東武鉄道では2016年春にダイヤ改正を予定しており、東武野田線(東武アーバンパークライン)の急行運転を開始すると公表している( 詳細はこちら )。今回はこのダイヤ改正の背景についてみていき、ダイヤ予測もしていく。
1. 昼夕輸送力比を求めてみる
現行のダイヤで見ていくと、大宮~春日部を運行する列車は昼間毎時6本、平日夕ラッシュ時毎時8本であり、昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)は75%である。
しかしここにプレス通り急行が昼間に毎時2本運行される。現状の普通列車毎時6本をこれより減らすと地域輸送性にかなりの低下があると考えられるから、普通列車の毎時6本は維持されるであろう。そうなると昼夕輸送力比は100%となり空席が増えるのは明白であるし、それに伴い運行費もかさむ。それでも運行するということは何か理由があるはずである。公式プレスに記載されているメリットは「埼玉県随一の商業拠点であり東北・上越・北陸新幹線やJR各線への乗換駅である「大宮」への速達性を高め、お買い物やご旅行等でご利用になるお客さまの利便性をより一層高めます。」と記載されており、その下まで見ていくと清水公園駅周辺で展開中の不動産事業についての記述がある(そして所要時分短縮には清水公園も入っている)。これは東武自前の不動産の価値を高めようとして行っているのではないだろうか?
2. 停車駅を見てみる
今回の急行では、大宮を出ると岩槻、春日部の順に停まり、そこから先は各駅に停まる。この間を通るのはさいたま市大宮区、見沼区、岩槻区、春日部市である。うち大和田駅を周辺とする見沼区には急行は停まらない。ここ5年間の人口推移を見ていくと、大宮区と見沼区は増加しているが、岩槻区は微減、春日部市は微増しているもののその前10年間は減少傾向である。つまり少なくとも言えることは、岩槻や春日部周辺では人口がほとんど増えておらず、それ以外の春日部以遠や見沼区内の需要の高まりを受けて、東武野田線全体で利便性を上げるためだと思われる。
駅別乗降人員を見ても岩槻や春日部の乗降人員は他駅に比べると多い。人口増加している見沼区民の方には、急行に移った乗客分だけ空いた普通列車を利用していただく他ないのであろう。
3. 輸送力を見てみる
2010年の大都市交通センサスの結果によると、最も輸送量が多いのは大宮~北大宮間で、岩槻より西に行くと1~2割ほど下がり、春日部より西に行くとさらにもう1~2割ほど下がる。そのほか各駅でも埼玉県内では西に向かうにつれて輸送量が減るので、春日部より西に行くと大宮を出たすぐに比べて4分の1しかなくなる。
あくまで5年前のデータなのでそれ以降に需要が増加している可能性があるが、そうであるなら少なくとも大宮~岩槻間の朝夕ラッシュ時の本数を毎時1~2本程度増やすべきだと思われる。それと同時並行で今回の急行増発であればまだわかるが、先走って急行運転だけしても空気輸送を増やすだけだと思われる。
4. ダイヤを予測してみる
上でも述べたが、原則は急行の増発である。よって昼間時間帯は急行が毎時2本運転する代わりに普通列車毎時2本が大宮~春日部の区間運転となるものと思われる。
しかし基本は増発によって対応するものと思われる急行も、一部普通列車の格上げとなりそうな列車が存在する。それは朝の7時台~8時台に運行される大宮行き急行2本である。現行ではこの時間帯のみ毎時8本で運行されており、1本ずつ普通列車を減らしてもこの地域の利便性確保の点から見ても大きくは損なわれないものと思われる。この時間帯のうち毎時2本の普通列車は春日部始発であるから、これに接続するのものと思われる。終電に関してはプレスに出ており、最終の大宮発柏行きについては七光台行きを延長する形で、柏発七光台行きについては増発となる。
5. 結び
今回の急行運転開始は、東武が不動産事業を展開する清水公園のためにあるようなものである。それの恩恵を受ける沿線利用者もいるのではあるが、ラッシュ時にも割り振ってほしいと思った。浅草発運河行き臨時特急も含め、今後の将来が気になる路線だと思う。
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