上海地下鉄は2018年12月28日、プレスリリースにて12月30日に軌道交通5号線と地下鉄13号線の延伸を行うと公表した( 上海轨道交通5号线南延伸、13号线二三期12月30日载客试运营 )。今回はこれについて見ていく。
1. 路線延伸でネットワーク拡大へ
今回の2018年12月30日上海地下鉄ダイヤ改正では、上海地下鉄で2つの路線が延伸した。
1つ目は軌道交通5号線。本線が東川路~奉賢新城間を16.080km、8駅間延伸し、全長27.196kmの路線となった。これにより奉賢区に初めて上海地下鉄の路線が開業することとなった(外部サイトの路線図はこちら)。この延伸により軌道交通5号線では2018年10月20日ダイヤ改正以来約2か月ぶりにダイヤ改正を実施することとなった。
今回のダイヤ改正では6両編成で運転される本線で実施された。本線では終日に渡り全線運転が実施されていたが、今回のダイヤ改正で平日朝夕ラッシュ時に莘荘~東川路~蕭塘間の区間運転列車が設定されることとなった。
運転間隔は平日朝夕ラッシュ時は区間運転も走る莘荘~東川路~蕭塘間では4分間隔、全線運転のみが走る蕭塘~奉賢新城間は8分間隔での運転となる。また平日昼間と土休日昼間は延伸前に運転されていた6分間隔運転(毎時10本)がそのまま全線運転に延長されることとなった。
このことから昼夕輸送力比(日本の基準で適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を計算すると平日朝夕ラッシュ時に区間運転も走る莘荘~東川路~蕭塘間では66.7%、全線運転のみが走る蕭塘~奉賢新城間は133.3%となる。当然のことながら平日朝夕ラッシュ時より昼間の方が運転本数が多い蕭塘~奉賢新城間は昼間は空気輸送状態となる。
なお4両編成で運転される支線は今回はダイヤ改正を実施しなかった。
全世界的に昼間の地下鉄は全列車全線運転が基本となるが、ちょっと空気輸送の度が強すぎないか。100.0%までなら平日夕ラッシュ時と昼間の運転本数が同じなので、地域輸送性を考えているんだなとわかるのだが、6分間隔を8分間隔に延ばしてもそこまで待ち時間は増加しない。かつて全列車で直通運転を実施していた支線を東川路で系統分割して運転系統を簡素化したいのはわかるが、東京メトロ丸ノ内線のように視線も6両対応化して上海市中心部への接続地である莘荘までの直通列車を確保しようと思わなかったのだろうか。そうすれば、平日朝夕ラッシュ時は蕭塘発着の区間運転列車を支線の閔行開発区発着として運転できるほか、昼間も奉賢新城発着列車の一部を支線の閔行開発区発着に割り振ることで、空気輸送を軽減させることができるはずだ。
このほか、初電は下り(奉賢新城方面)が莘荘5時50分発、上り(莘荘方面)が奉賢新城5時42分発となっている。また終電は下り(奉賢新城方面)が莘荘22時30分発、上り(莘荘方面)が奉賢新城22時00分発となっている。
なお、軌道交通5号線内相互駅間利用時のみに適用されていた1元割引については今回の路線延伸をもって廃止されることとなった。これにより上海地下鉄の他路線同様初乗り3人民元(約50円)に値上げされることとなった。
2. 路線延伸でバイパス機能拡充へ
また今回の2018年12月30日上海地下鉄ダイヤ改正では、地下鉄13号線も延伸した。
延伸したのは世博大路~張江路間16.24km、12駅間で、全長38.27km、全線所要時間75分の路線となった(外部サイトの路線図はこちら)。この延伸により地下鉄13号線では2018年10月24日ダイヤ改正以来約2か月ぶりにダイヤ改正を実施することとなった。
この路線延伸により近隣を走る地下鉄7号線の混雑緩和が期待できるほか、浦東新区から上海市中心部(人民広場周辺)を結ぶ点で、上海地下鉄で最も利用者の多い地下鉄2号線の混雑を緩和する効果も期待できる。ただし地下鉄7号線と新たに乗り換えられるようになる長清路は改札外乗り換えとなる。
