JR九州は2021年3月ダイヤ改正で福岡地区を中心に快速・普通列車でも減便を行うと公表した。今回はこれについて見ていく。
2021年3月実施予定のJR九州ダイヤ改正のうち九州新幹線と在来線特急はこちら!
1. 福岡県内で大幅減便実施へ
今回の2021年3月JR九州ダイヤ改正では、福岡県内を中心に減便を行う。
これは利用が2割~3割減っているためで、それに合わせて減便するとしている。
もっとも東京都市圏や大阪都市圏の鉄道各社であれば、2019年まで訪日外国人需要が右肩上がりで昼間も座れないほどには混んでいたため、2割~3割利用が減っていても2020年現在昼間の減便は行っていないし、もし行ったとしても15%程度に抑え少なくとも2019年以前よりかは混雑が緩和している状態までしか減便しないだろう。
しかしJR九州の場合2018年3月17日に普通列車の大粛清を行ったことからもわかるように、利用が減った分容赦なく減便を図る可能性が高い。
特急列車の定期列車だけ減らしても列車走行キロは減らせるが、お盆や年末年始などに従来通りの増発を行うのであれば必要編成数は変わらない。
鹿児島本線では2019年3月16日ダイヤ改正より老朽化した415系を順次新型車両821系に置き換えている。しかし今回のダイヤ改正でそもそも運用数が減り415系の必要数が減れば821系の投入を少なくできる。
要は運用削減により新型車両821系の投入数を抑えて経費節減を行いたいのである。
JR九州は2019年比で7割~8割程度の利用しか見込めないとしているが、もし5年後でも10年後でも2019年の利用程度にまで旅客が回復したらその際にその時の新型車両を増備すればいいだけの話である。また415系以外の車両でも列車走行キロが減る分車両置き換えスパンが長くなるので、JR九州からすればこの機に行う減車・減便は得である。
さしあたり415系鋼鉄製の4両編成26本の運用を浮かせたいのだろう。
なおJR九州ではJR西日本やJR東日本が2020年3月ダイヤ改正で行おうとしている終電の繰り上げは行わない見通しだ。もっとも2018年3月17日JR九州ダイヤ改正で終電を繰り上げまくったから既に必要がなくなったためではあるが。
1.1. 鹿児島本線では減便主体か
では鹿児島本線ではどのように車両削減を行うのだろうか。
車両運用を削減するにあたり減便と減車の2つの方法がある。福岡県内の鹿児島本線では主に4両単位の415系と811系、3両単位の813系と821系で運転している。概ね最大は9両での運転であることを考えると、9両→7両(4両+3両)や8両・7両→6両への減車は容易に出来うる。確かにほぼ終日毎時3本運転の速達列車(快速・区間快速)は平日夕ラッシュ時に減車を行うのは得策だが、昼間の快速や平日朝ラッシュ時の普通列車はそのまま減便してしまって人件費も減らしてしまった方が運営費を減らすことができる。
ではどのように減便するのだろうか。平日朝ラッシュ時は下りは福間始発や海老津始発、上りは二日市始発の普通電車毎時4本が削減できる。これだけでも9両ないし8両編成8運用を削減することができ、415系換算で16本分削減することができる。これにより鹿児島本線博多着の平日朝ラッシュ時の本数が毎時11本から毎時7本に減り、運転本数は36.4%減少することになる。ただ415系運用の縮小により8両を9両に延ばせば多少混雑を緩和することはできそうだ。
また平日朝ラッシュ時は遠賀川7時23分発普通小倉行きか南福岡6時42分発区間快速門司港行きのどちらかが廃止となる見込みだ。これだけでも415系2本分の運用を削減することができる。
また昼間毎時3本しかない普通電車を易々と減らせるとは思えない。そう考えると真っ先に削減対象となるのは快速なのだろう。
もし快速毎時1本を減らすと小倉~福間間では昼間の快速列車が消滅する可能性がある。
これにより折尾~海老津間が昼間毎時2本になっても何らおかしくない。
このほか2021年3月ダイヤ改正前後で連続立体交差化事業により折尾駅短絡線ホームが高架化し全てのホームが高架に移動することとなる見込みだ。
1.2. 鹿児島本線以外でも減便実施へ
また今回のダイヤ改正では鹿児島本線以外でも減便の可能性がある。
