JR東海は12月15日、プレスリリースにて2018年3月17日にダイヤ改正を行うと公表した( 平成30年3月ダイヤ改正について )。今回はこのうち、東海道新幹線で新規に設定される臨時列車「のぞみ90号」について見ていく。
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1. 名古屋始発、東京都区内7時59分着臨時「のぞみ」運転
また今回の2018年3月17日ダイヤ改正では、名古屋発6時台に東京行き臨時「のぞみ」を設定することとなった。
現在名古屋から東京行き初列車は名古屋6時20分発定期「ひかり500号」東京行きで東京着8時13分となっているが、今回新しく設定される名古屋始発臨時「のぞみ90号」東京行きは名古屋6時28分発、東京8時07分着で、「ひかり」と比べて名古屋を8分遅く出るものの東京に6分早く着く。また、臨時「のぞみ90号」は新横浜に7時47分、品川に7時59分に到着する。上り列車(東京行き)で東京都区内に7時台に到着する「のぞみ」「ひかり」は史上初となり、名古屋から8時前に東京都区内に到着する列車が設定されることとなった。
ちなみに東京に8時07分に到着する列車として東北新幹線仙台6時36分発「はやぶさ2号」東京行きがある。こちらは東北新幹線「はやぶさ」が運転を開始した2011年3月5日ダイヤ改正より運転しているが(当時は東京8時ちょうど着だった)、JR東海はこれを基に今回の臨時「のぞみ90号」を設定しようとしたのではないだろうか。ただ、なぜ臨時列車かというと、N700系が確実に確保できる保証がないから、東海道新幹線は朝の上り(東京方面)も「ひかり」や「のぞみ」が充実しており、臨時「のぞみ90号」の13分後に名古屋を出発する定期「のぞみ92号」でも東京に8時16分に到着できることなどが挙げられる。東北新幹線のように仙台朝6時台発の上り(東京方面)「やまびこ」が各駅停車または1駅のみ通過だったり、次の「はやぶさ」が45分待ちだったりということはないのだ。そこが当初から定期列車として仙台始発東京行き「はやぶさ」を設定したJR東日本との大きな違いではないだろうか。
この臨時「のぞみ90号」の所要時間は1時間39分であり、後続の名古屋発東京行き定期「のぞみ92号」(2018年3月16日までは「のぞみ268号」)の1時間35分運転や新大阪発東京行き初電定期「のぞみ200号」の1時間34分運転よりも遅い。このような遅い時間設定になっているのは今回設定される「のぞみ90号」が臨時「のぞみ」であるがゆえに700系を充当できるダイヤで運転するためではないだろうか。
現在はN700系専用運転となっている名古屋発東京行き初電「のぞみ92号」も2010年3月12日までの700系が充当されていた時期には現在より4分遅い1時間39分運転を行っていたこともあり、辻褄は合う。この今回新たに設定される「のぞみ90号」は土休日と休翌日運転(主に月曜日)に運転される予定で、名古屋地区東海道線ではこの「のぞみ90号」に接続する列車を土休日のみ増発するほどだ。それだけ朝の名古屋から東京への需要は伸びているということなのだろう。
2. 利便性と接続列車はいかに
今回の2018年3月17日ダイヤ改正で設定される臨時「のぞみ90号」は、先述のように臨時途中で定期「ひかり500号」を抜かす。つまり臨時「のぞみ90号」運転日は定期「ひかり500号」は名古屋基準で東京先着列車とはならないことになる。すると本来6時20分の「ひかり500号」を利用して名古屋から関東地方を目指していた旅客は、ほぼ全数臨時「のぞみ90号」に流れることとなる。また、名古屋発時刻も現行の初電「ひかり500号」東京行きより8分遅いこと、名古屋地区JR線でもこの列車のために土休日のみ東海道線刈谷始発列車を設定するなど、後続の名古屋始発定期「のぞみ92号」(2017年現在の「のぞみ268号」)の需要をも奪う勢いだ。それだけ土休日や月曜日の朝の名古屋→関東の需要が伸びているということなのだろう。
また、名古屋エリアでの接続列車を見ていくと、東海道線刈谷→尾頭橋では先述のように土休日のみ刈谷始発の普通列車が設定されるため、名古屋始発東京行き初電定期「ひかり500号」に接続する普通大垣行きと比べて概ね15分遅い列車の利用で臨時「のぞみ90号」に接続することができる。ただしこの刈谷始発の普通列車は土休日のみの運転のため、月曜日などの休翌日には運転されないため、従来通りの岡崎発普通大垣行き列車を利用することとなる。
次に中央線。現在定期「ひかり500号」に接続する列車は多治見5時25分発初電普通名古屋行き(名古屋6時06分着)であるが、その10分後に高蔵寺5時47分発普通名古屋行き(名古屋到着6時16分)が毎日運転で運転されており、臨時「のぞみ90号」に接続することができる。つまり中央線高蔵寺→金山の各駅では10分遅い列車の利用で東京にこれまでより早い時間に到着できることになる。
