JR西日本は2021年6月25日、プレスリリースにて新型気動車DEC700形を投入すると公表した( 新型電気式気動車(DEC700)の導入について )。今回はこれについて見ていく。
1. 12年ぶりの普通列車用気動車投入へ!
今回のJR西日本の新車投入では、広島支社下関総合車両所新山口支所に新型気動車を投入する。
今回投入する新型気動車はDEC700形で、ディーゼル燃料を使って車両に搭載した発電機で電気を起こし走行する電気式気動車となっている。電気式気動車は日本国内でも2018年よりJR九州YC-1形やJR東日本GV-E400系列、それの北海道版のJR北海道H100形などを導入していることから、JR西日本が電気式気動車を投入するのは当然と言えば当然だろう。
それでもJR西日本の電気式気動車の導入が2021年になったのは、それまで既存の気動車を置き換えようとは考えていなかったからだろう。というのも1987年のJR西日本発足後に自費でキハ120形気動車を投入したものの、その後のキハ126形やキハ127形などの普通列車用気動車置き換えは沿線自治体負担、つまりは税金で投入している。
ただ1977年から1982年にかけて日本全国に配置したキハ40系列は老朽化が進んでおり、2021年3月13日JR東日本秋田支社ダイヤ改正でJR東日本キハ40系列の普通列車運用が全て消滅したほか、JR西日本でも2020年3月14日JR西日本米子支社ダイヤ改正で6両の運用削減、2021年3月13日JR西日本広島支社ダイヤ改正で少なくとも5両の運用削減を行っている。ただ運用車両数を減らすにも限度がある。
また下関総合車両所新山口支所には1979年に製造した車齢42年のキハ40系列がいることから新車への置き換えは不思議なことではない(もっとも関西大手私鉄では車齢50年を超える電車が普通に走っているのでそれと比べたら若いのかもしれないが)。そう考えると今回のDEC700形はキハ40系列の運用削減だけでは老朽化対応に追いつかなくなったためにやむなく自費で新車を投入することとしたのだろう。
今回投入する新型気動車DEC700形は、2009年までに投入した姫新線用キハ122形以来の12年ぶりの普通列車用気動車となっている。前面は227系様で、両運転台車となっている。2021年に投入するのは1両のみで、6月28日に運ばれたのち各種試験を行う予定としている。このことから量産車両を投入するのは2022年以降が濃厚で、DEC700形が営業運転に就くのは早くても2023年3月ダイヤ改正以降となる見通しだ。
ただ各種性能の確認があるとはいえ、JR九州YC1形やJR東日本GV-E401形やGV-E402形のように2両固定編成でも投入したいのであれば今回の先行投入でも1両編成の両運転台車だけではなく既存車のキハ47系のような2両編成の片運転台車を投入しても良かったはずだ。にもかかわらずないということは、DEC700形は全て両運転台車で投入する可能性がありそうだ。
2. DEC700形はどの線区に投入するのか
では今回JR西日本が新たに導入する新型気動車DEC700形はどの線区に投入するのだろうか。
そもそも今回のDEC700形気動車は車長がおそらく20m程度と予測できることから、車長17m程度のキハ120形は置き換え対象にならないだろう。
そうなると広島支社管内のキハ40系列が真っ先に置き換え対象となりそうだが、JR西日本広島支社にはキハ40系列が100両程度ある。
2021年6月時点でJR九州YC1形は38両、JR東日本GV-E400系列は63両、JR北海道H100形は45両のみで、いずれも約2年間かけて投入している。もっとも他線区の電車の投入の兼ね合いもあり各社の経営体力と勘案して投入車両数を決めているのだろうが、少なくとも1年でJR西日本がDEC100形を100両程度投入するのは不可能に近い。そう考えると優先順位を付けざるをえない。
ただ、広島支社のキハ40系列運転線区は車両性能上の観点でも全区間で1両運転が可能なため(JR東日本管内では出力の問題でキハ40系列1両編成で運転できない区間があり空気輸送覚悟で2両で運転していた列車をGV-E400形1両編成に置き換え減車することができた)、減車を目的とした置き換えが難しい。そう考えると新山口支所から近く運用が分離している岩徳線から導入するのではないだろうか。
ただJR西日本管内には広島支社だけでも100両程度のキハ40系列がいるほか、その他の支社にも広島含め全社で250両程度のキハ40系列の車両がいる。そう考えると2023年3月ダイヤ改正以降にDEC700形を入れてもその後順次キハ40系列を段階的に置き換えるのではなく、比較的劣化が進んでいない車両を広島支社から米子支社や岡山支社、福知山支社などに転属させるのではないだろうか。そうなると結果的にキハ40系列の一部が車齢50年を超えてもおかしくはなさそうだ。
3. 結び
今回のJR西日本新型気動車投入では、広島支社にDEC700形を投入することとなった。
今後JR西日本でどのような列車を運行するのか、見守ってゆきたい。
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