大阪市交通局では、2月22日、プレスリリースにて2017年3月25日にダイヤ改正を行うと公表した( http://www.kotsu.city.osaka.lg.jp/general/announce/w_new_info/w_new/list_h28_all/20170222_r2dia_henko.html )。今回はこれについて見ていく。
1. 郊外では乗車チャンスの増加、都心部では乗車チャンスの減少
今回2017年3月25日の大阪市営地下鉄谷町線のダイヤ改正では、ダイヤが大幅に刷新される。これまでおよそ半数を占めていた途中駅止まりの都島行きと文の里行きが平日は昼間から消滅、土休日は1本を残して全て消滅したのだ。地下鉄にしては珍しく白紙ダイヤ改正を実施することとなった。
今回のダイヤ改正は文字通り谷町線のダイヤを一新することとなった。平日・土休日とも昼間は全線運転(大日~八尾南間)と区間運転(都島~文の里間)がそれぞれ10分間隔(毎時6分)で運行され、区間運転列車も増える都島~文の里間では5分間隔(毎時12本)で運行されていた。これが今回のダイヤ改正で区間運転を廃止し、全線運転を7分30秒間隔(毎時8本)に統一した。これにより混雑の分散化が図られるものの、都心部(東梅田~天王寺間)では混雑も予想される。
また土休日はこれまでほぼ終日で前述の全線運転と区間運転を交互に10分間隔ずつ運行していたが、今回2017年3月25日のダイヤ改正より土休日朝ラッシュ時ダイヤと土休日夕ラッシュ時ダイヤが設定されることになった。具体的には、土休日朝ラッシュ時ダイヤが全線運転が5分間隔(毎時12本)、土休日夕ラッシュ時が全線運転が6分40秒間隔(毎時9本)となる。土休日朝ラッシュ時については部分運転がそのまま全線運転列車へと置き換わり、純増となった。
2. 平日夕ラッシュ時全般的に増便
今回のダイヤ改正では平日夕ラッシュ時に増発と運転区間延長を行った。東梅田基準で17時台は喜連瓜破行きが1本増発された。また18時台と19時台は八尾南行きが1本ずつ喜連瓜破行きに短縮されるものの、18時台の文の里行きが3本喜連瓜破行きに延長されており、17時台だけでなく18時台も文の里行きが毎時4本にまで縮小し、旧南海平野線沿線(阿倍野~平野間)への利便性が大きく向上した。
3. 昼夕輸送力比は乱高下、都心部で混雑は必須
とはいえ、今回のダイヤ改正は意外と難ありなようだ。土休日夕ラッシュ時だけではなく土休日朝ラッシュ時ダイヤを設けているのは、東急田園都市線や東京メトロ東西線など昼間から大混雑している路線か、西武新宿線や東武伊勢崎線、近鉄奈良線や近鉄大阪線など大幅に昼間の減便をしたものの土休日とはいえラッシュ時輸送力には足りないので減便前の本数を土休日ラッシュ時にのみ残したパターンのどちらかだ。そうなると都心部での混雑を承知で設定したとしか思えない。
そこで今回も恒例の昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)をみていくと、ダイヤ改正前は大日~都島間および文の里~喜連瓜破~八尾南間は昼間毎時6本で平日夕ラッシュ時毎時9本のため67%、都島~東梅田~天王寺~文の里間は昼間毎時12本で平日夕ラッシュ時は毎時18本のため67%であり、全線にわたり推奨値で収まっていたものが、ダイヤ改正後は大日~都島間および喜連瓜破~八尾南間は昼間毎時8本で平日夕ラッシュ時毎時9本のため89%、文の里~喜連瓜破間は昼間は同じく毎時8本で平日夕ラッシュ時は毎時14本であるから57%、都島~東梅田~天王寺~文の里間は昼間毎時8本で平日夕ラッシュ時は毎時18本であるから44%という悲惨な結果になった。これでは東梅田~天王寺などの都心部区間は昼間は大混雑し、大日~都島や喜連瓜破~八尾南などの末端区間は空気輸送ではないか。こんなダイヤ改悪は、2015年の相鉄特急運行開始時並みではないか。あのダイヤ改悪を再び呼び覚まそうとでもいうのか。
4. 今回のダイヤ改正は世界標準化と民営化への布石か
ではなぜこのようなダイヤ改悪を組まざるを得なくなったのか。その理由は大きく2つある。
1つは世界標準化。世界の地下鉄は原則全線運転であり、途中駅止まりの列車は入出庫などのごく一部に限られる。そのため途中駅止まりの列車が存在すること自体非常に稀であり、全線通しでの運行だと思っている外国人は少なくない。外国でも線路を共用して別路線で運行されることもあるが(東京メトロ有楽町線や副都心線のように)、そのような運行をするならバスのように系統番号を振ってほしいようだ(ニューヨーク地下鉄2~6号線や上海地下鉄3・4号線など)。あくまでこれらは分岐している場合であって、途中駅止まりということで番号を分けているわけではない。つまり世界の標準は、地下鉄はその路線(号数)は全線通し運転だよねということなのである。そのため、世界標準に近づけるため今回のダイヤ改正で谷町線を平日朝夕を除き原則全線運転に変えざるを得なくなったのではないだろうか。
またもう1つは2018年3月に控えた大阪市交通局の民営化だ。それに先駆けて本年2017年4月に2区運賃を10円値下げし230円に改訂したのもそうだが、民営化に向けて大きく前進しようとしている中で、わかりやすさを追求した結果が今回の平日昼間及び土休日終日の全線運転化につながったのかもしれない。
5. 結び
大阪市交通局は日本で2番目に古い地下鉄であったが、今回の谷町線の白紙ダイヤ改正が大阪市交通局92年の歴史の中で最後の大規模ダイヤ改正となりそうだ。今後民営化した際にどのような運行をしていくのか見守ってゆきたい。
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