南海電鉄と泉北高速鉄道は2017年6月8日、プレスリリースにて8月26日にダイヤ改正すると公表した( 高野線・泉北線のダイヤを改正します 8月26日(土) )。今回はこれについて見ていく。
1. 泉北ライナー増発
今回の2017年8月26日ダイヤ改正では、前回の2015年12月5日ダイヤ改正で設定された特急「泉北ライナー」がおよそ90分間隔からおよそ1時間間隔にまで増発する。
これまでは泉北高速鉄道12000系1本での運行であったが、かつての「泉北ライナー」用車両南海11000系1本が泉北ライナー仕様に変更され、2運用に増加することになった。運行距離精算も考慮してこのようになったのであろう。
2. 朝は運行間隔均衡化で利便性向上
今回のダイヤ改正では終日に渡り泉北高速鉄道直通列車のテコ入れがなされている。
朝は特急「泉北ライナー」を1本増発し、着席サービスを向上させている。これまでは朝ピーク時は区間急行なんば行き毎時6本、普通中百舌鳥行き毎時6本であったため、JR阪和線と乗り換えられる三国ヶ丘に直通する準急行が64分空いていたが、今回のダイヤ改正により区間急行が1本特急「泉北ライナー」に格上げされた分、代替として高野線千代田発の準急行を泉北高速線和泉中央発にして料金不要列車を確保し特急誘導を行なったため、準急行の間隔が最大35分にまで縮まり、泉北高速線からの阪和線アクセスが向上した。
これらの運用変更に伴い、21m級通勤電車が浮いたため、朝ラッシュ時の各駅停車の17m級2扉車を置き換えることになり、なんば発着の2扉車各駅停車が消滅した。高野線準急行の減少分を各駅停車の乗車定員増でできる限り補完しようとしたのであろう。
3. 昼間は泉北高速線方面区間急行が増発
一方昼間は、これまで泉北高速線直通列車は区間急行と準急行、各駅停車が毎時2本ずつであったが、今回のダイヤ改正で区間急行毎時4本と準急行毎時2本に再編され、泉北高速線内各駅からの中百舌鳥対策として線内各駅停車を毎時2本設定した。
これにより、ダイヤ改正以前は泉北高速鉄道線各駅からの昼間の先着直通本数はなんば・三国ヶ丘・中百舌鳥ともに毎時4本ずつであったが、今回のダイヤ改正でなんばは毎時6本に増加、三国ヶ丘は毎時2本に減少、中百舌鳥は毎時4本に据え置きとなった。2015年12月5日ダイヤ改正以前は各駅毎時5本が確保されていたが、なんば先着本数については泉北高速線への直通列車が準急行主体の頃よりも乗車チャンスが増すこととなった。
このなんば直通列車再編に伴い、前回のダイヤ改正で誕生したなんば発着泉北高速線直通各駅停車は僅か1年9カ月余りで消滅した。
4. 高野線各駅停車は昼間減便・接続駅変更
今回のダイヤ改正での高野線方面での大きな目玉は、各駅停車の見直しだ。昼間の運行本数についてはこれまでなんば~中百舌鳥間では毎時6本を維持しており、2015年12月5日ダイヤ改正前まではなんば~金剛間で毎時5本を確保していたが、今回のダイヤ改正でなんば~金剛間で毎時4本にまで削減されてしまった。
昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を見ていくと、平日夕ラッシュ時が毎時6本で昼間が毎時4本となるから67%であり、輸送量的には適正と言える。地域輸送性を考えても、南海本線は2003年から、JR阪和線とJR大和路線は2011年から普通電車を昼間毎時4本としており、妥当と言える。また、和泉中央発着の4両各駅停車を送り込む関係で千代田発着の各駅停車も多数設定され時間帯によっては高野線各駅停車が毎時6本にもなっていたが、今回のダイヤ改正で金剛又は千代田発着となり中百舌鳥~金剛間でも各駅停車毎時4本となる時間が増えた。この代替として高野線各駅停車の6両化比率が上がっている。
そしてもう一つの各駅停車の目玉が、待避駅の変更だ。2015年12月5日ダイヤ改正以前は昼間は12分サイクルダイヤだったため堺東と北野田で急行・区間急行を待避していたが、2015年12月5日ダイヤ改正では15分サイクルダイヤになったことに伴い、待避駅を堺東と金剛に変更していた。しかし今回のダイヤ改正では15分サイクルダイヤのまま待避駅を夕ラッシュ時と同じ堺東と北野田に戻すことになった。これにより、狭山と大阪狭山市からなんばへアクセスする列車が等間隔化し、なんば方面への利便性が向上したことまではプレスに書かれたとおりだ。
