JR東日本は2019年9月6日、プレスリリースにて2019年11月30日にダイヤ改正を実施すると公表した( 2019年11月ダイヤ改正について )。今回はこれについて見ていく。
1. 埼京線快速停車駅増加で昼間も先着落ちへ
今回の2019年11月30日JR東日本ダイヤ改正では、埼京線で快速の停車駅を増加することとした。
今回のダイヤ改正より、埼京線快速は武蔵浦和~大宮間で各駅に停まるようになり、通過運転を行うのは赤羽~武蔵浦和間のみとなる。
これは昼間に毎時3本運転している快速を武蔵浦和~大宮間で各駅に停車させることにより武蔵浦和~大宮間で運転している各駅停車毎時3本を減便し、相鉄JR直通線開業に伴う運用行路の増加を極力抑えようとしたものと思われる。
埼京線快速が路線延伸や新駅開業以外で停車駅を増やすのは、1985年9月30日の開業以降初めてのことだ。
確かに北与野はさいたま新都心裏口的な立地にあるので、さいたま新都心の利便性向上には繋がるかもしれない。2019年10月1日東急田園都市線ダイヤ改正では準急が長津田〜中央林間間で各駅に停車するようになるが、急行は南町田クランベリーモールに追加停車するようになること、大井町発着の急行が中央林間発着に延長することから昼間の減便はないこと、急行は各駅停車化するわけではないからそこまで大きな影響はなかったが、埼京線では主力種別である快速で停車駅を増やすこととなった。
なお平日朝夕運転の通勤快速は停車駅そのままで今後も武蔵浦和~大宮間でノンストップ運転を行うこととなった。夜間の上り(川越発新宿方面)は大宮→武蔵浦和で武蔵野線を目指して乗る需要が多くいることから混雑率100%となかなかに混んでいる。他の時間帯にも大宮から武蔵野線を目指す需要はあるはずなので、平日朝夕を除き武蔵浦和〜大宮間が各駅停車とされてしまうと、大宮から武蔵野線を目指すには埼京線または京浜東北線で向かうことになりオール各駅停車となってしまう。武蔵野線各駅から大宮や東北・上越・北陸の各新幹線が遠くなるのは否めない。
近鉄だったら各駅停車のみそのまま毎時3本減便して快速の通過運転を継続していたかもしれないが、世界最大の都市圏の東京都市圏でかつ首都圏の8つの中核都市である東京23区とさいたま市を結ぶ区間(といっても快速の停車駅が増えたのはさいたま市内だけではあるが)の各駅の利用が毎時3本でさばけるはずもなく(とはいっても2015年3月14日ダイヤ改正まで毎時4.5本だったけどね)、快速を格下げして毎時6本の乗車チャンスを確保することとした。
確かに快速停車駅の与野本町の乗車人員は2018年度には快速通過駅の南与野に抜かれているほか、埼京線赤羽〜武蔵浦和の全駅に負けている。なぜそんな与野本町に快速を停車させているかというと、埼京線の開業が当時の与野市初の鉄道でかつ与野本町が与野市役所に一番近かったからなのだが、乗車人員は隣の南与野に負けていたのでかつての市の中心部かつ今でもさいたま市中央区の中心であるというだけの象徴的印象しかなかった。別に与野本町の利用者が他の駅より抜きに出て多いわけでもなく、戸田公園や武蔵浦和には残っているみどりの窓口も閉鎖されてしまったことから、別に周辺の駅と停車駅の差異を設けなくても良いだろう。
埼京線武蔵浦和~大宮間で最も隣駅間輸送密度が高い武蔵浦和~中浦和間の輸送密度は235,792人/日・往復で、昼間に毎時1両の運転で4,000人/日・往復運べるとすると昼間毎時59両が必要となる。埼京線は全列車10両編成であることから、武蔵浦和~大宮間は昼間毎時6本あれば足りる。つまり今回の埼京線武蔵浦和~大宮間の昼間の毎時9本から毎時6本への減便は理に適っているのだ。
