JR西日本は2015年12月18日、プレスリリースにて2016年3月26日にダイヤ改正を行うと公表した( https://www.westjr.co.jp/press/article/items/151218_02_keihanshin.pdf )。今回のダイヤ改正では大阪環状線・大和路線・JRゆめ咲線でも行われる。今回は新型車両の導入も見据えながらこれらについて見ていく。
1. 大阪駅から阪和線、大和路線、JRゆめ咲線へのアクセス強化
今回も大阪環状線関連でダイヤ改正を行う。前年(2015年3月14日)のダイヤ改正では平日夕ラッシュ時にパターンダイヤを導入したが、本年3月のダイヤ改正では土休日の朝に手が加えられるようである。
大阪発では土休日朝8時~朝10時までのダイヤが変更され、大阪環状線周回列車が減る分阪和線快速、大和路線快速、JRゆめ咲線普通に振り分けられる。阪和線と大和路線は土休日の朝2往復ずつが大阪環状線直通になる。おそらくそれぞれ天王寺行きとJR難波行きがあることから、これらが行き先変更して大阪環状線に乗り入れをするものと思われる。これら3線の利用者にとっては直通強化によりダイヤ改正となることであろう。
2. 大阪環状線周回列車の見直し
近年は毎度大阪環状線のダイヤ改正がある度「大阪環状線周回列車の見直し」の表現が見て取れる。実際今回のダイヤ改正でも土休日の朝8時台と9時台に大阪駅を出発する周回列車合わせて4本が減便されると示されている。野田に関しては土休日の朝8時台にJRゆめ咲線普通電車が1本増発されるが、それでも減便を完全にはカバーしきれていない。芦原橋や今宮はもろ大阪環状線周回列車の減便を受けるため、利用者数が他駅と比べて桁違いに少ないとはいえ利便性の低下は避けられない。
3. 大阪環状線の新型車両「323系」も今年度から運行開始
大阪環状線では大幅なリニューアルを行っている。駅設備のリニューアルはすでに進められており、森ノ宮や桃谷駅では完了している。そして2016年度からは大阪環状線の103系、201系の置き換えとして323系を導入することが決定している( https://www.jr-odekake.net/railroad/osakaloop_kaizou/category1.php )。これによると「国鉄時代に製造された大阪環状線内の103系・201系通勤形電車はすべて置き換える予定」だそうだが、公式プレス( https://www.westjr.co.jp/press/article/2014/12/page_6517.html )によると投入されるのは21編成168両だそうだ。現在森ノ宮支所にいる103系・201系は合わせて23編成184両、大阪環状線に乗り入れる奈良支所の103系も考慮すると25編成200両程度必要になる可能性もある。ではなぜ現在より少ない本数で国鉄時代に製造された103系・201系通勤形電車を全て置き換えることが出来るのだろうか?これについて考察していく。
3.1. 車両性能向上による運用数削減
現在大阪環状線には大和路線直通列車に主に使われる221系、阪和線直通列車に主に使われる223系や225系などのJR化後に製造された車両を使っている一方で、普通電車には103系や201系といった1987年の国鉄分割民営化より前に製造された車両が走っている。
プレスリリースには103系や201系の最高速度100km/hと記載されているが、実際は95km/hが限度とされている。現在の技術では最高速度100km/hは普通に出せるようになったから、この分実質的に最高速度が上がることになる。また221系や207系以降の主にJR西日本になってからの在来線向けにつくられた車両は起動加速度が2.5km/h/sであることが多いが、103系や201系は地下鉄直通用ではない限りせいぜい2.0km/h/sが限度である。今回導入される323系は225系などの設計を踏襲していることから現在走る車両に比べて起動加速度が上がり、その分最高速度に達するまでの時間が短縮されるから所要時間が短縮されるものと期待できる。特に朝ラッシュ時は103系や201系がいるので大和路線の区間快速や阪和線の直通快速でどんなにいい車両を使っても性能を実質普通電車の103系や201系に合わせないと電車が詰まってしまい、性能を発揮できない状態でいる。
普通電車が323系に統一されれば所要時間短縮が図られ、ラッシュ時の阪和線、大和路線直通列車の所要時間も短縮できるようになるものと思われる。過去に営団地下鉄銀座線(当時)では使用車両を01系に統一することに伴い最高速度の引き上げと起動加速度の引き上げが行われ、それまで予備車含めて40編成必要だったものが減便なしで37編成で足りるようになった。このように全ての車両の性能が底上げされるとダイヤ全体に大きく影響を及ぼすことができる。今回の投入本数削減の1つの理由ではなかろうか。
3.2. 定員増による本数削減
車両定員は普通列車の場合、車両の面積で決まる。103系や201系は側面が垂直にそびえ立っているが、225系同様323系は拡張車体であり、その分車両定員を増やすことができる。
現在の大阪環状線の混雑率は110%台であるから、阪急や御堂筋線に比べれば混雑はそこまででもない。毎回のダイヤ改正で大阪環状線周回列車の削減が行われていることを考えると、323系投入時にラッシュ時の運行本数の削減が起きてしまうのではなかろうか?
3.3. 103系・201系の行方は?
今回の置き換えとなる103系や201系はどうなるのだろうか?103系に関しては製造から40年が経っている鋼鉄車両であることもあり、海外譲渡にしても老朽化が進んでいると思われる。
おそらく大阪環状線の103系は廃車になるのではなかろうか?201系は製造後30年は経過しているものの、103系と比べればまだ使用することができるものと思われる。今日でも阪和線の普通など、大和路線の一部、奈良線の普通、播但線、加古川線などで使用されており、阪和線以外で普通列車に新型車両を入れる計画がないことから、大阪環状線から捻出された201系によって置き換えるのではないだろうか?
4. 結び
大阪環状線は2011年に昼間時間帯を10分サイクルから15分サイクルに変更し、2015年のダイヤ改正では平日夕ラッシュ時も15分サイクルダイヤに合わせる改正を行った。2015年から始まった大阪環状線プロジェクトでは平日夕ラッシュ時の大阪環状線東側で京橋止めを天王寺行きに延長するなど、大阪~京橋~鶴橋~天王寺間では快速電車やJRゆめ咲線直通列車も周回列車と同様に輸送の中枢を担っている。しかし西側の大阪~西九条~天王寺間では通過駅のある快速電車が重視され、この5年で大正と福島に停まるようになったものの、やはり通過駅としては乗車チャンスが減ってしまっている。
今後どのようなダイヤになるのか見守っていきたい。
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