JR九州は2022年6月10日、プレスリリースにて9月23日にダイヤ改正を行うと公表した( 西九州新幹線が開業します 在来線各線区でダイヤを見直します )。今回はこのうち山陽本線下関~小倉間を中心に見ていく。
1. 関門海峡列車の系統分割へ
今回の2022年9月23日JR九州ダイヤ改正では、2018年3月17日JR九州ダイヤ改正以来約4年5か月ぶりにJR九州山陽本線大規模なダイヤ改正を行う。
今回のダイヤ改正ではJR九州山陽本線乗り入れ列車の小倉での系統分割が進むこととなった。
下関始発の日豊本線直通列車は9本(朝3本、夜6本)から朝の1本に、日豊本線からの下関行きは11本(朝6本、夜5本)から朝の2本のみに、それぞれ減便することとなった。
なお下関始発の小倉を超え鹿児島本線方面は下関22時54分発普通福間行き1本のみだったが今回のダイヤ改正で小倉で系統分割に、鹿児島本線から小倉を超えて下関行きとして運転していた直方6時49分発普通下関行きおよび折尾16時42分発普通下関行きも小倉で系統分割することとなった。
よって下関発着列車のうち小倉を超えるのは、柳ヶ浦4時49分発普通下関行き、行橋5時57分発普通下関行き、下関6時16分発普通大分行きの3本のみとなる。
今回のダイヤ改正後も大分の乗り入れる415系が残ることを考えると、4両編成22本の配置がある大分車両センターの415系は一部が残る見込みだ。
2. 415系の大分乗り入れ残るも3両ワンマン運転実施へ
今回の2022年9月23日JR九州ダイヤ改正では、日豊本線でも大きく運用を変える。
運転本数自体は大きく変わらずオフピークに2往復4本の普通列車を廃止することとなった。今回のダイヤ改正で減便するのは小倉8時04分発中津行き、中津9時14分発小倉行き、小倉21時04分発宇佐行き、中津20時43分発小倉行きとなっている。このため1日1本のみ運転の朝の柳ヶ浦7時09分発の快速は小倉行きとして存続する。
ただ、今回のダイヤ改正では減車を中心に行いそうだ。415系はワンマン対応していないが、今回の2022年9月23日ダイヤ改正より日豊本線で最大6両編成によるワンマン運転を行うとしている。そう考えると日豊本線では6両編成のワンマン列車と4両編成のツーマン列車を設定する見込みだ。
これにより朝の811系と813系を連結した7両運転列車を6両に減車する見込みのほか、かろうじて415系の乗り入れが残る大分市周辺でも415系4両運用の多くが南福岡から転属見込みの813系または817系3両編成によるワンマン運転に置き換わる見込みだ。
これにより今回のダイヤ改正以降、大分発で残る4両運転は大分8時03分発中山香行き、大分18時48分発中津行き、大分22時19分発佐伯行きの3本に絞られることとなった。
3. 415系は今後どうなる
今回のダイヤ改正では、鹿児島本線を中心に大規模な減車減便を図ることで、ワンマン対応車を続々福岡から各地に転属させワンマン運転を拡大する。
(この一文のみ2022.9.24追記)この転属は、福岡から817系2両編成を鹿児島に、813系3両編成を大分に、821系3両編成を熊本にそれぞれ移動することとした。
この運用削減と転属により、ワンマン運転に対応していない415系のうち1978年~1984年に投入した白い415系鋼鉄車の運用が消滅する見込みだ。
まあ1983年に登場したJR西日本201系が2023年3月までにやっと全車置き換わること、大手私鉄でも40~45年程度での置き換えも近年増えていることを考えると、そこまで車両更新が遅れていたわけではない。もっとも2019年時点の計画では新型車両821系を2025年まで投入して415系鋼鉄車を順次置き換える計画だったので、当初の予定より2~3年程度運用離脱が早くなったと言われればそれまでだが。
ただ、1986年~1987年に投入したステンレス製の415系1500番台は今後も残る見込みだ。ただこちらも2026年~2035年頃には老朽化に伴う置き換えが必要となりそうだ。
そもそもJR九州に415系が多くいるのは、山陽本線下関~門司間(というか門司駅構内)に交流と直流が分かれるデッドセクションがあることから、山陽本線を交流専用の811系や新型車両821系で運転することができず、やむなくJR九州の前身の国鉄が投入した交流直流両対応の415系を使用している。このためにJR東日本常磐線から415系ステンレス車を転属させ老朽化した415系鋼鉄車を追い出したほどだ。