これにより埼京線快速の新宿~大宮間の所要時間は34分から37分に拡大し、湘南新宿ラインの30分と比べてさらに長くなった。もはや埼京線快速利用でも赤羽~大宮間は宇都宮線・高崎線に乗り換えた方が所要時間が短い列車があるほどである。
また新宿→大宮では川越線内の発着時刻の影響で検索サイトでは埼京線快速のうち新宿毎時34分発の毎時1本が先着列車として判定されなくなったほか(ただし厳密には大宮到着は後続の湘南新宿ラインより1分早いはずなので駅の表示では大宮先着列車として案内している)、大宮→新宿では大宮毎時10分発の埼京線快速新木場行きが完全に大宮毎時12分発湘南新宿ライン普通逗子行きに抜かされるのである。つまり大宮→池袋・新宿では昼間の先着本数が毎時7本から毎時6本に減ったのだ。
これと各駅での新宿~大宮間先着列車表示において埼京線快速が表示される時間が短くなることで埼京線で最も混雑している快速が空いてくれればいいのだが(珍しくJR東日本のダイヤをほめることになるが、限られた運用本数で埼京線快速の混雑を極力緩和しかつ運用本数も減らせる最強の方法を良く思いついたとは思う)、一番空くのは大きな減便もなく大宮発着利用が宇都宮線・高崎線に流れるようになる赤羽~武蔵浦和間なのだろう。新宿~赤羽間は宇都宮線・高崎線から埼京線に乗り換える利用も流入してくるので、あまり空かないものと思われる。
2015年の大都市交通センサスのデータによれば、埼京線で最も利用が多い池袋~板橋間の隣駅間輸送密度は591,932/日・往復で、京浜東北線の東京以北のどの区間よりも多い(ただ京浜東北線品川~大井町間の隣駅間輸送密度は635,043人/日と若干埼京線を上回るのであるが)。なお湘南新宿ライン池袋~赤羽間の隣駅間輸送密度は215,069人/日・往復となっている。
これからして昼間毎時1両で4,000人/日・往復運べるとすると、湘南新宿ラインは毎時54両あれば足りるので現在の昼間毎時4本(主に15両編成)で丁度良さそうだ(逆に言えば宇都宮線方面列車の一部に残る10両編成は全列車15両に延ばすべきなのであるが)。しかし埼京線は昼間に毎時147両必要であり、10両編成での運転であることから毎時15本が必要なのである。
にもかかわらず、埼京線は昼間に毎時9本しか運転しないのである。さすがに京浜東北線よりも多い本数での運転ははばかるものがあるが、京浜東北線と同じ平日毎時11本、土休日毎時12本とほぼ同程度の毎時12本を運転してほしいというのは贅沢なのだろうか?こんなに混んでいる埼京線新宿~赤羽間で増発をしないのは、JR東日本の怠慢ではないだろうか。
また川越駅を改装するとか言ってるけど、その前に川越線の複線区間を拡大しないんですか?今回のダイヤ改正で新宿→川越は昼間の所要時間が1分しか延びなかったけど、川越→新宿間で所要時間が5分延びているのは完全に列車交換待ちのせいだし、日進~西大宮間は単線の輸送密度日本2位で、栄えある1位の東武野田線逆井~六実間は2020年3月までに複線化するので単独トップになるし、2位とはずば抜けて離している。もちろんこれより輸送密度の少ないJR西日本嵯峨野線はすでに全線複線化、奈良線は京都~城陽間の複線化が決まっている。10両編成運転区間のうち南古谷~川越間くらいなら単線でも所要時間が短縮することもなければ増発に支障は出ないだろうが、日進~南古谷間くらい複線化したらどうだい?
