JR西日本は、プレスリリースにて東京オリンピック開催直前の2019年度にN700系の投入を完了し全ての東海道新幹線に直通する列車をN700系(及び2020年度より投入されるN700S)に統一すると公表した( 東海道・山陽新幹線車両 N700Aを3年間で15編成投入 )。今回はこれについて見ていく。
1. 臨時700系のぞみ消滅で全体的にスピードアップへ
今回の2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正では、16両編成の700系が廃止となり、全ての「のぞみ」でN700系による運転となる。
これにより山陽新幹線「のぞみ」は全て300km/hによる運転に揃えられることにより、「ひかり」「こだま」を除き285km/h運転の列車が姿を消すこととなる。
700系とはいえど、のぞみを抜かすわけにはいかない。そのためN700系運行であっても停車駅を加味しても3分程度昼間は所要時間が伸びていた。しかし今回のダイヤ改正で「のぞみ」が全てN700系での運転となることから、700系臨時「のぞみ」のせいで詰まっていたみずほ・さくらも所要時間短縮が見込める。
なお、山陽新幹線の「のぞみ」の増発を行うとすればN700SがJR西日本側にも「のぞみ」毎時1本程度運転できる程度の編成数が揃う見込みかつN700系16両編成の廃車が行われない場合に2021年3月ダイヤ改正に行われる可能性があるが、少なくとも2020年3月ダイヤ改正ではパターンダイヤ時間帯の「のぞみ」の増発はなさそうだ。
ただ、今回の2020年3月ダイヤ改正で東海道新幹線で白紙ダイヤ改正が行われるとすると、山陽新幹線でも大規模なダイヤ改正を行ってしまいたいところもあるのではないだろうか。もし2021年3月ダイヤ改正で臨時列車を含め「のぞみ」最大毎時6本運転を念頭に置いているのならなおさらだ。そこで今回は、現状ペースで東海道新幹線内所要時間短縮による新大阪発着時刻変更ケースと、概ね「のぞみ」10分間隔の白紙ダイヤ改正ケースの2パターンについて見ていく。
2. 東海道新幹線内での運転時間変更分のみ新大阪発着時刻をずらす場合
まずは東海道新幹線内での運転時間変更分のみ新大阪発着時刻をずらす場合。
そもそも山陽新幹線内のダイヤ作成は、まずは新大阪発着時点での東海道新幹線に乗り入れる「のぞみ」「ひかり」の時刻を決め、博多発着の「のぞみ」を決め、新大阪で折り返す「みずほ」「さくら」「こだま」の時刻を決め、「みずほ」「さくら」の運転時刻をパターンダイヤとは関係なく埋め、広島発着「のぞみ」の運転時刻を決め、最後に「ひかり」「こだま」の運転時刻を決めることに尽きる。
そのため、東海道新幹線内所要時間短縮により「のぞみ」の時刻が新大阪発着で動くことは、山陽新幹線にとって大きな変化をもたらし得るのである。
ではまず最新の2019年3月16日ダイヤ改正時点でのダイヤについて見ていこう。
以下の表は横スクロールできます。
2019年3月16日現在 | のぞみ | のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら |
のぞみ | みずほ orさくら orひかり |
のぞみ |
東京発時刻(毎時) | 10 | 13 | 30 | – | 40 | – | 50 |
東海道新幹線内運転頻度 | 定期 | 僅少 | 定期 | – | 多頻度 | – | 定期 |
新大阪発時刻(毎時) | 39 | 48 | 05 | 08 | 13 | 20 | 25 |
山陽新幹線内運転頻度 | 定期 | 僅少 | 定期 | 定期 | 僅少 | 多頻度 | 定期 |
博多着時刻(毎時) | 07 | 24 | 33 | 不定 | 50 | 不定 | 広島止 |
2019年3月16日現在 | のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら |
のぞみ | のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら orひかり |
博多発時刻(毎時) | 56 | 10 | 不定 | 19 | 36 | 広島始発 | 不定 |
山陽新幹線内運転頻度 | 僅少 | 定期 | 定期 | 僅少 | 定期 | 定期 | 多頻度 |
新大阪着時刻(毎時) | 31 | 38 | 48 | 54 | 04 | 18 | 24 |
東海道新幹線内運転頻度 | 多頻度 | 定期 | – | 僅少 | 定期 | 定期 | – |
東京着時刻(毎時) | 03 | 13 | – | 30 | 33 | 53 | – |
