JR西日本は18日、2016年3月26日にダイヤ改正すると公表した。今回のダイヤ改正ではJR京都線、JR神戸線において新駅設置や路線設備改良により行う。そしてこのダイヤ改正の美点と欠点について見ていく。
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1. JR京都線・JR神戸線で大規模改良
1.1. JR神戸線に新駅が開業
今回のダイヤ改正においてJR神戸線には2つの新駅ができる。1つは六甲道~灘間の摩耶駅、もう1つは御着~姫路間の東姫路駅である。摩耶は普通電車のみの停車、東姫路は快速電車の停車となっている。これにより摩耶駅では沿線私鉄から乗客を吸い取る狙いがあると思われる(詳しくはこちらの過去の記事を参照)。
1.2. JR京都線高槻駅の4面6線化工事の完了
そしてJR京都線高槻駅では、外側線にホームを設置し4面6線化となる。これによりホーム混雑が緩和し、ダイヤ乱れ時の早期回復にも努めることができる。また外側線にホームが設けられたことから特急「はるか」の一部が高槻駅に停車するようになった(詳しくはこちらの過去の記事を参照)。
2. 「JR京都線・JR神戸線のダイヤをリニューアル」とは
JR西日本近畿統括本部のプレス( https://www.westjr.co.jp/press/article/items/151218_02_keihanshin.pdf )によると、大阪駅基準で新快速と快速の運行間隔が昼間時間帯で均等になるらしい。
また普通電車に関してもJR西日本総合のプレスリリース( https://www.westjr.co.jp/press/article/items/151218_00_jrwest.pdf )によると6分間隔と9分間隔の交互から7分間隔と8分間隔の交互となり、こちらも均等化する。このプレスリリースによると毎時8本三ノ宮方面がある記載をしているが、このうち半分はJR宝塚線直通で尼崎でJR東西線から来た普通電車に対面乗り換えになるのは変わらないものと思われる。
そして問題となる記載がこれである。「これまで新快速と普通が同一ホームに並び、相互にお乗換えいただけていた芦屋駅、三ノ宮駅では、改正後の新快速と普通のお乗換えは、ホームでお待ちいただくことになります。」つまり、新快速通過駅の利便性が低下するダイヤ改悪が既に指摘されていることになる。これについて次項で見ていく。
2.1. 摩耶駅開業により所要時間が長くなる見込みの普通電車
JR神戸線には摩耶駅が開業し、普通電車が停まるようになる。これにより所要時間が1分程度伸びるものと思われる。現状芦屋と三ノ宮で新快速と緩急接続を行っているが、この区間で所要時間が1分延びるとなると新快速を遅くするか緩急接続を解除するしかない(詳しくはこちらの過去の記事を参照)。しかしもしそれだけで済むなら現状のダイヤ通りにして、摩耶以西の区間だけ普通電車や快速列車の時間をずらせばよく、緩急接続の解除も三ノ宮だけで十分なはずである。だが天下の新快速は摩耶駅の工事足場に直撃されたのにふてくされたのか、芦屋での緩急接続も解除されてしまった。次項で緩急接続の時間を計算してみる。
2.2. 芦屋、三ノ宮での接続時間は?
まず始めに、快速と普通は内側線を供用しているため芦屋での緩急接続は残る。そのため新快速と普通電車の緩急接続について見ていく。
まずは芦屋。新快速の時間は変わらないであろうから、普通電車の変化のみ見る。JR西日本総合にプレスリリースによると、現行芦屋で緩急接続するのは大阪基準で新快速の発車8分前の電車で、これが7分前に繰り下がっている。ここでは所要時間の変更はないから芦屋で新快速を降りると普通電車まで1分待つことになる。逆に三ノ宮方面行では普通電車から新快速に乗り換えられなくなる。
次に三ノ宮。こちらも新快速の時間は変わらないであろうから、普通電車の変化のみ見る。またJR西日本総合にプレスリリースによると、現行三ノ宮で緩急接続するのは大阪基準で新快速の発車17分前の電車で、これが15分前に繰り下がっている。また摩耶駅の開業で普通電車の所要時間が延びることを考えると三ノ宮で新快速を降りると普通電車まで3分待つことになると思われる。1分程度ならまだしも3分も待つとなると元町への所要時間も伸び、私鉄に客をとられかねないと言えると思われる。
2.3. 大阪の発車時間はほぼ均等化されたが、三ノ宮は高槻は?
