JR四国は9月25日、プレスリリースにて12月2日より高徳線特急「うずしお」に2600系新型特急車両を導入すると公表した( 新型特急気動車「2600 系」の営業運転開始について )。今回はこれについて見ていく。
1. 2600系新型特急車両とは
今回2018年3月ダイヤ改正に先駆けて、JR四国では2017年12月2日より新型特急型気動車車両2600系を導入する。
この新型車両2600系は、既存の2000系特急型気動車車両やN2000系特急型気動車車両で採用してきた振り子式車体傾斜装置の採用を取りやめ、メンテナンスコスト削減のため空気バネ式車体傾斜装置を搭載している。空気バネ式車体傾斜装置は、東海道新幹線のN700系や東北新幹線E5系で発揮しており、気動車特急としてもJR北海道キハ261系特急型車両で導入され、JR四国も2014年より予讃線電車特急「しおかぜ」「いしづち」用車両として8600系を導入しており、同じ12月から運行を開始するJR東日本中央本線特急用車両E353系とは同じ空気バネ式車体傾斜装置を搭載した同期ということになる。平たく言えば今回導入される新型車両2600系は予讃線電車特急用8600系電車の気動車版ということで、JR四国も率先して2600系を導入していこうと考えていた。
ところが、空気バネ式車体傾斜装置を気動車に導入すると、電車に比べてメリットは少ない。確かに車両メンテナンスは簡素化されるのだが、電車の際のメリットであった架線へのダメージの減少は気動車では架線を使わないため当然見込めない。そして空気バネを動かして車体を傾斜させるため、それなりの圧縮空気が必要でスペースをとる。しかし今回のJR四国のプレスリリースによれば、特急「南風」などが走る土讃線で試運転を行ったところ、カーブが多すぎるゆえ圧縮空気が不十分なことが発覚。やむ終えずJR四国のみおそらく全国で唯一今後も振り子式車体傾斜装置を用いた気動車特急を新造していくこととなりそうだ。
とはいえ、全線のJR四国管内非電化区間で運用できないというわけではない。土讃線特急「南風」の場合は、発着駅の片方がJR西日本管内の岡山であることから、岡山に圧縮空気を入れるためのコンプレッサーを置くのは難しいこと、土讃線特急「しまんと」の運転が予讃線特急「いしづち」と異なり昼間の本数が極端に少なく、コンプレッサーのある高松運転所になかなか戻ってこれないということから土讃線特急運用は難しくなったのではないかと考えられるが、高徳線や徳島線、牟岐線などであれば土讃線よりは短距離で、ほとんどがJR四国内で完結する高徳線特急「うずしお」で高松にある程度発着すればコンプレッサーで圧縮空気を入れられる。そのため2017年12月2日からの2600系運転に高徳線が選ばれたのではないだろうか。
2. キハ185系縮小か
土讃線用に本来使いたかった2600系は高徳線に落ち着いた。しかし、高徳線特急は(土讃線特急もそうなのだが)既にほとんど全ての列車が振り子式車体傾斜装置を搭載した少なくとも120km/hが出せる高性能気動車でほぼ埋め尽くされてしまっている。例外は徳島線特急「剣山」や牟岐線特急「むろと」に使用されるキハ185系特急車両を高松運転所に送り込む運用の高徳線特急「うずしお」16往復半のうち2往復のみだ。となれば、その2往復のうち一部が2018年3月ダイヤ改正で置き換わる可能性があるのではないか。
国鉄末期に投入されたキハ185系が車齢31年を超えているとはいえ、その高徳線特急「うずしお」2往復および徳島線特急「剣山」、牟岐線特急「むろと」の全ての運用をたった2編成の新型車両2600系で賄うことは不可能だ。またたった2編成しかない2600系新型車両のために試運転区間を増やさなければならないのは効率が悪い。そこで考えられるのが、2600系新型車両を高徳線特急「うずしお」のみの運用とし、2600系に追い出されたN2000系ないし2000系をキハ185系運用に充てるのはどうだろうか。特に2000系気動車に関しては2016年3月26日ダイヤ改正での予讃線松山以東での運用廃止、予讃線特急「宇和海」での減車などもあり車両が余り始めている。現在JR四国に残るキハ185系が13両しかないとすると、2600系によって追い出された4両を差し引いた残りの9両は捻出できるのではないだろうか。
ただし1つ難点がある。それは、高徳線特急「うずしお」の定期運用は全て130km/h対応のN2000系で組まれているということだ。新型車両2600系も余っている2000系も最高速度は120km/hで、2往復残るキハ185系の最高速度110km/hよりかは速いが、N2000系より遅くダイヤにゆとりが必要だ。現在でも特急「うずしお」が増結する際にはN2000系だけでは足りないため2000系を用いることから、定期列車でも120km/h対応のスジはあるが(そうでなければ今回の12月2日より2600系が高徳線「うずしお」で同じ時刻で運行できない)、車体傾斜が使用できる列車が増えれれば所要時間が短縮されるとはいえ通常時にも運用制限が残るのは間違いなさそうだ。
なお、徳島線特急「剣山」と牟岐線特急「むろと」のキハ185系が置き換えられても、線路など設備面での最高速度引き上げ対応は見送られる可能性が高いことから、最高速度引き上げはないものと思われる。また高松方面との直通についてもほとんどの高徳線特急「うずしお」が130km/h対応のN2000系であることは当分の間変わらない可能性が高いため、徳島で系統分割されている現状が変わる可能性は低いものと思われる。
3. 結び
今回2018年3月ダイヤ改正では、新型車両2600系の導入により車体傾斜装置を利用したスピードアップが図られる可能性がある。
今後土讃線向けに導入される新しい車体傾斜装置搭載車両がどのようになるのか、ダイヤ面での改善が図られるのか注目してゆきたい。
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