ここで以前の2020年3月の東海道新幹線ダイヤ改正予測による所要時間短縮を考慮し、2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正予測をしたものがこちら。
2020年3月予測 | のぞみ | のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら |
のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら orひかり |
東京発時刻(毎時) | 10 | 13 | 30 | – | 40 | 50 | – |
東海道新幹線内運転頻度 | 定期 | 僅少 | 定期 | – | 多頻度 | 定期 | – |
新大阪発時刻(毎時) | 39 | 42 | 02 | 05 | 12 | 19 | 23 |
山陽新幹線内運転頻度 | 定期 | 僅少 | 定期 | 定期 | 僅少 | 定期 | 多頻度 |
博多着時刻(毎時) | 07 | 10 | 30 | 不定 | 40 | 広島止 | 不定 |
2020年3月予測 | のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら |
のぞみ | のぞみ | みずほ orさくら orひかり |
のぞみ |
博多発時刻(毎時) | 03 | 13 | 不定 | 33 | 36 | 不定 | 広島始発 |
山陽新幹線内運転頻度 | 僅少 | 定期 | 定期 | 僅少 | 定期 | 多頻度 | 定期 |
新大阪着時刻(毎時) | 31 | 41 | 48 | 01 | 04 | 20 | 24 |
東海道新幹線内運転頻度 | 多頻度 | 定期 | – | 僅少 | 定期 | – | 定期 |
東京着時刻(毎時) | 03 | 13 | – | 30 | 33 | – | 53 |
こうしてみると、臨時「のぞみ」の最高速度引き上げにより所要時間短縮が図られるものの、新大阪発着時刻変更の影響で「のぞみ」と「みずほ」「さくら」の走順が変わりそうだ。そうなると当然のことながら九州新幹線にもダイヤ改正の余波が来そうだ。
3. 山陽新幹線で白紙ダイヤ改正はあり得るか
また今回の2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正では、白紙ダイヤ改正が行われる可能性もある。
もし2021年3月ダイヤ改正で臨時含め「のぞみ」最大毎時6本化を狙っているのなら、東京発着基準で10分間隔運転としてもいいはずだ。さすがに増発分は広島折返しとなりそうだが、少なくとも若干新幹線有利ながらも拮抗している東京~岡山・広島間の航空シェアを多少なりとも奪えそうだ。
また10分等間隔運転とすれば、少なくとも「こだま」が4本の列車に抜かれるということが少なくなり、「こだま」の所要時間短縮が見込めそうだ。
4. 終列車繰り下げは必発へ
また今回の2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正では、下り(広島・博多方面)の終列車繰り下げが必発だ。
山陽新幹線の下り終列車は、2012年3月17日ダイヤ改正の東京発時刻を変えない形での東海道新幹線内所要時間短縮により、新大阪着時刻が3分繰り上がり、新大阪での停車時間を2分から3分に延ばしたものの山陽新幹線新大阪発の博多行き及び広島行き終列車時刻を2分繰り上げることとなった。
しかしその際に東京から見て広島の滞在時間を短くしないよう、東海道新幹線内で3分所要時間が短縮されたのに合わせて朝の上り(東京方面)の山陽新幹線直通列車と新大阪始発列車の位相を10分変え、岡山始発一番列車及び広島始発一番列車をともに6時00分発に設定、東京着時刻を10分繰り上げることに成功した。
これらのことを総合すると、今回の2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正では終列車の繰り下げ実施が濃厚だ。
まずは博多行き最終列車から。現在の博多行き最終列車は東京18時50分発「のぞみ59号」博多行きで、新大阪を21時26分に出発する。
しかしこの「のぞみ」は2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正で東京→新大阪間の所要時間が6分短縮し、2時間27分運転を行う見込みである。また東京19時00分発「のぞみ」も2時間27分を行う可能性が高い。
