JR東海は2020年5月7日、プレスリリースにて2020年5月11日より東海道・山陽・九州新幹線で臨時ダイヤで運転すると公表した( 東海道新幹線 今後の運転計画について(5月11日以降) )。今回はこれについて見ていく。
1. 定期「のぞみ」削減へ
今回の2020年5月11日実施の東海道新幹線臨時ダイヤ運転では、定期列車でも削減を図る。
東北・上越・北陸の各新幹線の定期列車の減便は2020年5月28日から行うとしており予告までしていたが、東海道・山陽・九州新幹線では実施4日前の公表で急遽行うこととなった。たしかにゴールデンウィーク期間中の「のぞみ」「ひかり」の利用が前年比で5%しかなかったのですぐに減便に不向きりたかったのだろうが、やや急ハンドル感が否めない。
もっともそもそもの運転本数が多く多少減便しても運転間隔が開きづらい、運転パターン数が少ないので代替の非定期列車の運転をほとんど行わなくてよいなど実行に移しやすい面はいくらかあったようだ。
今回の東海道新幹線臨時列車運転では、定期「のぞみ」を減便する。
減便するのは主に通常ダイヤで東京~新大阪間で運転している定期「のぞみ」で、「のぞみ」の曜日運転列車は全運休となる。これにより定期「のぞみ」で残ったのはパターンダイヤ時間帯では平常時なら山陽新幹線に直通する定期「のぞみ」毎時3本となった。
東海道新幹線内東京~新大阪間であれば「のぞみ」の停車駅に違いはないから、東海道新幹線内でしか運転しない「のぞみ」の減便はいとも簡単にできる。また概ね15~21分間隔で来るので、長距離列車としては利便性はそこまで低くはないだろう。
これにより東海道新幹線では平日は定期列車だけでも1日82往復、休日は定期列車だけでも1日76往復の「のぞみ」を運転していたのにもかかわらず、臨時ダイヤ期間中は1日50往復半しか運転しないこととなった。ちなみに臨時列車を含めれば平均1日115往復運転していたので、実に輸送力は56.1%も減少している。
なお定期「ひかり」「こだま」の減便は引き続きない。「ひかり」は千鳥停車が多いので減便できないのはやむなしだが、昼間の「こだま」は平常時から空いており本来毎時1本でも十分運べる(新富士での富士急静岡バスによる富士への連絡バスは昼間毎時1本しかないし)。そう考えると、昼間の「こだま」は削減しても良かったのではないだろうか。
ただそれができないのは、おそらく静岡県に対して怒りを買いたくないから。JR東海はこのプレスリリースを公表した2020年5月7日にリニア中央新幹線絡みで国土交通省から公開処刑されている。ただでさえ2020年の収入減で(あの東海道新幹線なので赤字にはなっていないが)リニア中央新幹線の建設費を賄えるか不透明になりつつある今、そもそも一部区間で工事ができないとなったらこれまで他都県で行ってきた工事を含む全ての経費が水の泡になる。
なお新幹線の初終列車は通常通り運転するが、在来線連絡までは考慮していないので、新幹線の通る市の外から利用する場合は利用できる一番列車の繰り下げや接続する終列車の繰り上げが行われている可能性はある。万が一必要不可欠な外出で利用しなければならない時には注意はしておいた方が無難だろう。でも品川6時00分発「のぞみ79号」博多行きは7分後に東京6時00分発「のぞみ1号」博多行きが来るし、この期に及んで航空機と競合している場合でもないと思うのは気のせいだろうか。
ちなみに今回の臨時ダイヤ運転では3-2-2(3)ダイヤの合計最大毎時8本の列車しか運転しなくなるわけだが、過去の東海道新幹線のダイヤパターンに照らし合わせると昼間のパターンダイヤ時間帯に東京~新大阪間で最速達の列車を最大毎時3本しか運転しないかつ全列車合わせても毎時7本しか運転しなかったのは1968年10月1日東海道新幹線ダイヤ改正からの1年間で、その後1969年10月1日ダイヤ改正で全列車合わせて毎時9本運転できるようになった。このことから今回2020年5月に実施する臨時ダイヤは50年前の1969年10月並みの運転本数に戻ったということである。おいおい、大阪万博まだやってないぞ(強いて言えば当時は東海道新幹線の全列車が12両編成だったので1本あたりの輸送力は現在の方が勝ってはいるが)。
2. 「のぞみ」「みずほ」大減便で「さくら」で補完へ
今回の2020年5月11日実施の山陽新幹線臨時ダイヤ運転では、「のぞみ」を中心に減便を図る。
「のぞみ」は山陽新幹線内の定期列車だけでも毎時3本の運転を確保しているが(ただし一部広島発着)、臨時ダイヤではこれを原則毎時1本まで減便する。
ただ東海道新幹線とは違い、「のぞみ」は山陽新幹線内では6つの停車パターンを持っている(全停車駅のみ停車の最終「のぞみ64号」東京行き、姫路・福山・徳山・新山口のうち1駅に停車する列車、姫路及び福山の両方に停車する列車)。そして毎時3本の運転を駆使して姫路・福山・徳山・新山口の4駅に千鳥停車するように配置してきた。