おさらいしよう。JR西日本近畿統括本部のプレスによると、大阪駅基準でJR京都線快速は日中の発車時刻が2分繰り上がり、JR神戸線快速は日中の発車時刻が2分繰り下がる。もし快速がJR京都線とJR宝塚線を直通するようになりJR神戸線快速は大阪発着になるということが起きれば話は別だが、JR京都線・JR神戸線に221系が運用されJR宝塚線の快速に321系がいることを考えれば不可能である。つまりこの快速電車の発車時刻のずれはJR京都線・JR神戸線双方に波及する。以下にJR京都線高槻とJR神戸線三ノ宮の大阪方面昼間時間帯発車時分の現状と予測を掲載する。
JR京都線高槻駅 大阪方面時刻表(新快速・快速)
【現行】
01 | 13 | 16 | 28 | 31 | 43 | 46 | 58 |
快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 |
【2016年3月26日以降予測】
03 | 13 | 18 | 28 | 33 | 43 | 48 | 58 |
快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 |
JR神戸線三ノ宮駅 大阪方面時刻表(新快速・快速)
【現行】
08 | 11 | 23 | 26 | 38 | 41 | 53 | 56 |
新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 |
【2016年3月26日以降予測】
08 | 09 | 23 | 24 | 38 | 39 | 53 | 54 |
新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 | 新快速 | 快速 |
つまり、高槻から大阪に行くにはこれまで最大12分空いていた新快速および快速の間隔が10分に縮まるものと思われ、阪急京都線の10分間隔の特急とも互角以上になるものと思われるが、三ノ宮で考えるとこれまで最大12分空いていた新快速および快速の間隔が14分に広がり、実質毎時4本の利便性と変わらないものになってしまっている。これではせっかく摩耶駅を造ったのに、昼間特割きっぷの値上げも相俟って本丸の三ノ宮や神戸で阪神電車や阪急神戸線に逃げられてしまう。これでは三ノ宮や神戸からすれば明らかにダイヤ改悪であろう。この事態は何を意味するのだろうか?
2.4. 神戸・三ノ宮→大阪が実質毎時4本の利便性しかないのは悔しい。でも神戸で新快接続してくれたら嬉しいよね?
神戸での退避と言えば朝ラッシュ時の大阪方面を思い浮かべる方も多いだろう。快速が1番線に入り、新快速が2番線に入る。双方を乗り換えようとすれば階段を上り下りしなくてはいけない。これは新快速も快速もこの時間は外側線を走行しているからだ。しかし昼間時間帯は違う。新快速は外側線を使用するが、快速は内側線を使用しているため2・3番線、4・5番線での対面乗り換えが可能となる。これにより需要の多い垂水や舞子への大阪からの所要時間が7分短縮されるものと見込まれる。ただこれは神戸で新快速と快速が接続した時の話で、なかった場合には本当にダイヤ改悪でしかなくなる。かつての東急武蔵小杉駅の東横特急と目黒線急行の非公表対面接続のようなことがあれば良いのだが…
【続報】結局、非公式にも接続は行われませんでした。
2.5. JR京都線は停車駅をリニューアルするのではなかったのか
今回のダイヤ改正で、現状高槻駅で同じホームから発車する快速と新快速が、新快速が別ホームになることにより対面乗り換えで普通電車に乗り換えられていたものができなくなる。
