KORAILは3カ月に及ぶ長期ストライキが解かれたことにより、釜山初の広域電鉄、東海線を2016年12月30日に開業したと公表した( http://news.korail.com/main/php/search_view.php?idx=41862 )。今回はこれについて見ていく(後日韓国語対応します)。
1. ソウルに続き、釜山でもシティ電車(広域電鉄)化
まず韓国の鉄道事情について説明しよう。前回は韓国高速鉄道のKTXについて扱ったが、今回は在来線についてフォーカスを当てる。大韓民国は1974年のソウル地下鉄1号線開業まではもっぱら非電化で、京釜線の全線電化は京釜高速線の開業後というほど非電化区間が目立つ。そこで韓国政府がとった政策が、国費と自治体による鉄道の複線電化、つまり広域電鉄化である。その広域電鉄化第1号としてソウル地下鉄1号線と直通する京釜線、京仁線、京元線の一部区間を電化し、首都ソウル都心部と直通することができるようにし、利便性を向上させることに成功した。そのため、電化したことは大概の場合、近郊では(地下鉄を通して)長編成化してソウル都心部へ直通で行けるようになる、郊外ではKTXが走るようになることを意味していた。これは、1970年代から日で行われた団地開発に伴う新線開業が該当するものと思われる。
しかし2016年から様相が変わり始めている。まずは2016年2月に延伸した水仁線。複線電化したしてJR西日本の可部線同様復活したものの、ソウルへ行くには仁川か烏耳島で1号線または4号線に乗り換えなくてはならない。2016年9月に開業した京江線は新規開業で、複線電化しているものの板橋や二梅で新盆唐線や盆唐線に乗り換えないとソウルには行けない。この2路線はともにKORAILのみの運行で、4両編成という共通点を持つ。このような新規開発地への鉄道延伸にソウルからの直通を必ず図ることができなくなってしまった。日本でいうと千葉急行(現京成千原線)やニューシャトルの開業というところだろうか。
そして今回ソウル都市圏以外で初となる広域電鉄「東海線」が開業したのである。これは1980年代から日本国有鉄道によって行われたシティ電車方式の全国波及に近いものを感じる。
2. 広域電鉄東海線の紹介
それでは今回開業した広域電鉄東海線についてみていく。今回開業したのは釜田~日光間の28.0kmで、こちらも上述した水仁線や京江線同様4両編成で、平日朝夕ラッシュ時は毎時4本、日中は毎時2本しか設定されていない。これは釜山地下鉄1号線の昼間6分間隔(平日夕ラッシュ4分間隔)、2号線の昼間6分30秒間隔(平日夕ラッシュ4分30秒間隔)、3号線の昼間7分間隔(平日夕ラッシュ5分間隔)、4号線の昼間8分間隔(平日夕ラッシュ時5分間隔)、金海ライトレールの昼間5分40秒間隔(平日夕ラッシュ4分30秒間隔)と比べると非常に本数が少ないことが分かる。4号線と金海ライトレールについては新交通システムなので頻回運行を行えるようあえて1編成当たりの輸送量を減らしているが、にしても東海線の昼間30分間隔、ラッシュ時15分間隔が釜山市民に受け入れられるとは思えず、市内移動については近傍を走る2号線の利用が続くのであろう。また、規格違いでソウルのように地下鉄に乗り入れられないのも痛手だ。始発の釜田駅は地下鉄駅までの移動がかかり、とても利便性がいいとは言えない。広域電鉄化したとはいえ、市内は地下鉄、郊外はKORAILという棲み分けは釜山では変わらないようだ。運賃についてはソウルの初乗り1250ウォン(日本円にして約140円)より少し割安に設定されており、釜山の地下鉄と運賃体系を同一とし初乗りは1200ウォン(日本円にして約130円)となった。
とはいえ釜山では新しい広域電鉄慶全線の開業が進められている。こちらは釜田~馬山間の51.4kmの区間で、既存路線の電化というより新規開業に近い。またソウル都市圏でも広域電鉄の開業が加速しており、今後どうなるのか見ものである。
3. 結び
韓国の都市鉄道はまだまだ開発途上で、今後も地下鉄・広域電鉄双方とも新線開業が続く見通しである。とはいえ日本より自動車利用率の高い韓国でどこまで鉄道がシェアを伸ばすのか、見守ってゆきたい。
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