阪急電鉄では2022年7月より一部の車両の種別幕に準特急を確認している。今回はこれから、2022年以降実施の阪急電鉄ダイヤ改正について予測していく。
1. 利用減少と準特急新設で大規模なダイヤ改正実施か!
阪急電鉄ではこのご時世で利用客が減少しているため、平日朝夕ラッシュ時などの通勤時間帯での減便を計画していると2021年12月に報じている。
この通勤時間帯の減便は2023年度に実施予定としているが、2022年7月時点で神宝線用車両および京都線用車両ともに準特急の巣別幕を設置した車両を運転開始していることを考えると、および日本全国で2022年以降減便が広く行われており阪急神戸線と競合するJR西日本神戸線でも2022年3月12日ダイヤ改正で新快速や快速を含め減便したことを考えると、実施時期を2023年度から2022年度に繰り上げていてもおかしくはない。
では通勤時間帯の減便と準特急の新設で阪急電鉄でどのようなダイヤ改正を行うのか、予測していこう。
2. 通勤利用減少で10両編成の減少・廃止も視野か
では通勤時間帯にはどのような見直しを図るのだろうか。
そもそも都市鉄道では(もっとも料金が別途必要な列車や観光列車を除く)平日朝ラッシュ時に使用している車両を昼間や平日夕ラッシュ時に流用している。これはわざわざ短編成用の運転台をお金をかけて設けて車両定員を減らすより多少空席があっても長い編成で昼間も運んでしまった方が金銭的に合理的なためである。
このため昼間専用の編成はないが、平日朝ラッシュ時専用の編成はある。
阪急電鉄も同様で、昼間や平日夕ラッシュ時は神戸線や宝塚線は全列車8両編成、京都線は8両または7両での運転なのに対し、平日朝ラッシュ時は3路線とも10両での運転がある。この10両運転は8両編成に2両編成を増結する形で行っており、この2両編成は平日朝ラッシュ時以外には使用しない。つまりこの2両編成は平日朝ラッシュ時のためだけに配置している車両となる。
平日朝ラッシュ時しか稼働しない車両の配置はコストパフォーマンスとしては良くはない。このため阪急電鉄では近年10両運転の縮小を進めており、2両編成の運用を削減し伊丹線や箕面線、能勢電鉄に転属させることで老朽車両の置き換えを行っている。
しかも10両運転を行うには8両運転から増結を図らなければならず、車庫の関係で主に駅での増解結が必要となる。その増解結にも要員が必要で金銭面での負担が大きい。
そう考えると今回の阪急電鉄ダイヤ改正では10両運転を縮小し8両に減車する可能性が極めて高い。
3. 神戸線・宝塚線で10両運転の減車実施で速達列車の運転区間拡大か!
では神戸線や宝塚線では平日朝ラッシュ時にどのように見直すのだろうか。
神戸線では平日朝の特急と通勤特急の大阪梅田行き11本とその折返し列車、宝塚線では平日朝の川西能勢口始発大阪梅田行き通勤特急6本で10両運転を行っている。
神戸線では2019年度には混雑率149%あったものが2020年度には114%に落ちているし、宝塚線では2019年度には混雑率が146%あったものが2020年度には110%にまで落ちている。
もし10両運転を8両に減車しても混雑率は5%程度しか上がらないため、10両運転を廃止し全列車8両運転にする可能性は十分に考えられそうだ。
なお神戸線や宝塚線では途中駅での増解結を極力減らすため、10両運転の列車は神戸線は大阪梅田行き11本中8本が神戸三宮始発、宝塚線は全6本が川西能勢口→大阪梅田間での運転となっている。このため神戸線では平日朝ラッシュ時は神戸三宮での増解結を減らすために8両までしか乗り入れられない新開地・高速神戸からの列車は普通や西宮北口まで各駅に停車する通勤急行が主体となっている。
もし神戸線で10両運転を取りやめ8両運転に減車すれば、平日朝の通勤特急も新開地始発で設定できるようになり、神戸市内からの特急利便性が向上する可能性が高い。
また宝塚線でも通勤特急を10両から8両に減車すれば宝塚始発での設定が可能となり、宝塚→大阪梅田間の所要時間短縮につなげることができる。
ただもし神戸線・宝塚線で10両運転を8両に減車した場合、10両編成の通勤特急に設置している女性専用車両設置列車がなくなってしまう。このためもし全列車を8両運転にする場合には、京都線の女性専用車のように8両運転の特急・通勤特急を対象とすることで、設置列車を大きく増やすのではないだろうか。
