京急電鉄は2023年1月13日、プレスリリースにて2023年10月1日に運賃を改定すると公表した( 鉄道旅客運賃の改定を申請しました )。今回はこれから2023年9月以降の京急電鉄ダイヤ改正について予測していく。
値下げで東京方面利用の横浜乗継阻止へ!
京急電鉄では2023年10月1日に運賃を改定する。近距離では運賃を引き上げる一方、40km超の区間では値下げを図ることとなった。
この40km超の区間というのは品川から金沢八景以南に該当し、横須賀市・逗子市・三浦市への利用で値下げとなる。
この運賃の変更に至った背景には横須賀市・逗子市・三浦市から東京各所へ向かう場合、品川まで京急利用より横浜でJRや東急に乗り継いだ方が安くなることが往々にしてあり、旅客が横浜で他社線に乗り換えてしまうためである。逗子葉山に至っては品川までの利用ですら横浜でJR東海道線に乗り換えた方が安くなる始末だったので、今回値下げに踏み切ることとした。
これにより京急電鉄では増収を図るのだが、1つ問題がある。それは遠距離利用中心の快特や特急が既に混雑していることである。
京急電鉄では1999年7月31日ダイヤ改正より昼間の快特を10分間隔(毎時6本)で運転してきたが、前回の2022年11月26日京急電鉄ダイヤ改正より快特のうち毎時3本、つまり20分に1本を特急に格下げした。
これにより停車駅が増えより特急以上の利用者が増えたこと、快特と特急の運転間隔が均等10分間隔かかたよりが出たことから快特・特急ともに混雑区間が拡大、ダイヤ改正前は品川~京急蒲田間や横浜~上大岡間で立ち客が終日出ていたがダイヤ改正後は品川~京急川崎間、横浜~金沢文庫間に広がっている。そして各駅間でこれまで立ち客が出ていた区間でも立ち客の数が増えている。
そんな中横浜乗り換え需要を品川まで通しで利用させることを目的としたら、横浜以北では乗客の利用者数が純粋に増えるほか、横浜以南でもエアポート急行を利用していた旅客が快特や特急により移りやすくなる。つまり現状より快特や特急がさらに混雑するのは目に見えている。
ただ、京急電鉄では毎年9月~11月ごろにダイヤ改正を実施している。もし運賃の改定で品川までの利用を促進するのであれば、直前か直後のダイヤ改正で品川方面へ直通する列車を増やそうとするのではないだろうか。
なぜ現状快特や特急は混むのか
ではそもそもなぜ京急の快特や特急は混みやすいのだろうか。
そもそも東京都市圏の都市鉄道では、予備車を減らす観点で速達列車も各駅停車も同じ車両を使えるよう多くの区間で両数を揃えていることが多い。開業当初はそろっていなくてもその後両数を揃えるためにホームを延長した例も小田急電鉄や京王電鉄など多数存在する。
ただ京急電鉄では混雑緩和のために特急では品川~金沢文庫間で12両化を図ったものの、各駅停車の普通は4両から6両へのホーム延長で手いっぱいだった。このため1本あたりに運べる旅客が多い特急や快速特急(現在の快特)に旅客を集中させるため、終日に渡り「特急に集めて早し京浜急行」政策を展開、特急や快速特急をあえて混みやすくするように時刻を組んだのである。
ただ転機がおとずれる。2012年10月21日京急電鉄ダイヤ改正で金沢文庫での昼間の増解結廃止に伴い昼間の快特を全て12両から8両に減車する。救済としてエアポート急行を毎時3本から毎時6本に拡大するが、1本あたりの輸送力が33.3%も低下したために先述したように品川~京急蒲田間や横浜~上大岡間で立ち客が終日出るようになった。そもそも特急以上の12両運転実施を原則としていたのだから、8両への減車で混雑するのは至極当然のことである。
これは昼夕輸送力比でも言え、平日夕方の特急以上は12両快特毎時6本と8両快特毎時6本の合計毎時120両だが、昼間は8両快特毎時3本と8両特急毎時3本の合計毎時48両しあないため昼夕輸送力比は驚異の40%しかない。立ち客が出ない乗客全員が座れる基準が60~78%程度であることを考えると明らかに低い。
また2020年から旅客が大きく減り、2022年以降も朝夕は2019年までの80%程度しか戻っていないが、昼間に関してはほぼ回復している。このため2022年以降乗客が増加しても朝夕は今の運転本数で運びきれるが昼間はそうはいかない。
京急電鉄では遠距離での運賃の値下げを図ることにより乗客を増やそうというのであれば、昼間の増車または増便は必要不可欠であろう。
では2023年9月以降の京急電鉄ダイヤ改正でどのようなダイヤ改正が期待できるのか見ていこう。
昼間の利用拡大で特急以上毎時9本運転を画策か?