確かに現在緩急接続しているわけでもなく、時間帯によっては高槻~京都間で各駅に停まる列車は快速しかなく、そもそも乗り換え需要がない時間帯もある。だが高槻~京都間で各駅に停まる列車が毎時8本になる時間帯を見ていくと、現在京都方面行きでの新快速から普通電車での乗り換え時間は3分である。しかし京都方面行き快速が2分繰り上がることはプレスに明記されており、内側線を共有している普通電車も時刻を変えてくるだろう。となればこの区間で京都行き普通電車も2分繰り上げる可能性がある。となると、新快速から普通電車への乗り換え時間は1分しかなくなることになる。もし対面乗り換えであれば十分可能であるが、階段の上り下りがあると難しい。今回のダイヤ改悪の内容となるだろう。
そしてこうなることを防ぐために新快速を茨木に停車させるのではなかったのだろうか。茨木は2面4線であるから普通電車との対面乗り換えができるし、阪急との競争力を増すことができる。また近隣にはサッカー場や大型商業施設もでき、需要が増えることは間違いない。にも関わらず新快速の茨木停車がなされなかったのは、すでに混雑している新快速にこれ以上乗客を集めたくなかったのではないだろうか?今回快速の運転時刻の見直しにより阪急京都線への競争力増強にはなっているから、ここで収めることにしたのではないだろうか。
3. 昼間時間帯の新快速は播州赤穂乗り入れ中止
今回のダイヤ改正で2005年から続いてきた新快速の播州赤穂の昼間時間帯の乗り入れが幕を閉じることになる。
赤穂線では朝晩は新快速に頼りきりであるが、今回朝夕ラッシュ時については触れられていないことからこの時間帯は引き続き運用があると思われる。これまで223系や225系のような新車だったのが115系の体質改善車ならまだしも湘南色のかぼちゃになると考えるとおぞましいが、十数年後までに227系などの新型車両に置き換わると考えればそこまで辛抱するしかないのかもしれない。これにより大阪から岡山に在来線で行くのにこれまでだと昼間は新快速播州赤穂行きに乗って相生で乗り換えれば良かったが、今度から姫路と相生双方で乗り換えが必要となり、対面乗り換えとはいえ利便性が損なわれることは避けられそうになさそうだ。
4. 結び
今回のダイヤ改正では新快速と快速相互の運転間隔が変わることにより大々的にダイヤが変わる。今回の変化は一長一短で、琵琶湖線が利用しやすくなったり大阪から高槻への移動がよくなるものの、三ノ宮から神戸から大阪に行くには不便となる。また新快速と快速が神戸で接続する保証もない。緩急接続も一部解消となったり、昼間時間帯の播州赤穂乗り入れが中止となり西側は姫路発着になるなど欠点も目立つ。今後どうなっていくのか非常に興味深いものとなった。
コメント
こんにちは、興味深い分析、ありがとうございます。
以下、小生の思うところコメントさせていただきました。
JR京都線、神戸線、現状でも非常にバランスのとれたダイヤとなっており、貴殿がご指摘のように2016年3月ダイヤ改正ではそれが崩れてしまうように思います。
例えば大阪→京都の上りの場合、新快速
毎時0,15, 30, 45分大阪発、
毎時14, 29, 44, 59分京都着
一方、快速は
毎時10, 25, 40, 55分大阪発、
毎時05, 20, 35, 50分京都着
これが新快速は変化なしとして、快速は
毎時8, 23, 38, 53分大阪発、
毎時03, 18, 33, 48分京都着
となり、京都駅を視点としてみると新快速と快速がかなり接近し、新快速遅延の場合、快速がホームに入れない影響を受けます。
また京都駅から4分後に快速(普通)が発車する事となり、山科、大津方面へのパターンが最長10分程度空く等、現在よりもバランスが崩れてしまいます。
また話は変わりますが、昼間はるかの30分毎ダイヤが掲載されていますが、新大阪~京都(上り)の所要時間が伸びております。はるかは新快速を続行しており、新快速も所要時間が増えるのでは?既に茨木停車を意識して時間に余裕を持たせているのではと推察しております。
何れにしましても現在の磨かれたダイヤを崩してしまう問題のあるダイヤではないかと考えております。