もっとも女性専用車の設置の経緯から考えるに女性専用車自体は必要だし、列車の端の車両にいる女性も含め全員女性専用車両に移ってほしいとは言わないが、混んでいる女性専用車両の隣の車両に単身行動の女性がいる理由が分からない。せめて女性専用車両の隣の車両にいる単身行動の女性は女性専用車両に移っていただくことを放送などで促すべきではないだろうか。
4. 京都線で10両運転の廃止も視野か
では京都線では平日朝ラッシュ時にどのように見直すのだろうか。
そもそも京都線ではJR西日本京都線と競合し比較的近くを運転していることから、列車本数の設定も多い。このため2019年度の時点でも混雑率は119%であったし、このご時世で利用が減少した2020年度は混雑率が100%しかなくなってしまい、全員がつり革や手すりにつかまることのできる状態になってしまった。
京都線で平日朝ラッシュ時に10両運転を行っている大阪梅田方面列車は快速急行3本のみとなっている。この3本のためだけに2両編成を3本配置しているほか、増解結の要員も確保する必要があるし、快速急行停車駅はホームが10両対応なのである。
また10両運転を取りやめて8両に短縮したとしても混雑率は100%から103%程度までしか増えないと考えると、京都線での10両運転の廃止は現実味があるだろう。
ただ、京都線の平日朝ラッシュ時は10両運転の快速急行と8両運転の通勤特急を交互に運転している。もし停車駅が3駅多く淡路にも停車する快速急行を8両に減車すれば混雑が集中してしまう。
これを考えると、京都線では快速急行の10両運転廃止に合わせ通勤特急を快速急行に格下げて廃止するのではないだろうか。
また京都線では平日朝のオフピーク時間帯の8両運転快速急行が最速達の時間帯に運転間隔を広げ減便を図る可能性が高い。もしそうなれば2~3運用程度の削減を図る可能性も十分考えられるのではないだろうか。
5. 準特急設定は通勤種別の昼間運転化か!
次に一部の車両で確認されている種別幕の準特急に関して。
そもそも阪急電鉄では先に挙げたように神戸線・宝塚線・京都線それぞれで通勤特急を運転している。が、通勤という種別名もあることから他社も含めて平日朝ラッシュ時にしか運転しないことが多くなっている。
このため通勤を冠する種別は使い勝手が悪いことから、京王電鉄では通勤快速を区間急行に種別変更して昼間に運転を拡大したこともある。
そう考えると、今回の準特急設定は通勤と冠する種別の名称変更と昼間の運転拡大を図るためのものではないだろうか。
それでは10両運転の縮小に伴う2022年以降時実施の阪急電鉄ダイヤ改正で設定する見込みの準特急について、各線ごとに見ていこう。
6. 神戸線準特急設定で塚口に昼間の速達列車停車を確保か!
まずは神戸線。
神戸線では平日朝ラッシュ時に特急と通勤特急を運転しているが、停車駅の違いは1つのみで、塚口に停車するかしないかしかなく、特急のうち塚口に停車する列車と通勤特急と称している。
もっとも塚口は伊丹線と乗り換えられるため乗り換え利用も含め利用の多い駅であることから平日朝夕ラッシュ時には大阪梅田まで2駅で行ける速達列車を多く運転しているが、昼間は8両編成毎時6本の普通列車で十分運びきれてしまうため塚口に停車するのは普通列車だけとなってしまう。
もっとも普通列車でも大阪梅田~塚口間は5駅間しかないし12分で到達できるため、通勤急行などの速達列車と比べても2分程度しか変わらないためあまり実用的に変わることはないのだが、伊丹や塚口から神戸に向かう際には塚口に停車する速達列車があった方が利用はしやすい。
もっとも2019年までは神戸線特急は大阪梅田~西宮北口間で混雑しており、塚口に追加停車しようものならさらに混んでしまって使いにくい列車となるため特急の塚口増停車はしなかったが、このご時世で利用者が減ったため塚口増停車分の空席もまれるようになった。このため昼間の神戸線特急毎時6本(10分間隔)のうち半数またはすべてを通勤特急から改称した塚口停車の準特急に格下げしてもおかしくなさそうだ。
7. 神戸線準特急設定で将来的な6両への減車も視野か
ただ、もし神戸線の通勤特急を準特急に改称して昼間の特急を塚口停車の準特急に格下げしようものなら、これまで大阪梅田~塚口完夫移動客でにぎわっていた8両編成の普通電車が空いてしまう。
もっとも平日朝ラッシュ時に使用している車両を昼間に流用しているだけなので、多少空くのは致し方ない。が、そもそも平日朝ラッシュ時に本当に全列車が8両運転を行う必要はあるのだろうか?
