小田急電鉄は18日、2016年3月26日にダイヤ改正すると公表した( http://www.odakyu.jp/program/info/data.info/8360_8351253_.pdf )。昨年は料金不要列車について見てきたが、新年初となる今回の記事では新宿~箱根などを走る小田急ロマンスカーについてみていく。
小田急電鉄の快速急行・区間準急など料金不要列車に関するダイヤ改正はこちら!
1. ロマンスカーの停車駅が一新
今回のダイヤ改正において、ロマンスカーの停車駅が新たに2つ加えられる。1つは海老名、もう1つは伊勢原である。
このうち海老名には概ね毎時1本が停まり、伊勢原には上下2往復が停まるようになる。土休日に関しても「はこね」は新宿を出ると町田、小田原、箱根湯本にしか停まらないのが多かったが、ダイヤ改正後は海老名停車は毎時1本確保され、本厚木にも毎時2本停車に増強され、昼間の「はこね」も停まるようになる。ただし現状平日ほぼ全てのロマンスカーが停車する本厚木の停車は概ね毎時1本取りやめとなる。
2. ロマンスカーの発車時刻も一新
今回のダイヤ改正で20分サイクルダイヤになる関係でこれまで新宿発毎時10、40、50分発だったロマンスカーが毎時10、30、50分発に変更となる。平日土休日とも「はこね」は毎時10、30分発、「えのしま」や「あさぎり」などは50分発、本厚木に停まるのは概ね毎時10、50分発、海老名に停まるのはおおむね毎時30分発となる。「はこね」系列は運行間隔が不均等になるので注意が必要になるものと思われる。
3. ロマンスカーが海老名に停まる意義
ここで海老名にロマンスカーを停車させ、海老名停車のロマンスカーが本厚木を通過する理由を考察していく。
3.1. 海老名自体の需要増
海老名には大規模商業施設のららぽーとが昨年(2015年)に開業した。これによる需要増を見込んでいるものととることもできる。
3.2. 新宿先着列車の確保
今回のダイヤ改正で昼間の快速急行が毎時1本から3本に増発される。6両編成の赤●急行昼間毎時2本は廃止され、急行毎時3本は据え置かれる。ただ現在の急行は新宿先着なのに対しダイヤ改正後は相模大野で快速急行に乗り換えることになり、江ノ島線系統の快速急行が増発されるからとはいえ相模大野から座れる可能性は低い。
つまり料金不要列車だけで見ると新宿まで乗り換えなしで先着するのは昼間毎時4本から毎時3本へと減ってしまい、新宿まで座って移動し続けられる列車も減ってしまうのである。ともなればその分座って移動したいニーズが増えると見込まれ、料金を払ってまで乗りたい客層が出るはずである。ここでロマンスカーが海老名に停車するとなればある程度利用が見込まれるものと思われる。
3.3. 横浜から箱根への移動もスムーズに
海老名ではJR相模線も乗り換えられることは乗り換えられるが、なんといっても横浜と結ぶ相模鉄道と乗り換えることが出来る。相模鉄道は沿線発着の「箱根フリーパス」を発売しており、対箱根でもある一定の需要はある物と思われる。箱根湯本行き特急「はこね」の海老名発時刻は毎時10分発と予想され、相鉄特急の到着時刻が毎時56分であるから、14分ほどで乗り換えられることになる。これと類似した例で「はこね」の新松田停車があり、これは御殿場発着の「あさぎり」を運行するほどまでは需要がない時間帯ではあるがある一定の需要があるため、御殿場線と数分~十数分で接続する形で上下2本ずつ設定されている。このように今回の一部「はこね」の海老名停車は横浜発の相鉄特急と接続することにより新たな需要を見出そうとしているのではないだろうか?
