韓国鉄道KORAILは2022年10月17日、プレスリリースにて11月5日にダイヤ改正を行うと公表した( 韓国鉄道KORAIL、2022年11月5日に大規模なダイヤ改正 プレスリリースリンク不可のためTwitterに挙げた画像(内容同じ)にて代用 )。今回はこれについて見ていく。
1. 時季外れに大規模ダイヤ改正実施へ!
今回の2022年11月5日韓国鉄道KORAILダイヤ改正では、全国で大幅なダイヤ改正を実施する。
本来韓国では全国規模のダイヤ改正は7月下旬~8月上旬および12月下旬~1月上旬にかけて行うのが恒例となっている。このうち7月~8月には在来線の運用変更や減便、12月~1月には高速列車KTX・SRTのダイヤ改正や新線開業や線路付け替えに伴う大規模なダイヤ改正を行うことが多い。
ただ、今回のダイヤ改正は新線開業もなく11月実施にもかかわらず大規模なダイヤ改正を行うこととなった。これは韓国鉄道KORAILとしては極めて異例である(日本で言うなれば、本来毎年3月に行っているダイヤ改正を10月にも実施し、常磐線品川発着の大幅増強や黒磯~新白河間で交直流電車が走り出すほどのダイヤ改正を行うほど)。
では時季外れの2022年11月5日韓国鉄道KORAIL全国ダイヤ改正について見ていこう。
2. ムグンファ号RDC気動車老朽化で減便と置き換えへ!
今回の2022年11月5日韓国鉄道KORAILダイヤ改正では、ムグンファ号RDC気動車運用を削減する。
ムグンファ号気動車RDCは京釜線東大邱~慶全線馬山(~晋州)間、大邱線東大邱~東海線太和江・浦項間および浦項~太和江間、東海線浦項~盈徳間に限られている。逆を言えばこれら以外のムグンファ号は機関車けん引の客車列車で運転しているのだが、客車や機関車は50年ものを多く使用している。
一方ムグンファ号RDC気動車が1996年以降に製造した車両である。今回のダイヤ改正プレスリリース公表直前に新聞記事にて、あと1~2年で寿命とする信ぴょう性の怪しい記事が回っていたが、今回のダイヤ改正でRDC運用の列車を中心に軒並み減便しているということは、どうやら本当だったらしい。
今回のダイヤ改正で大邱線東大邱~東海線太和江で1往復、京釜線東大邱~慶全線馬山間で1往復、東海線浦項~盈徳間で2往復減便する。
まずは慶全線。慶全線では東大邱発着ムグンファ号7往復中5往復が馬山止めだったが、今回のダイヤ改正より6往復に減便するものの深夜の1本を除く11本が晋州発着として設定する。つまり
咸安はITX-セマウルとムグンファ号全停車だが、今回のダイヤ改正で咸安通過のムグンファ号、しかも気動車のRDCを設定する。咸安はかつて高速列車KTXも一部が停車していたのに、ついにムグンファ号に飛ばされる駅になるとは。
3. ヌリロ置き換えで中央線ITX-セマウル復活へ!
次に大邱線。大邱線では東大邱~太和江間のムグンファ号RDC気動車をすべて急行格電車ヌリロに置き換える。これにより東大邱~太和江間運転列車は釜田発着のムグンファ号客車4往復を含むとムグンファ号のみの12往復からヌリロ7往復とムグンファ号客車列車4往復の合計11往復となる。
もっとも東大邱~太和江間は線路付け替えと交流電化を2021年12月28日までに終えていたが、気動車と客車けん引のディーゼル機関車による運転だったため、電化しているのに電車が走行していなかった。このためさび防止のために試運転列車を走行させなければならなかった。
これの合理化を図るため、今回のダイヤ改正で電車の走行していない東大邱~太和江間のムグンファ号RDC気動車をヌリロ電車に置き換えることとしたのである。
この気動車から電車への置き換えにより、東大邱~太和江間では概ね10分程度所要時間を短縮することとなった。
このヌリロ、釜山に配置するようで早朝深夜に京釜線東大邱~釜山間に送り込み電車を1往復設定する。今後近い将来準高速列車KTX-イウムや特急格電車ITX-セマウルに置き換わる可能性があることを考えれば回送電車の方がいいとは思うが。
このヌリロ電車は中央線用の1運用から捻出する。この運用を生み出すため中央線清涼里~安東間の急行格電車ヌリロ全2往復を特急格電車ITX-セマウルに置き換えることとなった。
そもそも特急格電車ITX-セマウルは中央線でも1日2往復の運転があったが、2021年1月5日の準高速列車KTX-イウムの運転開始に合わせ廃止となった。
また準高速列車KTX-イウム運転前は栄州~安東間は非電化だったためITX-セマウルが乗り入れられず、客車のセマウル号から列車を置き換える際に安東発着から栄州止めに短縮せざるを得なかった。ただ2021年1月5日の中央線KTX-イウム運転開始に合わせ電化したため、安東にITX-セマウルが乗り入れられるようになった。
つまり今回の中央線ITX-セマウルの運転は1年10か月ぶりの復活となる。
ただ、今回の中央線ITX-セマウルは急行格電車ヌリロを置き換えた列車のため、中央線一般列車停車駅全駅停車というとんでもなく遅い列車となっている。しかも電車から電車への置き換えのため所要時間の短縮もない。このため特急格電車ITX-セマウルが急行格客車列車ムグンファ号よりも停車駅が多く遅いということになった。
なおこの1年10か月の間にITX-セマウルの他線区での運用は増えていないことから、中央線用ITX-セマウル用の運用がそのまま浮いていたことになる。この浮いていた運用を充てるだけなので今回のダイヤ改正における車両増備の必要はない。
このほか大邱線用ヌリロ電車の捻出のため、嶺東線東海6時08分発ヌリロ1680列車栄州行きおよび栄州17時30分発ヌリロ1683列車東海行きの1往復を急行格列車ムグンファ号に変更する。
最後に東海線。浦項~盈徳間で2往復減便し、1日7往復から5往復に大きく減便する。これにより最終列車の繰り上げも概ね2時間程度行うこととなった。
4. 減便と毎日運転の臨時列車設定でITX-セマウル停車駅大幅増へ!