しかし「のぞみ」を毎時1本しか運転しないとするとせっかくの千鳥停車の意味がなくなってしまう。実際東海道新幹線で山陽直通定期「のぞみ」をほとんど減便しなかったのは山陽新幹線では千鳥停車する「のぞみ」を残したかったからだろうし、大減便を行った結果山陽直通定期「のぞみ」で昼間のパターンダイヤ時間帯に残ったのは東京毎時09分発/毎時36分着の福山停車の定期「のぞみ」だけで、このほか徳山・新山口、特に姫路への「のぞみ」停車が大きく削減している。これらの減便により、山陽新幹線では「のぞみ」が定期列車だけで105本から53本に半減した。
そこで、東京毎時30分発/毎時15分着の本来なら山陽直通定期「のぞみ」だが東京~新大阪間のみの運転に短縮する「のぞみ」を新大阪で「さくら」と連絡させる。しかし、「さくら」の停車は全停車駅に加え主に福山であり、前回の2020年3月14日ダイヤ改正を以て定期「さくら」が全停車するようになった福山と比べると徳山や新山口への停車本数は確保できていないどころか、姫路はほとんどの「さくら」が通過してしまう。というか福山に全部停まったところで臨時ダイヤでも運転する「のぞみ」と停車駅がかぶるだけだし、福山は影響がほぼなくなるからラッキーなのかもしれないが「のぞみ」通過の救済措置とは言い難い。また「さくら」「ひかり」と比べ加算料金を徴収している「のぞみ」がこれ以上停車駅を増やすわけにはいかない。
そこでさらに「のぞみ」の減便救済措置として「さくら」の停車駅を増やすことで対応することとした。
ただこの停車駅の増加により新大阪~博多間で所要時間が4~8分延び、九州新幹線内の運転ダイヤを別の「さくら」に合わせるために「さくら」を博多で14~17分停車することにした。「みずほ」がほぼなくなってただでさえ所要時間がかかるというのに、「さくら」の所要時間も20分延びては新大阪~鹿児島中央間を結ぶだけで4時間半かかってしまう。まあこのご時世なので航空機との競合を考えている暇はないのだろうが、航空機と対抗してシェアがかなっていないというのを理由につけている感は否めない。
なお山陽新幹線内では「こだま」は平常通り運転するが、「ひかり」は平常ダイヤより運転本数が多い。これは本来定期「さくら」として運転している列車が九州新幹線区間でのみ運休となったことにより新大阪~博多間での運転となったことで、「さくら」を使用できずに「ひかり」に列車愛称を変更したものである。臨時列車では運転日により運転区間が変わることにより臨時「さくら」を臨時「ひかり」として運転することはなくはないが(でも最近は減っていた)、臨時ダイヤで当分の間新大阪~博多間で「のぞみ」に抜かされない「ひかり」が6本にまで戻ったのは2012年3月17日ダイヤ改正で「ひかりレールスター」が絶滅危惧種になって以来のことである。
このほか、九州新幹線直通の「みずほ」は前回の2020年3月14日ダイヤ改正で定期列車を7往復から8往復に増発したのに(まあ毎日運転の臨時列車を定期化しただけなのだが)、今回の臨時ダイヤ運転では下り(鹿児島中央方面)3本と上り(新大阪方面)1本の合計4本にまで減ってしまった。
3. 「つばめ」減便で「さくら」停車増加へ
今回の2020年5月11日実施の九州新幹線臨時ダイヤ運転では、最速達の「みずほ」のみならず「つばめ」でも減便を行う。
東海道新幹線や山陽新幹線では各駅停車でいつも空いている「こだま」は平常通りの運行としたが、九州新幹線では各駅に停車する「つばめ」の減便にも踏み切ったようだ。
ただ内容を読むと熊本~鹿児島中央間で通過運転を行うのが「みずほ」のみとなっているし、博多~熊本間の「つばめ」は昼間2時間に1本しか来ず、昼間の「さくら」が通過する筑後船小屋、新大牟田、新玉名の3駅は昼間2時間に1本しか乗車チャンスがない。おいおい、絶対以前の2020年4月28日の記事読んでからダイヤ考えたよね?
余談だが、ゴールデンウィーク期間中でも長崎本線や日豊本線は遠距離利用は前年比の4%はいたようだ。この4%というのはほかの全国の新幹線や在来線特急とほぼ同水準である。ただJR九州はゴールデンウィーク危難の在来線特急を全て運転見合わせにしたことから、これらの客は主に2両編成の狭い普通列車に詰まれたようだ。結果車内を混雑させて感染のリスクを上げたという意味では、JR九州の在来線特急全面運休は失敗だったと思われる。
4. 結び
今回の東海道・山陽・九州新幹線臨時ダイヤ運転では、各線で定期列車の減便に踏み切った。
また「のぞみ」の通過駅救済のために「さくら」の停車駅を増やして対応した。
今後東海道・山陽・九州新幹線でどのような臨時ダイヤを設定しるのか、見守ってゆきたい。
コメント