JR西日本広島支社では2016年3月26日にダイヤ改正を行う( https://www.westjr.co.jp/press/article/items/151218_06_hiroshima.pdf )。今回は土休日ダイヤで抜本的なダイヤ改正が行われることとなり、平日昼間時間帯は227系で統一されるなど「脱國鐵廣島」を図っている。今回はその詳細と効果について見ていく。
1. 土休日ダイヤが平日ダイヤから独立
今回のダイヤ改正では山陽本線と呉線が、これまでは平日ダイヤから数本間引く程度だったが、今回のダイヤ改正で土休日ダイヤがほぼ平日ダイヤと独立したものになる。
これは100万都市を走るJRでは珍しいことで、札仙広福の中でも今回の広島が初になるものと思われる。札仙広福の私鉄、地下鉄などではとっくに行われていることから、JRが遅れをとっていたものと思われるが、今回で脱國鐵廣島が一層図られ、真に民営化したとも取れると思う。
2. 快速「シティライナー」の名称は復活するものの、これまでとは全く異なる停車駅
今回のダイヤ改正で山陽本線快速「シティライナー」が復活を果たす。しかし、以前走行していた「シティライナー」とは全く異なる列車であることに留意していただきたい。これについて詳しく見ていく。
2.1 山陽本線の利用実態は?
読者の皆さんにお尋ねしたい。広島市の中心部はどこであるかと。
広島駅は新幹線が停車するため遠距離輸送の中心駅であり、周辺では開発が進んでいるものの依然広島駅自体は広島市の町はずれに位置している。
では中心部はどこかというと、紙屋町や八丁堀、市役所のあたりで、広島バスセンターは紙屋町のすぐそばに位置し、県庁まで200mという大都会に立地している。また広島市中心部が紙屋町や八丁堀、市役所のあたりであることの証拠にアストラムラインの起点が広島駅ではなく本通であること、広島港から発車する路面電車が広島駅行き5系統は単行運行に対し紙屋町を通る1系統は連接車であり本数もこちらが多いこと、可部線や芸備線が紙屋町を起点としていないがゆえに沿線需要を広島交通(バス)に根こそぎ取られているなど、数えればキリがない。
ただJRも手をこまねいているわけではない。赤い山陽本線は広電2系統と競合関係であり、線路環境としては圧倒的にJRが有利ではあるが紙屋町を通らないという理由で広電にもかなりの利用がある。これを少しでも解決しようとしたのが新白島駅の設置で、紙屋町を通るアストラムラインと乗り換えを可能にすることにより広島市中心部からのスピードアクセスを可能とした。新白島駅開業前から昼間では土休日の一部列車に限り8両での運行も行っていたが、これにより広島市民の利用が増えたものとみられ、今回の土休日増発につながったものと思われるが、果たして本当に広島市民の理に適っているかは次項で確認する。
2.2 広島中心部にほど近い西広島、横川、新白島をすべて通過
広島市中心部からJRを利用するには次の方法がメインである
- A. 広島駅まで1系統、2系統、6系統で向かう
- B. 新白島駅までアストラムラインで向かう
- C. 横川駅まで7系統で向かう
- D. 西広島駅(己斐)まで2系統、3系統で向かう
新幹線や呉線を利用するにはA.しかないが、緑の山陽本線はA.B.のいずれでも構わないし、赤い山陽本線であればB.C.D.がメインとなり、遠回りとなるA.の広島駅まで向かうルートはあまり使われていない。これは、現状すべての該当駅を通るJR線列車が広島、新白島、横川、西広島に停車するためできることだと考えられる。
しかし今回設定される快速「シティライナー」はこれらの各駅をすべて通過する。普通列車はその分補完されるものの増便がなされるのであれば広島市民にも利用しやすい列車設定にしてほしかったと思う。
ともなれば今回の快速「シティライナー」の再設定は広島市民のためではなく宮島への観光客向けではなかろうか?遠方からの利用客であれば新幹線や空港リムジンバスで広島駅まで向かえばよいから、新白島や横川、西広島に停車する必要がない(といっても新幹線の時刻とあまり合っていないような気がするがさておき)。実はこの列車、山陽本線を通しで運行する普通列車が広島駅で概ね5分程度停車し、その間に快速列車を発車させているため、青春18きっぷ利用者にとっては朗報になるかもしれない。またこれら広島市中心部の駅を通過する列車を増発することにより、相対的に普通列車の混雑を緩和することができる。また快速「シティライナー」は227系限定運用であり、広島市中心部にアクセスする各駅に停まらないことからほぼ全列車が3両編成での運行になるものと思われる。3両の227系といえば呉線の快速「安芸路ライナー」もあり、こちらはワンマン運転を行っている。今回赤い山陽本線区間では大幅な運用増となることから、快速「シティライナー」はワンマン運転も視野に入れているのではないだろうか?
