JR西日本は2018年12月14日、プレスリリースにて2019年3月16日にダイヤ改正を行うと公表した( 2019年春ダイヤ改正について )。今回はこのうち、山陽新幹線「のぞみ」について見ていく。
2019年3月16日全国一斉ダイヤ改正まとめについてはこちら!
1. 「のぞみ」毎時2本で時刻変更へ
今回の2019年3月16日山陽新幹線ダイヤ改正では、東京毎時10分発/33分着定期「のぞみ」及び東京毎時40分発/03分着多頻度「のぞみ」が東海道新幹線内で所要時間を3分短縮することにより、この毎時2本で下り(博多方面)で運転時刻を3分繰り上げ、上り(東京方面)で3分繰り下げを行うこととなった。
このうち東京毎時40分発/03分着多頻度「のぞみ」は700系でも運用可能であるが、N700系を増備したことによりN700系専用ダイヤとなった。
山陽新幹線では2007年7月1日ダイヤ改正よりN700系運転列車が設定されているが、2008年3月15日ダイヤ改正でパターンダイヤ時間帯にもN700系専用ダイヤが進出し毎時1本がN700系専用ダイヤとなったほか、2009年3月14日ダイヤ改正、2010年3月13日ダイヤ改正と3年連続で毎時1本ずつの「のぞみ」をN700系専用ダイヤ化し所要時間短縮を図った。しかし九州新幹線や北陸新幹線の開業で山陽新幹線16両編成用の車両増備・置き換えがままならず、残る臨時「のぞみ」毎時2本については2011年3月12日ダイヤ改正で300系による山陽新幹線内臨時「のぞみ」運用消滅に伴う所要時間短縮があったものの700系は依然毎時2本の臨時「のぞみ」で使用可能であった。
しかし今回の2019年3月16日ダイヤ改正では、N700系の増備に伴い臨時「のぞみ」のうち多頻度運転される東京毎時40分発/03分着臨時「のぞみ」がN700系専用ダイヤ化したことにより、多客期にはこれまで毎時5本中毎時3本しかN700系保障はなかったが、今回のダイヤ改正より9年ぶりに毎時5本中毎時4本に上がることとなった。
これにより、東京~岡山間は昼間は毎時3本の定期「のぞみ」が3時間17分~3時間24分で運転されているが、このうち毎時1本が3分短縮されることで、3時間14分運転をすることとなった。
次に東京~広島間。昼間は毎時3本の定期「のぞみ」が3時間56分~4時間00分で運転されているが、このうち3時間58分運転を行っている3時間58分運転の毎時1本が3分短縮され、3時間55分運転を実施することとなった。
なお、東京毎時03分着多頻度「のぞみ」が所要時間短縮に伴い新大阪発着時刻を3分繰り下げたことで、予測記事の通り広島6時00分発「のぞみ108号」東京行き初列車は広島6時03分発に繰り下げられることとなった。
また東京〜博多間では昼間は毎時2本の定期「のぞみ」が5時間00分~5時間03分で運転されているが、昼間に少なくとも定期「のぞみ」毎時1本のが所要時間が3分短縮され4時間57分運転の「のぞみ」が毎時1本設定されることとなり、昼間も5時間を切る列車が設定されることとなった。
1997年11月29日ダイヤ改正で運転を開始した500系のぞみは東京~岡山間3時間12分運転(品川、新横浜、新神戸通過)、東京~広島間3時間47分運転(品川、新横浜、新神戸、福山通過)、東京~博多間は4時間49分運転(品川、新横浜、新神戸、福山通過)であったことを考えると、停車駅が増加に伴う所要時間増加分は増えているものの、かなり追いついているように思う。
ただ、山陽新幹線区間では新大阪~博多間2時間17分運転(新神戸・福山通過)から2時間26分運転(新神戸・新山口停車)と比べて現行は2時間28分運転となっている。アナログATC時代より所要時間が延びているのは余裕時分をとったためであるが、これ以上所要時間を短縮することは難しいだろう。
一方、東京毎時40分発/03分着山陽直通多頻度「のぞみ」は700系でも運転可能なダイヤであるが、今回の2019年3月16日ダイヤ改正よりN700系限定運用となる。このことから山陽新幹線内でも300km/h運転が可能になるはずであるが、JR九州公表の山陽・九州新幹線時刻表やJR西日本公表の春の臨時列車運転における博多発の臨時「のぞみ」の時刻表を見る限り、この多頻度「のぞみ」は山陽新幹線内で2~3分時刻がずれたのみで、山陽新幹線内では所要時間短縮がせいぜい1分しか図られていないのだ。つまり、N700系限定運用になったはずなのに、山陽新幹線内では285km/h運転を継続するようだ。これでは新大阪〜博多間2時間37分運転で、定期列車より9分も遅いではないか。
全区間所要時間が短縮しているならまだしも、東海道新幹線内で所要時間を短縮したはずなのに山陽新幹線内で所要時間が延長し結果全区間所要時間が変わらない列車がある。
