特急増発と停車駅増加と水都車両変更リニューアルと 西日本鉄道天神大牟田線ダイヤ改正(2017年8月26日)

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西日本鉄道は6月21日、プレスリリースにてにて2017年8月26日に天神大牟田線でダイヤ改正を行うと公表した( http://www.nishitetsu.co.jp/release/2017/17_059.pdf )。今回はこれについて見ていく。

1. 福岡市南区の玄関口・大橋に特急停車

今回の2017年8月26日の西鉄ダイヤ改正では、特急の停車駅が増加することとなった。

今回停車が増える大橋駅は、福岡市南区の玄関口であり、乗降客数も西鉄福岡(天神)、薬院についで第3位で、特急停車駅である4位の西鉄久留米とほぼ同等を誇り、西鉄二日市を大きく上回っている。このように大きな利用者数を誇るにも関わらずこれまで特急が通過していたのは、西鉄福岡(天神)からかなり近く急行や普通電車でもほとんど差がないこと、薬院はバスで博多に出るためのバスを多く出しており、天神及び地下鉄から客を奪うために特急を停めているが、大橋にはそのような積極的な理由はこれまでなかった。




1.1. 西鉄を取り巻く交通事情の変化

しかし時代の変化が襲う。鉄道事業とバス事業を一部分社化したとはいえ未だに1つの会社で切り盛りしている西日本鉄道は、鉄道だけではなくバスでも大きな収益を上げていた。

2005年には七隈線が天神南~橋本間で開業し、もろ西鉄バス走行エリアを直撃した。天神方面のバスは大きく減らさざるを得なかったが、幸いなことに天神南駅が遠いことが奏功し、地下鉄利用では乗り換えを擁する藤崎や博多を結ぶバスはほぼ据え置かれた。七隈線の六本松から博多駅へ行く西鉄バスが昼間4~5分間隔で運行されていることからも未だに西鉄バスが強いことが伺えるし、減益回収分として薬院を第2のターミナルと位置づけ、博多駅まで多くのバスを運行することにより地下鉄空港線から需要を奪うことに成功した。

しかし2010年代に入るとバス事業そのものに悪雲が漂い始める。それは、バスの運転手そのものがなり手がいないことだ。こればかりは西鉄としてもどうしようもなく、2013年に天神から大橋駅を経由する福岡市南区方面の4つの系統を大橋駅で運行を打ち切り、大橋駅から福岡都市高速経由のバスに乗り継いでもらうことにしたのだ。

これまでは各方面のバスがそれぞれ福岡市中心部の天神まで全便直通であったが、各バスの乗客全員が天神まで行くわけでもなく、多少は大橋駅やその他で下車していた。要するに大橋駅~天神でバスを集約しハブ化を行ったわけだが、乗り換えを要する程ならバスより定時性の高い電車を利用したいわけで、この頃から大橋駅の乗降客数が少しずつ上昇することとなった。

西鉄としてもバスの人員を抑えられるのはなり手がいない現代ではありがたいことで、積極的に電車利用を勧めたいところなのだろう。それもあって西日本鉄道では本年2017年1月26日に大橋駅をリニューアルするプレスを公表し( http://www.nishitetsu.co.jp/release/2016/16_100.pdf )、交通結節点化に力を注ぐことが鮮明となった。その一環として行われようとしているのが今回2017年8月26日のダイヤ改正で実施される特急の大橋全停車化なのである。




1.2. 特急の停車駅増加は筑後地域の人口減も影響か

今回の2017年8月26日ダイヤ改正では特急が大橋に新規停車し停車駅が増えることとなったが、特急は終日天神大牟田線全線を運行する最速達種別であり、一番遠くまで行くが故一番混雑しやすい列車のはずだ。

しかし西鉄の沿線環境にも変化が表れており、2015年の国勢調査によれば、西鉄沿線市町村の人口はこの5年間で西鉄二日市の所在する筑紫野市より北側の福岡地域では全沿線市町村で人口が増えたのに対し、小郡市より南側の筑後地域では2011年3月12日に九州新幹線が開業し多くの列車が停車する久留米市を除き、全ての沿線市町村で人口が減った。特に昼間に全てとラッシュ時の半数以上の優等列車が特急である久留米市より南の地域ではこの5年間で5%以上人口を減らしているほどで、人口減少が著明である。終点の大牟田は九州新幹線が開業するまでJR九州が特急「リレーつばめ」「有明」を毎時3本運行しており、九州新幹線開業後は市中心部から離れた場所に新大牟田駅を設置したもののその需要をうまく取り入れることができず、ほぼ横ばいで推移している。

つまり、西鉄天神大牟田線では急行を運行している地域では人口が伸びているのに対し、特急を主に運行する地域では人口が減っているのである。需要の均衡を保つためには急行の利用を減らし、特急の利用を増やさなければならない。そこで西鉄久留米を抜いて今も利用が増え続けている乗降客数3位の大橋に停車することになったのではないだろうか。




2. 「水都」は優等用3000系に車両変更で特急3ドア化達成へ

筑後地域の人口減少による利用減少分を大橋への追加停車で補おうとしている西鉄特急であるが、利用者が増えるということは車内が混雑するということ。西鉄特急といえば従来2ドア車6両編成で特急専用車両で運行されていたが、2015年の8000系の廃車が始まったあたりから当時新型車両であった3ドアの3000系に置き換えられることとなった。

