JR東海は2019年4月18日、プレスリリースにて2020年春にダイヤ改正を行うと公表した( 東海道新幹線のさらなる輸送サービスの充実について )。今回はこれについて見ていく。
2019年3月16日全国一斉ダイヤ改正まとめについてはこちら!
1. N700系統一で所要時間短縮へ
今回の2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正では、N700系の配備完了に伴い700系が引退することとなり、全ての列車が東海道新幹線内で285km/h運転を実施する。
2019年3月16日ダイヤ改正時点では、早朝・深夜の最速列車は東京~新大阪間を2時間22分で結ぶものの、昼間のパターンダイヤ時間帯では最速2時間27分で結ぶ「のぞみ」もあるものの臨時列車含め毎時10本中毎時1本しか運転されず、2時間30分以内運転も毎時3本のみとなっており、残る毎時7本のほとんどが2時間33分運転、毎時1本は未だに2時間37分運転を実施している。
しかし700系新幹線が引退することで、「こだま」を中心に所要時間が短縮され、後続の「のぞみ」が詰まることなく「こだま」を抜かすようになることから、「のぞみ」でも所要時間短縮が実施され、全ての「のぞみ」が2時間30分以内で東京と新大阪を結ぶ予定となっており、全「のぞみ」平均で2分以上所要時間が短縮される見込みだ。
また、停車駅の少ない「ひかり」は「のぞみ」に抜かわれる回数が比較的少ないことから、パターンダイヤ時間帯における東京毎時03分発及び東京毎時40分着静岡停車「ひかり」で東京~新大阪間で3~7分、東京毎時33分発及び東京毎時10分着米原停車「ひかり」で東京~新大阪間で0~3分所要時間を短縮する見込みとなっている。
2. のぞみ最大毎時12本運転実施へ
今回の2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正では、パターンダイヤ時間帯で「のぞみ」毎時12本運転を可能にするとしている。
では、現行のダイヤから「のぞみ」毎時2本を増発する余地はあるのだろうか。
2.1. 純増発での増発の余地はあるのか
まずは2019年3月17日ダイヤ改正以降の東京発着時刻を踏襲したまま純増発はできるのだろうか。
まず現行のダイヤは、東京発下りは、
- 毎時00分発 定期「のぞみ」新大阪行き
- 毎時03分発 定期「ひかり」岡山行き(静岡・浜松停車)
- 毎時10分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時13分発 僅少「のぞみ」最大博多行き
- 毎時20分発 多頻度「のぞみ」新大阪行き
- 毎時23分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時26分発 定期「こだま」名古屋行き
- 毎時30分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時33分発 定期「ひかり」新大阪行き(岐阜羽島・米原停車)
- 毎時37分発 僅少「こだま」三島行き
- 毎時40分発 多頻度「のぞみ」最大博多行き
- 毎時47分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時50分発 定期「のぞみ」広島行き又は博多行き
- 毎時53分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時56分発 定期「こだま」新大阪行き
の10-2-2(3)ダイヤとなっている。上りは東京発時刻を43(または103)から引いてほしい。
そこで現行ダイヤのダイヤパターン図(1時間分)を作成したので、こちらのリンクから確認してほしい。
このダイヤパターン図を見ると、「のぞみ」全停車駅と待避線のない熱海で「こだま」が抜かされないのは当たり前のことだが、なんと掛川で「のぞみ」に抜かされる「こだま」が存在せず、掛川で「こだま」が抜かされるのは小田原停車の「ひかり」2時間に1本のみとなっている。
しかも掛川の待避線は線形の都合上上り・下りとも駅の2km程度手前から本線より分岐しており、「こだま」が掛川駅に停車する前の原則段階で「のぞみ」や「ひかり」が抜かせるので、一番ロスタイムなく「こだま」を抜かせる。つまり掛川で「こだま」を待避させないことほどの宝の持ち腐れはない。
その掛川で「こだま」を抜かす「のぞみ」を作れば、何とかスジは確保できるのではないか。
この掛川で「こだま」を抜かす「のぞみ」を設定するためには、下り(新大阪方面)では東京毎時07分発及び毎時37分発、上り(東京方面)は東京毎時36分着及び毎時06分着で設定すれば、掛川で「こだま」を抜かすという最低条件はクリアできそうだ。
しかし、2019年5月現在の「ひかり」「こだま」が「のぞみ」通過駅で抜かされる本数が最大で2本というダイヤや「ひかり」に待避パターンを参考にダイヤグラムを編んでいくと、なんと浜松で「こだま」が浜松停車の「ひかり」に追突されることが発覚した。
つまり、純粋に東京発着時刻に挿入して「こだま」をうまくかわしていた、N700系ダイヤがパターンダイヤ時間帯に初めて組み込まれた2008年3月15日ダイヤ改正以来ずっと維持してきた東京駅発着時刻のパターンダイヤは崩さざるを得なくなった。
2.2. 停車駅で速達列車に抜かされるのは最大2本までのまま増発はできるのか
では次に抜かされるのが最大2本までのままダイヤは組むことができるのだろうか。
まずは前提条件として、東京発着時刻を変えざるを得ないところから始まる。
