JR東海は2024年8月30日から9月1日にかけて、東海道新幹線不通による多客により中央本線で増発を図った。今回はこれについて見ていく。
1. 東海道新幹線不通により各種臨時列車運転へ!
台風10号の影響で2024年8月29日19時~9月1日18時の71時間、東海道新幹線が不通となり東京~名古屋・新大阪間での移動が東海道新幹線ではできなくなった。
東海道新幹線を運営するJR東海は東海道新幹線各駅への来駅をやめるよう呼びかけていたが、それでも東海道新幹線以外の方法で移動する旅客が大量にいたため東海道新幹線の運転再開まで東京~名古屋・大阪間の移動を控えるよう呼び掛けていた。もっともほかの交通機関では東海道新幹線不通による迂回利用の急激な増加により増便増発を行っているが、いずれも公式には東海道新幹線の振り替えという形で案内していない(JR東日本とJR西日本は8月31日に東海道新幹線不通による影響と記載していたが、数時間後に下ろされている)。
とはいえ旅客は迂回してまで移動しようとするため各方面で臨時便を出している。
日本航空や全日本空輸では2024年7月22日の東海道新幹線のぞみ運転見合わせ以来約1か月ぶりに機材を大型化して対応したほか、羽田~中部・伊丹・間空間の臨時航空便を出した。
また東京~大阪間の迂回に使われた北陸新幹線と湖西線特急「サンダーバード」では定期列車の乗り継ぎパターン13往復のほか臨時列車を各2往復ずつ増発した。乗り換えとなる敦賀駅では大混雑に対応するため手動きっぷうりばを事務机現金払いのみで設置し自動改札を停止し乗り換え改札を開放、下車駅で有人窓口に旅客が押し寄せ新幹線改札を出るのに40分かかったところもある。
そんな中東京~名古屋方面の振替では中央本線特急「あずさ」と「しなの」の塩尻乗換に人が押し寄せた。今回はその臨時列車について見ていく。
2. 中央線特急「しなの」1往復増発へ!
今回の2024年8月~9月東海道新幹線不通により中央本線特急「しなの」が大混雑となり、特急「しなの」が発着する名古屋駅10番ホームは入場規制を行っていた。
そこで特急「しなの」では所定6両のところ多客期同様最大10両までの増結を図った。
さらに8月31日と9月1日には名古屋10時30分発特急「しなの85号」松本行きと松本15時01分発特急「しなの82号」名古屋行きの1往復を増発した。
3. 315系8両編成の中央線臨時快速列車運転へ!
今回の2024年8月~9月東海道新幹線不通により中央本線特急「しなの」が大混雑となったが、特急「しなの」に使用している車体傾斜装置付き383系特急電車は車両数に限りがあるためそれ以上に用意することはできなかった。
そこでJR東海では中央本線名古屋~塩尻間に臨時快速列車を運転することとした。いずれも途中停車駅は千種、多治見、中津川、木曽福島のみと特急「しなの」全停車駅に揃えている。
8月30日は名古屋12時30分発臨時快速塩尻行きと塩尻16時15分発臨時快速中津川行きを運転した。塩尻発中津川行きは途中木曽福島しか停車しない2駅運転のみの列車となった。
また9月1日は名古屋12時10分発臨時快速塩尻行きと塩尻16時14分発臨時快速名古屋行きの1往復を運転した。
これらの臨時快速は中央本線名古屋~中津川間の通勤電車として使用している315系ロングシート車で、4両+4両の8両編成で運転した。なお特急「しなの」であれば中本線特急「あずさ」に乗り換えられることは知っていたようだが、突発的に運転した臨時快速ではわからなかったようで2日とも車内はガラガラで10人掛けロングシートを独占できることもあったようだ。
なお8月31日にも運転の予定があったが中央本線自体が運転見合わせとなったことにより臨時快速も運転しなかった。
そもそも中央本線では2020年5月6日で名古屋~塩尻間を臨時快速ナイスホリデー木曽路を最大1日1往復、名古屋近郊で使用する311系や313系の6両編成ないし8両編成で運転してきた。このナイスホリデー木曽路の要領で315系8両編成による名古屋~塩尻間の臨時快速列車の運転にこぎつけたのだろう。
また松本13時26分発普通木曽福島行き2両編成を中津川行きに延長、上松16時26分発普通松本行き2両編成を中津川始発に延長することで特急「しなの」からの利用移動を図った。
4. 列車走行キロ調整のため東海道線三島~沼津間でE231系10両編成で折り返し運転へ!
ただ今回の臨時特急「しなの」は名古屋~松本間で運転した。
特急「しなの」はJR東海383系で運転する名古屋~長野間を結ぶ列車である。名古屋~塩尻間はJR東海管内だが、塩尻~松本~長野間は他社線であるJR東日本に乗り入れをしている。JR旅客各社では直通運転に際し列車走行キロに応じた調整を行うことで車両使用料を実質かからないようにしていることからJR東海とJR東日本の直通運転ではJR東海383系の長野乗り入れをJR東日本211系の中央本線中津川や飯田線飯田乗り入れ、JR東日本E231系やE233系の東海道線沼津乗り入れで調整している。
このためJR会社間をまた鵜ぐ列車である臨時特急「しなの」は列車走行キロを調整する関係から年間運転日数が決まっている。
ただ今回の2024年8月~9月JR東海臨時列車運転では名古屋~松本間の特急「しなの」を急遽増発したため、JR東海の列車がJR東日本管内塩尻~松本間を走行することとなった。これではせっかく年間を通して調整していた列車走行キロが合わなくなってしまう。
そこでJR東海は沼津駅に毎晩留置しているJR東日本E231系10両編成がJR東日本管内小田原~熱海間運転見合わせで閉じ込められていたことから、本来の運用にないJR東海管内東海道線三島~沼津間でJR東日本E231系10両編成による普通列車を運転することで列車走行キロを調整したようだ。
5. 結び
今回の2024年8月~9月東海道新幹線不通に伴うJR東海臨時列車運転では、中央本線特急「しなの」を増発したほか315系による中央本線臨時快速も設定した。
今後中央線でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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