残る特急用に導入された8000系は大宰府向け「旅人」と柳川観光用「水都」であり、「旅人」は大宰府向けなので主に大宰府線や直通急行で用いられているが、「水都」は柳川を通る必要があるため特急運用に就いていた。その「水都」もリニューアルと称し車両変更がなされ( http://www.nishitetsu.co.jp/release/2017/17_060.pdf )、2ドアの8000系から3ドアの3000系に変更となった。これはJR四国における特急「しおかぜ」「いしずち」が全電車化することにより全ての特急運行区間で2000系気動車によるアンパンマン列車を運行できなくなってしまうことから、代替として8000系電車にアンパンマン車両を整備したのと類似しているものと思われる。

これにより全ての特急において3ドア車の運用が可能になり、平日は昼間と間合いの朝の普通電車でしか使用できず6両固定がネックになっていた2ドア車の廃止につなげることができ、また乗降をスムーズにし近距離客でも利用しやすくなることで、西鉄福岡(天神)~大橋という極めて短い区間の利用にも対応できるようになったのではないだろうか。

3. 特急増発は急行の置き換えか

今回のダイヤ改正では特急停車駅に大橋が加わることに加え、特急を3本増発するとしている。主に特急が増発されるのは朝の西鉄福岡(天神)行きで、平日に限り夜も1本運行されるようだ。もちろん全ての特急が停車するようになる大橋駅にも停車するし、今回のプレスリリースでは増発分も含めて特急の増停車本数が書かれている。

そこで、ダイヤ改正のプレスリリースの下部に大橋駅に増停車する列車の本数が記載してあったので比較していく。特急の運行本数は2017年8月26日のダイヤ改正後の時点で平日は上下合わせて65本、土休日は上下合わせて63本となっている。大橋駅の増停車本数を見ていくと平日・土休日共に60本増となっている。土休日に関しては単純明快で、ダイヤ改正前の現時点で運行されている60本の特急はそのまま大橋停車となり、増発された3本の特急は急行からの格上げだと思えばすんなり片付く。問題は平日で、特急増発と称する3本が急行からの格上げだったとしても、それでも2本合わない。平日朝に1往復急行を削減する気なのだろうか。

今回増発される特急の運行時刻を見ていくと、既存の大牟田発の急行と比較しても大牟田~西鉄久留米間ではほぼ時刻が変わらず、西鉄福岡(天神)の到着時刻が9分~11分繰り上がっている。これにより筑後地域から8時44分に西鉄福岡(天神)に到着できる列車が運行されるようになる。現状でも平日朝は西鉄柳川7時31分発の急行電車でないと西鉄福岡(天神)に8時39分に到着できなかったが、ダイヤ改正後は7時49分発の特急で西鉄福岡(天神)に8時44分に到着できることとなり、速達性が向上する見込みだ。

3.1. 特急増発の目的は西鉄柳川発着急行の運行区間短縮か

先述では急行運行エリア沿線では人口が増加し、特急停車駅沿線では筑後地域を中心に人口が減少していると述べたが、なぜ特急の増発に至ったのだろうか。一見明るいニュースに見えるが、実はちゃっかり西鉄久留米以南で減便されている可能性が高い。

先程、西鉄柳川基準でダイヤ改正後は18分遅い電車に乗っても西鉄福岡(天神)につく時間は5分しか遅くならない見込みだと述べたが、現在平日朝ラッシュ時は西鉄柳川基準で17分~20分間隔で急行が運行されており、そこそこの運行本数が確保されている。平日朝ラッシュ時はまるで京王線のように特急運行を行わず、福岡方で急行は続行2本運転となっており、それに合わせて西鉄柳川発だろうが終点の大牟田発だろうが急行としてしか運行できなかった。しかし先述したように久留米市より南側の昼間は特急しか優等列車がないような区間では人口が5年で5%減っており、本数を削減したいところ。そこで西鉄は少しオフピーク気味の西鉄柳川発の朝の急行(平日は2本、土休日は3本)を大牟田発の急行に統合し、西鉄柳川発の急行のうち1本は廃止、残りの平日は1本ないし土休日は2本は花畑・試験場前・津福始発の急行に短縮されるのではないだろうか。

しかしただ西鉄柳川始発の急行を西鉄久留米あたり発に短縮しただけでは、大牟田始発の急行に混雑が集中するのみだ。西鉄久留米から先は概ね人口が増えているのでなおさらだ。そこで急行も特急も種別変更しない限り停車駅が変わらない筑後地域からの利用客を減便分も合わせる形で集中して乗せ、人口の増えている急行停車駅沿線を軒並み通過する特急に格上げすることによって混雑を均等化しようとしているのではなかろうか。特急化がなされれば減便したとしても到着時間のほぼ変わらない後続便の利用をお願いすればただ減便するよりはよいだろう。そのため特急化により今までより1本遅い電車で概ね西鉄福岡(天神)に到着駅するようにさせる半面、急行の運行区間短縮を講ずるダイヤ改正になるものと思われる。

4. 大宰府直通急行は増運

今回の2017年8月26日ダイヤ改正では、西鉄福岡(天神)発9時台の急行が1本大宰府行きとなる。これまでの大宰府行きの設定からすると小郡行き急行と普通電車を置き換えるだけで、実質は増便されないのだろう。ちなみに大宰府観光列車「旅人」は、2ドアの8000系がそのまま運用される見込みだ。


5. 結び

西日本鉄道は、1990年代よりJR九州の通勤電車のテコ入れが始まったことでかなり経営環境が厳しくなっている。ダイヤ改正プレス自体は今回は増便・改正基調で記されているが、よくよく中身を見てゆくと細かい減便と細かい調整が行われるようだ。同日実施予定の南海高野線・泉北高速鉄道のダイヤ改正も中身を読めば読むほどブラックなことが行われるのではないかと類推されるが(どのようなブラックなことが起きるのか読み切れないので記事にはできないが)、今後人口減少が続くエリアでどのような運行本数調整によるダイヤ改正が行われるのか、見守ってゆきたい。

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