今回の2023年9月以降実施の京急電鉄ダイヤ改正では、昼間の快特・特急の増車または増便を行う可能性が十分考えられる。
もっとも過去には品川~金沢文庫間などで12両運転を行っていたが、特急の下り列車は神奈川新町駅のホーム有効長が足りない関係で最大8両まででしか運転しない。そう考えると昼間の特急以上12両運転はややきびしい。
ではほかに考え得ることはあるだろうか。2010年5月16日京急電鉄ダイヤ改正でエアポート急行を横浜方面新逗子まで設定し、本線では金沢文庫始発終着の普通毎時3本を置き換え京急川崎~金沢文庫間は昼間の普通が毎時12本から毎時9本に減便した。その後2011年に普通が毎時6本に減便、2012年10月21日京急電鉄ダイヤ改正でエアポート急行が毎時3本から毎時6本に増発したことで事実上の普通の代替とした。
京急電鉄では前回2022年11月26日ダイヤ改正で横浜方面エアポート急行を昼間毎時6本から毎時3本に減便している。もし前例に合わせるのであればこの毎時3本削減は次回のダイヤ改正での格上げ列車の設定につながる可能性がある。つまり減便した毎時3本を次回のダイヤ改正で特急として設定しにかかるのではないだろうか。
ではもし昼間に特急が増発するとどうなるのか。現状昼間は泉岳寺~京急久里浜間(土休日は三崎口まで運転)の2ドア8両快特毎時3本と都営浅草線~三崎口間の3ドア8両特急毎時3本を運転している。ここからさらに特急を毎時3本増発すれば、昼間に毎時9本の特急以上の列車を設定することになる。
とはいえ現状でもみんなが座れる金沢文庫以南を無理に毎時9本運転にする必要はない。そうなると考え得るのは、品川~逗子葉山間で特急を昼間に毎時3本運転すること。もし実現すれば品川からの逗子葉山直通列車の設定となるので観光に一役買うし、JR横須賀線と競合している川崎・横浜~逗子間で所要時間を短縮できる。
なお横浜から羽田空港への終日の直通列車確保の関係で横浜方面エアポート急行が消滅することはないだろうし、逗子線を毎時6本を確保するのであれば逗子葉山発着の普通毎時3本を特急に振り替えた上でエアポート急行毎時3本も維持する必要があることから残るだろう。
また前回の2022年11月26日京急電鉄ダイヤ改正以降10分間隔で運転している普通が平和島での待避に際し最大10分停車している。が、本線特急増発により特急1本だけ接続できれば良いように変えれば平和島での待避時間短縮が見込める。そう考えると逗子葉山発着の特急毎時3本の増発は現実的だろう。
ただ、泉岳寺~品川間を増発する必要性は低いし、平日夕がも毎時12本しか泉岳寺まで乗り入れていないので昼間にそれ以上増やす必要はない。そう考えるとこの逗子葉山発着の特急を設定したとしても品川始発で、泉岳寺まで伸ばすには昼間の快特を平日夕方同様品川始発終着で折り返させることになるだろう。
末端区間の減便図るか
今回の2023年9月以降実施の京急電鉄ダイヤ改正では、横須賀市内や三浦市内で減便を図る可能性がある。
そもそも先述した品川~逗子葉山間の昼間に特急運転には4運用が必要である。乗務員数を変えないとなると昼間のどこかから4運用を削減する必要がある。
以前の記事で述べたように京急電鉄では平日昼間20分間隔運転となった京急久里浜~三崎口間より隣駅間輸送密度が低い区間がある。それが逗子線金沢八景~逗子葉山間や本線堀ノ内~浦賀間で、ともに昼間20分間隔の毎時3本4両編成で運びきれてしまう。
前回の2022年11月26日京急電鉄ダイヤ改正では減便は免れた。ただ今回の2023年10月1日での運賃の改定が遠距離値下げとなっている背景の1つに末端区間の減便の補償の可能性が十分考えられる。このため2023年10月1日前後で金沢文庫以南で減便を図る可能性がある。
考え得るのは、特急の金沢文庫~堀ノ内間各駅停車化による普通減便である。昼間は金沢文庫~浦賀間の普通のうち毎時3本を削減し快特毎時3本、特急毎時3本、浦賀発着普通毎時3本の合計毎時9本、平日夕方は普通毎時6本を削減し久里浜線直通快特毎時6本と浦賀発着特急毎時6本の合計毎時12本に再編することができる。もっとも金沢八景~堀ノ内間の特急通過駅4駅はホームを6両から8両に延ばす必要があるが用地はあるし急行通過駅全駅のホーム延長よりはるかに安上がりだし、昼間は京急久里浜まで先着毎時6本平日夕方は横須賀中央先着毎時12本のままであることから、利便性への影響は小さそうだ。この減便により昼間は2~3運用削減することができる。
また前回の2022年11月26日ダイヤ改正で久里浜線京急久里浜~三崎口間は土休日昼間の毎時6本運転は保ったが、値下げが観光支援になるという理由で次回のダイヤ改正で平日昼間同様特急のみの20分間隔毎時3本に減便してもおかしくない。泉岳寺・品川~三浦海岸・三崎口間に至っては943円から740円に200円以上も値下げするほか横浜からも運賃を値下げするんだ、運賃値下げと対価に三崎市が減便を受け入れてもおかしくはない。
そう考えると近い将来京急久里浜~三崎口間は土休日昼間も20分間隔運転に減ってもおかしくないし、堀ノ内~浦賀間も毎時3本に減ってもおかしくないだろう。
ただ、JR横須賀線と競合する逗子線は昼間も毎時6本運転を維持する可能性がある。特急乗り入れ横浜・品川直通化と引き換えに減便してもおかしくはないのではあるが。
結び
今回の2023年9月以降実施の京急電鉄ダイヤ改正では、運賃の改定に合わせ泉岳寺~横浜間の利用客数が増加する見込みがあり、快特や特急の増車が待たれる。
今後京急電鉄でどのようなダイヤ改正を実施していくのか、楽しみにしたい。
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