西武鉄道は2022年5月12日、2022年度設備投資計画にて中古車両の投入について公表した( 2022年度 鉄道事業設備投資計画 )。今回はこれについて見ていく。
1. 中古車導入で車両製造費削減へ
今回の2024年3月以降西武鉄道ダイヤ改正では、中古車導入を図ることでダイヤの適正化を図る見込みだ。
今回投入する中古車両はVVVF制御を搭載している車両としている。西武鉄道ではこれをサステナ車両と呼んでいるが、J-TRECの車両ブランドサステナとは無関係そうだし同一名称で分かりにくい。このためこの記事では中古車両に表記を統一する。
とはいえ西武鉄道も大手私鉄であり、新車の投入を基本としている。このため中古車は新宿線や池袋線などの8両以上で運転する列車には投入しない見込みだ。
なお西武鉄道では2022年度末までに保有車両数を1286両から1227両に59両削減するとしているが、中古車両の置き換えは2022年度には事実上行えない公算が高いため純粋な運用減(奇数からして特急レッドアローの削減も含んでいそうだが)で車両を減らすのだろう。
ではどのように中古車両を投入するのか見ていこう。
2. 直近の車両置き換えは101系と旧2000系か
ではどのような車両を置き換えるのだろうか。
今回投入する中古車両は先述したようにVVVF制御を搭載している車両としている。このため既にVVVFを搭載している6000系以降の電車はまず置き換え対象外と考えて良い。
また新宿線や池袋線には基本的に中古車両を投入しない方針であることから、入れるとすれば国分寺線や多摩湖線、西武園線、狭山線、池袋線・秩父線の飯能~西武秩父間、そして飛び地の多摩川線ということになる。
これらで運転している車両は狭山線や多摩川線の101系4両編成7本、国分寺線の新旧2000系6両編成5運用、多摩湖線の9000系4両編成、池袋線・秩父線の4000系4両編成11本となりそうだ。
このうち1985年より前に製造した101系及び旧2000系については比較的早期に置き換わる可能性が高そうだ。
3. 直近で西武鉄道に転用できる中古車両はいかに
とはいえ、そもそも中古車両を投入するにはそもそも中古車両が市場に出回らないといけない。対象となる車両はあるのだろうか。
まず、そもそも中古車両は車両置き換え費用を抑えたい地方民鉄で行うことが多い。ただこの地方民鉄は車両寸法の関係で18m車を好み、20m車を入れることは少ない。
ただ西武鉄道では20m車が全線で行き交うことができるため、20m車が余ればすぐにありつける。そう考えると今回投入する中古車両の18m車ではなく20m車を狙っている可能性が高い。
では直近で市場に出回りうる20m車かつVVVF車両を見ていくと、少なくとも該当するのは6500形投入により余剰となる6両編成の都営三田線6300形と2023年以降の新型車両投入により余剰となる見込みの5両編成の東急大井町線9000系及び9020系、および新型車両導入により余剰となる東京臨海高速鉄道りんかい線70-000形10両編成となっている。
ではこれらの車両を西武鉄道に投入するとどうなるのか、考察していこう。
4. 都営6300形を国分寺線に転用か
まずは都営三田線6300形。
東京都交通局では新型車両6500形を8両編成13本投入する見込みであることから、6両編成の6300形が12~13本程度余剰となる見込みだ。
これをまず少ない改造で投入できるのが6両運転の国分寺線である。2022年現在4運用あるので、予備車を入れても6本程度投入すれば置き換えができる。
また一部の6300形を6両編成から4両編成に減車すると多摩湖線用にも置き換えができる。多摩湖線では4両編成3運用あれば良いので、代走に6両編成が入れることを考えると予備車も入れて4本投入すれば置き換えができる。
このほか多摩川線には101系を4本配置し3運用で回している。これを6両から4両に減車した6300形を投入すれば4本、多摩湖線と共通予備とすれば3本で置き換えられる。
このように置けば、都営三田線6300形13本で国分寺線・多摩湖線・多摩川線の6両編成または4両編成を置き換えることができる。
また都営6300形は都営三田線でワンマン運転を行っているため、車両側のワンマン運転設備が揃っている。既に西武鉄道でも行っている4両ワンマン運転であれば車両側にワンマン設備があればたいていそのまま流用して他線区でもワンマン運転ができるし、6両編成のままでも駅にホームドアを整備するなどすればワンマン運転は引き続き可能だ。しかも国分寺線は5駅しかなく2019年3月16日西武新宿線ダイヤ改正より新宿線新所沢方面への直通運転を取りやめ全列車が国分寺~東村山間の折り返し運転となったため、5駅だけホームドアを設置すればいとも簡単にワンマン化ができてしまう。