2019年5月現在「のぞみ」が臨時列車含め毎時10本、「ひかり」が毎時2本の合計毎時12本であることを活かし、東京発着時刻では「のぞみ」と「ひかり」が10分以内に合計で毎時2本となるよう設計されている。2020年3月ダイヤ改正では「のぞみ」が毎時2本増えるので、10分以内に「のぞみ」を2本ずつ配置し、合間に「ひかり」と「こだま」を入れればいいのではないだろうか。
まずは東京発着時刻を最短3分間隔とした場合。列車運転頻度が変わらず、増発される「のぞみ」が全て東海道新幹線内の東京~新大阪間運転の僅少「のぞみ」と仮定すると、
- 毎時00分発 定期「のぞみ」新大阪行き
- 毎時03分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時06分発 定期「ひかり」岡山行き(静岡・浜松停車)
- 毎時10分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時13分発 僅少「のぞみ」最大博多行き
- 毎時20分発 多頻度「のぞみ」新大阪行き
- 毎時23分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時26分発 定期「こだま」名古屋行き
- 毎時30分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時33分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時36分発 定期「ひかり」新大阪行き(岐阜羽島・米原停車)
- 毎時40分発 多頻度「のぞみ」最大博多行き
- 毎時43分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時46分発 僅少「こだま」三島行き
- 毎時50分発 定期「のぞみ」広島行き又は博多行き
- 毎時53分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時56分発 定期「こだま」新大阪行き
と置くことができる。
しかしこれでダイヤを組もうとしても、三島や浜松で「こだま」が「ひかり」に追突されてしまう。つまり、2019年5月現在のダイヤで行われている、最小3分間隔かつ停車駅で2本までしか抜かされないダイヤでは「のぞみ」毎時12本ダイヤは構築不可能と言える。
そうなると、最小運転間隔短縮に伴う増発と、「こだま」の3本抜きを行う必要ではないだろうか。
2.3. 運転間隔の短縮と3本の待避実施で白紙ダイヤ改正実施か
では、N700系統一により、東京駅発着をどこまで短縮できるのだろうか。
東海道新幹線の東京駅での最短発車間隔は、0系や100系が運用されていた夏休みが時速220kmでやってきてクリスマスエクスプレスが走っていた頃は4分であったが、1992年3月18日ダイヤ改正で30系新幹線使用の「のぞみ」がパターンダイヤに組み込まれたことにより、3分に短縮された。以後、2003年10月1日ダイヤ改正では100系が引退したことにより全てが300系以降の新幹線となり、最短発車間隔が全面的に3分となった。
2020年3月ダイヤ改正ではN700系統一に伴い全列車で700系と比べて高いブレーキ性能を持つようになり、かつ定速運転装置を設置することになることから、発車間隔の短縮が期待できる。
2019年現在はN700系のみが運転する早朝の時間帯において、名古屋駅では7時35分の「のぞみ1号」博多行き発車の2分後に名古屋7時37分始発「ひかり495号」広島行きを発車させている。つまりN700系統一後の2020年3月ダイヤ改正では、すべての時間帯で最短2分間隔発車が可能となりそうだ。
そのため、ここでは2分30秒間隔発車が可能になるとみて、ダイヤグラムを編むこととする。
この仮定に基づいた場合、下り列車の東京駅発時刻は以下のように置くことができる。
- 毎時00分発 定期「のぞみ」新大阪行き
- 毎時02分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時05分発 定期「ひかり」岡山行き(静岡・浜松停車)
- 毎時10分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時13分発 僅少「のぞみ」最大博多行き
- 毎時20分発 多頻度「のぞみ」新大阪行き
- 毎時23分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時27分発 定期「こだま」名古屋行き
- 毎時30分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時32分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時35分発 定期「ひかり」新大阪行き(岐阜羽島・米原停車)
- 毎時40分発 多頻度「のぞみ」最大博多行き
- 毎時43分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時47分発 僅少「こだま」三島行き
- 毎時50分発 定期「のぞみ」広島行き又は博多行き
- 毎時53分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時57分発 定期「こだま」新大阪行き
また、2019年5月現在「こだま」は東京~名古屋間で前後の「のぞみ」や「ひかり」の運転間隔が5分以内ならそのまま停車を継続して待避、6分以上なら次の駅まで運転して待避を行っているが、「こだま」の運転曲線を描くにあたり700系から性能の良いN700系に代わることにより、前後の「のぞみ」や「ひかり」の運転間隔が5分でも次の駅まで運転するようになるのではないだろうか。
