京福電気鉄道では、2月24日、プレスリリースにて2017年3月25日にダイヤ改正を行うと公表した( http://www.keifuku.co.jp/release/pdf/20170224_randen_dia.pdf )。今回はこれについて見ていく。
2017年3月4日ダイヤ改正まとめはこちら!
1. 西院駅の乗り継ぎ改善
今回2017年3月25日ダイヤ改正では、西院駅での乗り継ぎが改善される。これは、嵐電西院(さい)駅が阪急西院(さいいん)駅近傍に移設し、阪急西院駅の改札口・出口を新設し乗り換え時間を5分から2分程度に短縮した。これにより嵐電では阪急との接続時間見直しにより時刻を変更した。これにより昼間は四条大宮・嵐山それぞれ発でせっかく毎時0分から10分毎となったにもかかわらず、今回のダイヤ改正で4分ずれることとなった。
乗り換えが改善されたとはいえ、まだまだ便利とは言い切れない事情がある。それは、阪急西院駅には、昼間の速達種別である特急が停車しないのだ。通勤時間帯に運行される通勤特急は停車するためラッシュ時は全停車であるのだが、昼間は京都府内各駅に停まる準急しかない。阪急としては、太秦などは嵐電を利用しても構わないが、嵐山に行くなら(特に梅田からの場合)桂で乗り換えて阪急嵐山線を使ってほしいということなのだろう。
2. 嵐山本線は輸送力増強
今回のダイヤ改正では阪急との接続を改善したこともあり、嵐電では輸送力増強も今回のダイヤ改正で図った。嵐山本線では平日朝は9時台まで2両編成で運行することにより輸送力増強を図っている。また朝6時台は2本増発し、輸送力をさらに向上させる。7時台は1本減便しているものの、西大路三条始発の3本を西院始発に1駅延ばすことにより、西院駅基準では2本増発し阪急京都線との接続を改善する。
夜間についても四条大宮22時台発列車を2本増発し10分間隔とすることで、阪急と運転間隔を合わせることでこちらでも接続改善を図る。これに合わせて北野線も朝夕に増発し、帷子ノ辻での接続も改善する。
3. 強気の嵐電10円値上げ
そんな中、嵐電は2017年4月1日より普通運賃を210円から220円に値上げした( http://www.keifuku.co.jp/release/pdf/2017unkaininka.pdf )。これに伴い定期券も通勤・通学とも対キロ制から均一制に移行し、通勤定期券では割引率43%、通学定期券では69%となった。これまでは対キロ制であったが、通勤定期券割引率が15%~60%とバラつきがあり、四条大宮~嵐山間を定期利用すると1カ月に25往復しないと元が取れない状況が起こっていた。普通運賃は2001年に均一運賃化したものの、定期券が対キロ制であったために遠距離に行くほど村である状態が続いていたが、今回の運賃改定で解消されることになる。とはいえ、定期券は遠距離では30%安くなるものの、距離が短い1キロ以内で47%値上げとなる区間もあり、競合相手の少なく、均一料金のバスしかいない近距離では値上げを図り、JRなどの郊外路線と競合する遠距離では値下げを図ったものと見込まれる。また今回の運賃改定で定期券は全線定期券のみになる見込みだ。定期券利用率が落ちているのは遠距離での割高感が災いしているものと思われ、今回の運賃改定で定期券利用率を引き上げて固定客を増やそうとしているのではなかろうか。
京都は市営バスが均一230円のためまだまだバスよりは安いのであるが(らんでんカードを使用すればなおさら)、ここ数年で輸送人員が増えているにもかかわらず値上げというのはやや疑問が残る。京都市地下鉄東西線延伸による嵐電天神川駅設置やJR嵯峨野線との接続改善のための撮影所前駅設置、今回の西院駅移設などで設備投資費がかかっているのは間違いないが、朝ラッシュピーク後の増結は電気代が多少は増えるが人件費は上がらないのでランコストはさほど上がっていないはずであり、22時以降の増便(人件費25%増し)についても値上げに踏み切りほど化と言われると疑問が残る。最近バリアフリー対応車両を増備するため路面電車では値上げが相次いでいるが、嵐電はほとんどが専用軌道でホームにもかさがあるため割高な超低床電車を導入する必要はない。しかも路面電車が210円の時点で路面電車初乗り運賃が阪堺電車と函館市交通局にならび1位タイであり、220円に値上げしたことにより単独トップに躍り出てしまった。とはいえ通勤・通学定期については初乗り運賃の10円安い阪堺電車や函館市交通局より割安となっており、嵐電の観光客からの巻き上げと定期利用客保護を狙っている様子が伺える。京都は日本の一大観光地であり、京都から嵐山を結ぶ嵐電を利用する観光客も多いはずだ。今後どのようになるか注目したいところだ。
4. 結び
今回の2017年3月25日ダイヤ改正では阪急との乗り継ぎを改善し、平日朝夕に増便を図るなどの輸送改善を行った。しかし接続改善・増便・増結を図った代償として普通運賃を引き上げるなど、観光客を中心に費用負担が増えることとなった。利便性の向上にはさらなる費用が必要ということを利用者として痛感しなければならないものだと感じた。1998年以降運賃値上げが実質厳しくなった中、今後路面電車含め利用者の減った交通機関がどのような形で運行していくのか見守ってゆきたい。
コメント
値上げの理由はこの他にも関西電力の値上げによる電力費の増大インバウンドによる案内看板類などの更新費用の増加もあるのではないかと思います。