このほか、プレスリリースによれば昼間の運転間隔を均等化しているとしている。確かに大宮~武蔵浦和間で各駅に停まる列車は7~14分間隔から10分間隔に、武蔵浦和~赤羽間の各駅停車は5~15分間隔から8~12分間間隔にそれぞれ均等化している。赤羽線区間でも赤羽→池袋間では5~10分間隔から6~8分間隔に均等化していて一見良さそうに見える。しかし赤羽線区間の下り(赤羽・大宮方面)では池袋発では6~7分間隔から5~8分間隔にバラつきが広がっているほか、新宿発では6~8分間隔から2~10分間隔に大きく開いてしまった。しかも昼間に毎時6本運転しているはずの新宿から武蔵浦和以北に行く電車が昼間で最大18分間隔が開いていると考えると、利便性が大きく下がっていると言わざるを得ない。もう快速の速達性もあまりないので、埼京線の快速を全て各駅停車に格下げしても良いように思えてきてしまった…
2. 早朝の新宿乗り入れ時間帯を拡大へ
また今回の2019年11月30日JR東日本埼京線ダイヤ改正では、山手線と並走する区間での増発も実施する。
これまで下り(大宮・川越方面)は指扇5時25分発各駅停車新宿行き(新宿6時18分着)が埼京線新宿乗り入れ一番列車だったが、今回のダイヤ改正より川越4時51分発各駅停車新宿行き(新宿5時50分発)が埼京線新宿到着一番列車となり、新宿乗り入れ時刻が28分繰り上がった。
また折返しとなる上り(新宿方面)は新宿発の初電は平日は新宿6時20分発通勤快速川越行き、土休日は新宿6時22分発快速川越行きであったが、今回のダイヤ改正より池袋5時59分発各駅停車大宮行きを新宿5時55分発に延長し、新宿始発の埼京線の営業時間を25分繰り上げた。
ただし、繰り上げた時間内の全ての列車が新宿始発になったわけではなく、池袋6時13分発各駅停車大宮行きは池袋始発のまま残った。直前に新宿始発の各駅停車武蔵浦和行きがいるので、新宿から利用する際に山手線から乗り継いで先着で到着することもできないのだが…
このほかに早朝時間帯は赤羽線区間で減便を実施している。池袋4時49分発各駅停車赤羽行きと池袋5時21分発各駅停車赤羽行き、赤羽5時07分発各駅停車池袋行きと赤羽5時58分発各駅停車池袋行きの2往復となっている。この減便による運転間隔調整のため、池袋5時02分発各駅停車川越行き(赤羽から先は初電)が池袋→赤羽間だけ時刻を2分繰り上げ、池袋5時00分発各駅停車川越行きとして設定することとなった。
この時間帯の埼京線(というより赤羽線)は空いているので減便しても仕方ないという印象はあるが、もし赤羽5時58分発各駅停車池袋行きが新宿行きに延長していたならば池袋6時13分発各駅停車大宮行きを新宿始発に延長することはできただろうにとは思う。
3. 早朝のりんかい線乗り入れ時間帯を拡大へ
また今回の2019年11月30日JR東日本埼京線ダイヤ改正では、りんかい線直通運転時間帯も拡大する。
これまで埼京線の新宿~大崎間の運転は下り(大崎方面)は川越6時04分発各駅停車新木場行き、上り(大宮・川越方面)は大崎7時07分発通勤快速川越行きが一番列車であった。しかし今回のダイヤ改正より下り(大崎方面)は川越5時49分発通勤快速新木場行き、上り(大宮・川越方面)は新木場6時10分発各駅停車武蔵浦和行きが新宿~大崎間を走る埼京線の一番列車となり、下り(大崎方面)で28分、上り(大宮・川越方面)で38分繰り上げることとなった。
これは同日2019年11月30日に相鉄JR直通線が開業したため新宿~大崎間で山手貨物線を運転する列車の運転時間帯を拡大させる必要が生じたこと、新たに相鉄JR直通線電車が走る当該時間帯に埼京線の列車を運転させない理由がなくなったためであるものと思われる。
このほかに平日朝ラッシュ時は相鉄線直通列車を6本運転する。これにより埼京線各駅から渋谷・大崎方面へ向かう列車が増発し、平日朝ラッシュ時の新宿行き列車は毎時18本中毎時6本から毎時3本に半減した。これにより混雑の均等化が図られるものと思われる。
4. 深夜時間帯の増発で金曜運転列車の縮小へ
また今回の2019年11月30日JR東日本埼京線ダイヤ改正では、深夜時間帯の増発も実施している。
まずは大崎乗り入れ列車から。今回のダイヤ改正より相鉄JR直通線が運転開始し平日夕ラッシュ時は毎時3本運転することになったことから、埼京線新宿以南でも平日夕ラッシュ時にパターンダイヤを導入することとなった。
これにより大崎~新宿間では平日夕ラッシュ時に埼京線毎時6本、相鉄JR直通線毎時3本、湘南新宿ライン毎時4本の合計毎時13本が運転することとなった。