次に名鉄。まずは名古屋本線から見ていく。土休日ダイヤの場合定期「ひかり500号」に接続するのは鳴海5時44分発急行名鉄岐阜行き初電であるが、臨時「のぞみ90号」には後続の東岡崎5時33分発急行佐屋行き初電となり、急行停車駅の鳴海・堀田で11分遅い列車の利用で接続できるほか、東岡崎・新安城・知立からも新たに接続できるようになる。また急行通過駅の豊明・有松・左京山からも、鳴海でこの急行佐屋行きに接続する関係で17分遅い普通列車の利用で接続可能となる。
次に犬山線。定期「ひかり500号」に接続するのは新鵜沼5時20分発準急河和行きであるが、今回のダイヤ改正で設定される臨時「のぞみ90号」には後続の岩倉5時51分発普通東岡崎行きがある。この列車の利用で8分から13分遅い列車の利用で接続となる。
また常滑線ではこれまで太田川5時31分発普通金山行き初電を利用の上終点金山でJR中央線ないし名鉄名古屋本線などへの乗り換えを必要としたが、臨時「のぞみ90号」の利用であれば後続の中部国際空港5時24分発準急名鉄岐阜行き初電の利用で接続となる。これにより太田川以北の準急停車駅では14分~27分遅い列車で接続できるようになり、かつ新幹線に乗り換えられる名古屋に隣接する名鉄名古屋まで直通で行けるようになったほか、太田川以南の準急停車駅ではこれまで接続できなかった新幹線に接続できるようになり、東京に9分早く到着できるようになった。
さらに近鉄名古屋本線では、戸田~米野の各駅で1本遅い20分後に運行される普通近鉄名古屋行きの利用で接続できるようになり、地下鉄東山線および桜通線の全線で10分~11分遅い電車でも接続可能となる。
3. 「ひかり」の待避はどうなる
ところで、前を走る「ひかり500号」の退避を浜松で行われるものと思われるが、どこにその待避する時間をつくるのだろうか。
かつて700系で運転されていた時期はこの「ひかり500号」は東京8時20分着で運転されていた。その後2009年3月14日ダイヤ改正にてN700系専用運転となり、名古屋6時20分発は変更せず、東京8時13分着に7分繰り上げることなった。なお東京8時20分着には当時名古屋6時36分発「のぞみ298号」東京行き(700系)が設定された。2009年当時の背景として「のぞみ298号」ではなく「ひかり500号」にN700系を投入したのは、「のぞみ298号」の東京着のスジをつくりたいためであると考えられ、そのために「ひかり」の所要時間を短縮する必要があったものと思われる。
しかし既にN700系専用ダイヤで「ひかり500号」は運転されており、2009年当時の最高速度270km/hから現在の最高速度285km/hに引き上げても最高で2分しか短縮できず(名古屋→新横浜間ノンストップの「のぞみ」号の場合)、「ひかり500号」は豊橋・浜松・静岡と停車することから285km/h運転区間が「のぞみ」より限られ、最高速度を引き上げても1分程度しか短縮できそうにない。現在東海道新幹線では1本待避する場合2分、2本連続退避する場合5分の停車時間を設けていることから、ダイヤ上厳しそうだ。にもかかわらずプレスリリースを見ると「ひかり500号」の運転時刻が途中駅も含め1分たりとも変わっていない。このダイヤで待避を行うのは難しいのではないだろうか。
となると考えられるのは、今回新たに設定される臨時「のぞみ」運転日のみ「ひかり500号」の運転時刻をずらすのではないだろうか。この手法は2003年10月1日の「のぞみ」大増発に伴う東海道新幹線ダイヤ改正より以前に行われていたもので、復活する可能性がある。ただ、東京着時刻を繰り下げようとすると名古屋6時28分発「のぞみ92号」東京行きとバッティングしスジが作れない。となると名古屋発時刻を繰り上げるほかない。名古屋基準で2分以内であれば他社線も含め接続列車が現状通り確保できるが、新幹線駅の営業時間をその分はやめなくてはならないというデメリットがある。どう克服するかは実際に時刻表で確認するほかないだろう。
4. 結び
今回の2018年3月17日ダイヤ改正では、名古屋始発東京行き臨時「のぞみ90号」が設定されることにより、東京都港区の品川に7時台に到着する東京行き「のぞみ」が誕生することとなった。またこの列車の設定で名古屋エリアでは名鉄常滑線で利用可能エリアが広がったほか、そのほかの多くの線区でも10分~20分程度遅い列車の利用で既存の定期「ひかり500号」より早く東京に到着することができるようになった。
今回設定された臨時「のぞみ90号」は700系でも運転可能なダイヤであるから、全ての東海道新幹線列車がN700系で統一される2020年3月のダイヤ改正までに必ず所要時間の短縮が成されるはずだ。今後この臨時「のぞみ90号」がどのようなダイヤとなるのか、定期化は成されるのか、見守ってゆきたい。
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