JR東日本は2019年10月23日、プレスリリースにて10月25日の北陸新幹線全通に向けて臨時ダイヤで運転すると公表した( 北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転再開に伴う暫定ダイヤについて )。今回はこれについて見ていく。
1. 運用数削減に伴い北陸新幹線で減量ダイヤ実施へ
今回の2019年10月25日より実施する北陸新幹線臨時ダイヤ運転では、北陸新幹線全線で復旧するものの、運用本数が限られることから臨時ダイヤで運転する。
これは以前の記事でも触れた通り、長野新幹線車両センターが水没し北陸新幹線用E7系及びW7系30本中10本が使用不能となっているためで、定期運用22運用を賄うことができないためやむなく減便して運転するものである。
今回の臨時ダイヤで削減するのは、「かがやき」は10往復中1往復(10.0%減)、「あさま」は17往復34本中11本(32.4%減)、「つるぎ」は18往復36本中1本(2.8%減)となっている。これにより東京~金沢間では定期列車24往復中23往復(95.8%の本数)、東京~長野間では定期列車41往復82本中69本(84.1%の本数)で運転することとなった。
ちなみに臨時列車も足し合わせると東京~金沢間では35往復中23往復(65.7%の本数)、東京~長野間では63往復126本中69本(54.7%の本数)での運転となる。そう考えると、臨時列車がほぼ全便運転する多客期であれば当初JR東日本が北陸新幹線の運転本数について5~6割程度の本数しか確保できないというのはあながち間違いではないことになる。いや、逆にE7系の運用復帰や新製がなければこの輸送量のまま年末年始を乗り切らなくてはならなくなる。
定期列車すら賄えない状態であるから、北陸新幹線ではもちろん予定していた臨時列車運転も全滅状態である。臨時列車と聞くと多客期にしか設定していない列車ではないかと思う人もいるかもしれないが、新幹線では土休日運転列車は原則臨時列車として運転するし、月曜朝上りや金曜夜下りも臨時列車の設定が多い。そう考えると、臨時列車の設定ができないというのは、ものによっては11月まで影響が少ないものもある一方で、比較的運転頻度の高い臨時列車も減らさざるを得ない。
また東京~長野間しか運転しない「あさま」より東京~金沢間の全線で運転する「かがやき」「はくたか」の方が需要が多いのは当たり前で、多客期でなければ8両編成でも十分に足りてしまう「あさま」を最も削減するのは致し方ないことのように思う。
この「あさま」を中心とする運転本数削減に伴い乗車チャンス確保のため上越新幹線「とき」の本庄早稲田追加停車や北陸新幹線「はくたか」の佐久平追加停車や通常停車しない安中榛名追加停車、「あさま」の安中榛名追加停車を行うことで補うこととなっている。
では今回の臨時ダイヤが定期ダイヤと比べどのように変わっているのか。ほぼすべての列車で定期ダイヤと列車番号を変えておらず、運転する列車は概ね見ていこう。
2. 「あさま」減便で追加停車実施へ
今回の2019年10月25日より実施する北陸新幹線の臨時列車運転で最も多いのは、「あさま」の減便による「とき」「はくたか」「あさま」の追加停車による時刻変更である。
東京7時24分発「あさま603号」長野行きが運休となり、代替として東京7時52分発「はくたか553号」が通常「はくたか」の停車しない安中榛名に追加停車する。
また各駅に停車する東京9時44分発「あさま607号」長野行きが運休となり、代替として東京9時04分発「あさま605号」長野行きが安中榛名に、東京9時28分発上越新幹線「とき313号」が本庄早稲田に、東京10時32分発「はくたか559号」金沢行きが佐久平にそれぞれ追加停車する。東京9時32分発「はくたか557号」を安中榛名に停車させなかったのは、「はくたか557号」が1日1往復しかない高崎通過の「はくたか」だからだろう。
さらに東京15時52分発「あさま619号」長野行きが運休し、代替として東京15時04分発「あさま617号」長野行きが安中榛名に、東京16時16分発上越新幹線「とき331号」新潟行きが本庄早稲田にそれぞれ追加停車する。
なおこれらの追加停車に伴い、「とき」「はくたか」「あさま」では所要時分の延長を実施している。北陸新幹線「あさま」は終点長野まで概ね4分遅れで運転し、上越新幹線「とき」は恐らく追加停車した分新潟まで2~4分程度遅延して到着するのだろうが、「はくたか」は追加停車してもJR東日本管内が終わる上越妙高までに遅延が回復している。これは、今回安中榛名や佐久平に追加停車する「はくたか」が定期ダイヤでは上越妙高で臨時「かがやき」に抜かれるように停車時間を長めにとっているためであり、追加停車した分上越妙高での停車時間を縮めることでJR西日本管内である上越妙高→金沢間では1分たりとも時刻を変更することなく運転できる。
なおこれらの追加停車は下り(長野・金沢方面)で多く行われ、上り(東京方面)ではほとんど行われていない。4分間隔で東北・上越・北陸の3つの新幹線を発着させなくてはならない東京駅で時刻変更を行う方がよっぽど面倒なのだろう。