今回のダイヤ改正では地下鉄13号線でも平日朝夕ラッシュ時に金運路~世博大道~華鵬路間の部分運転を実施する。
運転間隔は平日朝夕ラッシュ時は、区間運転列車も走る金運路~世博大道~華鵬路間では3分間隔、全線運転のみが走る華鵬路~張江路間では6分間隔となる。昼間は全線運転の金運路~世博大道~張江路間運転列車のみが運転されるが、平日昼間は6分間隔、土休日昼間は5分間隔で運転される。
このことから昼夕輸送力比(日本の基準で適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を計算すると平日朝夕ラッシュ時に区間運転も走る金運路~世博大道~華鵬路間では50.0%、全線運転のみが走る華鵬路~張江路間は100.0%となる。
初電は東行き(張江路方面)は金運路5時30分発、西行き(金運路方面)は張江路5時30分発で設定されている。また終電は東行き(張江路方面)は金運路22時30分発、西行き(金運路方面)は張江路22時30分発で設定されている。
なお華夏中路で新たに接続することとなった地下鉄16号線は快速運転を行っているが、停車駅の増加はなかった。
このほかにも2018年12月28日ダイヤ改正で地下鉄2号線が全駅8両対応化したことに伴い、昼間限定で徐涇東~広蘭路~浦東国際空港間の8両編成全線直通列車が史上初めて設定されることとなった。
臨時列車としては2018年2月~3月春運期間臨時列車運転で深夜に浦東国際空港→広蘭路→人民広場間で8両編成が運転された実績があるが、通過駅が多く設定されており8両未対応の駅があったこと、途中駅は降車専用であること、4両編成運転区間を全て走破しているものの8両編成の乗り入れる西の端である徐涇東までの乗り入れがなかったことから、地下鉄2号線の全線直通運転は今回が史上初となる。
今後は2019年12月までに地下鉄2号線の全列車を8両編成に延ばす予定のようだ。
そのほか、地下鉄11号線と地下鉄12号線の乗換駅である龍華で乗り換え通路が完成したことにより、改札外乗り換えが解消された。
このほかにも、上海松江路面電車T2号線が部分開業した。開業したのは中辰路~松江大学城~倉華路間の13.9kmで、5連接車が最高速度70km/hで運転される。松江大学城では地下鉄9号線と乗り換えることができ、上海市街地へのアクセスも図られているようだ。
ダイヤについて見ていくと、終日に渡り10~15分間隔で設定されている。
初電は西行き(中辰路発倉華路行き)が中辰路6時00分発、東行き(倉華路発中辰路行き)が倉華路6時00分発で設定された。
また終電は西行き(中辰路発倉華路行き)が中辰路22時00分発、東行き(倉華路発中辰路行き)が倉華路22時00分発で設定された。
3. 結び
今回の2018年12月30日上海地下鉄ダイヤ改正では、軌道交通5号線と地下鉄13号線が延伸したことにより、上海地下鉄ネットワークが拡充し一部でバイパス路線としての機能を果たすことになった。
ただダイヤについては例年通りともにさきの10月に実施されたダイヤ改正で延伸を見据えて増発を実施していたため、既存運転区間の増発は今回のダイヤ改正では実施されず純粋に列車が延長運転されることとなった。また両線とも平日朝夕ラッシュ時に新線開業区間を発着とする部分運転を実施しており、限られた編成数で輸送力を調節することとなった。
上海地下鉄のダイヤ改正記事は2018年実施分で7本、13日分について扱っており、中国の地下鉄の中で最もダイヤ改正を多く実施した事業者となった。公式サイトが閉鎖され公式情報源が微博のみとなったが、車両増備が逐次実施されその都度増発を実施することに変わりはないだろう。
2019年も上海地下鉄でどのようなダイヤ改正を実施するのか、楽しみにしたい。
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