ただ新宿20時台発以降はこれまで大宮方面まで行く各駅停車がりんかい線からの直通列車として設定していたが、今回のダイヤ改正より通勤快速川越行きと各駅停車赤羽行きがりんかい線からの直通列車として設定することとなった。一番空いている赤羽行きをりんかい線からの直通列車として設定するのは混雑が分散していいのだが、最も混雑する通勤快速をりんかい線からの直通列車として設定すると混雑の拍車がかかってしまう。運転パターンを変えて各駅停車のみをりんかい線からの直通列車とすることはできなかったのだろうか。
また今回のダイヤ改正では新宿以北でも平日夕ラッシュ時に増発を実施している。新宿19時台発では新宿19時53分発各駅停車大宮行きを増発し、毎時11本から新宿18時台発同様毎時12本に増発した。
さらに新宿21時台発は赤羽行き1本を増発し毎時12本の運転としたほか、新宿22時台発は赤羽行き2本と各駅停車大宮行き1本の合計毎時3本を増発し毎時12本運転とした。そして新宿23時台発は新宿23時42分発赤羽行きを増発したほか、新木場23時14分発通勤快速川越行きを各駅停車に格下げし、金曜運転の新宿23時51分発各駅停車川越行きを毎日運転の新宿23時52分発各駅停車大宮行きに運転日を拡大した。なお大宮→川越間では代替として新宿23時29分発各駅停車大宮行きを川越行きに延長した。これにより、通勤快速の最終列車は新宿23時47分発から新宿22時444分発に1時間03分繰り上がった。
埼京線では東京都市圏では珍しく通年で金曜運転の臨時列車を設定しているが、2019年3月16日ダイヤ改正で上下合計4本から下り(赤羽・川越方面)の2本のみの設定に縮小し上り列車(新宿方面)は回送としたほか、今回のダイヤ改正で1本が毎日運転に格上げしたため埼京線の金曜運転の臨時列車は新宿23時11分発各駅停車赤羽行き1本のみに縮小してしまった。
このほか、新宿23時55分発各駅停車川越行き最終電車は新宿→大宮間で時刻を繰り下げ新宿24時00分発に5分繰り下げた。また川越23時03分発各駅停車池袋行きは川越23時04分発各駅停車新宿行きに延長し、新宿行き埼京線の運転時間帯を13分繰り下げた。ただ、新宿到着が24時03分発で新宿始発の埼京線の運転は終わってしまっているため、池袋まで回送で入庫することになりそうだ。池袋始発の赤羽行きを新宿始発に延長しても良かったのではないだろうか。
一方、新宿20時台発の各駅停車武蔵浦和行きの設定はなくなり赤羽行きに短縮したほか、川越線では大宮23時台発の運転本数が毎時6本から毎時5本に削減した。また池袋~赤羽間の赤羽線区間では深夜にも減便を実施し、池袋24時06分発各駅停車赤羽行き、池袋24時12分発各駅停車赤羽行き、赤羽24時51分発各駅停車池袋行きの3本を廃止した。赤羽発池袋行きの削減は空いているのでわかるのだが、池袋発赤羽行きの削減は1本は運転間隔が狭いのでわかるがもう1本は必要な気がするのだが…
もっとも、新宿~赤羽間は昼間ですら毎時12本が必要であることから昼夕輸送力比を逆算すると新宿18時台・19時台発の平日夕ラッシュ時は毎時15本は必要なので、到底運転本数が足りているとは言えない(ちなみに京浜東北線北行きは毎時19本運転している)。まだまだ増発の必要はありそうだ。
5. 「湘南ライナー」削減と特急「成田エクスプレス」で時刻変更へ
また今回の2019年11月30日JR東日本ダイヤ改正では、座席指定制列車の減便も図られる。
小田原7時16分発湘南ライナー8号東京行き(215系10両編成)と小田原7時28分発湘南ライナー10号品川行き(185系7両編成)を統合し、小田原7時20分発湘南ライナー8号東京行きとする。これにより老朽化している185系の運用を1運用減らした。
このほか東海道線「湘南ライナー」では最大4分程度時刻変更している。
このほか、湘南新宿ラインは相鉄JR直通線の開業により最大2分程度時刻修正を行った列車があるが、運転本数を維持することとなった。また総武本線特急「成田エクスプレス」は新宿・池袋方面発着の列車で最大2分程度時刻を変更し、所要時間が延びた。
6. 結び
今回の2019年11月30日JR東日本ダイヤ改正では、埼京線快速の停車駅増加により各駅停車の運転区間短縮が行われたほか、所要時間が延びついに昼間に湘南新宿ラインに抜かわれるようになってしまった。
また大崎~新宿・新宿~池袋間で早朝の埼京線運転時間帯を拡大を図り、終電の繰り下げも行った一方で、圧倒的に運転本数の不足している池袋~赤羽間の赤羽線区間では早朝・深夜に減便を行った。
今後2020年3月には渋谷駅ホームが移設し利便性が大きく向上する埼京線で、どのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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