山陽本線下関~門司間では列車を削減する可能性がある。昼間は2018年3月17日JR九州ダイヤ改正で毎時3本から毎時2本に減らしたが、平日夕ラッシュ時は相変わらず毎時4本で運転している。昼夕輸送力比を考えても毎時3本に減っても輸送力に問題はなさそうだし、利用が減ったという理由で毎時2本に減便する可能性がある。また平日朝ラッシュ時も毎時4本から毎時3本に減便すれば415系1運用を削減することができる。
さらに福北ゆたか線では快速を減便し昼間は博多~篠栗間で毎時4本から毎時3本に、篠栗~新飯塚間では毎時3本から毎時2本に減便する可能性がある。もっとも篠栗~新飯塚間では33.3%の輸送力減少になるから混ませ過ぎではないかと思う人もいるかもしれないが、篠栗~新飯塚間は2018年3月17日ダイヤ改正での大粛清でも昼間の運転本数を変えなかったため、減便を図ってもおかしくはない。
また平日運転の直方6時44分発快速博多行きも廃止になる可能性がある。813系6両編成での運転となっているが、その分鹿児島本線に運用を変えれば415系1本分は浮くはずだ。
なお交流電車の乗り入れられない筑肥線は2018年3月17日ダイヤ改正にぎ期続き減便しない可能性が高そうだ。
2. 福岡以外でも減便へ
今回の2021年3月JR九州ダイヤ改正では、福岡地区以外でも減便を図る可能性がある。
JR九州は新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う利用減を理由としてローカル線の廃止をすることはないと断言している。が、列車の運転本数や両数を変えないとは言っていないし、電化して普通列車の運転が比較的多い幹線では減便の可能性は十分にある。もし福岡都市圏以外でも減便・減車ができるのであればその分必要な車両数を減らすことができ、車両置き換えを遅らせることができる。
まず廃止筆頭は八代8時09分発快速熊本行き。かつて肥薩線人吉始発の快速熊本行きとして運転していたが、2018年3月17日JR九州熊本支社ダイヤ改正で八代始発に短縮した。このため現在でもキハ40系列1両編成での運転となっている。
ただ前を走る八代7時57分発普通鳥栖行きを熊本での停車時間を4分縮めて八代8時01分発普通鳥栖行きに再編してしまえば救済できるので、大きな影響なく減便することができる。この減便によりキハ40系1両を運用削減できる見込みだ。
このほか長崎や熊本、大分、鹿児島では朝夕に限り415系を運用しているが(なお宮崎では代わりに713系)、これらは平日朝ラッシュ時に2両編成では足りないために運用しており、平日夕ラッシュ時は実は2両編成でも十分に運べるのだが717系を中心とした2両編成の本数が少ないがために過剰な4両で平日夕ラッシュ時も運転している。
415系の運用を朝夕だけにして列車走行キロを減らしているのは、将来的に平日朝ラッシュ時も2両編成で十分な輸送量になった時に4両編成を2両編成で置き換えるためなのだろう。そう考えると今回のダイヤ改正で篠栗線の減便などで余る717系2両編成の一部が各地に転属し、415系と置き換わる可能性はありそうだ。
3. 結び
今回の2021年3月JR九州ダイヤ改正では、普通列車でも福岡県内を中心に大きく減便を行う見込みだ。
今後JR九州でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
コメント
今回の話とは別ですが、福岡市営地下鉄の貝塚駅付近にJRの駅を設置する検討に入った模様です。
国鉄時代から貝塚に駅を設置する構想はあったと推測されますが、大人事情で許されなかったのでしょう。
貝塚でJRとの乗り換えができるのであれば、箱崎線の更なる活性化に繋がる反面、周辺の交通体系の再編は避けられないと考えられます。現に陣原駅の新設の際に行われましたからね。
そうなると、鹿児島本線や香椎線の輸送体系も大きく変わり、博多周辺での415系の運用は終了するのではないでしょうか。
あくまでも個人的な意見であります
熊本地区に821系が導入と耳にし懐疑的でありました。しかし、415系の淘汰を考えると朝夕の熊本ローカルと南福岡からの送り込み返却を兼ねた運用に充当されると推測したところです