しかしサイクルを3分延ばしたがために、各駅停車が北野田で待避する時間は2015年12月3日以前と比べて伸びるはずである。実はそこにミソがある。これまでは金剛で急行から各駅停車に接続すれば中百舌鳥・三国ヶ丘へもすいすいと待ち時間もほとんどなく行けたが、北野田で接続すると各駅停車は時間調整のため2分~3分程度余計に停まらなくならなくてはなる。となると、待って各駅停車に乗り換えるよりなんばまで乗りとおしたくなるのではなかろか。その最たるものとして、金剛発なんば行きの各駅停車が、各駅停車区間であるはずの区間急行に北野田で抜かれることが今回のダイヤ改正で増加している。今回のダイヤ改正では、泉北高速線からだけではなく高野線方面からも三国ヶ丘・中百舌鳥利用を減らしてなんば利用を増やしたい意図が見て取れる。
5. 高野線快速急行の短縮と急行格下げ
今回のダイヤ改正でこっそり行われたのが、快速急行の一部橋本短縮と急行格下げである。
南海電鉄のWEB時刻表から確認すると、平日の極楽橋乗り入れの快速急行・区間急行は、極楽橋行きが5本から3本、なんば行きが2本から1本に減少した。また快速急行自体の本数も平日が極楽橋行きが3本から1本、なんば行きが6本から4本に減少し、土休日は極楽橋行きが4本、なんば行きが3本あったのが各1本ずつのみになってしまった。快速急行の減少分は急行への格下げということになっているが、紀見峠などのニュータウンにやや近い駅の利便性が向上した一方で、快速急行の減少が土休日で激しいことから特急「こうや」誘導も行ったのではないだろうか。
その他、高野線の昼間ではなんば~堺東・中百舌鳥間で高野線急行・区間急行と泉北高速線区間急行が続行運転となったことから、13分料金不要の速達列車が来ない時間帯が発生することとなった。
6. 平日夕ラッシュ時は区間急行を準急行に格下げ
最後に平日夕ラッシュ時であるが、今回泉北高速線方面では夕方が大幅に改善されている。2015年12月5日以前のダイヤでは準急行が毎時6本であったが、2015年12月5日ダイヤ改正でうち毎時2本が区間急行又は特急「泉北ライナー」に格上げされた。
区間急行ならまだしも、特急「泉北ライナー」は特急券が必要なため実質20分程間隔があいてしまうことがあり、後続の準急行の混雑に拍車をかけていた。それを踏まえて今回のダイヤ改正では平日・土休日夕ラッシュ時の泉北高速線直通準急行を2015年12月5日ダイヤ改正以前の水準に戻し、その時のダイヤと比べて特急「泉北ライナー」を純増させる形とした。これにより区間急行が減った分特急誘導を行うほか、準急行を等間隔化し増便することで混雑を和らげる働きがあるものと思われる。
この準急行の増加により、平日夕ラッシュ時の中百舌鳥始発の泉北高速線各駅停車が毎時4本から毎時2本に減少したため、中百舌鳥から着席して泉北高速線を利用しずらくなった。昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)は泉北高速線内のみでもなんば乗り入れを含めても100%であり、昼間に空気輸送を起こしやすくなっている。
7. 結び
近年縮小傾向が続く南海電鉄のダイヤ改正であるが、今回のダイヤ改正は泉北高速線方面に関しては改正点が目立つ結果となった。
南海としても泉北高速鉄道を2014年に子会社化したことから南海電鉄の収益増加にもつなげたいところだったようだが、今回のダイヤ改正ではその極端すぎるなんば誘導を緩和しようという動きが見られ、朝夕ラッシュ時に関してはJR阪和線三国ヶ丘接続が大幅に向上している。昼間に関してはなんば誘導を強化したが、今後どのような対策を打つのか、見守てゆきたい。
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