JR東日本は5月19日、プレスリリースにて夏の臨時列車を公表した( http://www.jreast.co.jp/press/2017/20170510.pdf )。今回はこれについて見ていく。
1. 史上初、大宮発着の「はやぶさ」設定
今回2017年夏のの東北新幹線臨時列車運行では、史上初めて大宮発着の「はやぶさ」を運行とすることとなった。
上野発着の「はやて」は2015年冬から1往復設定が再開されているのであるが、臨時でも上野発着で設定されたことのない「はやぶさ」が大宮発着で運行されるのは史上初で、1985年3月14日の東北・上越新幹線上野延伸開業後では、古本屋でかき集めた時刻表20冊をみても団体臨時列車でない限り大宮発着列車が設定されたことはなく、本年2017年6月24日には新幹線リレー号付きで大宮発の団体臨時列車「東北新幹線開業記念号」が運行されるが、どちらかというと「乗って楽しい列車」の一部であり、今回の大宮発着の「はやぶさ」のような設定は東北新幹線上野・東京開業後では初になるものと思われる。
ではなぜ今回の大宮発着「はやぶさ」が臨時ながらも誕生したのか。時刻表を調べてみると、上下列車とも大宮駅で北陸新幹線「あさま」と被っており、東京~大宮間は干渉してしまい運行ができない。また該当時間帯は他にも列車があり、列車を移動することができない。これまでは東京駅が2面4線でホームが埋まるために臨時列車の一部を上野発着にする措置は比較的頻繁に行われているが、今回のように完全に線路容量の関係で増発できなくなったのは初で、どうにかして乗客を捌こうとして大宮発着で列車を設けたのではなかろうか。
追記:下り(大宮発新青森行き)「はやぶさ」の停車駅は、仙台、古川、一ノ関、北上、盛岡、八戸、新青森。上り(新青森発大宮行き)「はやぶさ」の停車駅は、八戸、盛岡、北上、古川、仙台、大宮となる模様。
2. 今後の僅少列車の運行は大宮発着が主体になるのか
今回史上初の大宮発着臨時「はやぶさ」を設けた東北新幹線であるが、今後東日本系新幹線(東北・上越・北陸の各新幹線)の延伸による需要増大によりそれぞれでGWや夏休みなどの超繁忙期に限り大宮発着で臨時列車を設定しにくる可能性がある。東日本系新幹線の延伸は2023年3月の敦賀延伸(その前の2020年に福井延伸する可能性もあり)、2031年3月には北海道新幹線札幌延伸も予定されている。現在東京~大宮間は最大毎時15本が運行可能であるが、超繁忙期にはそのすべてを使い切ってしまっており、これ以上増発させるためには今回の2017年夏の臨時列車のように大宮発着で組まざるを得ない。
そして大宮発着で列車を組まざるを得なくなった場合、優先して大宮発着に用いるには最速達列車であろう。最速達列車の場合遠距離利用が前提であり、なかなか指定席の取れない期間であればどんなに乗り換えようとも列車を利用してくれる。しかし「なすの」「たにがわ」「あさま」などの近距離列車の場合、新幹線自体の時短メリットが薄いどころかもはや高速バスの方が楽であり、乗り換えなんてさせていたら乗客が逃げてしまう。そのため大宮発着で臨時列車を超繁忙期に僅少ながらも設定する場合には東北新幹線「はやぶさ」や北陸新幹線「かがやき」(福井・敦賀延伸後)になるものと思われる。
3. 僅少列車も含めて全て東京発着で設定するには
増発するために致し方ないとはいえ、大宮発着列車を設けてばかりいてはやはり需要は東京・上野発着列車に集中し、乗車率が偏ってしまう。とはいえ小田急のように平日年間約240日で使うならまだしも、全臨時列車を東京発着にするためにたった1年365日の中で10日運転するかしないか程度の運転頻度の僅少列車のために東北新幹線東京~大宮間を複々線化しようというのはあまりにも不経済な話で、実現するはずもない。そうなれば、今後どのようにして超繁忙期も乗り切ろうとしているのか。
1つの方法は東京駅を最低3面5線化する方法。現在のデジタルATCおよび各新幹線の起動加速度からして東海道新幹線を基に見ていくと、東京~大宮間では平均3分20秒間隔で毎時18本まで運行することができる(ちなみに東海道新幹線が最大毎時15本になっているのは「こだま」を縫うように運行させるためであり、短距離かつほぼ運行パターンが固定化している東北新幹線東京~大宮間では毎時18本の運行は理論上可能)。ただ東京駅での折返し作業を12分で行っている状況の中、現状2面4線では最小4分間隔、最大毎時15本が限度である。これを毎時18本運行させるには最低5線が必要となる。しかし北陸新幹線長野開業時の1997年10月に2面4線化した際には、中央線快速ホームを3階へと移動させ少しずつ在来線ホームをずらし敷地を確保するという大規模工事を行っており、東北新幹線19番線ホームを設置するだけで再び大規模工事になるのは複々線化ほどではないがやはり莫大な投資が必要となる。
そこで上越新幹線にE7系を導入してE4系を引退させることが切り札になるのではなかろうか?オール2階建てのE4系は全車両に階段が設置されており、乗降に時間がかかる。もし2階建て新幹線E4系が2020年に全廃すれば、東日本駅新幹線は全て平屋の列車のみとなり、乗降時間の短縮が図られる。そうなれば、折返し時間も短縮できるのではないだろうか。もし折返し時間を2分短くして10分でできるようになれば東京駅が現状の2面4線のまま先述の最小3分20秒間隔、最大毎時18本運転が可能となり、臨時列車を3本増発することが可能となる。しかし新宿や池袋の場合JR埼京線快速やJR湘南新宿ラインで大宮まで出てから新幹線に乗る方がJR中央線快速で東京に出たりJR山手線で上野に出るよりも総合的な所要時間が短いことが往々にしてあり(しかも盛岡の場合上野よりも大宮の方が特急料金が安い)、どの手法を取るにおいても本当にこれ以上の東京発着臨時列車の増発が必要であることが経済効率的にも示されなければ現状維持となるのであろう。それを推し図るために、今回1往復ながらも大宮発着「はやぶさ」を実験的に設定してみたのかもしれない。
4. 結び
今回の東北新幹線夏の臨時列車運行では史上初の大宮発着「はやぶさ」が設定された。今回はたった1往復の上下各2日ずつであるが、このたった1本の僅少列車の利用状況によっては今後の東北・上越・北陸の各新幹線のダイヤ改正に大きく響く可能性がある。今後秋または冬にも運行されるのか、北海道・北陸の両新幹線の延伸時にどのような運行形態をとってゆくのか楽しみにしたい。
コメント
湘南新宿ラインに続き上野東京ラインも開通したため、関東南部であっても、乗換駅が大宮に移動するだけなので、大宮発着でも問題はないと言える。
東京~大宮間は在来線も新幹線も所要時間変わりませんしね。
むしろ、新幹線特急料金がちょっと安くなるんですよね
7月の大宮発の臨時は満席になったと駅のポスターにありました。実際、東北新幹線で大宮まで帰ってくると、大宮で下車する乗客がたくさんおり、通路に下車する人がずらっと並びます。
大宮発着便、時間が合えば、利用したいと思います。