東急電鉄では、2017年以降のダイヤ改正で朝時間帯の列車を増発すると公表した( http://www.tokyu.co.jp/file/161025-2.pdf )。今回はこれについて見ていく。
1. 朝の混雑の激しい田園都市線
田園都市線といえば朝ラッシュの混雑が激しい私鉄路線として知られており、私鉄としては小田急小田原線、東京メトロ東西線、京王線とともに4強として肩を並べている。
小田急小田原線は複々線化完了後に朝ラッシュ時毎時36本の運行により改善が見込まれ、京王線も連続立体交差化にともなう退避設備増設に伴い混雑緩和に努めようとしている。そんな中、東京メトロ東西線と東急田園都市線は優等列車の停車駅増加で混雑の均等化を図るだけで、抜本対策がなされない路線である。朝ラッシュ時の輸送人員は田園都市線は中央線快速に次ぐ2位、東西線は総武緩行線に次いで4位と他線を圧倒している。この輸送人員は、私鉄日本一の複々線区間をもつ東武伊勢崎線を上回っている。それにもかかわらずなぜ複々線化を行わないのだろうか。
2. 田園都市線本体というより周辺の路線が頑張っている
東急は東京急行電鉄というほど、東京都内に多くの路線を所有している。そのため、本来都心へ結ぶ路線は1本か2本であることが多いが、東急は池上、大井町、目黒、東横、田園都市の各線が山手線や京浜東北線の各駅に接続している。
特に東急は地下鉄の乗り入れ数が私鉄最多であり、それを活用する形で目蒲線を目黒線と多摩川線に分け、4両から6両に増結したうえで田園調布から日吉まで複々線化したり、大井町線も溝の口まで建設して急行では6両で運行されている。目黒線は相鉄直通線完成時に一部8両化、大井町線は2019年にも急行が7両化する、東横線も一部10両化するなど輸送力を向上させるために様々な策をとっている。しかし、田園都市線は早期に10両化が完成してしまい、それからも多摩田園都市の人口が増え続け、ついに逼迫してしまったのである。そうなれば普通の路線であれば複々線が妥当であるが、大井町線を3km弱延ばして半ばごまかしているのが現状である。東京都は2020年から人口減少時代に入るにもかかわらず田園都市線沿線は2045年まで人口が伸び続けるほどであり、これから混雑が増すのは避けられない。
しかし、東急がとった次の行動は「バスも!キャンペーン」である。この取り組みは、田園都市線が混みすぎているので、電車の定期券で多少は空いているバスに乗れるシステムである。はっきり言って混雑緩和対策を捨てたと言わざるを得ないものであり、もはや今後30年に及ぶ混雑の激化を小手先でどうにかしようとしているのである。そんな中、田園都市線が9年ぶりに朝の増発を行うこととしたのが、今回のダイヤ改正である。
3. 早起きしても所要時間がかわらなくなる?
ここで2020年の東急田園都市線朝のダイヤ予測を立てる。
朝の一番激しい時間帯は準急が運行され、長津田→渋谷が46分であるが、40分早起きするだけで急行が33分で結んでくれる。しかし、今回増発がなされるとすると、列車の運行本数が増え、急行のままであったとしても朝ラッシュ時同様所要時間が40分台になることが避けられなくなる可能性が高い。となると、早起きしても価値が薄れ、ラッシュ時に余計混雑する可能性がある。現状、朝6時台後半の渋谷着は概ね各停が2本につき急行が1本となっているが、今回の増発は各停が1本につき急行または準急が1本になるものと思われる。とはいっても6時台後半渋谷着は8時台と比べれば混雑は少ないので、準急運行時間帯の拡大はせいぜい20分前倒しされるのが限界だと思われるので、増発分は急行に充てられるのではなかろうか。
4. 昼夕輸送力比
今回も恒例の昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を見ていく。田園都市線は昼間毎時14本、平日夕ラッシュ時毎時18本のため77%となり、平日夕ラッシュ時の輸送力が未だに足りないことを指す。順次平日夕ラッシュ時に増発している小田急や京王とは対照的に現状朝ラッシュ時にしか目を向けられていないようで、平日夕ラッシュ時の拡充にはまだほど遠いようだ。
5. 結論
2017年から朝時間帯の増発が始まるが、これからも人口増加を続ける田園都市線沿線は旧新玉川線区間でも抜本的な対策を行い、より一層の増発が必要である。東急電鉄は小手先だけでは不十分でり、複々線化により朝時間帯の高速化がより多摩田園都市の価値をさらに高め、関連事業を含めた収益増加につながることを自覚してほしいと思う。
コメント
夕ラッシュ時って渋谷から乗ってもまだ朝の3/4ぐらいしか混んでないので今まで通りの本数でもまあまあ行けますよ