JR東日本は2021年6月30日、プレスリリースにて2021年7月~8月に東京オリンピックに合わせ総武線快速・成田線・鹿島線で臨時列車を運転すると公表した( 東京 2020 オリンピック期間中における総武快速線・総武本線・成田線・鹿島線 茨城カシマスタジアム開催日の時刻表 )。今回はこれについて見ていく。
1. オリンピック開催で鹿島スタジアム臨時列車運転へ!
今回の2021年7月~8月JR東日本千葉支社臨時列車運転では、カシマスタジアムでの試合開催に合わせ総武線快速・成田線・鹿島線で臨時列車カシマスタジアム号を運転する。
人数制限を行うとはいえ開催が決まった以上、鉄道会社は密を防ぐために列車を運転しなければならない。そう考えると今回の臨時列車は設定せざるを得ないだろう。
カシマサッカースタジアムの最寄り駅は臨時駅の鹿島サッカースタジアムなのだが、そもそも試合開催日にしか営業しないのと駅構内があまり広くないのでFIFAワールドカップやオリンピックなどの大規模催事の際には東京・千葉方面からの鉄道利用客には隣の鹿島神宮を使用するようにお願いをしている。このため今回の臨時列車も東京~鹿島神宮間の運転としている。
もっとも東京から鹿島神宮へは関東鉄道バス高速かしま号が概ね20分間隔で運転しているので通常であれば十分な利便性が保たれている。しかしオリンピックのような大規模イベントでは到底運びきれないため、千葉のみならず東京からも鹿島神宮へ臨時列車を出すこととしたのである。
今回運転するのは臨時列車カシマスタジアム号で、東京~鹿島神宮間を直通して運転する。途中停車駅は錦糸町・船橋・千葉・成田・佐原に限られる。総武線経由で運転するため東京駅は総武地下ホーム発着となる。また鹿島線鹿島神宮駅は11両対応のため、総武線快速などで使用しているE217系やE235系も入線は可能だ。
運転日は7月22日・25日・27日・30日・31日・8月2日・3日・5日の8日間となっている。各日でそれぞれ運転時刻・設定列車が異なっているが、概ね東京駅総武地下ホーム発は11時~14時ごろ(ただし7月中は東京12時38分発が最終な日あり)、鹿島神宮発は試合終了に合わせて運行する。なおカシマスタジアム号は普通車全車自由席でグリーン車を営業しないほか、座席指定はできない。
今回設定するカシマスタジアム号は一番遅い時間の出発でも7月22日・25日・27日の鹿島神宮0時42分発東京行きだが、東京到着は2時27分のため真夜中の到着となる。
2. 過去の東京~鹿島神宮間直通列車との違いはあるのか
ただ過去にも東京から鹿島神宮への臨時直通列車を設定したことがある。2002年のFIFAワールドカップ開催時には特快カシマスタジアム号を東京~鹿島神宮間で試合開催日1日当たり4~5往復程度運転していた。今回は下り(鹿島神宮方面)は同程度の本数、鹿島神宮始発東京行きの本数は開催日全てで9本運転と大きく増発している。なお2002年6月2日のみ行っていた横須賀線久里浜始発の特快カシマスタジアム号の設定は2021年は行わない。
ただこのほかにも大きな違いが2つ。1つは2002年の総武線快速は通常時は快速と平日のみ運転の通勤快速のみの運転で特快の運転はなかった。このため2002年の特快カシマスタジアム号は東京~千葉間は総武快速と同一の停車駅であった。しかし2015年3月16日より2017年3月3日まで平日に限り内房線直通の特別快速を1日1往復運転することとなり、東京~千葉間の途中停車駅は錦糸町・船橋・津田沼のみで設定した。これを反映し今回2021年に運転するカシマスタジアム号は東京~千葉間は途中錦糸町と船橋のみの停車に停車駅を削減することとなった。このほか2002年には停車していた四街道、佐倉、潮来への停車も取りやめることとなった。
また2002年の特快カシマスタジアム号はグリーン車自由席を営業していたが、今回2021年に運転するカシマスタジアム号はグリーン車を閉鎖することとなった。これは2002年当時はグリーン券はきっぷでのみの販売だったためその場で手売りすれば問題ないしその分増収になったのだが、2004年10月16日ダイヤ改正からグリーン車Suicaシステムを開始したことでSuicaに区間を登録させなくてはならなくなった。まあ全区間均一料金であれば鹿島神宮発着もすぐに登録できたのかもしれないが、運転曜日と距離(50km)を境に料金が変動するため、個別に登録しなければならない。そうなると鹿島神宮・佐原発着でのグリーン車料金の登録ができずにグリーン車の営業を断念した可能性がありそうだ。
このほか2002年FIFAワールドカップ開催時には鹿島臨海鉄道から連絡するように常磐線水戸0時58分発普通土浦行き及び常磐線0時58分発普通高萩行き深夜列車の計2本運転したが、今回の臨時列車運転ではカシマサッカースタジアムでの試合日に合わせて常磐線で別途増発することはない。
3. カシマスタジアム号の運用数確保のために一部を209系で運転か?
