各社から公表がある予定なので、札幌発21前後の特急「すずらん」の臨時列車も引き続き運行されるかも含めてそこで様子を見たいと思う。
5. 結び
今回のダイヤ改正で北海道新幹線に追従する形で道南アクセスが改善されているものの、今回のダイヤ改正で夜行定期列車は「サンライズ出雲」「サンライズ瀬戸」のみとなってしまい、ブルートレインは全滅となった。夜行列車の削減はこれでひと段落つくものと思われるが、夜行列車が経費が昼行列車よりかかることを考えると致し方ないとも思われるし、今回代替列車だけでなく他列車でもある程度配慮を行っていることから、かなり手厚い配慮が行われたと思われる。北海道から夜行列車がなくなるのは残念だが、札幌から仙台や東京への日帰り旅行を可能にしたことは北海道にとって効果は大きいと思われる。航空機にに勝つにはかなり難しいと思われるが、所要時間が短縮されれば鉄道利用者も増えることだろう。今後のダイヤ改正と臨時列車に期待したい。
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