西武鉄道は2022年9月29日、プレスリリースにて2023年春より「拝島ライナー」を平日朝に運転すると公表した( 2023年春「拝島ライナー」上り運行を開始します )。今回はこれについて見ていく。
1. 「拝島ライナー」平日朝に運転開始へ!
今回の2023年3月実施予定の西武鉄道ダイヤ改正では、座席指定制列車「拝島ライナー」を平日朝にも運転を開始する。
運転区間と停車駅は平日夕方の運転と変わらず、拝島線内各駅停車で高田馬場~小平間無停車なのも変わりはない。運転本数は2本としている。
競合するJR東日本青梅線特急「おうめ」が平日朝に東京行きを1本運転していることを考えると、その競合策として設定するのだろう。
もっとも座席指定制列車のため料金収受区間を設ける必要が生じる。平日夕方運転の「拝島ライナー」は小平→拝島間の拝島線内は座席指定券を持っていなくても利用できるが、平日朝は全区間を料金収受区間とした。つまり、西武拝島線内は乗車のみしかできず降車ができないため、西武拝島線内のみでの利用ができない。
これの何が問題かというと、拝島線は単線区間が多く列車の増発が難しい。平日朝でも10分間隔(毎時6本)しか設定できないことを考えると、この毎時6本から削って「拝島ライナー」を設定しなければならないということになる。そうなるとオフピークの拝島線の利便性が落ちそうだ。
また「拝島ライナー」は座席指定制列車のため、クロスシート運用のできる40000系専用運用となっている。がこの40000系、平日朝は通勤急行などの料金不要列車に運用している。
そして2021年3月13日東武東上線ダイヤ改正で「TJライナー」を平日朝に増発した際にも急行を2本減便している。このことも踏まえると平日朝の「拝島ライナー」を設定するためには料金不要列車を2運用減便しなければならないのだ。
前回の2022年3月12日西武新宿線ダイヤ改正では平日2本の運転がった通勤急行と土休日2本の運転があった快速急行をそれぞれ各日1本ずつに減便した。1本ずつ残したのは西武新宿線停車駅路線図を全駅で改修するのが手間だったためだが、今回のダイヤ改正で「拝島ライナー」の乗車扱いを平日朝分も含め反映しなければならないため、停車駅路線図を回収する必要がありそうだ。そのついでに通勤急行や快速急行を消してもあまり費用は変わらないことを考えると、今回のダイヤ改正で西武新宿線から通勤急行や快速急行が姿を消してもおかしくはない。
なお今回のダイヤ改正で平日朝に「拝島ライナー」を設定することとなったが、同様に料金券を必要とする特急レッドアロー「小江戸」とは停車駅がほとんどかぶらないため、現状維持だろう。
2. 東横線Qシート設定に向け土休日のS-TRAINをFライナーに格下げか
今回の2023年3月実施予定の西武鉄道ダイヤ改正では、相互直通運転を行う東急東横線で東急新横浜線開業に伴う大規模なダイヤ改正を行うことから、西武池袋線でもダイヤ改正を行う見込みだ。
前回の2022年3月12日西武池袋線ダイヤ改正では飯能を跨ぐ列車が特急「ちちぶ」と座席指定制列車「S-TRAIN」のみとなり、料金不要列車の飯能跨ぎ列車が消滅した(その割になぜか池袋線停車駅路線図では快速急行が西武秩父まで残っている)。これにより車両運用の合理化を図っているほか、今回のダイヤ改正以後も図るだろう。
ではどのようになるのだろうか。もっとも西武鉄道は「S-TRAIN」を含め新横浜乗り入れは行わないとしているため、少なくとも西武車の新横浜・相鉄乗り入れはなさそうだ。
ただ、現在も直通運転を行っている東急東横線では、2023年度より座席指定制車両Qシートを導入するとしている。これは10両編成のうち4号車と5号車を座席指定制とするものだが(おそらく既存の5050系4000番台のうち4号車・5号車のみ車両置き換えか、改造)、もし東横線にQシートを導入するとなれば地下鉄副都心線や既に東急東横線内へ直通する座席指定制列車を設定している西武池袋線に乗り入れてもおかしくはない。
ただ全車座席指定の「S-TRAIN」が乗り入れていることを考えると東急東横線Qシートの導入は片乗り入れから相互乗り入れへの転換となるのだが、「S-TRAIN」は10両全車座席指定のため合わないのである。
また「S-TRAIN」は平日の地下鉄有楽町線豊洲発着便は比較的座席が埋まりやすい一方、土休日の地下鉄副都心線・東急東横線直通の西武秩父発着列車はあまり座席が埋まっていない。
そう考えると、土休日の「S-TRAIN」の設定を取りやめて、京急快特ウィングシートのように車両の一部を座席指定化し、それにあたりFライナー快速急行に格下げして運転する可能性もあるのではないだろうか。
もし土休日「S-TRAIN」を廃止しFライナー快速急行の一部を4号車・5号車の座席指定とすれば、土休日の運用削減につなげられるほか空席が減り運用効率が上がる。もし「S-TRAIN」の運転区間のまま土休日便をFライナー快速急行に格下げするとなると、飯能跨ぎの料金不要列車が復活するほか、池袋線停車駅案内で快速急行が西武秩父まで記載され続けているのもつじつまが合う。
もっとも東急東横線Qシートの導入まで待つ可能性はあるが、遅くとも2024年3月までに土休日「S-TRAIN」のFライナー快速急行への格下げ及び4号車5号車の座席指定制の維持は実施してもおかしくはないのではないだろうか。
なお西武鉄道では6両以下の車両をサステナ車両と称する中古車両で置き換えるとしているが、今回の2023年3月ダイヤ改正では運用上の大きな変化はないのではないだろうか。
3. 結び
今回の2023年3月実施予定の西武鉄道ダイヤ改正では、西武新宿線で平日朝に「拝島ライナー」を運転することとなったほか、西武池袋線でも座席指定制列車「S-TRAIN」のうち土休日運転分をFライナー快速急行に格下げして座席指定制運行を4号車と5号車にしぼる可能性がある。
今後車両置き換えを始める西武鉄道でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
コメント