つまり都営6300形を国分寺線に投入し、6両編成でのワンマン運転を実施を目論んでいるのではないだろうか。
もっとも同じく終日6両編成で運転している路線として東武野田線があるが、東武野田線が2024年以降新車置き換えとした。これは5両以上のワンマン運転には4両以下でのワンマン運転と比べ莫大なコストがかかり、駅側にホームドア設置などの安全対策を打つかJR東日本E131系のように各車両に乗降を確認するカメラを設置しなければならない。ただ東武野田線は駅数が多いためホームドアを全駅に設置することは不経済と判断して新車導入に踏み切ったわけだが、西武国分寺線は駅数が少なかったため駅側で対応しても費用がかさまないと判断したのだろう。
5. 東急9000系を秩父線・狭山線に転用か
次に東急大井町線9000系及び9020系。5両編成18本があるが、数年後を目途に新型車両に置き換える見込みだ。
そもそも秩父線には4000系4両編成が10本、狭山線には101系4両編成3本があるが、ともに前回の2022年3月12日西武池袋線ダイヤ改正で平日昼間に減便を図っており、正直4両編成である必要はない。
なぜ秩父線の4000系を4両編成で投入したのかというと2本つないで8両編成にしないと池袋に乗り入れる際に池袋~飯能間で混雑してしまうからなのだが、前回2022年3月12日西武池袋線ダイヤ改正で4000系の池袋乗り入れが消滅したためその心配もない。
また秩父線の行楽シーズンや狭山線の野球観戦時には平日朝夕に池袋線で使用する8両編成や10両編成を運用に余裕がる土休日昼間に繰り出せばいいので、その他の日にもっぱら運転する4両編成は減車しても構わない。
そう考えると秩父線や狭山線は中古車両に置き換えた際に4両から3両または2両に減車してもおかしくなさそうだ。
そして秩父線に東急9000系・9020系を投入するのは大きなメリットがある。それは直通運転を行う秩父鉄道が既に元東急の車両を多く使用しているため、直通運転を行うにあたり互換性があるのだ。
秩父鉄道では基本的に3両編成の電車を投入しており、これまでも都営5000系や東急8500系、東急8090系などを3両に短縮してそれぞれ5000系、7000系、7500系として投入してきた。ただ沿線の人口減少により利用者が減っているため、2013年3月16日ダイヤ改正より東急8090系を2両編成に減車した7800系を運用開始している。
秩父鉄道では5000系3両編成3本及び2022年4月1日より急行料金徴収を取りやめた急行用6000系3両編成3本の合計6本を近年の置き換え対象としている可能性がある。そしてこの置き換え車両は3両から2両に減車して行ってもおかしくはない。
そこで西武鉄道と秩父鉄道が協力して東急大井町線用9000系5両編成を3両と2両に分離、3両編成を西武秩父線及び狭山線用に、2両編成を秩父鉄道ようにそれぞれ分ければ無駄なく転属できる。
そう考えると西武秩父線に東急の車両を投入することはメリットがかなりありそうだ。
6. りんかい線70-000形の転属はあるのか
では東京臨海高速鉄道りんかい線70-000形の転属はあるのだろうか。
そもそも70-000形は10両編成で、国分寺線の6両やそのほかの路線の4両運転と比べると明らかに長い。
もっとも過去には6両で組んでいたこともあるし余剰となった先頭車両などを使用してJR東日本八高線・川越線に転属、209系3100番台として運転したこともあったが2021年までに引退している。
りんかい線70-000形車両は1995年~2004年に製造した車両で、今回紹介した3種類の中古車と比べると一番経年は浅いのだが、編成単位で購入するとすると1本の6両編成または4両編成を投入するのに10両分購入する必要が生じること、ワンマン運転に対応していないためワンマン機器を新たに搭載しなければならないなどコスパが悪い。そう考えるとやや難しそうな気もするが果たして。
7. 結び
今回の2024年3月以降西武鉄道ダイヤ改正では、中古車両の投入により現状6両運転の国分寺線で元都営6300形によるワンマン運転を実施する可能性が考えられるほか、秩父線に元東急9000系を投入することで秩父鉄道と共同で車両置き換えを行う可能性が考えられる。
今後西武鉄道でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
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