そうすると、東京18時50分発「のぞみ」を博多行きから新大阪止まりに短縮して、東京19時00分発「のぞみ」を新大阪行きから博多行きに延長すればよいのではないだろうか。そうすると新大阪着時刻は21時27分着で組むことが可能となり、現状より3分遅い新大阪21時29分発で組むことができる。現在最終「のぞみ59号」は博多23時54分着となっており、3分遅くなっても23時57分着だから新幹線の営業時間内に収まる。
また小倉や博多で接続するJR九州各線の最終列車を見ても新幹線の到着が3分遅くなっても接続できるようになっている。JR九州では2018年3月17日ダイヤ改正で大規模な初電繰り下げと終電繰り上げを実施しているが、近い将来のダイヤ改正を見込んで終電を設定していたようだ(そうでなければ鹿児島中央始発の終列車のように極限まで繰り上げかねないからね)。
これにより博多行き最終「のぞみ」は、東京発基準で10分繰り下がる19時00分発に、新大阪発基準で3分繰り下がる21時29分発となりそうだ。
次に広島行き最終列車。こちらも博多行き最終列車同様2012年3月17日ダイヤ改正で新大阪発車時刻を2分繰り上げさせられたが、こちらも終列車繰り下げの可能性が高い。
現在の広島行き最終列車は東京19時50分発「のぞみ129号」広島行きであるが、東海道新幹線内で所要時間が6分短縮し東京20時00分発「のぞみ」を広島行きに切り替えるとすると、東京発基準で10分繰り下がる20時00分発に、新大阪基準で3分繰り下がる22時29分発で設定できる。なお広島着時刻は23時55分着から3分繰り下がり23時58分着となるが、JR各線への終電は確保されている。
次に岡山行き最終列車。現在東京20時30分発「のぞみ133号」岡山行きであるが、この「のぞみ」は2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正でも2時間30分運転を行う可能性がある「のぞみ」であり、東海道新幹線内で3分しか所要時間を短縮できない。
また後続の東京20時40分発「のぞみ」も2時間27分運転できるか怪しい「のぞみ」である。深夜時間帯だから2時間27分運転にしやすいというのはあるが(それもあってパターンダイヤ時間帯であれば2時間30分運転のことろ、この「のぞみ」は2時間29分運転を行っている)、やや確実性に欠ける。
ただもし東京20時40分発「のぞみ」が東京→新大阪間で2時間27分運転を実施し新大阪行きから岡山行きに延長するのであれば、東京発基準で10分繰り下がる20時40分発に、新大阪基準で3分繰り下がる23時09分発で設定できる。なお岡山着時刻は23時55分着から3分繰り下がり23時58分着となるが、JR各線への終電は確保されている。この接続する終電の中には岡山24時12分発瀬戸大橋線快速マリンライナー77号高松行き(普通車のみ)もあることから、高松への最終列車も繰り下げられることとなる。
このあたりから徐々に不確実さが増してくるのだが、おそらく岡山行き最終「のぞみ」の終電繰り下げはあり得そうだ。
最後に姫路行き最終列車。現在姫路行き最終列車は東京20時50分発「のぞみ135号」姫路行きであるが、博多行き最終や広島行き最終同様東海道新幹線内で6分所要時間短縮が可能なため、東京21時00分発「のぞみ」を新大阪行きから姫路行きに延長することにより東京発基準で10分繰り下がる21時00分発に、新大阪基準で4分繰り下がる23時29分発で設定できる。さすがに新大阪から姫路へは天下の新快速があるので利用者が少ないだろうが、少なくとも東京から新神戸・姫路への最終列車が10分繰り下がるのは利便性向上につながりそうだ(ただ真の最終列車と言う意味では新大阪で新快速連絡の方が遅くまで東京に滞在できるのであるが)。
一方、初列車については所要時間の短縮はあるが、東京着時刻が変わる可能性が低いため山陽新幹線側の始発駅発車時刻繰り下げ実施が濃厚である。初列車の東京着時刻繰り上げには、2020年7月導入予定のN700S投入による所要時間短縮が必須なようだ。
5. 結び
今回の2020年3月山陽新幹線ダイヤ改正では、「のぞみ」が臨時列車含め全て300km/h対応のN700系による運転となることで、臨時「のぞみ」を中心に大幅な所要時間短縮が見込めそうだ。
また東海道新幹線内の所要時間短縮により、昼間のパターンダイヤ時間帯での走順変更も予想される。
さらに下り終列車の繰り下げが実施され、利便性が大幅に向上しそうだ。
2020年7月より「のぞみ」にN700Sが投入される見込みの山陽新幹線であるが、今後どのようなダイヤ改正を実施するのか、楽しみにしたい。
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