JR東日本は2021年11月4日、プレスリリースにて山手線各駅のICカードSuicaの利用状況について公表した( 駅利用の変化を Suica のデータで分析・調査 )。今回はこれから、2022年3月実施予定のJR東日本ダイヤ改正予測について見ていく。
1. 山手線で減便を計画か
JR東日本では、2020年から2021年にかけての山手線各駅のICカードSuicaの利用状況について公表した。
このプレスリリースによれば山手線では平日朝ラッシュ時の利用は2019年比で30~50%程度減少していること、品川駅に至って平日朝の駅利用者が半減していることなどを記載している。ただ駅利用者の減少については特に利用の少なかった月のみで記載しているので、期間平均ではもう少し利用が多そうだ。
もっともある程度利用が減っていることはわかるのだが、これを受け何かに取り組むなどの計画が一切ない。一民間企業がこんな身もふたもないデータだけ公表するのは極めてまれである。
そう考えると、本来は公表したかった何かがあった可能性が高いが、それを事情により公表できなかった可能性が高い。
そうなる直近のダイヤ改正で山手線の減便を計画しているのではないだろうか?
また国土交通省は毎年平日朝ラッシュ時の混雑率を公表しているが、山手線では2019年度は最大156%あったものが2020年度には97%にまで低下している。混雑率が100%を下回っていると旅客全員が吊革につかまれるため、平日朝の減便を行ってもおかしくない。
また山手線では現在運転しているE235系による無人運転を計画しており、車両側にも無人運転対応工事を行う必要がある。その際に減便を図り同時期の運用離脱車を増やすことで改造工事をなるべく早くに終わらせることができ無人運転を早期に実施することができるようになるかもしれない。
またそもそも山手線の減便はこれまでもプレスリリースの記載なしに数年に一度行っている。そう考えると12月第3金曜日のプレスリリースの公表で言及がなかったとしても減便する可能性が高い。
では今回の2022年3月JR東日本ダイヤ改正で山手線でどのような減便を行うのか、見ていこう。
2. 平日朝ラッシュ時に減便は必須か
今回の2022年3月JR東日本ダイヤ改正では、山手線の平日朝の減便を行う可能性が高い。
内回りと外回りでそれぞれ平日朝ラッシュ時は内回りは毎時23本運転、外回りは毎時21本運転を行っている。混雑率が減少しているためこれを減便するとなると毎時18本~20本程度に減便してもおかしくない。
もし両回りとも毎時3本ずつ減便するとなれば、6運用を浮かせることができる。
東京都では混雑率を150%以下にすることを目標としているが、訪日外国人の利用の少ない時間帯であるからもし利用が多少戻ったとしても完全復活しない限り混雑率150%を超えることはまずないと言っていい。そう考えると平日朝の減便は運用削減に効果的で行政的にも問題はないことから、積極的に行うのではないだろうか。
3. 昼間の減便で京浜東北線と線路共用と保守点検実施も視野か
今回の2022年3月JR東日本ダイヤ改正では、昼間の減便を行う可能性がる。
2021年現在、山手線では平日昼間は4分間隔(毎時15本)、土休日昼間は約3分40秒間隔(毎時16.6本)を運転している。
そもそも昼間に4分間隔運転が始まったのはJR東日本発足後初の大規模なダイヤ改正である1988年3月13日一本列島ダイヤ改正である。2021年時点では山手線と京浜東北線は全時間帯で別の線路をそれぞれ走行しているが、1988年は昼間は山手線・京浜東北線ともに昼間は全日で5分間隔(毎時12本)の運転で、方向別複々線の田端~田町間は日によりどちらかの線路でのみ運転していた。これは田端~田町間で山手線と京浜東北線の列車を昼間に限り同じ線路で走らせることで使用していない線路を昼間の間に保守点検するためである。
もっとも旅客に分かりにくいことと池袋~渋谷~品川間での山手線の混雑が激しいことから1988年3月13日ダイヤ改正で平日・土休日共に山手線と京浜東北線を朝夕同様線路分離を行い、山手線のみ昼間は5分間隔(毎時12本)から4分間隔(毎時15本)に25.0%も増発した。
ただこのご時世でJR東日本では2020年度に4,000億円もの赤字を計上、2021年度も1,500億円の赤字を見込んでいる。このため東北地方や新潟県を中心に本来夜間に行っている保守点検を2021年より昼間に行うことで経費節減を図っている。
そう考えるとさらなる保守点検の合理化を図るために、1988年以前のように田端~田町間にて平日昼間だけでも京浜東北線と山手線の運転間隔を合わせて同じ線路を使用して片方の線路を空けるのではないだろうか。
もっとも2021年現在田端~田町間のほとんどの駅でホームドアを設置しているが、山手線の11両編成は10号車のドア位置を京浜東北線に合わせることで山手線11両ホームに京浜東北線10両編成を停車しても同じ位置にホームドアが来るようになっていることから問題なく停車できるし、京浜東北線用10両ホームも1両分固定柵を配置しているものの山手線の11両編成と同じ位置でドアが開くようになっているので乗降することができる。このため設備上の問題はない。
では京浜東北線のダイヤはどうだろう。2019年まで京浜東北線は平日昼間は約5分30秒間隔(毎時11本)、土休日昼間は5分間隔(毎時12本)と曜日により昼間の運転本数を変えていた。ただ高輪ゲートウェイ駅の開業した2020年3月14日JR東日本ダイヤ改正で平日昼間を土休日昼間と同様5分間隔(毎時12本)に揃えている。つまり京浜東北線は1988年以前同様にそろえる気満々なのだ。
もっとも保守点検目的であれば人員を集めやすい平日昼間に行えるようにすれば経費節減効果が一番高い。そう考えると土休日昼間は山手線で多少減便しても運転間隔を京浜東北線並みに減便したり京浜東北線と線路共用する可能性は低そうだ。
そう考えると山手線では平日昼間に限り4分間隔(毎時15本)から京浜東北線に合わせ5分間隔(毎時12本)に削減する可能性は十分にある。これにより輸送力が20.0%落ちるが、今回のプレスリリースのデータではそもそも約30%利用が減っていることを考えると、20%の減便でも座れる可能性が高い。そう考えると山手線の昼間の減便と田端~田町間での線路の共用の可能性は十分ありそうだ。
ただ、案内の都合上平日の全てで山手線と京浜東北線が昼間に線路共用するとは考えにくい。このためダイヤ改正で山手線の平日昼間を5分間隔に減便はするが、通常は現状通り京浜東北線と別線路で運転し、保守工事を行う際に限り片方の線路のみに運行を寄せる可能性はありそうだ。
4. 結び
今回の2022年3月実施予定のJR東日本ダイヤ改正予測では、山手線でほぼ終日に渡り減便を図る見込みのほか、平日昼間などには京浜東北線との線路共用により日によってのりばを変える可能性も考えられる。
今後JR東日本でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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