3.4. 将来の相鉄JR直通線を見据えた動き
現在相模鉄道はJRとの直通線工事を進めており、2018年度での開業を目指している。これが開業すると相鉄の通る大和や湘南台、海老名から渋谷、新宿が1本で結ばれることになる。大和はロマンスカーが停まるし湘南台に通るいずみ野線はそもそも輸送量が小さいので快速急行の増発による新宿直通列車の増加で十分であろう。ただ海老名は3.2.にあるように直通する新宿先着列車が減ってしまうし、6両の赤●急行がが10両に増強されても相模大野で座れなければやはり利便性は下がるだろう。もし相鉄JR直通線に2階建てグリーン車が入るようであればなおさらである。ともなればロマンスカーの停車はやはり必要であろう。
3.5. 本厚木と海老名は利用者数がほぼ同じ
小田急電鉄の1日平均乗降人員を見てみる( http://www.odakyu.jp/company/business/railways/users/ )。このデータは2014年のものであるが、これを見ていくと本厚木は147,887人/日で海老名は135,861人/日であり、小田急電鉄全体でも6位と7位を記録している。これを見ると利用者数はやや本厚木の方が多いものの、本厚木と同程度であれば海老名にロマンスカーを止めても差支えないように感じる。今回のダイヤ改正で平日のロマンスカーの停車が削減される本厚木であるが、「メトロはこね」が新たに停車するようになることから海老名より多い停車回数を確保するものと思われるし、土休日は停車回数が増えるためかえって便利になるのではないかと思われる。
4. ホームウェイも見直しへ
4.1. 千代田線発「メトロホームウェイ」の増発
新型ロマンスカーMSEが増備されたためか、今回のダイヤ改正で「メトロホームウェイ」が2本増発され、18時台~22時台に毎時1本運行される。1本を除き大手町始発で設定される。
これにより平日夕ラッシュ時は小田急直通列車が現行の多摩急行毎時2本から準急、ロマンスカーをそれぞれ毎時1本追加した毎時4本へ増強される。
4.2. 新宿発「ホームウェイ」の見直し
千代田線からのロマンスカーが増える分新宿発では本数が見直される。平日20時台および22時台の「ホームウェイ」は4本の運行から3本の運行に削減される。「ホームウェイ」は満席にすぐなるので減便は痛手となるものと思われる。
ただ朗報もある。それはロマンスカーの最終が繰り下がることである。小田原行きの最終ロマンスカーは新宿21時30分発であるが、ダイヤ改正後は22時00分発となり、秦野、小田原への最終が30分繰り下がる。また新宿発18時~22時に運行される本厚木行きや秦野行きは全て小田原まで延長運転されることなり、利用者の増加が見込まれるものと思われる。
4.3. 多摩線「ロマンスカー」が廃止へ
現状も小田原線系統「ホームウェイ」で停まる町田や江ノ島線系統の「ホームウェイ」で停まる相模大野に行かない多摩線系統の「ホームウェイ」が廃止されることとなった。先ほど4.2.で20時台に減便することを挙げたが、多摩線系統の「ホームウェイ」は満席になることは少なく、その分需要が多い小田原線方面に走る「メトロホームウェイ」の本厚木行きを増やすのは致し方ないことだと思われる。多摩線の平日夕ラッシュ時は減便となるが、需要の少ない多摩線にしては妥当だと思われる。
5. 結び
今回の小田急電鉄のダイヤ改正では快速急行の大増発のみならずロマンスカーも大幅なダイヤ改正となった。上でも述べたが、土休日の多くの「はこね」はこれまで新宿を出ると町田、小田原、箱根湯本にしか停まらなかったが、今回のダイヤ改正で「メトロはこね」を含むほとんどの「はこね」が海老名または本厚木に停車するようになり、より乗客を集めるようになる。これは逆に箱根への輸送量が減ってしまって様々な方面からロマンスカーの乗客をかき集めようとしているのではないだろうか?発着地の箱根は昨年(2015年)から火山活動が活発になっており、年の瀬になると徐々に収まってはきたもの未だに大涌谷周辺では立ち入り規制がされており、箱根ロープウェイは一部区間で運行を見合わせている。立ち入り規制の長期化が箱根地区全体の観光業に悪影響を及ぼしていることは言うまでもない。今後の観光客の呼び戻しに期待したい。
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