このほかに東京21時28分発「あさま631号」長野行きも運休するが、金曜日はその後に東京21時32分発臨時「あさま665号」長野行きまたは東京21時48分発臨時「あさま667号」長野行きのどちらかを必ず運転しているが、臨時列車のため臨時ダイヤ期間中運休となっている。そしてその後に来るのが東京22時08分発「あさま667号」最終長野行きとなっており、最終便に旅客が集中してしまう。金曜日はできるだけ早く帰った方が良さそうだ。
3. 運用数を確保するため「あさま」を「たにがわ」に短縮へ
また今回の2019年10月25日から実施する北陸新幹線臨時列車運転では、「あさま」の「たにがわ」への短縮に伴う運用確保を実施する。
10月15日の復旧当初と同様、長野6時18分発「あさま602号」東京行きは長野→高崎間で運休とし、高崎7時02分発「たにがわ50号」東京行きとしてE2系またはE4系を使用して運転する。この代替により長野6時02分発「あさま600号」東京行きは安中榛名に追加停車するため、長野6時00分発に繰り上げて「あさま400号」として運転することとなった。また「あさま400号」は安中榛名停車期間中普通車全車自由席で運転する。
また10月15日~10月24日までは長野6時42分発「あさま604号」東京行きが長野→高崎間で運休することし、本庄早稲田と熊谷にも停車する高崎7時35分発「たにがわ52号」東京行きを設定していたが、大宮→東京間で金沢6時00分発「かがやき500号」東京行きのスジを潰してしまうため元の「あさま604号」を復活させた。
ただその代わり長野7時11分発「あさま606号」東京行きを長野→高崎間で運休とし、本庄早稲田通過のまま高崎7時58分発「たにがわ54号」東京行きをE7系運転のまま設定した。定期「たにがわ」は本庄早稲田に全停車するが、臨時「たにがわ」の多くは本庄早稲田や熊谷を通過するので本庄早稲田を通過する「たにがわ」は決して珍しいことではない。この「あさま」から「たにがわ」への短縮は長野新幹線車両センターが冠水して車両の留置が行えないため長野県内発着列車の設定に限りがあるため、東京新幹線車両センターなどにE7系を留置させて対応しているようだ。
11月30日以降の運転が決まっていないのは、被災したE7系の復帰またはE7系の新製により運用が確保できるようになれば「たにがわ」を「あさま」に戻すためだろう。朝の上り(東京方面)でE2系やE4系を使用してまで運用本数を確保たのは、それだけ朝は通勤利用などで混雑するからなのだろう。
4. 「はくたか」と「あさま」をつなぎ合わせて「はくたか」運転へ
また今回の2019年10月25日から実施する北陸新幹線臨時列車運転では、「はくたか」と「あさま」の運転ダイヤをつなぎ合わせて「はくたか」を運転する。
これは昼間は定期「あさま」と定期「はくたか」が長野で連絡することを利用し、東京~長野間では「あさま」のダイヤで、長野~金沢間では「はくたか」のダイヤで運転する「はくたか」を運転することにより、JR東日本管内では運用を確保しつつJR西日本管内では1分たりとも時刻変更を行わない芸当を行っている。
東京13時04分発「はくたか595号」金沢行きは、東京→長野間は東京13時04分発「あさま613号」、長野→金沢間は東京13時24分発「はくたか565号」のスジで運転する。
また金沢10時56分発「はくたか592号」東京行きはは金沢→長野間は金沢10時56分発「はくたか560号」東京行きのスジ、長野→東京間は長野12時27分発「あさま616号」のスジで運転する。
11月30日以降の運転が決まっていないのは、被災したE7系の復帰またはE7系の新製により運用が確保できるようになれば、定期ダイヤの2列車に戻すためだろう。
このほかに今回の臨時列車運転では、JR西日本管内を含む列車でも減便を実施する。
東京17時24分発「かがやき513号」金沢行きが運休するが、この列車の運休により東京から金沢に行く列車が1時間32分来ないのだが、大丈夫なのだろうか…
さらに金沢7時00分発「かがやき502号」東京行きを運休するほか、金沢20時25分発「つるぎ726号」富山行きを運休する。
これらの調整により、「かがやき」は1往復の減便で済んでいるし、「はくたか」も1往復が所要時間が20分延びたほかは東京~富山・金沢間では時刻通りに運転する。被災して車両が使用できない分限りある運用を最大限に活用した賜物と言っても良いのではないだろうか。
5. 結び
今回の2019年10月25日より実施する北陸新幹線臨時ダイヤ運転では、本来30本あるはずのE7系及びW7系のうち20本しか使用できないことから、運用本数の削減に伴い臨時ダイヤで運転することとなった。
ただ臨時ダイヤを設定するにあたり、極力影響を小さくするために減便のみならず運転区間の短縮で確保したり臨時停車やダイヤの組み合わせで対応したりしているなど、芸が細かい。
今後E7系の運用復帰や新造に伴い、どのように臨時ダイヤが変更していくのか、見守ってゆきたい。
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