3. 呉線快速「通勤ライナー」の格下げ
呉線でも今回大幅なダイヤ改正が見て取れる。
土休日は朝8時台までに広を発車するの広島方面行き4本の快速「通勤ライナー」を除きすべての快速が「安芸路ライナー」へと格下げされる。また16時台以降平日ダイヤに沿って普通列車が多く運行されていたが、こちらも土休日に限り快速「安芸路ライナー」への変更がなされており、土休日夕ラッシュ時のパターンダイヤ化も組まれている。呉線には広島電鉄、中国JRバスなどが運行する、広島市中心部のバスセンターを発着とするクレアラインに引けを取っており、町はずれの広島駅からしか運行できない呉線はかなり抜本的なダイヤ改正を迫られたのだと思われる。
4. 227系増備による平日昼間時間帯のオール227系化
227系が増備され、ついに平日昼間時間帯のJR電車は赤一色に染まることとなった。
ただ平日の運用については山陽本線は現状5両編成や6両編成が多いことを考えるとこれを少なくして3両や4両にする可能性もある。また227系自体の運行区間も東は福山まで、西は徳山まで足を延ばすことになり、JRシティネットワーク広島の全電車が227系に統一された暁には、昼間時間帯だけでも岡山や下関まで足を延ばすようになるかもしれない。
227系新型電車に統一されれば、国鉄型電車と比べて起動加速度が上がる(2.0km/h/s→2.5km/h/s)ことから昼間時間帯の所要時分が短縮される可能性もあり、乗客としても喜ばしいことではあるが、ここまで焦ってやるべきことであろうか?大阪の225系の場合、223系と共通運用を組んでいるため運用による走行距離差はほとんど生じない。しかし今回の広島のように227系で平日昼間時間帯を統一してしまうと、国鉄型車両はこの時間帯に運行が出来なくなってしまい、運用がラッシュ時に限られてしまう。つまりよく使う227系とそれ以外のあまり使わない国鉄型電車で1日平均当たりの走行距離に差が出てくる。ここまでするにはある理由があるからだと思う。
新型車両を導入するとき、これまでの車両と共通運用にするか別運用にするか迫られる。連結しない場合や両数が固定されている場合には共通運用にしてもほとんど支障は出ないが、既存の車両と連結できない場合、新型車両だけが出せるメリットを使う場合には固定運用にせざるを得なくなる。ただ、都市鉄道の場合車両寿命を均等化し、将来的に置き換える車両数をあらかじめ把握できるように共通運用にすることが多い。
ではなぜ今回は平日昼間時間帯に限ってオール227系にするという偏った固定運用を組むことになったのか。1つは前述のとおり既存の車両と連結ができないから。これは固定運用にするにはもっともな理論であるが、時間帯で分ける必要はない。当サイトで導き出した真の理由は次の2つであると思われる。
- A. 227系は回生ブレーキがついているので、全列車227系とすることによりより一層の使用電力削減が図られる。
- B. これまで使用してきた国鉄型車両の寿命が近く、これまで通り運用していたら227系の置き換えが完了するまで車両が持たない。
A.については一言で言えば目先の金に食らいついた形となる。運用距離を伸ばしてしまうとどうしても台車が痛み、車両寿命が短くなってしまう。とはいえ乗客としても故障が増える国鉄型車両に乗るより新型車両に乗りたいというニーズは高いであろうから、これについては双方の利益がある。B.についてはシティ電車として1970年代から導入されてきた115系などの電車の寿命がかなり来ていることを指しており、走行距離を早急に短くしなければ台車が持たないことを意味していると思う。事実今回のダイヤ改正で全ての普通電車がこれまで2ドア~4ドアまで存在したものが3ドアに統一されることになる。これは105系のうち103系から改造を受けた製造から40年以上たっている車両と115系3000番台や117系からの改造車も姿を消すことになると思われる。105系4ドア車については廃車が濃厚と思われるが、115系については岡山・山口地区での転用が考えられる。今後の車両動向に注目したいと思う。
5. 結び
今回のJRシティネットワーク広島の脱國鐵廣島政策はかなり抜本的に行われており、1度広島地区で大幅減便があったものの土休日に限って言えばそれに匹敵する恩恵が得られていると思う。つい1年前まで國鐵廣島と言われていたものがここまで民営化されるなんて誰が想像しただろうか?今後の発展に期待できるエリアだと思った。
コメント
西広島通過の快速は歴史的に非常に遺憾な気がします。西広島は元々新幹線の前進の弾丸特急開通時に広島駅に線路敷設出来ない為に新広島駅っとして開業する予定さえ有りました。並行する広電宮島線は線内運用が可能なんで、己斐住民や利用者が大幅に広電に流れる事が安易に予想される。