もっとも過去にJR東日本から車両譲渡があったことを考えれば次の車両更新の際もE531系を転属させればいいのではないかという話になるが、そもそもE531系は415系4両編成より長い5両編成のため省エネにはならないし、2020年以降JR東日本の経営状況が良くなくなり、車両を譲渡するほどの余裕がなくなっている。そう考えるとJR九州がJR東日本からE531系5両編成を受け入れるとは考えにくい。
そう考えるとJR九州は山陽本線用車両を自社で調達しなければならない。415系電車のほかに交流区間は蓄電し直流区間は充電した電力を消費して走ることでBEC819系の乗り入れも可能だが、山陽本線は九州と本州を結ぶ貨物列車の大動脈であることから直流電化の設備を撤去しスリム化することはできないし、アボイダブルコスト算出の関係上直流設備も使用した列車であることが求められる。
実際にJR東日本では2017年10月14日ダイヤ改正より東北本線黒磯~新白河間でキハ110系気動車2両編成を運転開始したが、2020年3月14日ダイヤ改正で運転を取りやめすべて交直流電車のE531系に置き換えることとなった。これは、気動車では黒磯~高久間にある直流設備を使わないためアボイダブルコストが大きく引きあがるのを抑えるためと言われている。
では山陽本線下関~小倉間を運転る列車はどれくらいの輸送力が必要なのだろう。2019年度の下関~門司間の輸送密度は19,049人/日・往復となっている。昼間は毎時1両で4,000人/日・往復輸送できることを考えると、昼間は毎時5両、平日夕ラッシュ時は毎時8両、平日朝ラッシュ時は毎時12両あれば運びきれる。JR九州山陽本線では朝夕は毎時4本、昼間は毎時2本で運転していることを考えると、終日に渡り4両から3両に減車しても運びきれるしむしろ将来の減車目的で今の運転本数を据え置いていると言ってもいいだろう。
もっとも2021年度は輸送密度13,639人/日・往復まで減っているため昼間は毎時4両あれば運びきれるようになっているし、今後需要が多少回復したとしても完全には元の人数には戻らないだろうしそもそも北九州市も下関市も人口が減少しているため2019年度の水準にまで戻るとは考えにくい。
ただ、逆を言えば4両から2両に減車すると輸送力が半減してしまうし、多少過疎化が進んだとしても朝に運びきれない。また同じく小倉を発着する日豊本線や門司港方面の普通列車運用を考えると3両編成でもことたりていること考えると下関~小倉間用の車両は将来交直流対応の3両編成電車を新製して置き換えるとみて良いだろう。
また、ダイヤ改正後も415系は大分まで乗り入れるが、下関〜小倉間以外は本来交流専用の813系や817系で済むわけであって、415系である必要性はない。そうなると、交直流電車は4本あれば下関〜小倉間の輸送は間に合うし、予備車を含めても6本投入すれば足りる。そう考えると、2035年までにJR九州は交直流電車を3両編成6本程度を投入するのではないだろうか。
ところで、1983年に投入した713系2両編成4本(「サンシャイン」型車両)の置き換えはいつなのだろう。もっとも2両運転時にはワンマン運転に対応しているので昼間の運転にはもってこいだが、車外カメラの設置を見送ったため2本つなげた4両編成でのワンマン運転を行わない。また713系の運用がある宮崎県内へは813系や817系などの3両編成が転属する予定もないことから、713系はまだしばらく運用し続ける見込みのようだ。
一応宮崎にも817系2両編成2本が転属したが、あくまで713系2両編成2本つなげた4両運転を置き換えるにとどまっている。また今回のダイヤ改正で佐土原発着のキハ47系運転を電車に置き換えることから、その電車運用増加分に713系を当てられる。このため、713系は終日2両運転を行うようになり、ワンマン運転を朝夕も行えるようになるようだ。
4. 結び
今回の2022年9月23日JR九州ダイヤ改正では、減車減便により415系鋼鉄車の運用がなくなる見込みで、JR九州の415系運用の多くは山陽本線下関~小倉間の運用に留まる見込みだ。
今後JR九州でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
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