もっとも平日朝ラッシュ時の急行以上の列車は8両運転が必須だろうが、平日朝ラッシュ時の神戸線大阪梅田~西宮北口間折返しの普通4運用と、宝塚線大阪梅田~豊中間の普通3運用を8両から6両に減車すれば、神戸線にて平日朝ラッシュ時に6両編成が必要な口実が見いだせる。また平日夕ラッシュ時の大阪梅田~西宮北口間運転の普通毎時6本も8両から6両に減車して差し支えないだろう(通勤急行毎時6本で十分救済ができるため)
そうなると、神戸線普通の昼間の10運用のうち一部、最大7運用が8両から6両に減車してもおかしくはない。
もっとも6両編成の用意は8両編成から中間車を2両引く方法の他に、老朽化した車両の置き換えとして6両固定編成の新車を投入する方法もあるが、基本的には既存車両減車で済ますだろう。
が、阪急では今津線で6両運転を行っている。もし西宮北口駅今津線ホームを6両から8両に拡張できれば、今津線西宮北口~宝塚間折返し列車を8両運転で設定することができる。
今津線では平日朝ラッシュ時の上りは16分サイクルに8両編成の大阪梅田行き準急1本、6両編成の西宮北口行き普通3本を運転している。もし6両普通を8両に増結すればこのご時世で利用が減っていることを考慮しても16分サイクルに2本あれば十分運ぶことができるようになり、線内折返し普通を8運用から6運用に減らすことができ合理化できる。
そして先述した神戸線(平日朝は一部宝塚線)の6両に置き換えられる運用は7運用あることを考えると、今津線用6両編成と神戸線・宝塚線用8両編成を入れ替えれば編成改造なしに置き換えることができるようになる。しかも8両編成1本と6両編成1本が浮くことから、人員削減と今後の車両新製数も抑えることができる。そう考えると将来的な維持費削減も含め神戸線普通や朝の宝塚線普通の一部で6両への減車を図る可能性はあるのではないだろうか。
8. 宝塚線の準特急は平日朝のみ運転か
次に宝塚線。
平日朝ラッシュ時に川西能勢口→大阪梅田間で通勤特急を6本運転している。が、昼間は急行毎時6本と普通毎時6本のみの運転のため、今のところ準特急の出る幕はなさそうだ。
そう考えると宝塚線に準特急ができる可能性があるとすれば、車両を神戸線と共有する関係でメンテナンスを減らしたいことから通勤特急を準特急に改名だけ行う可能性はある。が、昼間に運転する必要性はないので、運転時間帯は現状の通勤特急土曜平日朝ラッシュ時に限られそうだ。
9. 京都線準特急運転開始で嵐電接続改善か!
次に京都線。
京都線特急は京都市内で大宮と西院を通過するため、両駅には昼間は普通毎時6本しか停車しない。このため路面電車の嵐電への接続があまり良くない。これはおそらく、嵐山へ行くには京都線から桂で嵐山線に乗り換えて向かわせるためだと思われる。
が、嵐電は嵐山に行く途中にも様々な沿線の名所があることから、乗り換え客が一定数いる。そこで京都線特急停車駅に大宮と西院を追加した快速急行を準特急に改称して、昼間の特急を準特急に格下げる形で運転をするのではないだろうか。
阪急電鉄では今回のダイヤ改正で減便は図るが、当面は運賃の値上げは行わないとしている。もっとも平日朝ラッシュ時の10両運転はかなり費用対効果が低く混雑率も10両への増結をしなくても済むレベルにまで下がっているので8両に減車してもおかしくはないが、さらにワンマン化の拡大も将来的に図るのではないだろうか。
2022年現在阪急電鉄のワンマン運転は今津線今津~西宮北口間と甲陽線でともに3両編成によるワンマン運転を行っている。このほか阪急電鉄では4両編成による運転を伊丹線、箕面線、嵐山線で行っているが、いずれも車掌が乗務している。このご時世で他社では4両編成へもワンマン運転を導入していることを考えると、阪急電鉄でも近い将来4両ワンマン運転を行うのではないだろうか。
10. 結び
今回の2022年以降実施の阪急電鉄ダイヤ改正では、2023年度以降に実施すると見込んでいた通勤時間帯の減便を当初の計画より繰り上げて行う可能性がある。
また減車により10両運転を京都線で取りやめる可能性が高いほか、神戸線・宝塚線でも大幅縮小や廃止の可能性も考えられる。
さらに将来的に阪急神戸線の普通電車の一部を8両から6両に減車し今津線の6両編成と交換することで、今津線で平日朝夕ラッシュ時の減便や土曜ダイヤの廃止を図る可能性まで考えられる。
今後阪急電鉄でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
コメント
今津線ですが、北行のホームで8両編成非対応の駅がいくつかあります。南行は西宮北口を除き8両編成が入線できますが。
土木工事が必要なら現状維持というのもあるのではないでしょうか?
今後、ホームドアの設置を進めていかなければいけないことを考えると10両編成の廃止は可能性が大きいと思います。
そこから考えると、今津線を(梅田直通も含めて)すべて6両編成に統一する可能性もあるのでは?と思います。
宝塚線の一部6両化はまだ考えにくいと思いますよ。今のダイヤが効率悪い可能性も十分ありますが、朝のピーク時の準急と普通は十分すぎるくらい混雑しています。思うように朝の優等列車へ利用者の誘導が進んでいないのは確かですが、6両にすれば優等列車への誘導につながるとはいえキャパオーバーが先に来る気がします。