今回の2022年11月5日韓国鉄道KORAILダイヤ改正では、ソウル市内発着列車を中心にムグンファ号客車列車の減便を行う。
今回減便するのは京釜線ソウル7時56分発ムグンファ号1207列車釜山行きと釜山8時51分発ムグンファ号1210列車ソウル行きの1往復、および湖南線龍山13時35分発ムグンファ号1405列車木浦行きおよび木浦8時45分発ムグンファ号1404列車中山行きの1往復となっている。
従来の韓国鉄道KORAILダイヤ改正では減便した列車の列車番号を詰めるし実際に先日したムグンファ号RDC列車の減便ではそうしているのだが、こちらのムグンファ号客車列車の減便では他の列車の列車番号を据え置いたため飛び番号が発生している。
湖南線ムグンファ号1往復の減便で、龍山発着の在来線一般列車は長項線が14往復なのに対し湖南線(全羅線8往復を除く)は13往復にまで減ってしまった。ついに龍山を発着する湖南線も陰りが見え始めたと言いたいところだが、西海線全通時に長項線列車は全て新安山線直通のITX-セマウルやKTX-イウムにとなり龍山発着からソウル発着(しかも地下ホーム)に切り替わる見込みだ。
今回のダイヤ改正で京釜線のムグンファ号1往復と全羅線の線内運転ムグンファ号それぞれ1往復を12月31日までの毎日運転の臨時列車に格下げする。
今回のダイヤ改正で臨時列車に格下げするのは、京釜線ソウル11時23分発ムグンファ号1211列車釜山行きと釜山18時05分発ムグンファ号1222列車ソウル行きの1往復、湖南線龍山10時25分発ムグンファ号1441列車益山行きと全羅線麗水エキスポ8時59分発ムグンファ号1504列車龍山行きとなっている。これらの臨時列車は12月31日まで毎日運転の臨時列車として設定するが、2023年1月以降は運転しない見込みだ。このほか龍山9時40分発ムグンファ号1503列車麗水エキスポ行きも2023年1月1日より益山行きに短縮する。
このムグンファ号2往復の減便と2023年1月以降減便する毎日運転の臨時列車2往復の4往復が減便すると、ムグンファ号客車運用が2運用削減できる見込みで、12両が浮くようだ。
逆を言えば、12月31日まで運転日を指定したということはそれまで大規模なダイヤ改正は行わないということである。
これに伴い救済として益山16時37分発木浦行きを設定して廃止となる龍山13時35分発ムグンファ号1405列車木浦行きのうち益山→木浦間とほぼ同時刻で運転するほか、特急格電車ITX-セマウルは停車駅を大きく増やし全線所要時間が軒並み10~30分程度伸びる。
そして特急格電車ITX-セマウルの停車駅増加が示すものは、将来的な急行格列車ムグンファ号の置き換えである。
なお韓国鉄道KORAILではムグンファ号置き換え用にITX-セマウル型新型電車220000系(6両編成・既存の210000系と同じ両数)や230000系(4両編成)を続々導入するとしてるが、どうやら2023年3月以降となる見込みだ。この時点で2年は遅れているのだが、投入を開始すればあっという間に車両が揃ってしまうのが韓国なので、ムグンファ号の引退も見え始めているのではないだろうか。
また先述したムグンファ号RDC気動車も、もともとは準急各列車通勤列車用車両の格上げである。そう考えるとITX-セマウル用4両編成の230000系の投入を終えたところでヌリロ用急行格電車200000系4両編成も特急格電車ITX-セマウルに格上げしてもおかしくはないだろう。
5. 結び
今回の2022年11月5日韓国鉄道KORAILダイヤ改正では、時季外れに全国規模のダイヤ改正を行い2カ月ほど合理化を早く進めることとなったほか、2往復の12月末まで運転の臨時列車を設定することで運転本数の少ない区間での減便を2か月遅らせることとした。
今後2023年3月以降より特急型電車ITX-セマウル用新型電車220000系や230000系の投入が始まる中、韓国鉄道KORAILでどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
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