岡山8時59分発「のぞみ122号」東京行きは、新大阪→東京間で3分短縮するものの、岡山→新大阪間で3分延長し結果全区間所要時間は3時間24分運転のまま変わらない。
これは、後続に熊本6時01分発「さくら540号」新大阪行きが運転されているため3分後ろにずらせなかったからである。熊本からの初列車のため動かさなかったのだろう。
2017年3月4日ダイヤ改正では山陽新幹線にてデジタルATC導入に伴い全面的に所要時間が短縮されたにもかかわらず、N700系化した東海道新幹線直通「ひかり」が浜松〜新大阪間で3分所要時間短縮を図ったのに、山陽新幹線内での待避の関係で新大阪〜岡山間で所要時間が概ね3分伸び全区間所要時間が変わらなかったほか、一部列車では新大阪〜岡山間で12分も所要時間が伸びた列車まである。まだ「ひかり」かつ新大阪〜岡山間各駅停車だから許されるのかもしれないが、「のぞみ」でも所要時間に疎いのは最速達列車として如何なものかと思う。
確かに2020年3月予定のダイヤ改正では東海道新幹線に直通する全ての列車がN700系に統一され、山陽新幹線内でも「こだま」と「ひかりレールスター」を除き臨時列車を含む全ての列車で300km/h運転が可能になる。一年おきに見直しを行うのは手間であり、九州新幹線と直通する「みずほ」「さくら」の時刻調整が難しいのかもしれないが、もう少し柔軟にダイヤを変更し300km/h運転可能な列車が増えたことに対して所要時間短縮を図ってほしいと思う。
ただ、これらの所要時間短縮により、東京~山陽新幹線方面への「のぞみ」の平均所要時間は、定期列車だけで見ても約1分、臨時列車を含めても1分以上短縮されたはずだ。
2. 「のぞみ」の時刻変更で在来線特急連絡はいかに
また今回の2019年3月16日山陽新幹線ダイヤ改正では、「のぞみ」の運転時刻変更により在来線特急との接続列車が変わる列車がある。在来線特急は概ね毎時1本しか運転していないのに対し、新幹線の本数があまりにも多いことから山陽新幹線内でも20分待てば次の新大阪方面速達列車が来ることから、接続を重視しなくても勝手に接続してくれることが多い。むしろ本数の少ない九州新幹線直通「みずほ」「さくら」と連絡を取ることしている列車が多い。そのため「のぞみ」が時刻変更したからといって時刻を動かす在来線特急はほとんどないのだ。
ただ、偶然にも連絡できるようになり、所要時間が短縮する例がある。JR四国のプレスリリースでは、予讃線特急「しおかぜ」と山陽新幹線新大阪・東京方面の連絡が良くなったと記している。
実際に岡山発着がパターンダイヤ時間帯で調べてみると下り(東京→岡山→松山)では岡山での乗り換え時間が8分から11分に拡大するものの、そもそも標準乗り換え時間が8分なので既に乗り換えられる。一方上り(松山→岡山→東京)では岡山での乗り換え時間が5分から8分となり、乗り換え可能になる。このことから予讃線特急「しおかぜ」停車駅から新大阪方面へ6~7分、東京へは11~12分所要時間が短縮されることとなった。
他にも、長崎本線特急「かもめ」は博多毎時15分発の多頻度列車と博多毎時55分発の定期列車を運転しているが、東京毎時10分発定期「のぞみ」が所要時間を3分短縮することで博多毎時10分着から博多毎時07分着に繰り上がる。博多駅での乗り換え時間は7分であるから、これまで接続できずに2018年3月17日ダイヤ改正で削減されてしまった多頻度「かもめ」に接続する山陽新幹線が設定されることにより、多客期には新大阪→長崎間で先着毎時2本が設定されることとなった。
それ以外については、山陽新幹線と在来線特急の間で最大3分待ち時間が伸びるほか、新大阪からの所要時間は3分伸びることとなる。
3. 結び
今回の2019年3月16日山陽新幹線ダイヤ改正では、東海道新幹線内で所要時間短縮を図った「のぞみ」毎時3本のうち毎時2本が山陽新幹線に直通していることから、時刻変更を実施した。
ただ、700系運用可能ダイヤからN700系専用運用となった東京毎時40分発/03分着「のぞみ」が山陽新幹線内で最高速度引き上げが実施されず、依然新大阪〜博多間2時間37分程度の運転と昼間の定期「のぞみ」と比べて9分遅い時刻設定となっている。
今後2020年3月には700系16両編成が引退し東海道新幹線に直通する「のぞみ」「ひかり」全てがN700系となり全列車300km/h対応となるが、その際に臨時「のぞみ」の最高速度引き上げと所要時間短縮は実施されるのか、見守って行きたい。
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