ただ、この時刻設計でも浜松で「こだま」が「ひかり」に追突される。そうなるともう「こだま」の運転時刻を変更するほかない。そこで、10分繰り上げて再設定してみた。すると下り列車の東京発時刻は
- 毎時00分発 定期「のぞみ」新大阪行き
- 毎時02分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時05分発 定期「ひかり」岡山行き(静岡・浜松停車)
- 毎時10分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時13分発 僅少「のぞみ」最大博多行き
- 毎時17分発 定期「こだま」名古屋行き
- 毎時20分発 多頻度「のぞみ」新大阪行き
- 毎時23分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時30分発 定期「のぞみ」博多行き
- 毎時32分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時35分発 定期「ひかり」新大阪行き(岐阜羽島・米原停車)
- 毎時40分発 多頻度「のぞみ」最大博多行き
- 毎時43分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時47分発 定期「こだま」新大阪行き
- 毎時50分発 定期「のぞみ」広島行き又は博多行き
- 毎時53分発 僅少「のぞみ」新大阪行き
- 毎時57分発 僅少「こだま」三島行き
と置いた。
この仮定でダイヤパターン図(1時間分)を作成すると、概ね「ひかり」に抜かされる場合のみ「こだま」が3本抜きされるように列車を設定できる。
こうすると、名古屋~新大阪間で静岡・浜松停車の「ひかり」と博多発着「のぞみ」が続行運転となり静岡・浜松から山陽新幹線方面へのアクセスが引き続き確保されるほか、名古屋では2019年3月16日ダイヤ改正で解消してしまっていた名古屋発着「こだま」と岐阜羽島・米原停車の「ひかり」が名古屋で対面接続、岡山発着「ひかり」と新大阪発着「こだま」が京都~新大阪間で続行運転を行うことにより連絡可能となるなど、「のぞみ」通過駅間の連絡が改善する。
待避回数や所要時間について見ていくと、東海道新幹線「こだま」は東京~新大阪間で臨時含め「のぞみ」に抜かされる回数が13回から20回に増える見込みで、「ひかり」に抜かされる回数は2階のまま変わりないため合計待避本数は15本から22本に大きく増え、所要時間は3時間57分から4時間06分に延びる見込みだ。
また東京~名古屋間運転の「こだま」も「のぞみ」に抜かされる回数が10回から16回に増え、所要時間が2時間43分から2時間56分に延びる見込みだ。
一方、静岡停車の「ひかり」は「のぞみ」に抜かれる本数は4本と変わらないものの東京~新大阪間で2時間57分から短縮し2時間53分、米原停車の「ひかり」は「のぞみ」に抜かされる本数が3本から4本に増えるものの、2時間53分から短縮し2時間48分で運転する見込みとなる。
また「のぞみ」は確実に東京~新大阪間2時間30分運転となるのが、下り列車で東京毎時30分発及び毎時32分発の2本発生するほか、東京毎時40分発、毎時43分発、毎時00分発、毎時02分発の4本も2時間30分運転となる可能性はある。ただそれ以外の「のぞみ」毎時6本は東京~新大阪間2時間26分~2時間27分で運転できる見込みとなっている。2時間30分運転であれば、2020年3月以降も存続が内定しているドクターイエローも運転可能となる。
そして、2020年7月ダイヤ改正よりN700Sが導入開始すると東海道新幹線内でも300km/h運転を行う可能性が高く、2021年3月ダイヤ改正で「のぞみ」のうち毎時1本をN700AからN700Sに置き換えるものと思われる。
その際に「のぞみ」毎時1本がN700系専用ダイヤに置き換わった2008年3月15日ダイヤ改正同様東京毎時10分発山陽直通定期「のぞみ」に導入すると、東京~新大阪間を2時間23分~2時間24分で運転できる可能性が高い。今後も所要時間短縮面では伸びしろのあるダイヤとなりそうだ。
この予測はあくまで仮定としておいたものであり、1分程度の誤差は至る所で起こるものと思われる。
なお今回の2020年3月ダイヤ改正で「ひかり」「こだま」の最大運転本数は変わりないほか、静岡に「のぞみ」が停車することもないだろう。2020年7月実施予定のダイヤ改正でN700Sが運転を開始する予定であるが、N700Sで毎時1本以上の「のぞみ」が賄えるようになる2021年3月ダイヤ改正で「ひかり」が最大毎時3本の運転となり、各「ひかり」の平均停車回数の見直しにより所要時間が短縮することはないのだろうか。
3. 結び
今回の2020年3月東海道新幹線ダイヤ改正では、N700系配備完了に伴い700系が引退することから、全列車で285km/h運転が可能となり全ての「のぞみ」が東京~新大阪間で2時間30分以内で運転できるようになるほか、「のぞみ」を最大毎時12本運転できるようになる。
また「のぞみ」の増発で同一駅で3本に列車に抜かされ得ることから「こだま」の所要時間がやや伸びそうではあるが、名古屋や京都などで各駅に停まる新幹線同士が連絡しやすくなり、利便性が改善するところも多そうだ。
2020年3月のダイヤ改正でどのようなダイヤが組まれるのか、楽しみにしたい。
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