ただ今回鹿島神宮発東京行きのカシマスタジアム号は各試合日に9本ずつ運転する。しかし所要時間を考えると9本とも別運用で用意しなければならない。平日夕ラッシュ時に通勤輸送を終え内房・外房・横須賀の各線に11両編成が散らばっているのに、総武線快速用E217系やE235系が9運用も鹿島神宮に配置できる余裕があるとは思えない(もっとも2002年のFIFAワールドカップの際には鹿島神宮発東京行きは1日最大4本までしか設定していなかったのでE217系だけで足りたとは思うが)。
しかも鹿島神宮発東京行きだけを見ても所要時間に差がある。もっとも鹿島神宮→成田間は単線区間のため列車交換待ちもあるのかもしれないが、複線区間の成田→東京間で同じ停車駅にもかかわらず列車によって所要時間が1時間01分~1時間12分とバラつきがある。数分程度ならまだしも10分も差がつくとなるとさすがに偶然とは言えない。しかも夜が更ければふけるほど所要時間が短くなるので、深夜時間帯の減速運転は行っていないはずだ。
そう考えると、カシマスタジアム号は最高速度の異なる2つの車両で運転するのではないだろうか。
通常総武線快速に使用しているE217系やE235系は120km/h出せるが、鹿島線・成田線普通列車用209系は110km/hしか出さない。もっとも209系は通常は千葉までしか営業運転を行わないのだが、2020年3月に試運転として209系が東京駅総武地下ホームに入線している。しかもホームでは臨時列車として自動放送が入っている。これを考えると、もしや臨時列車カシマスタジアム号を209系8両ないし10両編成で運転する可能性も十分あるのではないだろうか。
もし209系も運用するのであれば22時台や23時台に鹿島神宮を出発する列車は運転日によりE217系で運転したり209系で運転したりする可能性がある。209系にはグリーン車はないから、グリーン車あるなしで分けるとかえって混乱をきたす可能性が高い。そうなれば最初からグリーン車は封鎖し営業運転を行わない方がいいだろう。
まあ総武線快速でホームドアを設定しているのは新小岩のみなので、新小岩さえ通過してしまえば209系の総武線快速での運転はできなくはない。また209系は車内にトイレを設置しているし、クロスシートもあるので(通勤型車両と比べると大量輸送には不向きかもしれないが)中距離移動にも耐えうる。
ただ2020年3月の209系東京駅総武地下ホームは当初2020年に東京オリンピックを行う目的で組んでいた運転列車だったため説明がつくのだが、この試運転列車は以降2021年6月まで運転がない。そう考えると東京駅総武地下ホームを209系が乳清するのは計画だけで立ち消えになった可能性は否定できない。
このほかカシマスタジアム号として千葉・成田・佐原~鹿島神宮間でも臨時列車を運転する。ただ2021年3月13日ダイヤ改正まで千葉~鹿島神宮間を直通運転する209系があったことを考えると、原則209系が当たるのではないだろうか。これにより試合開催日は鹿島線では12時以降概ね毎時2本の列車を設定する見込みのほか、成田~鹿島神宮間でも成田線普通列車からの乗り換えと合わせて試合開催日は12時以降は毎時2本の運転を確保できる見込みだ。このことから試合開催日の成田線経由銚子発着の電車は増結を行うのだろう。
なお鹿島線では2021年3月13日ダイヤ改正よりほとんどの列車がE131系2両編成でのワンマン運転となっているが、試合開催日は鹿島線内折り返し運転列車も千葉から209系の応援も来てツーマン運転を行うだろう。
4. 結び
今回の2021年7月~8月JR東日本千葉支社臨時列車運転では、総武線快速・成田線・鹿島線を直通する臨時列車カシマスタジアム号を設定することになった。
ただ総武線快速用E217系やE235系だけでは賄いきれない可能性があり、房総各線用209系が8両ないし10両運転で一部の列車の運用に就く可能性がある。
今後臨時列車カシマスタジアム号でどのような車両で運転するのか、楽しみにしたい。
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